ぐらんぶるに彼女持ちのリア充をぶち込んだら、どうなるか考えてみた 作:はないちもんめ
新刊の感想ですが…伊織の墓必要ですよねぇ
何処だ…?俺は何処で間違えた…?
一つの間違った返答で命を落とす。究極のデスゲーム。
それがまさか自分の部屋で実施されるとは思わなかった。
可能であれば今すぐにリセットボタンを押して、最初からやり直したい気分だ。
だが、泣きたいことにこれは現実だ。リセットボタンはない。
ポタリ…と汗が孝二の頬から床に落ちる。自分の腕の中にいる、かなは不思議そうに首を傾げる。
知らないことは幸せだ。何も知らなければ自分もそんな顔を浮かべていられるだろう。
しかし、ここはもう戦場なのだ。立ち向かうべきだ。この現実に正面から。
一案を思いついた孝二は真剣な顔でかな子を見つめる。
「かな。三階から飛び降りることはできるか?」
「できるわけないでしょ」
即答だった。今後は身体強化をお願いした方が良いかもしれない。このような事案が再発しない保証はない。
「大体ね。黙ってることがおかしいのよ」
かなの存在を完全に隠す方法について思案している孝二の隙をついて、立ち上がったかなは呆れながらドアへと向かう。
「待て、かな!早まるな!死人が出るぞ!」
「友達に彼女ができて殺されるわけないでしょ?こういうのは、意外と打ち明けてみたら大したことないんだから」
そう言うと、かな子はドアノブに手をかけようとするがその前にドアの外から声が響く。
「いやあ、しかし、意外だったよなぁ。こんな展開になるとは」
「ああ、まだ御手洗が生きてるんだからな」
ドア越しから聞こえるその声にかな子の手が止まる。
「俺は何処に埋めるかまで考えてたぜ」
「あそこで彼女にキレられなかったら、切り刻んで魚の餌だったよなぁ」
「おいおい。酷いなお前ら」
ははははと楽しそうに笑う外の声に反比例するかのように、部屋の中は静かさに満ちていく。
くるりとかな子は振り返ると、顔を引き攣らせながら孝二に尋ねる。
「あの…私は何処に隠れれば良いかな」
孝二は無言でクローゼットを指差す。理解してくれて何よりである。
そこからの孝二の動きは素早かった。
かな子にクローゼットの中に隠れてもらうと、かな子の靴やバックなどの私物も同時に隠す。
残り香をを残さないように自分の香水をあらゆる所に振りかけ、とどめとばかりに香水を全て玄関のカーペットにぶち撒けた。
これで香りは問題ない。万が一を考えて、孝二は自分の部屋の物には最大の注意を払っているためか彼女の存在がそこから漏れることはない。
そのうえ、孝二は意図的に恵子やきっこの写真を意図的に置いている。
木を隠すなら森の中。事実、友人関係しかない2人の私物を置いておくことで仮にかな子の私物があっても不審には思われないし、いざとなれば梓さんという切り札もある。何があっても、あの人の私物だといえば伊織も耕平も疑わまい。
思考は完全に犯罪者のそれである。
「おー、待たせたな。入れよ」
「随分と時間がかかったなって…くさ!」
「おい、香水臭いぞ!」
「だから時間がかかったんだよ。香水を落としちまってな」
「何やってんだよ」
やれやれと笑いながら入ってくる伊織達を尻目に山本はクンクンと鼻を鳴らす。
「どうしたんだ?」
「いや、香水の中に女の子の匂いがするような…?」
(この童貞どんな嗅覚してやがる!?)
