ぐらんぶるに彼女持ちのリア充をぶち込んだら、どうなるか考えてみた 作:はないちもんめ
状況を整理しよう。
生命の危機が刻一刻と近づいている孝二は改めて現状を見つめ直した。
考えるのだ。愛する彼女と合コンで遭遇したという、この悲劇的状況を打開するための策を考えるのだ。
しかし、幾ら考えても自分一人で何とかできるとは思えない。何故なら、自分一人で身の潔白を論じた所で聞き入れてくれるはずがないからだ。
そうなると誰かの援護は、この状況を打開するための最低条件。だが、その条件をクリアするためには、超えなければならない壁がある。誰が俺を助けてくれるのかを見定めなければならないということだ。
チラリとこの場にいる人達を見る。とりあえず、かなは除くとして…
童貞共…論外
愛菜…裏切ったばかり。制裁は後程考えよう
きっこ…どう考えてもこの事態を楽しんでいるので、味方になってくれるか微妙。てか無理。録な選択肢がいねぇ。
ふっ、何だ。選択は最初から決まってるじゃないか。
孝二は勝ち誇ったかのような笑みを浮かべて、恵子を見つめる。お前しかいないよ、マイ幼馴染。俺の味方はお前だけだよマイ幼馴染。
そんな孝二の視線に気付いたのか、恵子は孝二の方を見る。視線が交差する。孝二は黙って頷く。
伝わらないはずがなかった。この状況で言葉は要らない。恵子とは数多くの死線を共に乗り越えてきたのだ。彼女ではないとしても家族の次くらいに長い時間を過ごしてきたのだ。
その孝二の想いが伝わったのか恵子が喋り始める。
「でもさ、かな子。もしかしたらその合コンに来た彼氏にも何か言い分はあるかもしれないよ?」
「何かって何が?」
ムスッとした雰囲気で答えるかなが見えていないかのように平然と恵子は続ける。
「彼氏の方にも何か理由があったかもしれないってことよ。何があったかは知らないけど、話してみなければ分からないんじゃない?」
お前は天使だよ、恵子!!!
そうだよ、その通りだよ!彼氏にも言い分はあるんだよ!来たくてここに来たんじゃないんだよ!
「えー、そうかー?」
「下心があったに決まってるよなぁ?」
「ああ、勿論だとも」
「俺なら何があっても、彼女がいるのに合コンなんて行かないぜ」
てめえらは、黙ってろ童貞軍団が!男と女の関係に入ってくんじゃねぇ!
孝二は心中で考え得る限りの罵詈雑言をぶつけた。
そんな男共の反応を否定するかのように恵子は口を開く。
「うふふ。ダメよ、彼氏を信じないと。確かに私も彼女持ちの幼馴染と一緒にお風呂に入ったことがあるけど抱きつくくらいしかしてこなかったから」
幼稚園の時の話をしてんじゃねぇぞ、幼馴染ぃ!!!
突然の幼馴染の裏切りに、孝二は心の中で絶叫した。
てめえも最終的には面白がってんのかよ!幼馴染で遊んでんじゃねぇよ!遊びには、ルールがあるんだよ!洒落になってねえんだよ!
もう見てらんないよ、うちの彼女さん虚化してるよ!隣の愛菜がチワワみたいに震えてるよ!
「何処のクソヤロウだ!」
「何て、うらやま、けしからん!」
「既に自分のものがあるのに人のものに手を出すとは!」
「幼馴染と風呂だとぅ!?そんな、テンプレを叶える男がいたとは…」
お前らは黙ってろ!
孝二は殺意の籠った目で男共を見る。そんなことをしても意味は全くないのだが、今の孝二にはそれしかできない。
お前らの相手をしてる余裕はないんだよ!味方がいないこの状況で勇者は魔王を説得しなきゃいけないんだよ!
しかし皆が思い思いのことを騒ぐ大混乱の中、きっこが口を開く。
「んー、でも、私はなんとなーく、その彼氏のことを信じても良いと思うけどなー。抱きつくくらいで済ませたとかむしろ凄くない?」
その予想外の内容に助けられたはずの孝二は一瞬呆然とする。
ま、まさか、こいつが実は俺のパーティーだったのか!?そうか、こいつは物語の終盤に味方になるパターンの奴だったのか!
きっこ、お前って奴は…俺は信じてたよ!お前だけは俺の味方だって!良く考えたら色々と波長合ってたもんな。付き合いは、恵子よりは劣るけど長ければ良いってほどじゃないもんな。
「えー、そう?」
「そうだって。私も彼女持ちの彼氏と彼女と隠れてデートしたことあるけど、その時も手を握ったくらいだったもん。そうそう、晩御飯も奢ってくれたけど美味しかったなー」
てめえを信じた俺が馬鹿だったよ、きっこ!!
というか、何て絶妙な嘘と真実の中間のことを言うんだよ、こいつ!
いや、確かに二人で一緒に出掛けたことあるけど、それ競馬場じゃん!しかも偶然競馬場の中で会っただけじゃん!かなに黙ってたのも競馬に行ったら怒られるからってだけじゃん!手を握ったのも大一番の勝負で盛り上がってたからじゃん!晩飯奢ったのも俺が大勝ちしたから、負けたお前に気を使っただけだろうがーー!!!!
