「⋯⋯⋯ハリー・ポッター、か?」
「はい?」
マダム・マルキンの店で制服ができるのを待っていたら、色白の綺麗な男の子に声をかけられました。ん?ハリー?
「⋯⋯⋯確かに私の家名はポッターですが⋯私はハリエットです。そもそもハリーは男性名でしょう?」
「⋯⋯⋯⋯⋯あ、ああ、そうだな⋯⋯⋯」
残念そうな顔で俯き、君は違うのか、と呟く。
「⋯⋯違う、とはなんですか?知り合いにでも似てます?」
「あー、まあ、そんなところ、かなあ⋯⋯目や色彩は同じだったから⋯⋯⋯名前を間違えて悪かった。僕はドラコ・マルフォイだ」
「マルフォイ?ルシウス・マルフォイが死喰い人だったマルフォイ家ですか?」
「⋯⋯そうだが、なんで知ってるんだ」
「聞いたので。失踪中の闇の帝王ってどんな人だと思います?」
「⋯⋯名前で呼ばないんだな」
「あ、ドラコは名前大丈夫ですか?じゃあヴォルで行きましょうか」
「何で愛称なの?」
「ヴォルデモートって長いので」
「で、ヴォルってどんな人でした?」
「⋯⋯⋯恐ろしいお方だ」
「ふむ。どんなところが?」
「⋯⋯⋯⋯⋯冷酷で、悪意に満ちて、部下のはずの死喰い人にも容赦なくて、仕えていてもいつ死ぬか分からなくて」
「どんなブラック企業ですか」
「ブラックキギョウ?」
「なんでもありません。というか、やけに実感こもってますねえ。まるでヴォルと直接会ってきたみたいに⋯⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯まさか」
「⋯⋯⋯」
そういうドラコの表情を、見る。
「⋯⋯な、なんだ」
「⋯⋯」
その顔は、嘘をついているモノだった。だがこれはどういうことだろうか。ヴォルデモートが勝手に自爆したとき、ドラコはまだ一歳くらい。会う機会などないはずだが。
「まあ、いいですけどねえ」
その言葉とともに目を逸らした。
「や~しかしヴォル、ぼろくそに批判されましたねえ。だから恐怖政治は駄目だって言ってるんですよ」
「⋯⋯⋯⋯」
「そんな顔しても、恐怖政治が長続きしないのは事実ですよ。我々柊家に関してはこの際置いといて、一般的に」
「⋯⋯⋯」
「そもそも、何で純血主義を全面に押してるんです?あなた混血でしょ」
「殺されたいか。というか、知ってるはずだろ。あの忌々しい鬼を介して記憶を見たのだから」
「マグルが⋯⋯父親や孤児院の人達と同じ人種が嫌だから?あるいはダンブルドアがマグルびいきだから?」
「⋯⋯⋯⋯」
「でも、マグル界出身者を受け入れなかったら、いずれ必ず人口問題になりますよ。ただでさえ人数少ないのに」
「⋯⋯⋯」
「ま、イギリス魔法界がどうなろうが、別にいいですけどね。興味ないですし」
「いいのかよ。というか、いい加減肩からどけ」
「嫌です」
「重い」
「十歳児が?」
「鬼のお前と一緒にするな重い。あと、邪魔だ」
「はいはいどきますよ」
「⋯⋯⋯で、なんで膝の上に移動する」
「楽だから。肩からはどきました」
「邪魔だ」
「でも今陰陽道ベースの呪いを研究してますよね?私いなくていいんですか?」
「立てばいいだろ。というか普通に椅子に座れば⋯」
「まあいいじゃないですか。私がどこにいようが」
「よくない」
「あはは~」
「⋯⋯もういい」
はあ、と男が溜め息をつく。表情には僅かに呆れと諦めが見えた。
「⋯⋯⋯ドラコ君、本体と接触したんですかね?」
「接触する理由がないだろう。遭うとしたらマルフォイ家に預けた日記じゃないか?」
「ん~、でも分霊箱の気配は一切感じなかったんですよねえ⋯⋯」
「⋯⋯⋯もしかしたら彼も、転生者なのかもねえ」
「⋯⋯四鎌童子」
「または、同じ人生をやり直してるのか。私たちが世界を超えて転生できたんだ。何があってもおかしくはない」
楽しくなりそうだねえ、と、鬼がくすくす笑った。