ぐらんぶるに彼女持ちのリア充をぶち込んだら、どうなるか考えてみた   作:はないちもんめ

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新刊出たので投稿。耕平…さらば…


20 急に追い詰められるなんておかしいだろ

「んで?何の宿題があるんだ?」

 

「国語と算数!」

 

太一から受け取った国語と算数の教科書を見ながら今日の宿題の範囲を確認している孝二の背後で、愛菜や先輩たちも一緒に教科書を覗き込む。

 

と言うか、愛菜はともかく先輩たちは用事があったのではないのだろうか。

 

「私たちのことは気にしないで孝二は宿題を教えてやって」

 

「気にしないで欲しいなら何処かに行って欲しいんですけどねぇ」

 

まあ、良い。この先輩たちに強要した所で言うことを聞く筈がない。

 

時間の無駄を悟った孝二は宿題の方に意識を向ける。

 

「じゃあ、国語から始めるか。範囲は『はなさかじいさん』だな」

 

「わあ、懐かしい!」

 

目をキラキラさせながら懐かしい顔をして教科書を見る愛菜。だが、孝二は何の感慨も無いのか淡々とページを捲る。

 

「何よ。アンタ、懐かしくないの?」

 

「正直者が最終的に良い結末を迎えるって洗脳するための物語だろ?ありきたりだし、懐かしさもないだろ」注・個人の意見です。

 

「全ての物語の作り手に謝りなさい!」

 

机にダンッと手を着いて激怒する愛菜を無視して、孝二は太一を見る。

 

「んで?宿題は何をするんだ?」

 

「んーと。感想文を書けば良いんだって」

 

「なら、簡単だな。この話を読んでお前の思ったこと書けば良い」

 

「こーにーなら、何て書く?」

 

こーにーとは孝二のことである。

 

「採点する人の嗜好を考慮する。採点者が好きな回答が正解だ」

 

「コイツ…!?」

 

「間違ってはいないが」

 

「子供に言うことじゃないわねぇ」

 

「俺は子供だからって甘い言い方はしないんですよ」

 

「甘いとかそんな話じゃないでしょうが!」

 

そんな話でしかないと思うのだが。学校というものが学舎であるのならば、社会という伏魔殿の仕組みを理解することは必須だ。天才など一部の例外を除く全ての人類は理解しなければならない。子供だからという理由で免除される謂れはない。

 

その理論を理解してもらおうと、愛菜に考えを伝えるが何故か更に激怒させた上に正座させられた。理不尽にも程がある。

 

「もう国語は終了!アンタは算数を教えなさい!」

 

「別に構わんが」

 

何故か国語の勉強が強制的に終了になった。真実を伝えると、勉強が終わるルールでもあるのだろうか。

 

「算数の宿題は足し算と引き算か」

 

「まあ、孝二なら算数得意でしょ」

 

「一つしか答えがないから洗脳教育はできませんからね」

 

洗脳したという誤った解釈をされているが無視して、孝二は太一の前に酒瓶を置く。

 

「具体的に頭の中に数字の概念ができていれば不要だが、今はイメージできた方が理解しやすいだろう。この酒瓶は何個ある?」

 

「5本!」

 

「そうだ。更にこの中から何個か酒瓶を抜く」

 

そう言うと孝二は酒瓶を2本掴み取る。

 

「今、酒瓶は何個ある?」

 

「3本!」

 

「そうだ。それが5ー2の答えになる」

 

「流石は孝二」

 

「適材適所ですね」

 

梓と愛菜は関心したように孝二を見る。珍しく正当な評価をされているように感じた。

 

「更にこの酒瓶に5本足す。何本になる?」

 

「8本!」

 

「太一君凄い!」

 

「じゃあ、此処から3本足すと?」

 

「7本!」

 

「え?」

 

「待て。何でそうなる」

 

疑問符を浮かべる愛菜と孝二に対して、太一は無言で視線を酒瓶に向ける。…確かに7本になっている。

 

孝二はすっと側に立っている時田達に目を向ける。

 

