ぐらんぶるに彼女持ちのリア充をぶち込んだら、どうなるか考えてみた 作:はないちもんめ
「此処が奴のバイト先か…」
「そのはずだ。おい、耕平。何時でも電話をかけられるようにしておけよ」
「ああ、分かっている」
「…一応聞いとくけど何処に電話する気よ?」
「「警察だが?」」
何を当たり前のことをと言いたげな二人の顔に愛菜は何も言えなくなった。
この二人は友人のことを何だと思っているのだろうか。
そんなことを愛菜が思っている最中でも伊織と耕平は周囲を警戒しながら慎重に孝二のバイト先へと向かっていく。
BGMがあれば確実にミッションインポッシブルが流れているだろう。友人のバイト先に向かっているだけなのだが…
「北原。店の中の人物を確認した。どうやら奴以外には成人男性が一人だけのようだ。恐らく店長だな」
「そうか。何か脅されてる気配はないか?」
「見た限りでは確認できない。普通に仕事をしている風に見える」
「そりゃ、そうでしょ…」
当たり前のことを確認している二人に愛菜は疲れた風にツッコミを放つ。ここに来るまでの過程で既に疲労が伺える。
可哀想なことだがこの場にツッコミ要員は愛菜一人しかいないので頑張ってもらうしかない。
「甘いぞ、ケバ子。アイツのバイト先に行くのに注意力が不足している」
「アンタらの警戒が異常なだけでしょ!!どう見てもただ薬局でバイトしてるだけじゃない!」
テキパキと動きながら接客と店頭の品揃えを確認している二人の男。どう見ても通常の接客風景だ。
「確かにな…だが、もう一つ別の可能性も視野に入れるべきだ」
「そうだぞ、ケバ子。恐らくだが、あの店長は既に…
響に洗脳されている」
「何でそうなんのよ!!」
真剣な顔でバカなことを言いまくる二人に愛菜は正常な反応を返す。
しかし正常でない二人には意味がなく、愛菜の声に疑問符を浮かべる。
「そうとしか考えられんだろう」
「ああ。あの社会不適合者を雇う人間などそれくらいしか考えられん」
「うるせぇぞ、クズども。営業妨害だ」
騒いでる二人に対して向けられるさっきまで聞いていた気がする声に三人はバッと正面を向く。
そこにはゴミを見る目で伊織達を見る孝二と店長と思われる男性がいた。
「おや、孝二君のお友達かい?」
「「「いえ、初対面です」」」
「何でそんな意味ない嘘をつくのよ!」
何でも何もこんなクズどもと友達と思われたくないからに決まっている。
そんなことを孝二は思ったが、言ったところで理解されないこと請け合いなので黙っていることにした。
なお、伊織と耕平も同意見であったことは余談である。
「まあ、良い。わざわざ良く来たな。ほらよ」
孝二はそう言うと伊織と耕平にオレンジジュースを渡したが、物凄く怪訝な顔をされた。
失礼な奴等だと思った。
「その顔は何だ」
「毒でも入ってるんじゃないだろうな?」
「良く見ろ。未開封だろ?」
「確かに。毒を入れた痕跡は見当たらないな」
「当たり前だろ?わざわざここまで来た奴等にそんなもの渡すかよ」
誠に心外である。何故、俺がそんな扱いを受けねばいけないのだろうか。
孝二の言葉ではなく未開封であることに安心した伊織と耕平はゴクゴクとオレンジジュースを飲んでいく。
「ねぇ、私の分は?」
「悪いが二本しかない。これで我慢してくれ」
「って、ただの水じゃない!」
「しょうがないだろ。ちょうど良いのが無いんだから」
「あー、いいなぁ、二人とも」
そう言って愛菜は美味しそうにオレンジジュースを飲んでいく二人に視線を向ける。
「美味いか?」
「おお、何か妙な味がするけどそれはそれで美味い」
「ああ。こう言うものだと割り切れば結構イケるな」
「そうか…なるほどな」
そう言うと孝二はクルリと後ろを向いて店長に告げる。
「店長。やっぱりあの賞味期限切れのオレンジジュースそろそろヤバいみたいです」
「そうですか…なら廃棄処分にするしかないね」
伊織と耕平は二人の話を聞いて思いっきり吹き出した。
その飛沫を孝二はさっと避ける。
「おい、店で吐き出すな。汚いぞ」
「「何つぅ物を飲ませてんだお前はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
顔中に青筋を浮かべた二人が怒鳴ってくるが素知らぬ顔で孝二は告げる。
「嘘はついてないだろ。毒は入れてない」
「おい、開き直ってるぞコイツ!」
