ハリエット(シノア)の物語    作:揚げ紅葉(カスタード)

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初訓練

「訓練したい、ですか?」

 

「ああ」

 

朝食の時にドラコ君にそう言われた。

 

目玉焼きの乗ったトーストを取る。

 

「自分でも魔法の練習はやってはいるんだが⋯⋯相手が欲しくて⋯⋯」

 

「良いですよ?」

 

「本当か!」

 

「ただ⋯⋯」

 

「え?」

 

「普通に試合をします?それとも実戦に近いものにします?」

 

「何が違うんだ?」

 

「試合なら、私は禁呪を遣いません。実戦なら、死の呪文を除く全ての手段で攻撃します」

 

「⋯⋯⋯⋯」

 

ドラコ君は暫く悩んで、

 

「実戦で、頼む」

 

 

「⋯⋯分かりました」

 

ゴクンっとパンを飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

必要の部屋

 

「アグアメンティ!グレイシアス!プロテゴ!エクスペリア―ムス!オブスクーロ!ステューピファイ!」

 

「⋯⋯⋯⋯んっ」

 

強い。勝てる気がしない。

 

闇払いになったハリーと戦闘したこともあるが、比べ物にならない。

 

時折、我が君――闇の帝王に匹敵するんじゃないかと思うくらいの殺気を向けられることもあった。

 

ハリエットは、最初の位置からほとんど動いていない。

 

少し体をひねって避けるか、無言呪文で相殺したり防御壁を張って防いでいる。

 

「⋯⋯?」

 

ハリエットが、手を上げていた。

 

 

 

ひらっと、紙が舞う。

 

その紙には、今まで見たことが無い文様が書かれていて⋯⋯

 

同時に、ハリエットの殺気が爆発的に膨らんだ。

 

本能的に、不味いと思った。

 

「―――起爆」

 

「プロテゴ、マキシマ‼―――――――ガッハ⋯⋯!」

 

防ぎ、きれなかった。少し吹き飛ばされ、尻餅をつく。

 

 

 

 

 

 

すっと目の前に白い手が伸ばされる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「⋯⋯ああ」

 

ぐっと手を掴んで起き上がる。

 

「ダメージを受けた時に、攻撃を流すように飛んだりするといいですよ」

 

「⋯⋯今、なにしたんだ?」

 

「あ、これですか?」

 

ハリエットがひらひらっと縦長の紙を振る。

 

「柊家で使用されていた起爆符です。呪術です。杖を遣わない魔法みたいなものです。紙なのでこんな風に色んなところにたくさん仕込めますよ。袖とか、懐とか、ポケットとか」

 

「⋯⋯つまり君は、杖を奪われても戦闘を継続できるということか」

 

「まあそうですね」

 

「⋯⋯⋯吸血鬼とは、それで戦ってたのか?」

 

「あはは、まさか。こんなの絶対あたりませんし、貼り付けられたとしても札が起爆する時のタイムラグで避けられちゃいます」

 

「これを貼り付けられて避けられるのか!?」

 

「はい。それにこれだとダメージはほぼ与えられませんしね。ですから世界破滅後はサブ武器みたいな扱いでした」

 

「⋯⋯破滅?」

 

「⋯⋯⋯色々あって、私の世界では私が7歳のクリスマスに、大量の人間が死んだんですよ。世界の人口は10分の1になりました。同時に人間だけを襲うヨハネの四騎士や吸血鬼という化け物が地上を徘徊するようになりましてね⋯⋯まあ、人間には優しくない世界でしたね」

 

「⋯⋯⋯なに、それ」

 

「まあだからこそ人間は、人間をやめることで必死に生き残ってました。きっとこちらの世界の魔法使いが知ったら怒りを覚えるどころではない禁忌を犯しまくっていた。特に柊家は」

 

「⋯⋯死の呪文⋯⋯いや、分霊箱よりも?」

 

「あは。あんなものたった一人の人間を殺すだけじゃないですか。しかも誰でもいいんですよ?遣う本人のリスクだって相当なもののようですし。私の所は酷い人体実験してましたからねえ⋯何千、何万という人間を投入した」

 

「な⋯⋯⋯」

 

あんなもの。

 

 

分霊箱を、あんなものと、言い切るのか。

 

 

それに人体実験⋯⋯⋯人の数が、おかしいだろ。

 

 

彼女の世界の闇の魔術は、どれだけ酷かったんだ?

 

 

 

 

 

「⋯⋯凄い世界だな」

 

「⋯⋯ここは平穏ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、そんなやばい世界で生き抜くために、人間が命懸けで創り上げた呪いがあるんです」

 

「呪い?」

 

「私今、な~んにも持ってませんよね?」

 

「?ああ、そうだな」

 

「でも、この完全に丸腰の状態から、『鬼』と『武器』を具現化しちゃいま~す」

 

でてきて~、と彼女が言うと、彼女の手にブンッと小さなスティックが現れる。

 

と、思ったら、そのスティックが形を変えながらどんどん大きくなって、やがて成人男性の背丈を超しかねないほど巨大な漆黒の鎌になって、止まった。

 

彼女はそれをクルクルと廻して、

 

「私の姉が開発した呪い⋯⋯『鬼呪装備』です」

 

「⋯⋯ずっと思ってたんだが、君の筋力はどうなってるんだ」

 

「ははは」

 

「⋯⋯⋯これを見せてくれるってことは、信用されたってことでいいのかな」

 

「まあそれもありますが。あなたの訓練をしたいというのも大きいですね」

 

「僕の?」

 

「とりあえずこれ使ってください」

 

そういって彼女が僕の手に何かを握らせる。

 

「⋯⋯これは、剣?」

 

「ええ。日本刀です」

 

「なんで⋯⋯」

 

「身体強化魔法を使ってもいいんで、ちょっと受けてみてください」

 

「は、え、ちょっ⋯⋯うわあああ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜーー、はーー、ぜーー⋯⋯」

 

「⋯⋯ドラコ君、体力つけましょう」

 

「⋯⋯これ、魔法族に、何の意味が⋯⋯」

 

「接近戦ができて損はありません。体力があれば持久戦もできます。反射神経は攻撃を避けるときに役立ちます⋯⋯⋯じゃあ次は⋯⋯」

 

「え!?」

 

「え?」

 

 

 

「⋯⋯あ~、もう少し休みます?」

 

「⋯⋯い、いや、いいです⋯⋯」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(⋯⋯⋯まあ、その、なんだ⋯⋯頑張れ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――え?」

 

 

「⋯どうしました?」

 

 

「⋯⋯⋯いや、何でもない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知らないような、知っているような人の声が聞こえた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、久しぶりのマグル界(たぶん⋯⋯)
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