ぐらんぶるに彼女持ちのリア充をぶち込んだら、どうなるか考えてみた   作:はないちもんめ

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新刊出たので投稿…しかし、耕平…お前!?


19 俺が子守りをするなんておかしいだろ!

「お疲れ様でーす。あれ?伊織達はいないんですか?」

 

愛菜はPABに足を踏み入れるが、何時もいる同年代の連中の姿が見えないことに疑問を抱く。

 

「おう、愛菜。伊織達ならまだ寝てると思うぞ」

 

「全く昨日の飲み会程度でまだ寝ているとは情けない奴等だ」

 

「7次会までやって平気で起きてるトッキー達が異常だと思うけどねぇ」

 

カラカラと笑いながら言う梓に愛菜は苦笑いを浮かべる。この先輩たちと比べたら、大体の人類の体力は無いことになるだろう。

 

「まあ、孝二なら来るかもしれんが」

 

「何でですか?」

 

「用事があるとかで3次会辺りで抜けてなぁ」

 

愛菜も二次会までは参加していたのだが、どうやら孝二はその後に抜けたらしい。

 

だが今はそれよりも気になることがある。

 

「アイツの用事…?もしかして何かの犯罪…!?」

 

「突然何を言い出すんだ」

 

「何があったらそんな考えに至るんだ?」

 

何というかと言いながら愛菜は微妙な顔を浮かべる。

 

「正直、アイツが何時犯罪行為で逮捕されても不思議に思わない自信がありまして」

 

「負の方向で凄まじい信頼だな」

 

「アイツは何をやってきたんだ」

 

何をというかナニをというか、まあ、色々である。アレと幼馴染をやってきた恵子には尊敬する気持ちしかない。

まあ、完全に悪いやつではないのだが。

 

「ちーす」

 

愛菜がそんなことを考えていると噂をすれば影というが、どうやら愛菜の言う犯罪者予備軍が到着したらしい。その場にいる全員が声の主である孝二に目を向ける。その瞬間

 

「こんにちは!」

 

時が止まった。孝二がいることへの驚きではない。問題は孝二が手を繋ぐ先だ。

 

孝二の手の先にいる正体不明の少年の存在にその場にいた全員が驚愕の表情で固まる。

 

誰も何も言い出せない。孝二と孝二が連れてきた少年だけは怪訝な顔を浮かべているが、周りにはそんな余裕はない。

 

静寂を破るように愛菜は震える指を孝二に向ける。

 

「何時かはやると思ってたけど、アンタ遂に…!?」

 

「何を言ってるんだお前は」

 

驚愕の面持ちでこちらを見つめる愛菜に孝二は残念な顔を浮かべる。この状況で犯罪行為しか頭に浮かばない時点で可哀想な人生を送ってきたことの証明に他ならない。

 

「じゃあ、この子は何なのよ!?誘拐したんでしょ!?」

 

「する訳ないだろ」

 

最早、考えが理解できない。何故、子供を連れているだけで誘拐したと思うのだろうか。同じ日本に住んでいる者の発想とは思えない。

 

「コイツは太一。恵子の弟だよ」

 

「恵子ちゃんの?」

 

梓が意外といった顔を浮かべる。なお、どんな話をしたのかは知らないが、幼馴染の責任とか良くわからない理由でこのサークルに孝二が入る際に挨拶に来たことから先輩たちは恵子のことを知っている。

 

「アイツは用事があるとかでね。あいつの両親は共働きだし、俺がたまに面倒を見てるんですよ」

 

「ダウトよ!あんたが慈善活動するわけないでしょ!」

 

「慈善じゃねぇよ。これは貸しだ」

 

「恵子がアンタに貸しを作る…?」

 

こんなクズに貸しを作ればどんなことを命令されるか分からない。少なくとも、愛菜は避けたいと思う。そんなことを幼馴染の恵子が認識していないはずがないのだが…

 

「恵子ちゃんが孝二に貸しを作るとは思えないんだけどねぇ」

 

「貸しですよ。貸しのはずです…そのうち借りが貸しに…なるといいなぁ」

 

「まず恵子ちゃんへの貸しの返済が先なのか」

 

「凄まじいほどの負債が溜まってそうだな」

 

幼馴染である恵子に対する孝二の借りの量はとんでもないことになっている。まあ、恵子としては返してくれるという期待もしていないのだが偶に発生するこうした頼み事の際には重宝している。

 

そんなやり取りを理解していないであろう太一はグイグイと孝二の手を引っ張る。

 

「何だよ太一…ああ、はいはい」

 

そう言うと孝二はもう片方の手で掴んでいたビニール袋から、アイスを二つ取り出す。しかし、孝二が手洗いに行くように伝えると、はーいと答えた太一は付き添いを申し出た奈々華と一緒に手洗いに向かった。

 

その間に取り出したアイスとスプーンをテーブルに置いて、奈々華のお父さんに水を貰う許可を得てからテーブルに水を置く。

 

「随分と手慣れているな」

 

「流石は幼馴染だ」

 

「違和感が凄い…」

 

そんな孝二の姿に先輩方は感心していたのだが、愛菜だけは気持ち悪いものを見る目で見つめてくる。中身を知っている分、現実と記憶の乖離で苦しんでいた。

 

「ちょくちょく面倒見てれば嫌でも慣れますよ。てか、別にそんなこっちに注目しないでも良いですよ。場所だけは借りますが」

 

やることないんですか?とでも言いたげな孝二だが、全くもってその通りでこの後やらなければいけないことがそこそこあった。あったのだが…珍しく時田達は悩ましいといった表情を浮かべる。

 

「しかしなぁ」

 

「何か問題が?」

 

何処にも問題などはないと思うのだが、と考えながら孝二は先を促す。

 