孝二は戦慄する。
まさか、この香水の激臭の中、この場にいたかな子の残り香を嗅ぎ分けられるとは思わなかった。犬だって簡単に嗅ぎ分けられないだろう。
どれだけ女性に飢えた人生を過ごしてきたのだろうか。
目の前の終身名誉童貞が確定しているクズの嗅覚に冷や汗をかくが、平然を装って孝二は訂正を入れる。
「女性も使う香水だからだろ。女性に接してなさ過ぎて女性の匂いもわからなくなったか?」
「馬鹿野郎!舐めんな!定期的に接してるわ!」
「母親とかだろ」
孝二の言葉に伊織達も便乗し、全員が山本を貶す流れに移行したおかげで何とか話しを切り替えられたが問題はこれからだ。
香水の匂いも永続的ではない。時間が経てば薄れてしまうし、それ以前の問題としてかな子の尿意などが限界を迎えてしまえばその時点でゲームオーバーだ。孝二の死が確定する。
孝二が死を逃れるには以下の条件のいずれかを満たす必要がある。
①飲み会を終わらせる
②伊織達を家から追い出す
③かな子を家から脱出させる
①は無理だ。先輩達ほどではないとしてもこいつらの飲み会が簡単に終わるとは思えない。夜中までは確実に続くだろう。
だとすると取り得る選択肢は②か③だ。
②は無理とは言わないが難しい。家での飲み会を一旦は承諾してしまっている。追い出す理由が思いつかない。
③は一見すると、1番可能性が高いのだが…
孝二は鏡越しにかな子が隠れるクローゼットを視認する。問題は俺たちの飲み会のスペースと、クローゼットが同じ部屋にあるということだ。
男子学生の一人暮らしである。碌なスペースが無いため、かな子の隠れ場所はクローゼットしかなかった。
風呂は選択肢にはあったが、生憎とトイレと一体型だ。伊織達がトイレに行った段階でバレる。不可能だ。
孝二はツマミを取りに行くと伝えて、伊織達の視界から消えた瞬間、恵子にLINEをする。
かな子がバレずに外に出るには第三者の協力が不可欠だ。
『助けてくれ』
『笑』
情緒が死んでいるのだろうか。幼馴染からのSOSの何処にも笑う要素など無い。
『童貞共に囲まれている。至急、救援求む』
『今から太一をお風呂に入れるところだから無理』
もうコイツは手遅れだと思った。
幼馴染の死よりも弟の風呂を優先する情緒を持つ女を説得する手段などない。
孝二は恵子を諦めて、きっこに連絡をする。
『助けてくれ』
『見返りは?』
ふざけるんじゃないと思った。
友達の救援要請への返信が見返りの要求など、マトモな精神の持ち主では無い。
友達を助けることは人として当たり前の行為だ。
そう信じた孝二はその旨を返信する。しかし、既読はつくが返信がない。
既読スルーというやつだ。
孝二は戦慄する。
この女は本気だ。見返りがあるとわかるまでは返信するつもりがない。
『おーけー、わかった。条件を飲もうじゃないか』
『じゃあ、一つだけなんでも言うことを聞くってことで良い?』
この女…!?
孝二はスマホを強く握りしめる。
人の弱みに漬け込んで条件を飲ませるなど、やり方が完全に反社のそれだ。
弱みをついて人を脅すなど考えたこともない孝二はやり方の汚さに憤りを覚える。
しかし、現段階では衝突を避けるべきだ。目の前にいる殺人鬼どもに加えて悪辣な女まで敵に回すべきではない。
孝二が了承の意を伝えると、準備するから暫くは何とかしてと返信があった。
それを見届けた孝二はツマミを用意すると、伊織達の所へと舞い戻る。
あの悪辣な女はやると言えばやる女だ。そこには一定の信頼をしても良かった。
残る問題は、どのようにして時間を稼ぐか…である。
時間を稼ぐだけならば、簡単な方法があった。
「おう、遅かったな」
「待ちくたびれたぜ」
「悪い。ちょっと時間がかかってな」
そう言うと、孝二は今日の晩飯にと準備していたものを伊織達の前に広げる。
女性に飢えてるこの童貞共の性欲を抑えることなど不可能だが、食欲も人並みには存在する。食に集中すれば、かな子の気配に気づく可能性が減ると考えたからだ。
