ぐらんぶるに彼女持ちのリア充をぶち込んだら、どうなるか考えてみた 作:はないちもんめ
「クソ!アイツら汚い手を使いやがって!」
敗北したテニサーの工藤はダンと手を壁に叩きつける。
「やれやれ。アンタにはガッカリだよ。工藤先輩」
不意に背後から聞こえる声に工藤はバッと振り返った。
「て、テメエは!?」
「あの程度のクズ力でアイツらのクズ力に勝てると思ったのが間違いだったな。考えが浅すぎなんですよ」
自身が脅していた響孝二がいたことに工藤は少し戸惑うが、立場が優位である自分が何かをされることはないだろうと思い強気に笑った。
「はっ!なら次でボコボコにしてやれば良いだけだ!丁度犬もいることだしな!」
「犬?誰のことです?」
「お前に決まってるだろ!嫌とは言わせないぜ?俺にはお前の弱みが…アレ?」
ゴソゴソと自身のバックを漁るとあるはずの写真が消えていた。
「お探しものはこれですか?」
そう言うと孝二は懐から写真を出した。そこには孝二と孝二の彼女であるかなが手を繋いで写っていた。
「て、テメエ何で!?」
「奪ったからに決まってんでしょうが。普通にアンタのベンチに入って取ったんですよ」
孝二は手にした写真を再び懐に閉まってから告げた。
「ば、馬鹿な!?俺のバッグには触らせるなと後輩どもに言ってた筈だ!」
「ああ、居ましたねぇそんなのが。今頃は倒れてるんじゃないですか?」
何を馬鹿なと工藤が言おうとすると片方の手に持っているものに気付いた。それは自身が時田達を嵌めるために仕込んでいた強烈な酒だった。
「気付きました?そうですよ。見張りのスポーツドリンクの中にこれを混ぜたんですよ」
だから取るの何て簡単でしたよと告げる孝二に工藤は冷や汗を流しながら笑う。
「あ、甘いな。俺はスマホでこの写真を撮ったんだぜ?つまり、俺のスマホの中には元々のデータが「ああ。当然それも削除しました」なにぃ!!」
自身の脅しの道具がなくなったことで工藤は膝から崩れ落ちる。くそ、これで終わりかと呟く工藤を孝二は鼻で笑った。
「終わり?何を言ってんですか?始まりですよ?」
「は?」
「まさか?ひょっとして?ここまで俺を利用しといてどの程度で済むと思ってるんですか?」
ニコリと笑って告げる孝二に工藤は本能的に後ずさる。しかし、孝二の口撃は止まらない。
「アンタのスマホには色んな女の人のアドレスがあった。しかも殆どの人と仲良くしてたみたいですね。まあ、浮気してたってことですよねえ?正義の味方の俺からしたらそれは許されないと思うんですよ」
だからと言って笑う孝二は正義の味方どころか悪魔にしか見えない。
「ま、待ってくれ!まさか、お前」
「目には目を。歯には歯を。悪には悪を。女には女を」
その言葉に工藤は顔面を蒼白にし、縋るように孝二の足元に近寄った。
「ま、待ってくれ!響!いや、響様!話し合いを!話し合いをさせてください!」
「ああ。勿論構いませんよ」
ホッと溜息を吐く工藤には邪悪に笑う孝二の姿は映らなかった。
「俺ではなく。後ろの良く知ってる彼女たちとって話ですが」
え?と言ってから工藤が孝二の後ろを見ると夜叉のように怒りを露わにしている自分の彼女たちの姿が映った。
「ねえ、工藤君?これどういうこと?」
その中の一人が工藤に見せたメールには工藤と別の彼女が仲良く写っている姿とメールの内容が細かく記載されていた。
後ろの女子全員が目の輝きを失った状態で工藤に近寄っていくのを孝二は楽しそうに見つめた。
そして
「ギャィァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
工藤の断末魔が響く様子を微笑みながら見届けてその場を去って行った。
「……」
はい。愛菜さんドン引きのご様子。
目的を達成して満足した孝二が皆の所に戻ろうとすると、思ったよりもずっと近くで皆が待っていた。
どうやら今までの一部始終を見ていたらしい。写真は見られなかったようなので孝二は心の中で盛大に安堵した。
それによりある程度自分の行動を予想していた他の人はともかく、愛菜だけは上のような反応になってしまっている。
「流石だなあ孝二」
「安定のクズ具合だ」
「クズの鑑だな」
「うっさいわ!」
その他の面々は褒めてるいるのかどうか分からない言葉を吐いている。大きなお世話だ。
「しかし少し意外ではあったな」
「ああ。連絡先の削除くらいで済ますかと思ったが、まさかメールの送信までしてるとは」
「結構手間だったんじゃない?」
「何か他に恨みでもあったのか?」
「…ないですよ、別に」
ふーんと言いながら会話が別の話題へと移る。
孝二の言葉に完全に納得はしていないが、ある程度は納得してくれたようだ。
まあ良い。それじゃ祝杯と行こうか!と完全に呑みのテンションになった他の面々はトイレに行くと言った孝二を残して先に入口の所で待ってると言って出て行った。
「…で?何で行かないんですか?梓さんは」
「んー。孝二に確認したいことがあってねぇ」
梓さん一人を除いて。
何の用だと訝っていると梓さんはガシッと孝二の肩を腕で組んだ。だから近いんですよ!良い匂いがするし!
