東方 あべこべな世界で戦う    作:ダリエ

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24 結成!人里の怪人チーム

 人里 夜 アトラクの店 店舗内居住スペース

 

 

 後に永遠亭で起きる少女たちの闘いよりも時は前に戻る。

 

「今日は私も誘ってくれてありがとう! お仕事始めた甲斐があったよ! これからみなさんよろしくお願いします!」

 

 青い髪にその髪と同じ色の青い片目と対照的な赤い目のオッドアイが特徴的な少女が元気よく挨拶をする。

 

「よろしくな。まさかこの倶楽部に入るために仕事を始めるやつがいるとは流石の俺も想像力が足りなかったよ……」

 

 今日は人里人外部の食事会がある日だ。場所はいつも通りに俺の店。一人暮らしの上に最近は服の注文も落ち着いてきたので空間の余裕がある。商品以外は壁に沿って置かれた棚と金庫と机一つの上で収まる程度の筆記用具。居住スペースも寝具が収納の中にある程度でそのほとんどが空いている。食料は一人暮らしの割に多いが、それも食糧庫を設計の時点で広めに発注しておいたこともあり、その中に余裕をもって収まっている。

 つまりここは人が集まるにはもってこいなのだ。

 

 そしてこの人外部。どうにも変な話の広まり方をしたのか、『人里に出入りしている人外』という加入条件に加えて、『人里または人間相手の営利活動を行っている』ことが参加条件にいつの間にかなっているらしかった。実際、俺と慧音と妹紅はその条件を満たしている。勘違いする理由はあった。どっちかというと人を殺さないとか食わないとかの方が条件っぽいし、提示しておきたいのだが。

 

 社会人の人外限定の団体。それなんて○インズウールゴウン?

 

 閑話休題。

 それでこの前、前述の通りの勘違いをした多々良小傘がわざわざ就職してまでここに加入を申し出てきたのだった。まあ俺は来るものは拒まない。阿求曰く、彼女は妖怪としての在り方という基本に忠実であるし、たまに驚かされるくらいがむしろ里の人間にとっても関係性が自然で良く、彼女自体の性格もかなり良好と太鼓判を押した。

 ちなみに小傘は鍛冶屋になった。いい腕をしているらしい。里の者たちからすれば容姿に目を瞑れば愛想も性格も良く腕も良いと何でもこなせる即戦力として鍛冶屋では重宝されているようだった。化け傘の妖怪だけでなく一本だたらの性質も持っているのかもしれない。

 余談だが前の世界ではベビーシッターと聞いていたが、それもこちらの世界ではちょっと難しいだろう。後々に信頼が掴めたらわからないが。

 

 俺たち人外の人里市民権はある程度権力者である阿礼乙女の評価と言う後ろ盾もあってのことである。なので、阿求はこの倶楽部の名誉会長のような立場なのだ。慧音は部長。妹紅は副部長。俺は幹事兼財務兼広報。小傘は何かやりたいのがあればやらせてあげよう。

 

「アリスさんがまだですね。連絡はされたんですよねアトラクさん?」

「ああ。この前、子供たちに向けて人形劇をやっていた時に慧音と二人で確かに誘ったからな。招待状も渡した」

 

 アリス・マーガトロイド。魔法の森に住む魔法使い。彼女も人里で人形劇をしているが子供相手なので代金は取っていないため働いているとは少し違う。それでもボランティアみたいなものだし、人格も問題なさそうなので慧音の推薦という形で誘ったのだった。今回の集会は二人の歓迎会も兼ねている。

 

 慧音は俺の言葉に続く。

 

「間違いなく誘った。アリスもそれを了承していた。ただ彼女の性格だと単純に遅刻とは考えにくいな……妖怪にでも絡まれたか……万が一にも異変に巻き込まれたという可能性もある」

「異変か。確か前の宴会三昧の時もあいつは解決に乗り出していたんだったか? 私たちと違って真面目だな」

「私は全く気付けなかったよ妹紅。アトラクは参加していなかったから仕方ないが……全く我ながら情けない」

「いや~それはゴメンよ~。でも楽しかっただろ?」

 

 伊吹萃香(宴会の元凶)が我が物顔で席に居座り、既に勝手に飲んでいた。乾杯の音頭はまだなので他の皆は当然手を付けてない。

 

「ところでなんでこの鬼はここにいるんだ? 小傘ちゃんと違って働いてるわけでも、アリスと違って慈善事業しているわけでもないだろう?」

 

 妹紅がみんなが思っていたであろう疑問を口に出した。

 

