東方 あべこべな世界で戦う    作:ダリエ

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31 花映塚 バトル オブ サンズリバー

 先日の太陽の畑における風見幽香との闘いは近くまで来ていた文にその一部始終を撮影された。

 

 その闘いの様子を丸々記事にした新聞はなぜか大好評で予想外の売れ行きを見せているようだった。発行した文も喜んでいるので御の字だ。幻想郷にて有名な彼女に勝ったため俺の実力も広まり、これで前の身の程を弁えられなかった天狗たちのように安易に手を出す者も減るだろう。これで天狗の新聞自体に興味を持ってもらえば、この間の損害の足しくらいにはなるかもしれない。なれ。

 

 それとさっき述べたとおり闘い自体は俺が勝てた。キリの良いところで幽香が引いたのだが。おそらく場所がもっと自然の少ないところだったならばその続きがあったと思う。それならば結果はわからなかったかもしれない。今のただの妖怪の状態では彼女くらいになると勝利も怪しいようだ。

 

 こちらとしては隠し撮りされたことに若干の反感もあるが、俺の闘いが注目されているというのはとても気持ちが良いので良しとする。普段は買わないような客層による購入が増えたらしいので、後日弾幕ごっこを題材にした記事をいくつか増やしてみるそうだ。

 

「その時はまた手伝ってくださいね!」

 

 俺としても不得手と言えるジャンルの弾幕戦の資料と見識が増えるのは喜ばしいことなので承諾した。しばらくは彼女も忙しいだろうがその時はそう遠くないだろうとも予想される。俺たち妖怪にとっては十年単位は決して長い時間ではないから。

 

 そして風見幽香だが……ほんの少し前に里、というか俺の店まで来た。そこには無断撮影の文もいたので彼女は風見幽香が自分を殺しに来たと思い俺の後ろに隠れてガタガタ震えていた。しかし幽香は。

 

「良い写真撮れてるじゃない天狗。褒めてあげる。ついでに私たちのツーショット撮らせてあげるわ。さあ撮りなさいそして三枚くらい私に寄越しなさい。それが取材料よ」

 

 と、良い笑顔で文に言ってから俺の横に立ち、数枚の撮影を終えてからそのまま去って行った。本当にそれだけなのかと思ったらいつのまにかちょこんと双葉が芽吹いた鉢植えが店頭に置いてあった。正直言って彼女の能力を思うと若干の不安もあるが流石に人里で暴れるほどの馬鹿ではないとは理解しているので鉢植えにはそのまま店の賑やかしになってもらう。

 

 そうして俺はしばらくはやることもなく、時間もあるので鉢植えの花の育て方でも調べようと紅魔館へと遊びに行った。

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 手持無沙汰なのもどうかと考え、里を出る前にお土産を購入してから紅魔館へと到着した。

 

 時刻は夕刻くらいなので吸血鬼の二人も既に起きている頃だろうと思ったのだが、そこには主であるレミリアの姿が見受けられなかった。美鈴とフランは地下で遊んでいて、小悪魔は相変わら司書業を、咲夜は俺に挨拶だけしてからどこかへと行ってしまった。

 

 代わりに図書館には同じく本を見に来たアリスがいた。三人でそれぞれ本の文字列を眺めながら雑談する。

 

「レミリアがやられた? 誰に?」

「それがわからないの。レミィが夜の散歩に行ったっきり朝になっても帰らなかったのよ。まあ子供じゃないからそこまで心配してなかったんだけど……そしたら美鈴が門の前に日傘を立てて正座している気絶したレミィを見つけてそこから大騒ぎよ」

 

 なにそれ見たい。

 

「それでレミリアは大丈夫なの?」

「ええ。見た限りだと……多分寝たら治るでしょう。お日様にやられただけみたいだし。咲夜も付いてるもの。何よりあの子は私と違って頑丈だし」

 

 あいつの頑丈さ……というか再生能力は蓬莱人や妖精なんかの無限残機制の生き物を除けばほぼ一位だからな。

 

