1981/10/31 ゴドリックの谷
「ハリエットだけは、ハリエットだけは‼お願い、助けて、許して――私はどうなっても構わないわ―――」
「どけ、どくんだ、小娘―――」
「ハリエットだけは!!!お願い――――」
ハリエット・ポッターの母、リリー・ポッターが死んだ。
その瞬間、ハリエットの体に、魂に。
リリーの命と引き換えに古い魔法――血の守りがかけられた。
それと同時に―――
さて、ここはどこでしょう。そして目の前の男は誰でしょう。
男は私を見下ろしている。手には杖が握られている。床には鮮やかな赤い髪の女性が倒れている。自分の体に何らかの呪いがかかっているのが分かった。
男からは殺気を感じる。
応戦しようと体を動かす。そこで、異変に気付いた。
「⋯⋯⋯⋯⋯」
手を見下ろす。視界に自分の手が入った。
紅葉のように可愛らしい、小さな小さな、0~1歳児の赤子の手―――
縮んだ手足、真っ平らな胸⋯⋯⋯
ペタペタと、呆然と自分の体を触りながら、鬼に話しかける。
(シーちゃん)
『なんだい』
(コ●ンになったとしても縮みすぎじゃないですかね?)
『ははは、そうだねえ』
(笑い事じゃないですよねえこれほぼ詰んでません!!?なんで!?なんで赤ちゃんになってるの!?)
『大丈夫だよ、鎌を振るうのになにも直接握る必要はないんだ。それに、さっきかけられた呪いは、どうやらとんでもなく強力な守護呪文のようだよ――これは、むしろ呪いを受けたほうがいいかもしれないね』
(はあ?)
「アバタ・ケタブラ」
男が術を使う。発動する。緑色の呪いの光が、真っ直ぐにこちらに向かってくる。
ぶっちゃけ言えばよけることはできた。慣れない赤子の体とはいえ、鬼呪を持っているのだ。無理矢理加速させればいい。まあでも、とりあえず信じてみることにした。何か意味があるのだろう。
緑の光が私の体に触れた。その瞬間。
部屋が半壊しました。
術弾が術者に向かって反射して大爆発。
崩れた屋根。その間から美しい夜空が見える。
その敵が自爆していった様子を呆然と見つめる。ふと額に痛みを感じる。少し触れてみる。手に血が付いた。傷はそれなりに深く、出血しているようだ。生暖かい血が頬を伝って滴り落ちる。切り傷ではなく、呪詛でできた傷。それが鬼呪で修復されていく。だがさほど間を置かずに、その傷を通して、“ナニカ”が体に入り込んできたのが分かった。
『⋯⋯おやおや、さっきの男がやってきたねえ』
ゆっくりと意識が遠のいた。傷は熱を持ち、酷く疼いていた。