ぐらんぶるに彼女持ちのリア充をぶち込んだら、どうなるか考えてみた 作:はないちもんめ
孝二はあり得ない出来事に頭を抱えていた。
何故こうなるのだろう?何処で間違えてしまったのだろう?
しかし、幾ら考えても明確な解答は得られなかった。孝二には自分が間違っていないという確固たる自信と自負があった。
あの童貞軍団の喜ぶ顔が見たくないという人として当然の感情は正当化されてしかるべきものであるし、古手川からの信頼が高いのも普段の行いとして仕方がないものだった。本当に人徳というものは本人の意図せざる結果を招くものだ。
しかし、あの童貞どもは嫉妬の対象を間違えていると言わざるを得ない。あの類人猿どもと孝二はそもそも種族というカテゴリーにおいて違いがあり、比較する対象ではないのだ。奴等が比較をするとしたらパン君やコンボイが先であり、間違っても自身と比較すべきではない。
はあ、とため息を吐く。いや、考えるのは止そう。たかが学園祭に行くという性欲しかない目的のために誰かを殺そうとする常軌を逸した行動をする連中の心境など分かるはずもない。今、大切なのはこの状況をどう乗り越えるかだ。しかし、事態を打開する方法を模索するが碌な考えが出てこない。ほとんど盤面的に詰んでいるのだから当然といえば当然である。
孝二としてもこれは完全勝利は諦めざるを得ない。しかし、戦略的な勝利まで捨てるわけにはいかない。何があったとしても、かなとイチャイチャするという最終目標だけは達成してみせる。そのためにはあのクズどもを絶滅させたとしても構わなかった。発想は完全にクズどもと同列だった。
孝二は携帯が未だに圏外の状態であることを確認すると、すっと懐からある物を取り出した。それにメモを貼り付けるとそのまま目立つ場所に配置した。設置後、そのままある場所で待機し自分の想定通りの人物が現れることをじっと待った。暫くすると思い描いた人物が現れたことを確認する。孝二はニヤリと笑う。第一段階クリアだ。
「来たか。お前だとは思っていた」
「だろうな。なあ、耕平…俺と取引をしないか?」
孝二が設置した水樹カヤの写真に見事にハマった耕平は孝二が指定した場所にやって来た。騙し討ちも当然考慮したがそれでは旨味がない。殺るべきクズはまだ山のように溢れているのだ。水樹カヤへの興味が先行し、他人への興味が薄い耕平はこの状況を打開するために最適な利用相手と言えた。耕平ならば水樹カヤのライブが見れれば自分が何をしていようと興味など持たないだろう。
「ほう?見返りは何だ?」
「文化祭のチケットだ。それの権利をお前にくれてやる」
「話にならんな。お前が古手川のチケットを取る前に死ねば終わりだろう」
「誰が古手川のチケットだと言った?俺は俺のチケットをお前に渡すと言ったんだ」
ピクリと反応した耕平に証拠と言わんばかりに懐からヒラヒラと文化祭のチケットを見せびらかす。これは偽物でも何でもなく正真正銘本物のチケットだ。耕平とて信じざるを得ない話だ。
「貴様…何故そんな物があるのを先に言わない?」
「奴等が悔しがる面が拝めるんだぞ?当然だ」
「なるほど、理解した」
何をどう理解したのか意味不明だが、クズにはクズにしか伝わらない何かを持っているのだろう。
「落ち着いて考えろよ、耕平。良い取引だと思わないか?俺を殺したところで古手川のチケットだけでは全員行くのは無理だ。どの道、争奪戦は避けられない。だが俺のチケットで一緒に行ければ俺の結果がどうなろうとお前は文化祭に行けるんだぞ?」
「良い取引だ。なら、担保としてそのチケットを俺に渡せ」
「論外だ。お前、渡したらそのまま逃げる気だろ」
議論は平行線だった。協力体制を取ることを提案してはいるがこの二人はお互いのことをカケラも信じていない。お互いがクズだということを骨の髄から知っているからこそ現物という名の担保を欲していた。信頼などという何処かで聞いたようなキレイな言葉など存在しなかった。
だが、そんなことなど最初から知っていた孝二に手抜かりなどない。
「だからこそ…これだ」
「こ、これは…!?」
孝二は懐から水樹カヤの写真をスッと見せた。先程の宣材写真とは違う、プライベートな水樹カヤ写真だ。
何故、こんな物を孝二が持っているのかと言えば単に彼女の姉であり、度々会うことが多いからである。孝二にとって頭が上がらない数少ない人物の一人ではあるが写真を撮ることは比較的簡単に可能だ。利用できる時のために何時も持ち歩いていたのである。
「担保の代わりにこれを渡すと言えばどうする?」
「俺は何をすれば良いんだ親友」
「物分かりが良くて助かるよ、親友」
孝二は邪悪に笑った。ククク、やはり世の中は俺の都合の良い風に回るのだ。信頼?信用?人間関係に必要なものはそんなものではない。人間関係にとって必要なのは利用価値とそれをどう活かすかだ。それを世の中の大半の連中は理解していない。だから奴等は俺に負けるんだ。
人でなしの社会不適合者は目の前の利用対象に今後の作戦を告げた。とは言え、その利用対象も社会不適合者のことを金脈としか考えていないので大して問題はない。お互いの利用価値でのみ手を結ぶ青春の象徴たる学生とは思えない関係である。
「さて…ゲームスタートだ」
「おい、今村!アイツが見つかったってのは本当か!?」
「本当だ。だが、俺一人では逃げられる可能性があるからな…お前らに来てもらった」
耕平に案内されて着いてきたクズ共は耕平が指差すドアの前で笑いながら武器を構えた。勿論、孝二を殺すためであり彼等にそれを止める倫理観など持ち合わせていなかった。