「孝二にしてはらしくなかったよねぇ?あんな手間をしてまで念入りに懲らしめる何て」
「…まあ、たまには」
「ふーん。そっか。まあ、良いんだけどさ」
そう言うと梓さんはその場から離れて他の皆の所に戻ろうと歩き出す。しかし、そのまま孝二の方向を見ないで話を続けた。
「これは一人言なんだけど。実は私のサークルに新しい後輩が入ってきてね。可愛い後輩なのよこれが」
「…一人言なんですから、返事はしなくて良いですよね?」
「もちろん。で、その後輩は私たちのサークルに入る前にとあるテニサーに所属してたんだけど、どうやら結構酷い目に遭わされたらしいのよねぇこれが」
孝二の返事がないままに梓の独白は続いていく。
「私の別の可愛い素直じゃない後輩はその女の子と元から友達らしいから、そのテニサー達には思う所があったと思うのよ。だから…もし、そいつらに復讐できる機会があれば多分張り切って懲らしめてやろうとすると思うんだけど…孝二はどう思う?」
話終わってからニヤニヤと笑いながら顔だけ孝二の方に振り返った梓の問いかけに孝二は頭をかく。
「さあ?勘違いじゃないですか?」
「そっか。勘違いか」
梓はニヤニヤした顔のまま前に向き直り、そのまま手をひらひら振りながら続けた。
「それじゃあ、私はずっと勘違いをし続けたままにしとくわ」
梓が去った後、何とも言えない微妙な表情のまま孝二は溜息を吐いた。
「やり難い人だよ本当に。まあ、あの人なら他の人には言わんだろうから良いけどさ」
「私は聞いてたけどね」
「どっしぇい!?」
突然後ろから聞き慣れた声がしたことに驚いて、変な声をあげてから後ろに振り向くとジト目をした古手川が立っていた。
「古手川さん?一体何時から居たんです?」
「梓さんが一人言を始めた所から」
「…要するに最初からかよ」
気まずさを誤魔化すように孝二は頭をかく。その様子を見て古手川はため息を吐いた。
「梓さんだけ残ったから何かあるのかと思って聞いてたんだけど…そんな理由なら愛菜にも言ってあげれば良いのに。喜ぶよ?」
「俺に死ねと言うのか」
「いや、誰も言ってないけど」
話を変えるのを許してくれそうにない古手川の雰囲気を感じて、諦めたように孝二は話し出す。というか誠心誠意頼み込む。
「あー…アレだ。ほら、男の子の意地とか色々あってなぁ…だから愛菜には黙っていてくださいお願いします!」
お手本のように頭を下げて頼み込む孝二を見て千紗はクスッと笑った。
短い付き合いだが本当に変わった人だと思う。
普段はペラペラとあれだけ口が動くのに、必要な時にはどうやらほとんど機能しないらしい。
「そこまで言うなら言わないよ。だけど一言だけ言わせて。まあ、何時も言ってることだけど」
危なかったと安堵の息を吐いている孝二に千紗は笑いながら言う。
「響君って、たまに物凄くバカになるよね」
注意 千紗はヒロインではありません