東方 あべこべな世界で戦う    作:ダリエ

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23 竹林連戦

 迷いの竹林 上空

 

 

「このっ!! ヒラヒラと……私相手にダンスでも踊っているつもりなのかよ! レミリアぁ!?」

 

「フフッ! その攻撃は前にもう見たよ? 当然、この私はそんなもの覚えたわ。吸血鬼に同じ技は通用しないわ。それにダンスは貴族の嗜みよ。知らなかった?」

 

 

 レミリア・スカーレットがまるで踊るように魔理沙の攻撃を躱す。しかし彼女は魔理沙に対して一切の反撃をしない。彼女は本当にただ月をライトに夜空をステージとしてダンスを舞っているかのように見える。

 

 

「ほらほらぁ~その調子よ魔理沙! まあ貴女が頑張ったところで私には当たらないけどね!」

 

「クソ! あのチスイコウモリめ! 人が手心を加えているのを良いことにおちょくりやがって! 後悔させてやるからな! マスタースパークを食らえ!!」

 

 

 魔理沙はそう叫んでから自慢の黒いウィッチハットから八卦炉を出す。そこから急上昇してレミリアの上を位置取り、そのまま斜め下方向に向けて極光を放ち地面ごと薙ぎ払う。しかしレミリアはそれをヒラリヒラリとまた優雅に煽るように避ける。そうしてまた魔理沙が挑発に乗って大技を乱射し、竹林がどんどん荒れていく。これは流石に後で紫に文句を言われそうな気がするわね。

 

 

 ここで私は隣にいるもう一人の観客に問いかける。

 

 

「ねえ咲夜? あなたのご主人様は何がしたいの? 自分は攻撃もしないでひたすら避けるだけ。あれでは魔理沙の手で竹林が焦土になるだけよ」

 

「お嬢様には考えのあってのことよアリス。今は黙って見ていて私たちは黒幕に備えてできるだけ消耗を抑えておきましょう。暇ならお茶でもいかがかしら? 簡単な物だけど」

 

 

 咲夜はそう言ってどこからともなくティーセットを取り出した。手品?タネはどうなってるんだろうか。いやしかし、これは今の私にはありがたい。

 

 

「それはありがとう。本当なら私、今夜はごちそうの予定だったからいつもよりお腹を空かせていたのだけど……この異変のせいで食べ損ねてしまったから少し何かをお腹に入れたかったのよ。助かるわ」

 

「どういたしまして。あら? 他にも来たみたいね? これで今日の主役は全員集合かしら?」

 

 

 そう言う咲夜の視線を追う。上空から魂魄妖夢と西行寺幽々子が。そしてスキマを開いて霊夢と紫がやってきた。やはり彼女達も異変解決に乗り出していたようだ。

 霊夢がこちらに気付き、それと同時に彼女がこっちに向かって飛んで近づいてくる。目つきがいつにも増して悪い。これは紫に寝ているのを起こされたというところか。

 

 

「アリスに咲夜。こんなところでお茶会なんてあんたたち良い身分ね。それ私にも分けなさいよ。眠気が飛ぶくらい濃いのを一杯頼むわね」

 

「霊夢……いきなり物乞いなんて。はぁ、幽々子も来ているわね。で、今は何をしているの?」

 

「咲夜の主がウチの魔理沙で遊んでるの。止めさせてくれない?」

 

「そう……いいえ。どうやら終わったみたいよ」

 

 

 紫がそう言うが早いか、魔理沙がレミリアと地面に放っていた閃光が急に虚空で何かに弾かれた。

 

 

 すると、その位置より奥にはいつの間にか日本家屋が出現していた。外観をパッと見た限りだと建築されたであろう年代は里にあるそれよりも古いのに、その家屋の状態は完全に新築にしか見えない。なんとも言い難い歪さがそこにはあった。

 

 

 こんなところにそんな物があるということ。それはつまり怪しいということに他ならない。

 

 

「やっぱりね……黒幕はあそこにいるみたい。咲夜! 行くわよ!」

 

「かしこまりました! お嬢様! では皆様ごきげんよう」

 

 

 二人はそれを確認するや、捨て台詞を吐いて即座に屋敷へと突入する。

 

 

「なっ!? これは私の手柄だろぉ! 負けてられないぜ! アリス!」

 