「さあ、行くぞテメェラァァァァァァァァ!!」
先頭のクズが率先してドアを開ける。後ろのクズ共も続いてドアを開けた。そこには
「「「「乾杯ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」」」」
全裸の筋肉がいた。
クズ共はこの世で最も見たくない光景を見て異常な吐き気に襲われた。筋肉など彼等が忌避する対象であるのにそれに加えて全裸だ。最早、有害物として通報することを考慮に入れなくてはならない案件だ。
「お、お前達が孝二の言ってた参加者か?」
「え?」
筋肉の一人が理解できない言葉を発した。
「よし、孝二の知り合いならとりあえずコレだな」
別の筋肉が無理矢理手にコップを持たせて謎の飲料を入れてきた。水に見えるが本能的に水でないことを理解した。同時に本能が此処にいては危険だということを全力で訴えていた。
逃げようとするクズどもの前に立ち塞がる筋肉は彼等を容易く制圧すると、とてつもなく汚い笑顔で共に飲むことを強要してきた。避けようがなかった。
「よし、じゃあ、全員持ったな!じゃあ、もう一度改めて乾杯ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
その部屋に入ったクズ共の意識はそこで途絶えた。
「此処が今村が言ってた響の隠れ場所か?」
「そのはずだが」
別の場所に呼び込まれたクズ共の別部隊は居るはずの男がいないことに焦燥感を募らせていた。
「クソ、あのクズ何処にいきやがった!おい、お前らも早く探して…」
後方のクズの声がしないことから前方のクズは後ろを振り向くと、後方のクズが軒並み倒れている姿が見られた。
孝二の仕業かと周囲を警戒するが、そこには孝二ではない人物の声が響いた。
「あー、ごめんごめん。ボールぶつけちゃったな」
必死で孝二を探す彼等の背後から数人のテニスラケットを構えた男達が見られた。その男達は笑顔なのだが、その笑顔の裏側に強烈な殺意が感じられた。
「しかし、まだこんなに残ってたのか。おい、お前らもっとボールを持ってこい!」
リーダーと思われる褐色の男は舌打ちをしながら背後の後輩に命令を飛ばす。残ったクズ達は総じて冷や汗を浮かべる。何だ?一体何が起こっている?
「お、おい、何だアンタら!?何で急にこんなことを!?」
「何で?お前らがそんなことを知る必要はない…ただ…」
褐色の男はドス黒い笑顔を見せる。逃げるべきだとすぐに判断した。しかし、全ては遅過ぎた。褐色の男達は補充されたボールにラケットを打ち付けながら叫んだ。
「俺達の平和のために死んでくれやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
別働隊のクズ共の意識はそこで途絶えた。
「上手くいったようだな」
双眼鏡で見えた光景にほくそ笑みながら孝二は目の前の惨劇を見つめている。
「数には数だ。俺の人望を利用すれば造作もないことだ」
「しかし先輩達はともかく、あのテニサー達はどうやって協力させたんだ?」
「分かっていないな耕平。人間とは助け合う生き物なんだ。誠心誠意頼み込めば協力してくれるものさ」
「なるほど、つまり、脅したのか」
?理解不能だ。
「誰もそんなこと言ってないだろ。一生懸命頼み込んだんだよ。最後には快く土下座してお願いを聞いてくれたし」
「だから脅したんだろ?」
違う、そんな非人道的なことはしていない。
確かに先日の騒動の際に入手したメールデータの一部を偶然持っていたので彼等に返そうとしたが、それは間違いなく善意からの行動であり間違っても彼等を脅す材料に使用する気などカケラも無かった。
仮にこちら側の心からの願いを無碍にされれば傷心のあまり、そのデータをインターネットに曝露しようとしてしまったかもしれないが飽くまでもそれは仮定の話であり、現実とは関係ないフィクションだと断言できる。
だとしたら、やはり俺は脅しなどしていない。どの角度から見ても自分の正しさを証明できると思われるが耕平は俺が脅したと誤った前提を信じ切っているため証明に耳を傾けるとは思えなかったので止めにした。大人の男である。
「大方のクズ共は今ので消え去ったし…後は伊織達か」
「また同じ手を使うのか?」
「いや、奴等には通じないだろう」
猜疑心に全ての感情を振っている連中だ。少しでも疑問があればすぐにでも疑いをかけるため、安易な誘いには乗ってこない。
「では、どうする?」
「そうだな…まあ、分かりやすく正面突破で良いだろう」
「まだ5対2だぞ?」
「くくく…傍目にはそうだな」
耕平の指摘に孝二はニヤリと笑う。側から見たらそうとしか見えないだろう。だが、現実は違う。丁度良い、勝負とは始まる前の準備の段階で決まるということを教えてやろう。
「お前…完全に悪役の顔だぞ」
「知らないのか?悪は正義の隣人なんだよ」
正義面した奴ほど他人に当たりやすい上に、自らの行動が正しいと疑わない。SNSで悪意をばら撒いている連中がそれに該当するだろう。それが正義だと勘違いしているならば彼等こそ悪であり、悪に見える自らこそが正義なのだ。
意味が分からない論法だが、本人的にはそれで納得しているので話を進めよう。
「さて、行くぞ耕平。俺達の勝利は目前だ」
今回で終わらせるつもりでしたが長くなりそうなのでできませんでした…大まかな流れは決まってるので次は早めに投稿かもです(できるとは言ってない)