ぐらんぶるに彼女持ちのリア充をぶち込んだら、どうなるか考えてみた   作:はないちもんめ

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これで再び一区切り。次の更新は未定です。


6 これが日常なんておかしいだろ!

「さっきも思ったけど……響君一体何があったの?」

 

「何があったんだろうな。おい、そこにいるケバコ。何でだと思う?」

 

「‥ごめんなさい」

 

愛菜を連れてやって来た古手川が不思議そうに俺の怪我の様子を見る。

 

愛菜は俺の言葉に罪悪感を感じたのか、そっぽを向いてボソッと謝る。

 

奈々華さん?古手川が来るのを気配で感じて、速攻で離れたよ。お陰で助かったけどね。

 

そんなことを知る訳もない古手川は、無言で先程奈々華さんが武器として使用した救急箱を広げて何やらしようとしている。

 

何してんの、この子。

 

「古手川、何しようとしてんの?」

 

「何って‥治療だよ」

 

古手川は、首を傾げて、何を当たり前のことを聞いているんだろうという風な顔をする。

 

いや、それは知ってるんだけどね。

 

「いや、それは分かるが、お前怪我してんの?そんな風には見えないけど」

 

「私じゃないよ。響君の治療に決まってるでしょ。そんなに、ボロボロなんだし。ほら、腕出して」

 

そんなことを言いながら近づいてくる古手川の整った顔と優しさに思わず見惚れてしまう。

 

しかし、隠された古手川の狙いに気が付き、光速で離れる。何て恐ろしい奴だ‥こんな手段で来るとは‥流石は伊織の従姉妹だぜ。

 

「え、何で離れたの響君?」

 

疑問符を浮かべながら、顔を傾げる古手川。とても可愛い。だが、落ち着け俺!静まれ俺の煩悩!これは孔明の罠だ!

 

「止めろ!古手川!」

 

「何で?そんなボロボロなのに」

 

「お前の魂胆は分かってる……お前は……俺を惚れさせて殺すつもりなんだろう!」

 

「響君って、たまに物凄くバカになるよね」

 

古手川は呆れた眼で見てくるが、俺からしたら冗談ではない。円滑な関係を保ってきたと思っていたのに……数少ない仲間だと思っていたのに。こんな卑劣な罠を仕掛けてくるなんて。

 

古手川の作戦は恐らくこうだ。

まず、第一に‥

① 俺を古手川に惚れさせる

② 奈々華さんに報告する

③ 俺死亡

 

いや、もしくは‥

① 俺を古手川に惚れさせる

② かなに何とかその事実を伝える

③ 俺死亡

 

何ということだ、同時に二つの殺しの手段を考えるなんて‥

 

しかも、この手段を用いれば古手川は自分の手を汚さずに俺を殺すことができることになる。

 

古手川の恐ろしさを垣間見た気がした‥自分の美貌を活かして、こんな手段を考えてくるとは。

 

古手川の後ろで奈々華さんが鬼のような殺気を放っているにも関わらず、それを敢えて気付いていないようにしているのがその証拠だ。甘いな、古手川、そんなハニートラップにはかからないぜ!

 

しかし、だとすると古手川は俺が彼女持ちだということに気付いていることになるが‥一体どこから漏れた?

 

愛菜か?梓さんか?

 

いや、決めつけるのは早い。判断は、時期尚早だ。

 

もしかしたら、梓さんのように匂いで気が付いたのかもしれん。いや、もしくは疑っていて先程の行為は、俺の反応を見るために試したという可能性も‥

 

「ねぇ、梓さん、愛菜。響君急にブツブツ独り言を言い出したけど大丈夫かな?」

 

「放っておいて良いよ、ちーちゃん」

 

「完全に平常運転だから、放っとけば大丈夫だよ。‥本当に気持ち悪いくらいに平常運転だから。あいつ、このサークルでも変わらないんだね」

 

「あれ?愛菜は響君と前から知り合いだったの?」

 

「うん、まあ、色々あってね」

 

「てことは、愛菜は孝二のアレを知ってるんだ?」

 

「あ、はい。ってことは、梓さんも?」

 

「まあねぇ。本人は隠し通す気だったみたいだけど、孝二の分際で私に隠し事なんて100年早いよ」

 

「アレってなんですか?」

 

「それは本人から聞いてみて」

 

女性陣は和やかに話しているが、そんなことはどうでも良い。下手をすれば俺の命に関わる問題だ。

 

とりあえず、目下のところ俺の命を狙う一番手は奈々華さんだ。だがべつに奈々華さんは、俺のことを憎んで殺したい訳ではない。古手川のことを愛するが故の行動だ。

 

であれば、俺以上に古手川のことを狙う人間がいれば奈々華さんの注意はそちらにいくはずだ。ふう、やれやれ。俺は、あまり、こういう誰かを売るような行動は好きじゃないんだがな。