「わかってる。行くわよ魔理沙!」

 

 

 私も紅魔館組を追って魔理沙と屋敷の中へと突入する。

 

 

「さて妖夢。私たちも……」

 

「はい幽々子さま」

 

「じゃあ行くわよ霊夢……っていつまで飲んでるの!」

 

「あっちょっと待って! カップどうすればいいのー咲夜ー!?」

 

「もう! その辺に置いときなさい!」

 

 

 後ろからは霊夢たちも慌ただしく追ってきているようだ。さて、今日の黒幕とご対面と行きましょうか。せいぜいその憎たらしい面を拝んでやるとしましょうか。食べ物と逢瀬の機会を奪われた女の恨みは恐ろしいとわからせてあげる。

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

「さあここは私たちが通さないわよ! てゐ! いいわね!」

 

「おうともさ鈴仙! 姫様は私たちが守るよー!」

 

 

 我々が前の二組にやや遅れて屋敷の中に入ると、屋敷の中は非常に広い空間が広がっていた。見た目はそれほどでもないのに私たちの住んでいる白玉楼よりもそこは超大な空間であった。咲夜が言うには紅魔館と同じような原理で空間を拡張しているのだろうとしていた。

 そんな広い敵地をしばらく進むと敵が二人現れた。ウサ耳だ。二人ともウサ耳だった。あれはなんだろうか。性欲旺盛のアピールだろうか。まあそれは置いておいてこちらは八人もいる。私はここでは一番偉いであろう紫様へと問いかける。

 

 

「どうしますか? これ。紫様」

 

「そうね……こっちは八人だけど実質は四組だから二組ずつで半分に分けましょうか。貴女はどっちとやりたい幽々子?」

 

「妖夢的には強い方が良いんだろうけど……よくわからないし何となくこの威勢の良い方かしら。大きいからきっと食べごたえならあるわ」

 

 

 扇子で口元を隠しながらそんなことを仰る。出る前にしっかりご飯を食べたのに幽々子さまはまた食べ物に例えて……本当に仕方のないお人だ。

 

 

「じゃあ私たちはあっちの小さいのにしましょうか霊夢。貴方は楽な方がいいでしょ?」

 

「勝手にどうぞ。どのみち結果は変わらないわよ」

 

「じゃあ私たちは霊夢と一緒だ! そっちは任せたぜ咲夜! レミリア!」

 

「勝手に決めるんじゃないわよ魔理沙の分際で……はぁ仕方ない。咲夜任せたわ。私はさっきので少し疲れたから休むわ」

 

「お任せくださいお嬢様。では妖夢。また共闘よ。よろしくね。今回はあの時みたいにやられないでよね」

 

「はい! そちらこそ主の前で負けないでくださいよ? まああれくらいなら貴女と一緒ならそれほど時間もかからないでしょう」

 

 

 私は白楼剣と楼観剣を抜き放つ。咲夜もナイフを持つ。こちらの準備は完了だ。

 

 

 しかし黒い服を着た方のウサギがなにやら騒ぎ出す。あっ、なんかさっきよりウサ耳がクシャっとなっている。

 

 

「えっ!? 四対一!? ちょっとちょっと! それは流石にズルいんじゃない?」

 

「こちらはお嬢様がお休みなので三対一ですね」

 

「私も見学だから二対一ね。これ以上は減らないと思うけど~」

 

 

 幽々子さまがそんなことを言い出す。ああもう、これは完全にこっちに丸投げするつもりみたいだ。

 

 

 幽々子さまがそう言うと二対一ならと勝てるとでもふんだのかウサギが急に元気を取り戻す。心なしかウサ耳も先程よりピンっと真っ直ぐになっている気がする。

 

 

「はっ! 後悔するがいい! 地上の穢き人妖たち! お前たちがここまで来れたのは褒めてやる! だがこの先は進ませない! この狂気の瞳を見て狂うが良い! お前たちにはもう正しい道は歩めない!」

 

 

 本当にこのウサギ一号は威勢が良い。いや活きが良い。あんまりにも自分を食材として良質だと見せると幽々子さまに食べられてしまうかもしれないと言うのに。愚かなことだ。

 

 

「では目を瞑ればいいですね。後は気配を頼りに斬り捨てます。お覚悟を」

 