「ちょっと先輩方」

 

時田達はさっと目を逸らす。その逸らした目の先に孝二は移動する…酒瓶を4本隠し持っていた。当然中身は空になっている。答えなど明白だった。

 

「何してんすか」

 

「時として8+3=7になることを教えたくてな」

 

「どんな時でも8+3=11なんだよ」

 

「何やってんですかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

顔を真っ赤にして怒鳴っている愛菜に先輩達は笑顔で受け流している。愛菜はいい加減、自分の常識は通じないのだと悟った方が良い。

 

ちなみに愛菜が怒っているのは算数のことだけが原因ではない。

 

「何で服着てないの?」

 

酒を飲んだ瞬間に全裸になっているからである。まさに神速。脱ぐ速さは飛天御剣流にも負けていない。悲しすぎる勝負だった。

 

「太一君、君は知らないかもしれないが」

 

「酒を飲むというのは脱ぐということなんだ」

 

「違いますけど!?」

 

「確かに。流石は先輩。宿題より教えることがありましたね」

 

「アンタも脱ぐなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

その場のノリで脱ぎ出した孝二を愛菜はぶん殴って止める。先輩達ならともかく、孝二に対して愛菜は遠慮などしない。勢いのまま吹き飛ばした。

 

「子供の前で何やってんの!?」

 

「アダムとイブだって全裸で生まれたんだってことを教えたくてな」

 

「アンタが脱ぐ必要皆無!」

 

即座に揉め出した孝二とら愛菜を止めることなどせずに先輩達は笑いながら見ていた。

 

「相変わらずだなぁ、あの2人は」

 

「おねーちゃんにも良く怒られてるよー」

 

「目に浮かぶわねぇ。それなら何で恵子ちゃんは太一君を孝二に預けてんのかしら?心配されてる?」

 

「真似はしないように言われてるけど、心配はされてないよー」

 

「何で?」

 

「孝二にーちゃんは、繋いだ手を離すようなことは絶対にしないって。そこだけは信じてるって言ってた」

 

普通のことを話していると思っているのか特に表情を変えずに喋る太一に、時田達は思わず吹き出して笑う。

 

「ははは」

 

「流石は幼馴染ねぇ」

 

「良く見ている」

 

「孝二君らしい評価ねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ…無駄に疲れたな」

 

太一を恵子の家に送り届けた帰り道に孝二はため息を吐く。

 

先輩達や愛菜のせいで子守の苦労が倍増したと言って良い。

 

さて、何か食べてから帰るかと考え始めた矢先に携帯が鳴る。伊織からの電話だ。

 

何のようだ?と思いながらも孝二は電話を取る。

 

『よう、孝二。今、暇か?』

 

「暇といえば暇だが」

 

太一を恵子の家に届けた今、特に急いでやらなければいけないことなどない。

 

『なら、丁度良い。実は、御手洗が幼馴染の女の子とヤリそうになってることが判明してな』

 

「ほう。で?死んだか?」

 

馬鹿なやつだと思った。コイツらに彼女の情報を知られては死以外の道など無い。情報管理の徹底を怠った重大なミスの結果。自業自得だ。

 

孝二の中で御手洗の名が死亡者リストに追加された。悲しみなど当然ない。

 

自分だけが奴の彼女の存在を認知していたことによるアドバンテージを失うことは痛いが、思ったことといえばそのくらい。クズが1人居なくなった程度で悲しむ感性など備えていなかった。ただの人でなしである。

 

『おいおい。御手洗は親友だぞ?そんなことするわけないだろうが』

 

「正気か…!?」

 

理解できない言葉を聞いた気がした。幻聴だろうと思った。

 

「あのクズに先を越されて黙っている気か?」

 

『黙ってる訳ないだろ。そうはならなかったんだよ』

 

「…なるほどな」

 

何があったのかは知らないが、あのクズの行為を邪魔した上でナニカがあったのだろう。このクズどもの行動など見当もつかないが。

 

しかし、だとすると疑問がある。

 