「萃香はここ最近は俺の所にずっと入り浸ってたからな。前もって準備していた酒の匂いを嗅ぎつけてこっそり待ち伏せしていたらしい。追い出すのも手間だから諦めて置いとけ。酒は多めに用意はしてあるし無くなりはしないだろう」

「さっすがアトラク話がわかる~」

 

 酒を飲みながら他人事のようにリラックスしている。こいつはどうしようもない。ほったらかそう。

 

「こいつは無視して「ひどい~!」アリスの事だがどうする? 迎えに行くか?」

「外ももう暗い。ここの面子だから危険とは言わないが、入れ違いになりかねない。それに今日は満月のはずなのにさっきからどうにも変な感じがするから安易に出ない方が良い気がするな。ほら、月が……異変か」

「うん?」

 

 慧音が言葉の途中で急に異変と断定した。外を見ていた慧音に続いて全員で外を見る。

 

「ああ。なるほど今日だったか」

「あらら~。これはわちきでも流石に一発でわかる大事だね!」

「この月は肴にするには不味いねぇ~」

 

 忘れていたが今日があのお月様の異変の日だったのか。月を隠されたら流石に気づくと思っていたのだが俺も意外と呆けていたらしい。今まで全く気が付かなかった。ちゃんと準備もしていたのに。

 他の妖怪である面々は見たら即座にわかったようだ。

 

「妖怪の皆さんにははっきりわかるみたいですね。妹紅さんは?」

「私もさっぱりだよ阿求。だが、言われてみると見た目が少し違う気がしなくもない。しかし月か……慧音。アトラク。異変の元凶やそれっぽい気配はどこかに感じないか?」

「ちょっと待て…………竹林の方で誰かが何かをやったかもしれない気配がある。これ以上はハクタクでない今の私では……すまん」

 

 月が丸いのに今日は慧音がハクタクになれていない。これでは歴史の履歴から犯人を特定するのは無理らしい。

 

「竹林か……ならおそらく決まりだな。いや十分だ。助かったよ慧音」

 

 妹紅は一人わずかに逡巡した。きっと心当たりがあるのだろう。阿求がこちらを不安げに覗き込むのでこっそり心配ないと言っておく。少なくとも俺の見た情報では大事にはならないらしいと書いてあった。むしろ一日と経たずに収拾がつくのだからこれはよほど小規模の部類だ。

 

「ふむ。こうなっては今回は延期だな。いいかアトラク?」

 

 慧音が中止を提案した。仕方ないか。俺も前から懸念していたことがあったし。行って様子を見に行こうか。

 

「ああ。食料品の類はまた買っておこう。萃香。ここにあるのは好きなだけ飲み食いして良いぞ。食い物はできるだけ足の早いのから片付けておいてくれ

「やったーーー!!!」

 

 ちなみにこれは全部俺の金で用意したものだ。なので俺の懐が許す限りは宴会を開ける。アトラクさんはわりとお金持ち。

 

 慧音は大量の酒と肴を手に入れ狂喜乱舞する萃香に呆れつつも言葉を続ける。

 

「……さて私は念のため里の防衛活動を始める。月が狂ったら妖怪も暴れ出すかもしれないからな……みんなは?」

「それなら私は人里のみんなにこの事を広めますね! 当家の者にも声を掛けます」

「なら悪いが小傘。念のために阿求に付いてやって助けてあげて欲しい。こっそり入り込んでるやつが暴れ出したら守ってくれ」

「あちきも了解! 任せてよ! お役に立つよー!」

 

 これで人里の内外の防御はそれなりだろう。この異変でそこまで被害が出たとも聞かないが。人里が俺の巣である以上勝手は許さない。

 

「アトラクは? できればお前と妹紅にも防衛を頼みたいんだが……」

「悪いが慧音。私は行かなければならない場所がある。そいつが黒幕ならついでに解決しておくよ」

「俺もそちらに行く。倒してしまえば手っ取り早いからな。しっかり俺の代わりになるだろう鬼の萃香を残していくからいざとなったら頼れ」

「あ~……まあ今回はお酒もご飯もいっぱいもらったし引き受けようかねぇ……行ってきなよアトラク」

 

 そう言う訳で人里のことは四人に任せ、俺と妹紅はすり替えられた月の下で竹林に向かって歩き出した。

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

「アトラク……お前には前から言っておかないといけないと思っていたことがある」

 

 歩きながら竹林に向かう道すがらに、妹紅は決心したように話を切り出す。俺はその辺に倒れていた虫のお姫様を介抱しながらも返す。

 