「じゃあ私はウサギちゃんが目を閉じた瞬間に時間を止めるわね。さあ早くしなさい。瞬きが貴女の終点よ」

 

 

 私たちはとても親切に彼女に自分の動きを教えてあげた。これは決して死刑宣告ではありませんとも。

 

 

「え!? ちょっと! そんなことできるの!? 謝るから少し待っ……」

 

「「問答無用」」

 

 

 私が一瞬ですれ違いざまに斬り抜き、その後いつの間にか配置されていたナイフが彼女に向かって飛んでいく。それを一身に受けた鈴仙というウサ耳の女は倒れる。

 

 

「咲夜さん。こちらに流れ弾が。返しますね」

 

「これはごめんなさい。でもちゃんと今日も着てたんでしょ? ならいいじゃない」

 

「先日よりも少し痛かったです」

 

「それは嬉しいわね。私も成長したってことよ」

 

 

 こちらはあっさりと勝負を決めることができた。相手は自信があったようだが、それは翻って眼さえ見なければどうとでもなるので大したことはない。さて、霊夢と魔理沙の方はどうだろうか。

 

 

 あちらはあの小さい白兎を怒りの形相の霊夢と魔理沙が二人がかりで追いまわしている最中のようでした。あちらを眺めていた幽々子さまが言うにはあのてゐとかいう兎に二人まとめて散々おちょくられたのでキレたそうです。あの二人を怒らせるとか凄まじいメンタリティだ。私なら絶対にしない。

 

 

「どうしましょうか咲夜さん? 先に行きますか? それともあちらの加勢を?」

 

「先に行っても後から文句言われそうだし、加勢したらしたでこっちもあれに巻き込まれそうなのよね……ここで大人しくしていましょうか。お嬢様も楽しんでいることだし」

 

 

 確かにレミリア・スカーレットもあちらを見て爆笑している。今までもそんなに面白おかしい光景があったのかと思うと少し惜しくもある。

 

 

「なら……一回休みとしておきましょうか」

 

 

 私たちはしばらく巫女と魔法使いの過激な動物ショーを見て過ごしたのだった。

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 永遠亭 最奥の部屋

 

 

 どうやら優曇華とてゐがやられたようね……でも幸いなことに侵入者は正解の道は見つけられなかったようなのは良かった。姫を守るため……同時にこれは侵入者である彼女ら自身を守るためでもあるからだ。

 

 

「輝夜。貴女は予定通りに向こうの部屋に隠れていなさい。あいつらはここに来るわ」

 

 

 私は仮面で顔を隠す少女に向かってそう告げる。桜色の和服を着た彼女はその気怠さを少しも隠そうとせずに返す。

 

 

「はーい。でも永琳。私が顔を出せばすぐにでもあいつらは一貫の終わりよ?」

 

「それはあまりにも言葉通りすぎてまずいのよ。それに……流石に地上の者とは言え、そんな死に方は惨すぎるわ。貴女の素顔は刺激が強すぎるの」

 

「まあ酷い」

 

 

 輝夜は毛ほども傷ついた様子を見せずに仮面の下でくすくすと笑いおどける。今更彼女もそんなことで傷つくものではない。

 

 

「酷いのは貴女の顔ね。まあこればかりはどうしようもないわ。つける薬が無いもの。未だに夜中に貴女と急に会うと優曇華が叫ぶの、ちゃんとこっちにも聞こえてるんだから。ちゃんと部屋から出る時はそれ着けときなさい」

 

「それは鈴仙に言ってちょうだい。面着けっぱなしで生活するのは正直うっとおしいのよ。蒸れるし。あーあ! どこかにありのままの私を愛してくれるような素敵な人はいないかしら? この際顔とか地位とか能力とか目を瞑るから」

 

「どの面下げてそんなこと言えるのかしら? 貴女が昔に出した難題よりも難題ね。見ただけで死ぬような顔面してるのに相手を選ぶというのも無理」

 

 

 不老不死にする薬は意外と作れたがこっちは全くと言ってダメ。容姿の方がよほど簡単にいじれそうな物だがどうにも形にならない。結構良いのができたと思えばそれも失敗作だったりすることばかり。異性に好かれる薬が出来たと思えば副作用で影響を受けた人は頭がおかしくなって死ぬとか。そんな危険物ばかりだった。

 

 

