ぐらんぶるに彼女持ちのリア充をぶち込んだら、どうなるか考えてみた   作:はないちもんめ

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例によって新刊出たので投稿します!


17 俺のことをクズと呼ぶ奴らが増えていくなんておかしいだろ!

「警備員さん!こっちです!此処に女装をして男を誑かしてる変態がいます!」

 

「ちょ、ま、待ってください!俺は此処で命じられて働いているだけで…」

 

「犯罪者は何時だってそう言うんです。無視して摘み出してください」

 

「このクズがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

警備員さんに連行されていく伊織の姿を見て、孝二はようやく溜飲を下げることができた。

 

先程まで孝二は周囲の不当な扱いによって機嫌を大いに損ねていた。自身の正当な行為を褒めるどころか、店から追い出す口実にし、店にいる権利を奪うなど決して許される所業ではない。

 

本来であれば正当な報復としてあの店を営業停止にまで追い込む所だが、それをすればかなも悲しむ可能性がある上に、あの非道な女どもによって自身の命か社会的地位が営業停止になりかねない。

 

だからこそ、苛立ちながら周囲を散策していたのだが丁度そんな所に女装した変態の姿をかな達の出店先であるカフェに確認した。

 

放ってはおけないと感じた。

 

こうなった経緯は意味不明だが、あんな変態をかなと古手川の側に置いておいて良いはずがない。純粋な正義感から、孝二は他のクズどもと伊織の行動の一部始終を盗撮し、それを警備員さんに見せることで伊織を青女の外に追放することに成功した。

 

あのクズの追放される姿は非常に目の栄養となり、孝二の精神状態は非常に良好な物へと変化した。

 

一部女性陣からは「コイツ…!?」という目線を向けられている気がしたが、気のせいだという確信があった。何も悪い事をしていない自信が批判を受ける点など全く見受けられない。つまり、全ては自意識過剰ということだ。

 

カフェに出禁を喰らった孝二が長居すると、自身も追放される危険があるためその場を離れたがイライラも治っているため菩薩のような気持ちで学園祭を見て回ることにした。

 

「さてと…この時間まで何すっかねぇ」

 

自身の懐に収まっているライブのプレミアチケットを見ながら孝二は一人呟く。

 

将来的に自身の義姉になるであろう人物から貰ったプレミアチケットだが、始まるまでに少し時間があった。本来であれば、かなと学園祭を見て回る予定があったのだがあのカフェの繁盛具合から考えて今抜け出すのは厳しいだろう。古手川も同様だ。

 

何か良い暇つぶしは無いかと考えていると、背後から声をかけられた。

 

「ねえ、ちょっとそこのアンタ。久しぶりじゃない」

 

何なら馴れ馴れしく声をかけて来たそこそこ容姿が整った女性に孝二は怪訝な顔を浮かべる。全く見覚えなどなかった。美人局の類だろうか。

 

「何処かで会ったことがあったか?」

 

「覚えてないの?」

 

何やら思わせぶりな事を言っているが彼女は孝二の記憶にいなかった。もしかしたら何処かですれ違ったことくらいはあるかもしれないが、流石にそんな女性を一人一人覚えているわけがない。

 

「工藤君の所でよ。アンタあの場にいたでしょ」

 

「あの場?」

 

「浮気男の処刑現場よ」

 

「ああ」

 

そう言えばそんなこともあった。手当たり次第に女に手を出している女の敵に社会的制裁を加えたのだった。

自称正義の使者である孝二には当然の行動だったこともあり、それほど印象深い記憶でもなかった。

 

「あそこにいたのか。それは申し訳なかったな。興味がなかった」

 

「アンタ本当は喧嘩売ってんでしょ」

 

酷い言いがかりだった。この平和主義が動いているような人間にそんな気などあるはずがない。

 

「落ち着け。そっちは工藤先輩に騙されてたんだろ?それを教えてやったんだ。むしろ、感謝して然るべきじゃないのか?」

 

「んな訳ないでしょ。あんなのキープ4号ってところよ。本気でもないんだから怒りもしないわよ」

 

ああ、なるほど。唐突に孝二は理解した。これはつまり、そういうことだ。

 

「何だお前もクズだったのか」

 

「他人のこと言えるのアンタ」

 

大体ねぇ、とその女は続ける。

 

「私は菜摘よ。アンタにお前だなんて言われる筋合いは無いわ」

 

何という高圧的な女だ。気が弱い孝二はこういう人間が苦手だった。

 

「お前だって言ってるだろ?人の行いを注意する前に自分の行いを振り返れよ」

 

「アンタ、ブーメランって知ってる?」

 

知っているが、この場において適切な使い方だとは思えない。異性間交友にしか興味がない所為で言語知識に過不足がある可能性があった。

 

「それに此処で私にそんな言葉違いしない方が良いわよ。私のアッシー君達がたくさんいるんだから」

 

「おい、大概にしろよ」

 

孝二の正義感に静かに火が灯った。人をアッシー君扱いするなど良心が痛まないのだろうか。少なくとも、真っ当な人間であればそんなことは考えて良い筈がない。

 

「間違っている奴に注意するのは当然の義務だろ。力にビビるなんて男じゃねぇ」

 

「じゃあ、アンタの名前は?」

 

「北原伊織だ」

 

息をするように嘘をついた。個人情報を大切にする孝二にとって見ず知らずの人間に本名を告げるなどあり得ないことだった。

 