「多分、大体知ってる。言わなくてもいいぞ」

「知ってるわけないだろう!? それにそこは黙って聞くところだぞ。……はぁ……それならお前は全部を知っていて私に声を掛けて、今日も付いてきたのか?」

「そうだ。俺は前からお前を知っていてその上で全肯定してるよ」

「そうか……それなら……そう言ってくれるなら良いさ……じゃあ、これで後は本当にあいつと決着をつけるだけだな。どうするんだ道中話すことがなくなったじゃないか」

 

 妹紅はそれから俺がリグルを即席ハンモックに寝かせ、おまけに枕と薄手の毛布を掛けるまで黙って見ていた。妹紅からはちょっと手厚すぎるんじゃないかと言われたが仕方ない。俺も虫だからね。操られないけど言うことは聞いちゃう。それはもう孫に甘いお爺ちゃんの如く

 

「さて。俺からも話がある」

「なんだ? 私はお前と違って空気が読める程度の女だからちゃんと聞いてやるぞ」

「多分それ別の人の能力だと思うんですけど……まあいいや。話とはこれのことだ」

 

 再び竹林へと歩きながらも俺は懐から一冊の本を出す。普通の本だ。至って一般的な文庫本。ただしその題名はここにおいては特別だ。

 

「竹取物語か……全く、本当に知っていたのか……食えない男だよお前は……」

「俺を食おうとするのはお布団の上くらいにしておけ。さて、話を続けるが……実は俺はこの世界とは別の世界の幻想郷から来た。そこではここよりも少し時間が経っていてな。既にこの異変も解決されていた」

「…………ちょっと待ってくれ。えーと…………つまりお前は未来人?」

 

 妹紅は流石に困惑したように、長々と俺の言葉をかみ砕いてから返す。ついでに超能力的なものも使える異世界人だ。宇宙人というか外宇宙要素も最近追加した。SOS団団長も満足な盛りっぷりだ。

 

「どちらかと言うと未来妖怪だな。そしてこの異変の元凶は八意永琳。お前にもわかりやすく言えば蓬莱山輝夜の部下だ」

「そうか……やはりあいつか……!」

 

 妹紅は体から怒りの炎を湧きあがらせる。比喩でなく物理的に。文字通り烈火の如く怒るのはやめてくれ。

 

「俺は火気厳禁なんだ。やめてくれ。それでな、この異変は博麗の巫女たちによってそちらの世界では解決されたんだ。それはいい。ただ、俺の世界はこちらの世界と違いがあったんだ」

「違い?」

 

 妹紅は烈火を収めて幾分か冷静になったのかまた会話を続ける。

 

「話せば長くなるから今回必要なことだけ簡潔に。この世界でのお前や慧音みたいな醜い容姿。それはあちらの世界ではとびきり美人と言える容姿となる」

「ああ……それはなんか納得がいった。お前がどうして私たちに嫌な顔をせずに付き合えるのか、むしろ里の男が美人に接するように私たちに振る舞えるのかがさっぱりわからなかった。信じてないわけじゃないけど心の中でどうしても私たちを騙しているんじゃないかって不安が消せなかったんだ。でもそういうことだったのか。なんてことない。お前にとっての美人が私だったんだな」

「ああ。理解できたか?」

 

 妹紅は破顔する。どうにか怒りが収まったらしい。

 

「完全に。思えばいつだったかな、お前が里で美人に絡まれていた時に笑顔が硬くなっていたのは照れじゃなくて本当に表情が硬くなっていたんだな。私を見つけた時に随分嬉しそうだったのを覚えてるよ」

「あったなぁ……自信に満ちたブスが寄って来るの辛くはないけど吹き出しそうでこらえるの大変なんだよ」

 

 俺たちはひとしきりそういえばあの時、なんてことを話し合う。思えばもう一年ほどになるのか。早いものだ。とてもいっぱい闘えて楽しかったからかな。

 

 妹紅が話を戻した。

 

「しかしそれなら私や慧音との婚姻はお前にとって多少は嬉しい事だろう? 闘わずに済ませることはできないのか?」

 

 暗に早く家庭に入りたいと言うことを言ってくる。彼女も意外と乙女らしい。口調は男っぽいが。

 

「別に俺は結婚したいわけじゃないからな。俺にとっては闘ってくれた結果の景品がそれだ。普通に本気でやってくれるならこんな提案は始めからしない」

「そうか。私たちにとっては結婚の障害である闘いこそが目的なんだったな」

「けど勘違いしないでくれよ。俺はちゃんと約束は守るつもりだし、しっかり花嫁として十分かの判定はしている。主に見た目でな」

 

 俺は口角を思いっきりあげて笑う。妹紅もその顔に笑みを浮かべる。

 

「見た目での審査で通過できたのは生まれて初めてだよ。まあそれならそれで改めてお前を倒すだけさ。それが望みなんだろ?」

「それでこそ俺的に良い女だ」

 