「話を戻すけど。永琳がやられたら私は出るからね。そこは絶対に譲らないわ」

 

「……全くこれは責任重大ね……」

 

 

 それだけ言ってから輝夜は襖の向こうへと去る。輝夜から大切にされているのは悪くない気持ちだ。

 

 

 私は弓の準備をする。大丈夫。天文密葬法は今も効いている。月からの使者はこれで物理的に来れない。夜が止められたのは誤算だったが、これは来客を片付ければ解けると思われる。

 

 

「さあ、来るが良いわ。輝夜は渡さない!」

 

 

 姫を守る。敵も死なせない。これを両方こなさないといけないのが辛いところだ。

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

「流石にこれは……!」

 

 

 客が来た。呼んでもいない客が。しかも八人。そいつらが徒党を組んで襲い掛かってきた。ずるい。

 

 

 そして流石のこの多勢に無勢のリンチには私も分が悪すぎた。

 

 

「流石にこれはちょっと気が引けるわね……賢者様としては良いのかしら紫?」

 

「そんなことじゃ甘いわよアリス。異変を起こした以上はこういう事もあるの。貴女も覚えておきなさい」

 

「そうよアリス! こいつのせいで私は眠り損なったんだから! 然るべき報いよ!」

 

「そりゃ私も多大な迷惑を被ってるけど……せめて二人ずつ挑んでもよかったんじゃ」

 

「甘いわね! 勝てる状況の時に容赦なく勝つのよ! それが悪のカリスマってものよ! 覚えておきなさい!」

 

「流石ですお嬢様」

 

 

 しかも相手のほぼ全員が乗り気なのが辛い。こいつら異変解決にかこつければ何をしても良いとでも思っているのかしら?

 

 

「さっきも言ったけれど帰りなさい! 私に勝ったところでこの密室は朝まで決して解けないし……何より私を倒してしまえば貴女たちは恐ろしいモノを見ることになるのよ!!」

 

 

 本当の話だ。信じろ馬鹿ども。はよ帰れ。

 

 

「今のその状況で言っても負け惜しみにしか聞こえないわね! 恐ろしいモノ~? そんなの前に見せられたわよ!! あれ以上なんてあるわけないじゃない!! 食らいなさい! 紅符『不夜城レッド』!」

 

「人の話を聞かない蝙蝠ね!」

 

 

 しかも何か名前がダサい。こんな技でやられたくはない。しかしこのままではダメだ。ああ。せめて一人でもここで気絶させて被害を減らさなければ……!

 

 

「『天網蜘網捕蝶の法』!」

 

 

 周囲に光線を走らせる。八意永琳はこれで数人が倒れると予想していた。

 

 

 しかし彼女の放ったあがき。それは奇しくも彼女たちの中の多くが体験した()()()()のような弾幕だったことがある意味でお互いにとっての誤算だった。

 

 

「あらまあ」

 

「これはまた……試し切りに最適な……」

 

「あら~奇遇なことね妖夢」

 

「練習にはちょうど良さそうですねお嬢様」

 

「むしろあいつよりもよほど糸を張るのが上手いんじゃないかしら咲夜?」

 

「こいつら何を言ってるんだ? わかるか霊夢? アリス?」

 

「知らないわよそんなの」

 

「(これはアトラクさんの……)」

 

 

 彼を知る少女たちはこの場にいない男をその弾幕に幻視した。

 

 

「私の最後のスペル! 当たりなさい!」

 

 

     ・

     ・

     ・

 

 

「まあ何とかなるわよねえ……みんな無事かしら? 霊夢?」

 

「こっちは三人とも大丈夫よ紫。レミリアと妖夢たちの方はどう?」

 

「私たちも無事よ。見事ではあったけどそれだけだしねぇ」

 

「同じく無事よ。慣れてるから」

 

「それは良かった。さて……じゃあ異変はアンタを倒しておしまいにして、帰って寝ますか……」

 

 

 私は遂に博麗の巫女に捕まった。ダメだ。まだ夜は明けるには早い。何とかもう少しだけでも…… 

 

 

「よくも永琳を苛めてくれたわね。ついでにイナバ達も……これには悪いけど私もちょっと怒ってるの。だから……永琳。文句は聞かないわよ……!」

 

 

 ああ。ダメだった。

 

 

 私の目の前で惨劇は始まってしまった。

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