「流石に俺たちも犯罪行為を見逃すわけには」

 

「俺を何だと思ってるんですかね」

 

真顔で検討外れのことをいう先輩には伊織達の影響が及んでいるのだろう。人のことを信じられなくなるという恐ろしい病だ。

 

「正真正銘の依頼ですよ。ほら、これ」

 

そう言って恵子とのLINEを見せるが、それでも何故か納得を得られない。この人たちは何を信じて生きているのだろうか。

 

「大丈夫です!恵子から裏は取れました。本当に孝二に弟の世話を頼んだそうです」

 

「何!?」

 

「そんなバカな!?」

 

「バカはあんたらだ」

 

愛菜の言葉に劇画調で驚く先輩に孝二はため息を吐く。少しは古手川を見習って欲しい。俺がそんな違法行為に手を染めるはずがない。

 

「しかし、あんたに子供の世話を頼むとか…恵子も思い切ってるわね」

 

「何でそうなる」

 

「アンタがそんなだからよ!」

 

「あのな。アイツは幼馴染だぞ?俺の良いところをお前以上に良く知ってるんだよ。それ故の人選だ」

 

要は分かる人は分かってくれるのだ。残念ながら、愛菜は分かってくれていない側の人間だというだけの話だ。

 

「良く知ってるのは間違いないと思うけどねぇ。あ、太一君ちょっと」

 

梓は手洗いから戻った太一に話を振った。

 

「お姉ちゃんは孝二のことを何て言ってる?」

 

「お手本にしなさいって良く言ってるー」

 

「そうだろう、そうだろう」

 

うんうんと孝二は一人で頷く。やはり、アイツは幼馴染だけのことはある。その審美眼だけは認めてやろうと思った。

 

「こういう人間になりなさいって?」

 

「ううん。こういう人にはなっちゃいけないってことを覚えておきなさいって良く言ってるー」

 

所詮、外面だけの女だったか。孝二は幼馴染のことを見限った。どうやら、奴の目は付いているだけらしい。今までの人生で何を見てきたのだろうか。

 

「素晴らしい教育方針だな」

 

「良くできた幼馴染だ」

 

しかし、先輩方は何故か恵子のことを称賛している。あの女のドス黒い正体を知らないからこその発言だろう。

 

「何もできてないでしょうよ。俺が営利誘拐なんてするわけないでしょうに」

 

「へぇ、ちなみに何で?」

 

「戦後日本の営利誘拐の成功確率が0%だからですよ」

 

「やらない理由で成功確率が出てくるのか」

 

「末恐ろしいな」

 

なお、あくまでも届出があるケースに限るので影で行われている可能性は否定しないがどちらにせよ成功確率が低いことには違いがない。

そんなことでリスクを取るなど愚か者がすることだ。

 

リスクを取るのはそれに見合うリターンがある時。それに尽きるのである。

 

「それ以前に道徳的に否定しなさいよ!」

 

「え、それ意味あるの?」

 

「このカス…」

 

遂にカス扱いされた。統計的に物事を考えることが何故否定されなければいけないのだろうか。

 

「まあ、子供の教育に良くないことは間違いないわねぇ」

 

「妹に限りなく嘘に近い報告をする伊織よりはマシでしょう」

 

あのクズは平然と嘘に近い手紙を妹に送っている。その時点で信じられないクズだと断言できる。

 

妹に嘘をつくなんて許せない行為だ。

 

「自分のことを棚に上げてよくも…」

 

「お姉ちゃんも良くおんなじこと言ってるよー」

 

愛菜が引き攣りながら何やら言っているが、今は無視する。今更一つ程度、事実無根の噂が広がったところで気にすることはない。

 

「それよりも太一、さっさと宿題しろ。やらないと俺が怒られんだよ」

 

「えー、やりたくないよー」

 

「あのな…日頃の積み重ねがそいつの人間性を決めるんだよ。誰に見られても恥ずかしくない生き方を心掛けろ」

 

「心が痛くないのか?」

 

「少しは自分を振り返ってみたらどうだ?」

 

はい、そこの先輩達うるさいよ。

 

「宿題なんて帰ったらやるよー」

 

「帰ったらやらんだろうが。さっさとやれ」

 

「自分だって勉強しないじゃん」

 

「俺は良いんだよ。頭良いから」

 

「なんて嫌なやつ…」

 

「でも、なら孝二君が教えてあげれば良いんじゃない?」

 

奈々華さんが何やら妙なことを言ってくる。ものすごく気乗りがしない内容だ。

 

「俺の子守りにそんなオプションないんですよね」

 

「オプションって何?」

 

太一が疑問符をつけて尋ねてくる。どうやら恵子の教育が不足していた影響でそんなことも知らないらしい。

 

全く嘆かわしい。こんなことも教わっていないとは。

 

「追加の報酬で本来なら頼まれていること以外のことも行うってことだ。今回の例なら太一が俺に何かしてくれれば、俺は太一の宿題を手伝っても良い」

 

「追加の報酬って例えば?」

 

「恵子の弱みを俺に打ち明けるってのはどうだ?脅しに使えそうなものなら喜んで追加オプションどころか代わりに俺が太一の宿題をやってやっても「子供に何教えてんのぁぁぁぁぉぉぉぉぉ!!!」おごっ!?」

 

六歳児を利用して幼馴染の弱みを手に入れようとしたクズの頭が愛菜にぶん殴られたことによって、話を強制的にストップされた。

 

結局、意地悪しないで教えてあげなさいと梓さんに言われた上に、奈々華さんがご褒美にお昼ごはんを作ってくれると言ってくれたので孝二は太一に勉強を教えることになるのであった。

 

 

 

 

 

 

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