 

「奈々華さん」

 

「何かな?」

 

俺は、すすっと奈々華さんの側による。古手川も見ているので、今殺されることはないはずだ。

 

「古手川のことを心配する奈々華さんの気持ちは分かります。古手川は誰にでも優しいですからね」

 

「そうなのよ、本当に千紗ちゃんは優しいから心配で、心配で」

 

「だからこそ、俺は奈々華さんに古手川のことを狙う狼の存在を教えなくてはなりません」

 

「え?そんな人いるの?」

 

おう、早速殺気が出ていらっしゃる。さあ、告げましょう。その罪深い彼氏の名を。存分に殺してあげてください。

 

「そいつは北原伊織と言って、古手川の彼氏を名乗り「おう、孝二口がお留守だぜ!」どぇふごふ!?」

 

だが、言い終わる前に伊織が俺の口に酒瓶を放り込んできおった。ちっ、勘の良い野郎だ。

 

「あれ、伊織君?今、孝二君の口から伊織君の名前が出なかった」

 

「嫌だなぁ、奈々華さん!そんなことある訳ないじゃないですか!空耳ですよ、空耳!そんなことある訳ないじゃないですか!」

 

「ふふふ、それもそうね」

 

「いや、空耳なんかじゃ「おおっと、まだ足りないみたいだなぁ!」ごっふ!?」

 

反論しようとすると、再び口に酒瓶を放り込んでくる伊織。邪魔すんじゃねぇよ。

 

「すまんが、伊織。俺が助かるためなんだ。頼む、死んでくれ」

 

「何をあっさり親友を売ろうとしているんだぁ、孝二君!!??」

 

「伊織。俺は俺が助かるためならお前が死んでも構わない」

 

「ふざけんな、お前が死ね!」

 

「お前がもっと死ね、童貞野郎!」

 

「お前も同じだろうが!」

 

「お前と一緒にするな、生涯童貞がぁ!」

 

遂に取っ組み合いを始めた俺たちを千紗は呆れながら見ていた。

 

「また、馬鹿やってる‥」

 

「相変わらず低脳な奴等だ」

 

やれやれと言いながら、別のところで馬鹿騒ぎをしていた耕平が千紗と愛菜の所にやってきた。

 

「耕平。あんた見てないで止めなさいよ」

 

「面倒だが‥静かな酒を楽しむためにはしょうがないな」

 

そう言うと、耕平はすすっと笑いながら騒ぎを見ていた奈々華さんの側による。

 

「うるさい奴等ですね、奈々華さん」

 

「うふふ。本当ね」

 

「知能指数が低い奴等では話になりませんね。しょうがないので、俺が真実を伝えます。実は、あいつら二人とも古手川を狙う狼で「「おおっとすまん、耕平くぅん!身体全体が滑ったぁ!!」」どぇるふふ!」

 

隠れてとんでもない冤罪を擦りつけようとしてきた耕平に俺と伊織が同時に捨て身タックルを実行した。効果はばつぐんだ。

 

「何をするか、貴様らぁ!」

 

「こっちのセリフだ、耕平ぃ!」

 

「その通りだ、伊織はともかく俺は違うだろうが!」

 

「俺も違うわ!」

 

「お前は違わないだろうが!」

 

「この際だから、社会のクズを二人掃除しようとした俺の優しさが分からんのか!」

 

「「社会のクズはお前だろうが、この犯罪者予備軍がぁ!」」

 

「誰が犯罪者だ!ららこたんの価値も分からん、愚か者共が!」

 

「分かってたまるか!映像じゃ、心は満たされても身体は満たされねぇんだよ!」

 

「心も身体も満たされない、北原よりマシだろうが!」

 

「待てぇ、それは俺が一生彼女ができないという意味で取って良いんだな!?」

 

「「当たり前だろうが!!」」

 

異口同音で放たれた言葉に、伊織の中のナニカがキレた。

 

「お前らの罪を数えろぉ!」

 

更に激しい乱闘になった現場に愛菜は頭を抱える。

 

既に千紗は我関せずと読書をしている。

 

愛菜は楽しそうに見ている梓に声をかける。

 

「‥止めなくて良いんですか?」

 

「何時も通りだからねぇ」

 

「そうそう。あいつらは何時もあんな感じだ」

 

「アレがあいつらにとってのコミュニケーションだよ」

 

「時田先輩。寿先輩」

 

愛菜は笑いながら近付いてきた、先輩二人に挨拶をする。全裸なのは今日だけだと信じたい。

 

時田は、その挨拶を聞いて更に笑って告げる。

 

「これが俺たちのサークルの日常だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次はテニスの試合の話になりますかねー

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