決して大勢いるアッシー君にビビった訳ではない。繰り返し言うがそんなことはあり得ない。あっさりと友を売ったクズは自己弁護を始めていた。

 

「ふーん、北原か。アンタ面白いじゃない」

 

「まあ、確かにそうだな」

 

アレだけの知能レベルの低さと目を覆うほどのクズさは確かに生物学的に見れば面白いという部類に入るだろう。興味深いという言い方の方が適切かもしれない。

 

菜摘は孝二の言い回しに違和感を覚えたが、これからライブ会場の手伝いに出向く必要があるため此処でこれ以上時間を費やすことはできなかった。

 

「?まあ、良いわ。それじゃ、私これからライブの準備に行くから」

 

「ライブ?それって水樹カヤのか?」

 

「そうよ。何?アンタもファンなの?」

 

「まあな。と言うかまだ終わってなかったのか」

 

ファンと言うと少し異なるかもしれないが、カヤさんのことが好きなのは間違っていない。

 

「何か遅れてるみたいね。と言うかアンタ暇なら手伝ってよ」

 

今度デートしてあげるからさと言って距離を詰めてくるが、孝二は即座に距離を取った。

 

やはり、美人局だったか…

 

警戒の目を向ける孝二に、菜摘は怪訝な顔をする。

 

良い匂いがするし、何か柔らかいので孝二も普段であれば嬉しいのだろうが此処では例外だ。

 

此処はかなのホームだ。何かの間違いでこの部分だけを切り取られて、かなに伝わればその日が自分の命日になる。そんな危険しかない橋を渡る勇気は孝二には無かった。

 

本来であれば無視して勝手にやらせる所なのだが、カヤさんのライブとなればそうはいかない。作業の遅れはカヤさんの迷惑になる。それは避けたかった。

 

「デートは必要ない。だがまあ、手伝うかどうかは置いておいて、俺もそっちに用事がある。手伝いならお前のアッシー君達にでも頼め。何なら丁度良いアッシー君達を紹介してやっても良い」

 

暇を持て余した力だけは有り余っているクズどもを知っている。恐らく外に追放されたままなので、交換条件といえば喜んで手伝うだろう。

 

そう思い、電話を手に取ると微妙な顔を浮かべている菜摘が映る。

 

「何だその顔は」

 

「他人のこと言えるほど立派な性格してるわけじゃないけどさぁ」

 

呆れた顔を浮かべながら菜摘は続ける。

 

「アンタって割とクズなんじゃない?」

 

最近、多くの人にこんな誤解を受けるのだが何故なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素晴らしいな。やはり、青少年が額に汗して働く姿というのは良いものだ」

 

「誰が原因でこうなったと思ってんだ、このクズがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

自分が協力したおかげでもう一度学祭に入場できたクズどもが働いている姿を見つけたので、褒め言葉を投げかけたのだが何故か全員から罵声を浴びた。意味がわからない。何故、自分のおかげで再入場できたというのに文句を言うことができるのだろうか。倫理観が狂っているとしか思えない。

 

「そもそも、お前が原因で追い出されたんだろうが!」

 

「いや、ちょっと待て。響、この女の子娘誰だ?」

 

怒り狂っている伊織を抑えて、山本が自身の隣にいる菜摘のことについて尋ねる。孝二のお陰で、ライブの準備をする必要がなくなった菜摘は自身と一緒にダラダラと学祭を廻りながら此処まで来たのだ。

 

その菜摘は響?と呟きながら俺を見てくるがとりあえず無視する。

 

「菜摘って言うらしいぞ。俺もさっき会ったばかりだ」

 

その言葉に目の前のクズどもの怒りのボルテージが限界を振り切る。

 

「貴様、俺たちが労働している中ナンパをするとは」

 

「随分と良いご身分だなぁ…!!!」

 

そうだコイツらはクズであると同時に童貞だった。俺のような成功者を妬む気持ちがあるのは当然であり、理解できるがこのままでは俺が死ぬ。

 

「待て、落ち着け。お前らが良ければこの娘が友達と一緒にご飯をしてくれるそうだ」

 

「はあ!?」

 

聞いていないという顔で俺を見てくる菜摘だが、対処法はしっかりと考えてある。

 

「何だよ、さっきお前の代わりにライブの手伝いをしてやったろ?」

 

「アンタ、カケラも働いてないじゃない」

 

協力してやったのに酷い女だ。まあ、良い。まだ別の手段がある。

 

「加えて、あのイケメンも一緒に誘うことが可能だ」

 

そう言ってチラリと先程から一生懸命働いている耕平を指差す。どうやら、ライブの準備の遅れは取り戻せたようだし、休憩がてらライブまでの時間なら食事をすることは可能だろう。

 

「私、アンタのことは最初から信頼できる奴だと思ってたわ」

 

「俺もだ。信頼感しか無いと思っていた」

 

打算しかない関係の二人が何か言っていた。どうやら、この二人にとって信頼と打算は同じらしい。日本語って難しいね。

 

菜摘が食事に前向きになってくれたお陰で、童貞共も怒りが収まりだらしない下品な顔になっている。

 

耕平も呼んだし、自分の役割は特にない。そもそも、こんな危険な場所で他の女の子と食事などしたくない。

 

孝二は隙を見て集団から脱出し、カヤさんの所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 




恐らく次回は来年の春ですかね…?
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