「じゃあ、これは何の電話だ?」

 

『祝勝会の誘いだよ。御手洗のことを祝ってな』

 

「悪くないな」

 

酒のつまみとしては充分すぎるネタだ。精々、楽しませてもらおうではないか。

 

『それで飲み会に孝二の部屋を使って良いか?』

 

「なぜに?」

 

別に伊織の部屋で良かろうに。そう思っての質問だったが、単に気分を変えるためにとのこと。まあ、別に孝二の部屋で飲み会をするのは初めてというわけでもなく、思い返してみても見られて困る物など置いていない。朝から放置されている朝食の皿を片付けねばならない程度だ。別段、断る理由もない。

 

「まあ、良いけども」

 

『よっしゃ。そんじゃ、向かうからな』

 

「ゆっくり歩いて酒買ってこいよ?何にもないし、片付ける時間くらいは欲しいんだよ」

 

伊織から了承の言葉を受け取ると、孝二は家にある食材から適当なツマミでもできないものか考えながら帰路に着く。

 

だが

 

孝二の家の玄関に見覚えのあり過ぎる女物の靴を見た瞬間に孝二は全身が凍りつく。

 

ある筈がないものがものがそこにあった。

 

「コウ!おかえり」

 

極め付けにヒョコっと奥から、かな子が顔を出す。何時もなら笑顔になる場面だが、今日だけはまずい。本当にまずい。

 

顔を全力で引き攣らせながら孝二は言葉を漏らす。

 

「か…かな?どうして此処に…?」

 

「ん?暫く2人で会えてなかったからサプライズに…ね。驚いた?」

 

うん、驚いたね!このままいくと、心臓が物理的に止まってしまうくらいに!

 

かなは、はにかみながら顔を赤くしている。非常に可愛らしいが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

 

冗談抜きで命の危機だ。

 

「かな!すまん!今日は無理だ!一刻も早く帰るんだ!早く!」

 

「え、ちょ、ちょっと!何よ、急に!?まさか、他の女と約束を…」

 

「神に誓って女じゃない!大学の奴等が来るんだよ!」

 

「ああ、北原君達?じゃあ、何で追い返すのよ」

 

「殺人鬼共になるからだよ!」

 

「意味分かんないんだけど!?」

 

何故、意味がわからないのだろう。これは正常な化学反応だ。理解してもらうしかない。

 

「すまんが、これは事実だ。ご飯でも何でも奢るから今日のところは」

 

その瞬間、ピンポーンと玄関のインターホンが鳴り響く。

 

地獄の扉へのファンファーレのように聞こえた。 

 

「おーい、孝二。来たぞ〜。早く開けろ〜」

 

「あれ?来たみたい…!?」

 

即座に孝二はかなの口を手で押さえる。通常であればあり得ないが、奴等の聴力は嫉妬の力で急上昇する可能性がある。かなの小声も玄関越しで聞こえるかもしれない。もう、ここは安全に会話できる空間ではなくなった。一瞬の油断で自身の首が刎ねられる断頭台だ。

 

孝二の頬に一筋の汗が流れ落ちる。

 

死にたくはない。であれば、この断頭台から逃げなくてはならない。

 

だが、何処に逃げる?唯一の出口である入り口は処刑人の童貞共が塞いでいる。完全に失敗した。例え、マンションであろうとも緊急脱出用の出口くらいは用意しておくべきだった。

 

どう考えてもマンションでそんなことが許される筈がないのだが、完全に追い詰められている孝二にそんな正論を言ったところで意味はない。

 

「おい、返事しろよ。別に多少汚くても気にしないから開けろって」

 

ドンドンと部屋のドアが叩かれる。解決策など何も浮かんでこない。かなの口を抑えている手が軽く震える。

 

ドアを見る。

 

目を丸くしているかなを見る。

 

ドアを見る。

 

目を丸くしているかなを見る。

 

ドアを見る。

 

目を丸くしているかなを見る。

 

どうする俺…!?どうすんのよ…!?

 

響孝二の命をかけた一晩の戦いが幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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