晩飯がツマミとして相応しいかと問われれば疑問だが、少し味は濃いめにしているし、何よりもこのクズどもにそんな繊細な舌などない。
実際、何も気にせずに怒涛の勢いで口の中に放り投げている。コイツらに人間用の飯を渡す必要など無いのかもしれない。
バカ舌と孝二に評されたことなど知らない伊織は美味そうに酒を飲みながら部屋を見渡す。
「しかし、割と殺風景な部屋だな。アニメグッズがちらほら置いてるくらいか」
「ああ。もっと、ヤバいものが置いてあるかと思ったが」
「必要ないもんは買わない主義なんだよ」
ミニマリストとは言わないが、気になったものを次々と買うようなことはしない。
アニメグッズはカヤさんから貰ったものを大切に飾っている。
「拷問器具とかは何処に置いてるんだ?」
「まず、何で拷問器具が此処に置いてあると思ったんだ?」
前提が狂っている質問を受けて孝二は真顔で答える。一般人の家にそんなものあるわけが無い。
「だって、響だろ?」
「無いわけないだろう」
「無ぇよ。邪魔だろ、そんなもん」
「処刑する時困るだろ」
「その時、その場にある物で十分だろ」
水。土。電子レンジ。車。魚。薬。冷凍庫。処刑の道具など日常に溢れている。敢えて証拠になり得る物証を手元に持っておく必要がない。
「それな!実際、電子レンジはありだよな」
「文字通り料理するって気分にもなるしな」
ドッと笑う一同。それなぁ!と意気投合する一団をかな子はクローゼットの中からドン引きして見つめていた。
常人には理解も笑いもできない光景がそこにはあった。
「まあ、殺風景な部屋と言っても」
野島は孝二が意図的に置いていたきっこと写っている写真を手に取る。
「こういう写真があるのは気に食わんがなぁ?」
「どういうことだい?響くん?」
「弁明を聞こうか?」
一瞬で殺意に満ちた顔になる童貞共に孝二の顔は引き攣る。童貞が予想通りの罠に引っかかっただけである。何も気にする必要などないのだが、殺気の凄まじさが予想外だった。憎しみとはここまで人を強くするものなのか。
「落ち着けバカども。ただの友達だよ」
「女友達と2人で写真を撮るか?俺は撮ったことないがなぁ!」
「お前らだからだよ!そもそも2人じゃねえ」
そう言うと孝二は写真の少し離れているところにいる恵子を指差す。
「コイツも一緒に行った!コイツは幼馴染で、断じてそんな関係じゃない!ただの腐れ縁だよ!」
瞬間、孝二の目の前にナイフが通過する。壁に突き刺さったナイフを見てから投擲したであろう耕平に目を向けるが、この場の誰よりも怒り狂っていた。
「クサレエンの…可愛い女の子と…オサナナジミ…!だとぉ!キサマァァァァァァァァ!!!!」
「何処にキレてんだ、このクソオタクが!!幼馴染ってのはゲームみたいに良いものじゃねぇよ!」
飛びかかってきた耕平を抑えながら倒れ込むと、取っ組み合いになるが他のクズ共はそれで溜飲が多少下がったのか落ち着いた顔で酒を飲み始める。
「まあ、逆に言えばこんだけ女子と知り合いなのに誰ともそんな関係にならないってことだよなぁ」
「こんなクズだからな。女の子の方も選ぶ権利はあるってもんだ」
「学校でも色んな女子に話しかけてる癖になぁ」
「ば!」
誤解しか生まない発言に耕平と取っ組み合いになりながらも慌てて孝二が訂正をしようとすると
「ひ」
それより前に、少し開いているクローゼットの中の暗闇に赤く輝く一対の瞳と眼が合ってしまう。
その瞳がどういうこと?と訴えかけてくる。言葉などないのに分かってしまう。
背中どころか全身に冷や汗をかく。一瞬で今まで飲んだ水分が身体中から溶け出した。
圧倒的な殺気に声すら出せなくなった。
童貞共に殺される前に彼女に殺されるんじゃないか?
そんなことを孝二は思ったとか。
長くなったので一旦区切ります!
キリが悪いので、次話は早めに投稿するかもです(なお、約束はできません)