「しかしあの吸血鬼をよくもそこまでできたわね。何か犯人の手がかりはなかったのパチュリー?」

「魔法で調べてみたんだけどよくわからないのよ。肝心のレミィはうわごとしか発しないし。黒とか白とか」

「黒と白と言えば魔理沙だけど……人を正座させる趣味なんてあったかしら?」

 

 アリスが付き合いの長い少女を思い浮かべる。確かにレミリアに勝ちうる可能性はあるがその後の挙動に違和感がある。

 

「無いわね。一応アトラクも黒と白だけど……わざわざ闇討ちみたいなことしないだろうし」

「しないな。やりたいときは直接殴りこんでやる」

「それはやめてちょうだい。とりあえず今は私たちは室内で籠城しての警戒態勢よ。違うとは思うけど、もしこの館を狙うものだったら不味いしね……ああ。そう言えば一度だけ別の言葉も言っていたわね」

「「それは?」」

「……地獄」

 

 あっ……犯人わかったわ……そしてごめんレミリア。

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 所変わって場所は三途の川。この世とあの世の境界たる場所。ここでは未だに多くの霊たちが最後の審判を待っている。閻魔様の裁きを受けるために三途の川を渡る船に乗るのを。

 

 しかしここの渡し役は少々サボり癖があるようらしいのだが……

 

「ああ。ぐっすりだ。これには美鈴もスタンディングオベーション」

「zzz」

 

 幽霊たちの渡し役である死神。小野塚小町は案の定気持ちよさそうに横になって寝ていた。立ち寝常習犯の美鈴だが流石に横にはあんまりならない。これでは上役の苦労が偲ばれる限りだ。

 

 小野塚小町はその胸を規則的に上下させている。その胸は豊満であった。俺も元は非常に原始的この上ない生命なので動くものに反応してその上下に動く胸を目で追う。これは仕方ないのだ。生き物だから。蜘蛛とはつい画面上のマウスポインタとかを追っちゃう哀れな生物なのだ。ゆえにこの行為に一切の猥褻はない。いいね?

 

「…………」

「zzzzzz」

 

 このままながめているのもいいか。

 俺はそう思っていたが閻魔様は許してくれなかったようだ。

 

「何をやっているのですか貴女は」

「「ごめんなさい四季さま!」」

 

 ついつい俺まで謝ってしまった。悪気はなかったけどつい、出来心だったんです!本能なんです!

 

「小町は何を寝ているのですか! ただでさえ今は忙しいのですから真面目にやりなさい!」

「はい! ちゃんとやります! 済みません!」

「そして貴方は何ですか? 船を待っているのならあちらに並びなさい。後で公平に裁いてさしあげますから」

「ごめんなさい! 並びます……あ、いや違う。俺は死んでない」

「あれま。よく見たらいい男ですよ。痴情のもつれかなんかで刺されたんですかね? どうかな? 良かったらあたいと一緒に自慢の三途のタイタニックでアバンチュールでも!」

 

 死んでないって言ってるだろ。というかタイタニックだと途中で沈むんですけど。流石に俺でも三途の川には浮けるかはわからない。蜘蛛だけに水蜘蛛の術が使えるがそれは果たして通用するのか。

 

「小町!! 貴女はさっさと仕事に戻りなさい! はぁ……全くそれでそちらの貴方は生きているのにどうしてこんなところに? 自殺ですか? それとも死んだことに気付いてないのでは?」

 

 彼女は俺の言葉を信じていないらしい。疑り深く訝しげにこちらを見ている。どうも能力を使っていないようだ。それならすぐに本題に入ってしまおう。

 

「どっちも違う。お説教を受けに。多分あの件だろ? 地獄にレミリア落として回収したやつ」

「私の説教を聞きたいとは感心な人間です…………は? レミリアとはあの吸血鬼ですね。それを落として回収した? 貴方が?」

 

 あれは今の日時よりもだいぶ前。紅魔館のメンツと弾幕ごっこをしていた時のことだ。あの時はお互いにほとんど弾幕に慣れていない時だったので、知識だけはある俺が有利になっていた時だ。