勇者のパーティーに加わる所か、戦場を散々荒らして帰っていきやがったあのテロリスト…
「へぇ、そうなんだ…私が彼女ならじっくり話を聞きたいなぁ」
もう彼女を直視できないよ!霊圧だけでビビっちゃってるよ!愛菜に至っては霊圧に当てられて倒れちゃったよ!
「あら、愛菜大丈夫?」
「きっと、飲みすぎたんじゃない?こういう場に慣れてないし」
お前らのせいだよ!そうツッコミたいのを孝二は必死に堪えた。
「じゃあ、愛菜倒れちゃったし、この場で解散にする?愛菜は私が運んどくわ」
「は?」
おい、このテロリスト変なこと言ったぞ。
「そうね、流石にこの状態で放っとくわけにもいかないし」
「いやいや、待って!?」
幼馴染!お前まで何言ってるの!?
「そうだな。そうするか」
「紳士としては女の子がその状態なのを放っておけまい」
「北原。お前おぶってやったらどうだ?」
「そうだな、気を失ってるみたいだし、女の子が持つのはキツいだろ」
お前らまでどうした童貞共!
お前ら一人倒れたくらいでそんなこと言う奴らじゃないだろ!むしろ、倒れたら倒れた奴らを肴に一杯やるのがお前らだろ!と言うか、この状態で俺に何をしろと!
こ、こうなったらさりげなーく俺もこいつらと一緒に帰る「ねえ、響君?」ことができるわけないですよねぇ!?
ギギギと音がしそうなくらいにぎこちなく、かなの方を向く。するとかなは、平然と告げた。
「私も酔っちゃったから帰り一緒に帰ろ」
…俺は帰り道に殺されるのだろうか。
孝二は首を振る。
いやいや、俺とかなは初対面の設定のはず!ならば
バッと山本の方を向く。
「山本!一緒にこっちから帰ろうぜ」
「いや、俺帰りはそっちじゃねーし」
こ、この野郎…かなが化粧モード(モンスター)だから全くかなに興味がねぇ…
「野島!」
「俺も反対方面だ」
「伊織!耕平!」
「吉原を運ばなきゃいかんだろうが」
「俺はこいつが送り狼にならんか見張らねば」
「私たちは愛菜を部屋に運ばなきゃだしね」
「流石に男の子に部屋まで運ばせる訳にはいかないからね」
え、ええ…ちょっと。
「じゃあ、待たな、孝二!」
「明日な!」
「ありがとう、今日は楽しかったよ響君」
「い、いやちょっと待って」
俺の制止にも関わらず皆は出ていった。
………
そして誰もいなくなった(孝二とかな以外)
直ぐに孝二は一縷の望みをかけて、かなに向けて全力の土下座をした。
「本当にごめんなさい!いや、今日のやつは誤解と言うか何と言うか色々とありましてですねぇ、しかし、決してかな様がお怒りになりるようなことは決して無いと神に誓います!」
孝二の命をかけた謝罪を聞いたかなは、無言である。
孝二からしてみれば無限に近い時が流れた。そして
「はあ。もう、良いわ」
奇跡の無罪の判決が出た。
「え!?良いの!?」
泣きそうな顔を上げて孝二は告げる。
「許さない方が良かった?」
「滅相もありません!」
再びため息をはく、かな。
「まあ、私もコウがいるのに合コン来ちゃったしね。それなのに、私だけコウを怒るなんてできないでしょ。それに恵子のこともね。二人が幼馴染なのは知ってるしね。あれは子供の時の話でしょ?」
「かな…」
涙が出そうになる。やはり、彼女は自分のことを分かってくれていたのだ。
「でも、あれ?じゃあ、何で怒ってたんだ?」
その質問にジト目になる、かな。
「分かってても、彼氏が合コンに来て機嫌が良い彼女がいると思う?」
「ですよねー」
至極もっともな答えを返される。
しかし、ようやく安心ができた。さて、じゃあ、仲良く帰ろうかと言おうとすると、かなに髪の毛を捕まれて首を上げさせられる。髪に隠れてかなの表情は見えない。
「いてて!何、何!?」
「でもね、1つだけ分からないことがあるのよ」
「はい?何でせうか?」
「きっこのデートの話は何?二人が会ったのは私と同時だったと思うんだけど?」
しまった、まだ地雷が一つ残っていた!孝二は必死に言い訳を考える。しかし微妙に真実な分嘘とも言えない。
「い、いやいや、あれはな」
「ふーん、デートに行ったのは本当なのね」
「ち、違う!あれはそんなんじゃなくて」
「ふーん、出掛けたことは否定しないんだ?」
「かな、落ち着こう!一回俺の話を聞いて!」
かなは、喋りながらも俺の髪を掴んだまま引きずって店の外に引きずり出す。
おかしいだろ、止めろよ店の店員と客!事件だぞ、これ!
「言い訳なら後でたっぷり聞いてあげるわよ、とりあえず…天誅!」
「ウギャーーーー!!!」
外に出ていきなり、かなの右ストレートを顔面に喰らい吹き飛ぶ孝二。
一晩中その周辺では男の悲鳴が止むことはなかった。
とりあえず完結です。
本来ならこれで完結のつもりで始めたSSだったんですけど、予想以上に感想と評価いただいたのでもしかしたら続き書くかもです。
ただまあ、作者的にはこのまま主人公死亡で終わらすのも良いかなーと思ってます笑