転生者なんだが原作がおかしくなった   作:岸寄空路

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遅くなってしまい申し訳ありません。
活動報告にも書きましたが忙しくて書く暇がほとんどとれませんでした。
しばらくは落ち着くのでいろいろ書いていきます。



ヴァーリの姉らしいけど原作知らない

(確かに前世とは違う顔にして欲しいとは言ったけど)

 

 彼女は自分の顔を鏡で見て驚愕していた。その顔は前世の頃に愛読していたラノベに出てくるキャラにそっくりだからだ。

 

(なんで……『境界線上のホライゾン』のホライゾンにそっくりなんだろ?)

 

 名は体を表すと言うが今の彼女は正しくその通りだろう。

 

 ホライゾン・ルシファー。

 

 それが今世の、ヴァーリ・ルシファーの姉として生まれた彼女の名前だ。と言っても彼女が弟の存在を知るのは暫く後になる。なぜならリゼヴィムによって別々に暮らしていたのと、彼女が『ハイスクールD×D』を知らなかったのが原因だ。

 

 それが理由で彼女はある行動に出る。

 

(家出しよう)

 

 ヴァーリと同じ様に祖父と父親に虐待されているホライゾンに迷いは無かった。母の事は心配だが子供である自分では助ける事は出来ない。なら大人を頼るべきだと判断したからだ。

 

(そうと決まれば――)

 

 彼女は外の景色が見える窓側の壁に手を向ける。転生前に神から貰った特典を使うために。

 

『Charge!』

 

 ホライゾンの右手に銃口の付いた青い筒が装備されて音声が鳴る。

 

(三回ぐらいで充分かな)

『Charge! Charge!』

 

 銃口から光が漏れ始める。それをホライゾンは左手で支える。

 

「……ファイア」

『Shot!』

 

 銃口から巨大な魔力のエネルギーの塊が発射され壁を破壊した。

 

「……おお」

 

 感心するような声を上げるホライゾン。彼女が転生特典として選んだのは前世で遊んでいた『ロックマンの力』を使える神器だ。名づけるなら『機人の青砲(ロックバスター)』だろうか。

 

「……よし」

 

 風穴の空いた壁を通り彼女は飛び去った。……上空に派手な花火を打ち上げてから。

 

 その花火を見たジョッシュがリゼヴィムの屋敷に兵を伴って訪れたが、辿り着いた時には既に蛻の殻だった。

 

 ちなみにホライゾンは道に迷ってしまい、そのまま行方不明となった。

 

 

 

 数年後、ホライゾンは堕天使の陣営にいた。

 

「……アザゼル」

「なんだ、ホライゾン」

 

 今、彼女は銃口をアザゼルに向けている。心なしかアザゼルの声も震えているように聞こえる。

 

「私は前から言っていたはずです」

「……何をだ」

「この期に及んで惚けますか」

『Charge!』

 

 ホライゾンの表情は変わっていないがよく見ると額に青筋が浮かんでいた。

 

「神器所有者から安全に神器を取り出せるようにしなさいと何度も具申したのに、あなたは研究に夢中でちっともそっちを進めやしない。いい加減私の堪忍袋も千切れると言うものですよ?」

 

 ホライゾンの言葉には怒りが込められていた。なぜならホライゾンにとってこれは譲れない事だからだ。

 

 『神の子を見張る者』に来てからホライゾンは自分以外の神器所有者と出会った。彼らは神器を持つために真っ当な生活を送れずにいたところを堕天使に保護された。だが、はっきり言って『神の子を見張る者』での生活もまともとは言い難い。主な原因は堕天使の思想が他種族を見下すこと、特に人間は利用する者と保護すべき者のどちらかと言って良いほど極端だからだ。三大勢力は特にその傾向が強く問題が起きやすい。

 

 『神の子を見張る者』内でも神器所有者と堕天使の関係は問題が多い。本来なら保護者に当たる堕天使の立場が上と言えるのだが、神器所有者からすれば全堕天使を同じ扱いするなどあり得ないことだろう。自分達の境遇に同情し保護してくれた堕天使、自分を神器のおまけ程度にしか見ていない堕天使。それが分かりやすく態度に出ていれば片方のみを敬うのは自然と言える。

 

 そうなれば自身を敬わない神器所有者に対して、人間を常に見下している堕天使が真面な対応をする訳が無く、許可無く神器を取り出す者も出てくる。そして取り出した神器を自身のものにするか、幹部に献上して成り上がろうとする者が出てくるのだ。その度に制裁しているがアザゼルが研究に夢中でトップとしての役割を果たしていないため勘違いした堕天使が後を絶たないのだ。

 

 ならば、せめて神器を抜かれても死なない様にしろ、とホライゾンは何度もアザゼルに忠告した。アザゼルの言い分として「命懸けの実験になるからおいそれとはできない」と言っている。それでも出来ることはあるはずだと何度も何度も言ったのだが一向に進歩が見えないために遂にキレてしまったのだ。

 

「い、いやそっちの研究もちゃんと進めているぞ!?」

「ほう……」

 

 アザゼルの言葉を聞きホライゾンは目を細める。

 

「ちなみにどれぐらい進んでいます?」

「え、え~と、に、二十パーセントぐらい?」

「本当ですか?」

「も、勿論だ」

「…………」

 

 アザゼルを無言で見つめるホライゾンの目には信頼のしの文字すら見当たらない。いかにアザゼルの普段の行いが悪かったのか物語っているようだ。アザゼルの目が明後日の方向を向いているのもあるが。

 

『Charge!』

「本当ですか?」

 

 再度同じ質問をするホライゾンの目は言っている。「私の目を見てもう一度同じことを言ってみろ」と。同時にエネルギーチャージで「黙っているなら撃つ」と態度に出している。

 

「…………」

「…………」

『Charge!』

「む、無言でチャージするのは止めてくれ!」

「ならば私の質問に答えてください」

 

 その答え如何では撃つ。アザゼルの末路は既に決まっていた。

 

「……お」

「お?」

「多目に見て三パーセントです……」

「ギルティ」

『Charge! Charge! Charge! Charge! Charge! Charge!』

「ちょっま――」

「生まれ変わってやり直せ、駄目堕天使」

『Final Smashes!』

 

 アザゼルの視界は青白い閃光で塗りつぶされた。同時に『神の子を見張る者』の施設から極太の青白いビームが天に向かって発射されるのを多数の者が見たという。

 

「姉さん……遂に切れたか」

 

 その光景を見たヴァーリ・ルシファーは後にこう語る。

 

「いつかやると思っていた」

 

 その後、『神の子を見張る者』の神器所有者を『SPRITS』に保護される様に(ヴァーリ協力のもと)誘導したホライゾンは再び行方知れずとなった。

 


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