「安心しろ、別に多少賞味期限が切れてた所で死にはしない。死んでも別に構わないがな」
「お前が死ね!二度と帰ってくるな!」
「おい、俺にそんなこと言って構わないのか?」
「当たり前だろ」
「貴様のようなクズに何を言ったところで罪悪感などカケラも湧かん」
「別にお前らが良いなら食費に困ったときに賞味期限切れの商品をこっそり回しても良かったんだけど」
「「ありがとうございます、響様!!」」
「そこは人として断りなさい!」
手のひらを返したかのように土下座して喜ぶ伊織と耕平に愛菜は人としての尊厳を持てと怒鳴っているが、このクズ二人にそんなものがあるわけがない。
「しかし、こう見てると薬局のバイトというのは中々ありだな」
「確かにな。涼しいし、そんなに動かなくても良いし快適そうだ」
そうだとすれば二人の行動は一つだった。
「「どうでしょうか店長さん。このクズよりも俺の方を雇っては?」」
「ついさっきまで響様とか言ってた口で…」
クズ二人の変わり身の早さに愛菜はドン引きしているが、この二人はこんなものである。
「有難いんだけど、孝二君は覚えが早くてね。一人で二人分の仕事ができるんだよ」
「ほう、そうですか」
「一人で二人分ですか」
その時、伊織と耕平の頭の中に雷鳴の如き閃きが起こった。
「つまり、奴を殺せば…」
「二人分の仕事が発生するわけか…」
「そんな訳ないでしょうが!とにかくその手に持ったバットを置きなさい!」
ニタリと笑いながらとんでもないことを口にし出した二人に対して愛菜は烈火の如く否定の言葉をあげる。
ニコニコ笑いながら見てたことから店長は気付いていないが、愛菜はこの二人が本気であることを気付いたが故の反応だ。
慣れって怖いね。
「そもそもアンタらに薬局のバイトなんて無理だから」
「失敬だな」
「やる前から決めつけるな」
「じゃあ、簡単なクイズから。薬はお酒と一緒に飲んで良い?悪い?」
「「良い」」
「いきなり間違ってるわよ!悪いに決まってるでしょ!」
常識問題を初っ端から間違えた二人に愛菜は頭を抱える。
こんな二人を薬局で働かせていては近辺の人に迷惑がかかること請け合いである。
しかし、とはいえ…
チラリと愛菜は働く孝二を見遣る。
自身の友達の彼氏であり、愛菜本人としても良く知る友人であるのは間違いないがその人間性に問題がないかと聞かれれば間違いなくあると答える。嫌な信頼である。
よって、伊織と耕平とは別の意味で薬局でバイトをするには問題がある人間だと言える。まあ、働きぶりに問題はないようだが。
友人としての使命感に駆り立てられた愛菜は孝二に聞こえないように店長に話しかけた。
「あの、孝二って本当にちゃんと働いていますか?」
「ああ、そうだよ。お客さんにも人気がある」
「そうですか…一つ聞いても良いですか?」
「何だい?そんな真剣な顔をして」
「今まで孝二が関わったお客さんの中で消息不明になった人はいませんか?」
「…彼女は何か勘違いをしていないかい?」
「いえ、全く」
「奴を知る者であれば当然の疑問です」
店長からすれば意味がわからない愛菜の質問に対して伊織と公平に疑問を投げかけるが、何故か真顔で肯定している。
この子達の人間関係に疑問が生じたが、まあ、何か誤解でもあるのだろうと考えた店長は思った通りの回答をした。
誤解でもないことは知らない方が幸せなのだろう。
「孝二君は働き者だよ。今だってほら」
店長はすっと孝二を指差す。そこでは孝二は薬の名前を確認しながら配列している所だった。
「薬の名前とかを覚えるのに一生懸命でねぇ。何時だって真剣だからこっちも応援したくなるよ」
「そうなんですか…」
その話を聞いて愛菜は少し己を責めた。友人を疑うとは何たることであろうか。
少し伊織と耕平の影響を受け過ぎているのかもしれない。これは気を付けるように心掛けようと決意した。
「とはいえ、最初は不安だったんだけどね」
「そうなんですか?」
「ああ、実はウチはパソコンで薬の在庫とかを管理してるんだけど…
最初の方は何故か青酸カリとか媚薬とか劇薬とかそんなことばっかり調べていてねぇ。まあ、興味があっただけなんだろうけど」
「そんなことはありません」
「それが奴の本性です」
「それと、この近辺で何か犯罪が起こったら警察を呼んでください。アイツが犯人です」
今から最新刊が楽しみです!