ハリエット(シノア)の物語    作:揚げ紅葉(カスタード)

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接触

空き教室

 

 

 

「⋯⋯⋯」

 

静かな教室にぱらり、ぱらりと本をめくる音と、紙に何かを書き込む音が響いている。

 

クディッチの大会の日、ハリエットは観戦に行かずに、ずっと単独行動をしていた。

 

図書館に行ったり、校舎内をふらふらしたり、ミセスノリスとじゃれたり。

 

そして今は、宿題のレポートを書いている。

 

 

 

 

 

 

それまでは、まだ誰もハリエットに接触している者はいなかった。

 

ドラコ君が言っていた。ハリー・ポッターは、最年少のシーカーに選ばれたのだと。

 

そして初戦の時、クィレルに狙われて、箒から落とされそうになったのだと。

 

 

 

 

私は今、クディッチ選手ではない。今後なるつもりもない。

 

事故に見せかけ殺すことを考えた時、選手ではないとなると、攻撃手段が限定される。

 

せいぜいが、ブラッジャーを操って観客席にいる私にぶつけるくらいだろう。

 

ただ、私はぶつかってもどうにもならないが、万一周囲の生徒にあたったらまずい。

 

襲われると決まっているわけではないし、守り切れない自信が無いわけではないが、不安要素は少ない方が良い。

 

というわけで、朝からずっと一人なのだが⋯⋯

 

(⋯⋯⋯⋯何もありませんねえ。ねえヴォル)

 

(なんだ)

 

(暇です)

 

(もう一回図書室に行けばいいだろう)

 

(読書以外でなにか無いですか)

 

(⋯⋯⋯チェス、オセロ、トランプ)

 

(じゃあチェスで)

 

頬杖をついて目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

精神世界でチェス盤と駒のイメージを具現化して駒を打つ。彼と私の実力は大体同じ。

 

私はシノアの時チェスなんてやったことはなかった。ヴォルもルールは知っていたが、精々二、三回ほどしかやったことはなかった。

 

昨日ハーマイオニーやウィーズリーとチェスをした。

 

ロン・ウィーズリーは強かった。

 

チェスをするロンの目は、生き生きと輝いていた。

 

私はロンと二回戦って、最後の一回で右手の主導権をヴォルに渡してやらせてみたのだが、まあ見事にぼろ負けした。

 

ヴォルはちょっと悲しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯ふふ」

 

「何を笑ってる?」

 

「いえいえ、ちょっと昨日のことを思い出しまして」

 

「ああ、あれか⋯⋯」

 

「こ~んな(´・ω・`)顔してましたよね」

 

「してない」

 

「え~してましたよ」

 

「してない」

 

「部屋の隅っこにしゃがみ込んで、周囲にカビを生やしながら⋯⋯」

 

「それだけは絶対やってない」

 

「あはは~」

 

「⋯⋯チェックメイト」

 

「あ、負けた」

 

「これで三勝二敗だな」

 

「じゃあもう一回⋯」

 

『起きろハリエット』

 

「え」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開ける。

 

相変わらず閑散とした教室。

 

だが、少し殺気を感じた。

 

 

部屋をぐるりと見渡す。殺気は外の、廊下から。

 

ゆっくり接近してきている。

 

 

「⋯⋯⋯」

 

 

腕を軽く動かして、袖から杖を出す。

 

 

バンっと教室の前のドアが開くと同時に、

 

「アバダケダブラ!」

 

「コンフリンゴ」

 

フードを深くかぶった男が死の呪文を撃ってきた。私は男の足元を爆破させ、呪文をよけながら椅子を投げる。

 

男は間一髪で避ける。椅子が壁に突き刺さった。

 

「ステューピファイ!」

 

「プロテゴ。ペトリフィカストタレス」

 

 

「インカ―セラス!」

 

「アビフォース、オグパノ」

 

 

「「クリューシオ(!)」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がああああああああああああああああああああああああ‼」

 

男が悲鳴を上げる。フードの隙間から顔を覗こうとしたが、仮面をかぶっていて見えなかった。どうやら声を変えているようで、悲鳴からは誰か分からない。

 

だが、後頭部から匂う人の肉が腐った臭いは間違いなくクィレルのものだし、そこに取り憑いた気配は間違いなくヴォルデモート。

 

 

 

 

「⋯⋯あなたは誰ですか」

 

「⋯⋯」

 

「生徒?教師?死喰い人さん?ヴォルデモート?」

 

 

「⋯⋯⋯」

 

「レジリメン⋯」

 

 

「ポッター‼大丈夫か‼?」

 

「ルーマスソレム‼」

 

「クッ」

 

 

無言でプロテゴを張ったが、攻撃は無かった。クィレルは私の目を一瞬眩ませて、すぐに全力で逃走を図った。

 

「⋯⋯⋯ありゃ、逃げられちゃいましたね」

 

今からでも追えば追いつくことはできるだろう。それくらい、鬼呪持ちとそうでない人間には身体能力の差がある。

 

だが、追う気は無かった。

 

 

今の接触で、もう分かったから。

 

 

本体は、こんなにも接近しているのに、分霊箱に全く気付いていない。

 

気付いていたら、今の自分の肉体が無い状態の時に、初撃で死の呪文は遣わない。

 

(それにしても、十年前に反射した呪文で今肉体が無くなっているのに、また同じことをするなんて⋯学習能力無いですね)

 

(⋯⋯流石にどうかと思う)

 

(あれ、怒らないんですね)

 

(⋯⋯⋯)

 

乱入者達を見る。

 

息を切らしたドラコ君と、スネイプ先生がいた。

 

 

 

「どうしたんです?二人とも。クディッチはもう終わりましたか?」

 

「⋯⋯どうしたって、そんなの僕の台詞だ!さっきまで誰と闘っていた!?」

 

「さあ?顔は結局見えませんでしたし、声も変わってたのでよく分かりませんでした」

 

「ポッター。この教室の惨状については敢えて聞かん。怪我は無いかね」

 

「はい」

 

「何故観戦席にこなかった?」

 

「クディッチにあまり興味が無いので、一人でのんびり静かに過ごそうと思いまして」

 

「⋯⋯⋯そうか。ポッター、今ので分かっただろうが、今年のホグワーツは安全とはいいがたい。なるべく一人にはなるな」

 

 

 

「⋯⋯⋯考慮します」

 

 

 

 

 

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