1991年 夏休み
「うおおおおおおハッティー‼どこだ――――‼」
「くっそ!なんで見つからないんだ‼」
「ハリエットっていつも最後まで見つからないよね⋯⋯どこに隠れているのかしら」
「辛うじて発見できてもすぐにいなくなるんだよな」
「あいつ捕まえられるやつって逆にいるのか⋯⋯?」
ダドリーと、学校の友達と一緒に大きめの公園で鬼ごっこ中です。皆さん終盤になるにつれより団結して必死に私の捕獲に動きますが今まで一度も捕まったことはないですし、鬼になった時に捕まえた人数は私が最多です。勿論魔法なんて使ってませんよ。鬼呪は持っているだけで効果があるのでノーカウントです。
「あ――ハッティーいたぞおおおお!!!」
あ、見つかった。最近私を最初に発見するのはダドリーのことが多いです。
私に付き合って毎朝5時からランニングしているからか、同世代と比べて足も速いし持久力もあります。なかなか健康的に育ってくれました。
あ、今回も逃げ切りましたよ
「そういえばもうすぐ届く時だな」
「何がですか?」
「手紙だ」
ああ、そうか。ホグワーツ魔法魔術学校の、入学許可証。
ここは私の部屋だ。ダドリーの部屋の隣にある。ヴォルやしーちゃんが実体化するので一応鍵と消音幻術をかけている。
「私の両親が魔法使いだったとはいえ育ちは一般家庭ですし、誰か説明しに来ますよね?あなたの時はアルバス・ダンブルドアでしたっけ」
「⋯⋯ああ、あのクソ爺だ」
形容しがたい表情のヴォルに、随分嫌ってるなあ、と苦笑する。
ああ、でも、遂に平穏が終わり、魔法界に足を踏み入れるのか⋯⋯ベットに腰掛けぼんやりとしながら、手に入れた情報を整理する。
学校の教職員には要注意人物が二人いる。一人は、セブルス・スネイプ。
彼は元死喰い人。ダンブルドアがかばって無罪となった男。ヴォルですら認める優れた閉心術師。かつて私の命と引き換えに母さん――リリー・ポッターの命乞いをした男。聞けば、母さんとは幼馴染だったという。基本的にマグル界出身者を“穢れた血”と呼び蛇蝎のごとく嫌い迫害する死喰い人の一員にしては意外だと思ったが、情が残っていたのだろう。
今のところ彼が真の意味でヴォルデモート、ダンブルドアどちらの味方なのかは分からない。入学後は要観察だ。
そしてもう一人―――クィレナス・クィレル。今年最も警戒すべき相手。
世界旅行中にヴォルデモートの本体と接触、イギリス魔法界に連れ帰ってきた男。
ヴォルデモートの狙いが私であること、自分が彼の分霊箱であることを考えると、接触は避けられないだろう。なにせ自分の裂けた魂が宿敵の体内にいるのだ。授業を受けるときに気付かれる可能性は高い。
他に気になる事もある。消息不明のピーター・ペティグリュー。
嘗ての父さんの親友。両親の秘密の守り人であり、そして裏切った男。
シリウス・ブラックと鉢合わせたとき周辺の民間人を巻き込む形で指一本を残し死亡したととされているが――――
彼はネズミの非登録アニメ―ガス。自分で指を切断した後、隠れて逃げることもできるだろう。彼の生死は不明だ。
「ま、波乱万丈の日々になるだろうねえ」
「⋯⋯⋯⋯他人事ですねえ」
じとっと笑う鬼を半目で睨んだ。
「大変だよ‼ハッティーにストーカーから手紙が来た‼」
「はい?」
朝食の手伝いをする私の代わりに手紙を取りに行ったダドリーが血相変えて分厚い羊皮紙の封筒を持ってきた。エメラルド色のインクで文字が書いてあるのが見える。
「ほんとだよ!一番小さい寝室 ハリエット・ポッター様って書いてるんだよ!?普通そんなこと書かないよ‼この手紙出したやつ絶対覗き魔の変態だよ‼」
「燃やしましょう灰にしましょうライターはここです」
(おい)
あれがホグワーツの手紙なのはわかります。なんですか一番小さい寝室って。そこまで書く必要ありますか。
「どれ、見せてみろ。誰からの手紙だ?」
バーノンおじさんが封を開ける。手紙を広げ、ちらりと見る。その瞬間、おじさんの顔が蒼白になった。
「ぺ、ぺ、ペチュニア‼」
おじさんがかつてなく取り乱しながらおばさんを呼ぶ。
「どうしたの?バーノン」
おばさんが訝しげに手紙を取り、最初の一行を読んだ。その途端、のどに手をやり、窒息しそうな声を上げた。いくら何でも取り乱しすぎではなかろうか。
「ハ、ハリエット!あなた、読んだ!?」
「い、いえ、まだです」
「ああ、バーノン、どうしましょう⋯⋯⋯あなた‼」
「ねえ、僕読みたいよ!ハッティーのストーカー、なんて言ってるの!?」
「⋯駄目だ。読んではいかん!二人とも部屋に戻っていなさい!」
「あの、朝ご飯はどうなるんですか?」
「後で持っていく!いいから、行くんだ‼」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
私が手紙を読むのは、まだ先になりそうです。