 さあ。良い雰囲気だがまだ話は途中なんだ。続けさせてもらおう。

 

「さて……そこで話を戻してこの本。かぐや姫についてなんだが……なんとこの本は俺の世界の物と話の展開が一緒だ」

「それは……そういうものなんじゃないか? 私にはそういう知識はあんまりないからわからないのだが。えすえふだったか?」

「いや。それだとしてもやはりおかしい。蓬莱山輝夜の容姿をお前は知っているな?」

「ああ。私から行くことはできないけど向こうが襲ってくることは何度かあったからな。その八意永琳という奴も見たことはないわりに話には何度か聞いてるよ」

「蓬莱山輝夜はどんな容姿だ?」

 

 妹紅は苦虫を噛み潰したような、思い出すのもうっとおしい、そんな感情を込めた顔と声音で吐き捨てた。

 

「…………クッッッソブサイクだ!!! 見ただけで私は最初にゲロをのどに詰まらせて死んだからな!!」

「溜めたなぁ。鬱憤も溜まってそうだ。その通り、それなのにこの本にはやはり『求婚者が殺到した』と言う内容が書かれ、『五人の貴公子が難題に挑み失敗』する場面があり、最後には『帝からの求婚も拒否』して月に帰ったことになっている。俺の世界の物と同じように」

「実際は違うところも多いのはお前なら知ってるだろうけどその盛り上がりの部分は本当だ。私の父もその貴公子の一人に当たるはずだからな……ああクソ忌々しい」

 

 妹紅は怒りながらも流石に少し悲しそうな表情だ。向こうの妹紅も人間だった時の話をするときはあまり表情が明るくなかった。それなりの落としどころは見つけている。なんて向こうでは言ってたがこればかりはこっちの妹紅もかぐや姫とのケリをつけるしかないだろう。

 

「しかし。おかしいだろう。単純な話、そんなクソブサイクにこんなに求婚に来るものか。当時の基準では彼女は美人だったのか?」

「そんなことあるか! あいつは昔からあれだ。昔……輝夜が言っていた。あの時はそういう薬を使っていたらしいんだ。一時的にだが容姿を関係なしに人を魅了するような物。基準はそのままにな。それで多くの者が狂ってしまったんだ。私の父もな……そっちの輝夜はどうやったんだ?」

「俺は向こうじゃ会わなかったが世界一の美人だそうだ。普通に美人だからモテてかぐや姫が成立しただけだ。まあ納得できる。ここのかぐや姫が超ブサイクならな」

 

 正直言うと今から会うのが楽しみだ。どんだけ美人なんだろうか。

 ただ、こちらでは薬を使ってまで男にモテた上で無茶な難題を求婚者に出して散々な目に合わせた末にその甲斐なく全員袖にして、挙句の果てに帝すらもポイして月に帰るという形で身を隠したという異世界転生悪役令嬢もビックリの凶悪ムーブをやっている。この幻想郷の住人は総じて愉快な奴らだが少しは気を付けておいた方が良いかもしれない。

 

「さて、ここで現実的な問題提起だ。初めて蓬莱山輝夜を見るアリスや巫女を始めとした彼女たち異変解決組は果たして耐えきれるか?」

「無理だな。あれは格も次元も違う。あいつらもそれなりにブサイクな連中だが輝夜には及ばない。せいぜいゲロまみれが関の山だろう……ん? 輝夜が最高のブサイクってことはお前にとっての最高の美人ってことか……? おいアトラク。お前今すぐ帰れ」

「断る」「帰れ」「やだよ」「帰れ!」「やだ!」

 

 そんな言い争いをしながらも俺たちは焼け野原になりつつあった竹林の中に永遠亭を見つけ、突入したのだった。




おまけ
も「そう言えばその本いつの間に懐に入れてたんだ? お前家に帰ってないよな?」
ア「今年の夏のくらいからずっと入れてた。忘れない様に。湿気でちょっとくたっとしたけど」
も「まさかこのためだけにそんなに? ……はぁ、それ貰っても良いか? 久しぶりに読みたくなった」
ア「おういいぞ。はい。憎いからって本にまで当たるんじゃないぞ?」
も「そこまでは私もしないぞ。スンスン。せいぜい大事にするさ。でも今は私が持っていたら燃えちゃうかもしれないからまたお前の懐に入れておいてくれ。終わってから受け取るから」

(里で箱かなんか買って匂いが薄れない様に密閉しよう)


おわり


チーム名は消えぬ炎と快男児とか思い浮かんだけどここは北欧でもゲッテルデメルングでもないしさすがにね?
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