 

 そのほとんどをラストのスペルカードを使わずに倒していたのだが、流石と言うべきか唯一レミリアだけは最後まで辿り着いた。

 

 俺の最後のスペルカードはかつていた世界の話では俺がお釈迦様に言われてやった行動。俗に言う蜘蛛の糸という故事になっている例の逸話を元にした物だった。

 

 一連の流れとしてまず最初に俺は相手の最も強力なスペルカードを盗符『たった一度の善行』で奪い、こちらで使用する。ここで相手が糸を躱したり、既にスペルカードを使っていたらそのまま次のスペルを飛ばす。

 

 その後は俺が使う自身のスペルカードを超えれば、救済『蜘蛛糸の先へ』で相手に向かい糸を垂らす。それを掴めばこちらに引っ張り上げる。

 

 直後、最後に不可能弾幕『地獄落とし』が発動し、相手はそのまま負ける。という流れのはずだったのだが何故かそれで本当に地獄への穴が開いてしまい、レミリアが吸い込まれた。

 余談だが、彼女は第一段階の盗符の糸を避けたので救済が発動せずに即地獄送りとなった。

 

 そして俺は昔取った杵柄で地獄への穴を開けてから彼女を糸で引き揚げた。図らずも原作再現してしまった。

 

 それで話は終わったと思っていたのだがそうではなかったようだ。閻魔様にはお見通しだったというわけだ。彼女はわざわざ現世まで来て、実際にレミリアが先日犠牲になったようだし。

 

「……と、いう訳で彼女は俺が落としたんでちゃんと説教受けに来ました。ごめんね?」

「…………すいません。少々頭が混乱しているのでお待ちください」

「はい」

 

 四季映姫・ヤマザナドゥは小柄な体を縮めて頭を抱えてうんうん唸る。そうしているとしばらくしてこちらの様子がおかしいことに気付いた小野塚小町が様子を見に来るも彼女はまだ唸る。

 

「どうしたんですかー? 四季さまにサボられたら私が頑張っても意味ないんですけどー?」

「ご覧の有様だよ」

「はぁ……? 浄玻璃の鏡でなんか不味い物でも見ちゃったんですかねー? 四季様ー。早く霊を裁いてくれないと私が働こうとサボろうとどのみち滞りますよー。起きてくださいよー。また私サボっちゃいますよー。起きないならやっぱ口説こうかな」

 

 そう言って小野塚小町は四季映姫の頬を引っ張る。柔らかそうだ。でもそれ絶対あとで怒られるからやめた方がいいと思うぞ。

 

 そう思っていたら四季映姫は突如覚醒。小野塚小町を持っていた笏でぶっ叩いた。彼女の胸を。それはもうバチーンと。ああ痛そう。

 

「きゃん?! 痛ったぁぁ!! ちょちょ四季様! 何するんですか! 大きかろうと四季様みたいに小さかろうと痛い物は痛いんですよ!!」

「黙りなさい小町!!! 余計なお世話です! だいたい貴女がそんなものぶら下げているのが悪いのです! それと上司の頬を弄るんじゃありません! 黒です! そして貴方も黒です!!」 

 

 部下の胸を引っ叩いた笏でこちらを指す。

 

「理由を聞こう。俺が黒いのは髪とインナーくらいだからな」

「決まっています! まず第一に勝手に他者を地獄に落としたこと! そしてそれを無断で回収したこと! 貴方は我々をなんだと思っているのですか!? というかインナーってなんですか!?」

「特に何も。それとインナーは平たく言うと下着だ」

「しっ下着ぃ?!」

「うわぁ~」

 

 二人はこちらを見ながら顔を赤らめる。閻魔と言えどやはりこの世界ではこんなものらしい。たかが男の下着の色を知ったところで狼狽えるんじゃない。

 

 話が脱線したが、俺が地獄まで直通という凄いことができるせいで感覚が狂っている。神仏の類でもこんなことは簡単にできない。閻魔は本来普通に生きているだけの存在では確実に格上になるはずの相手なのだ。

 

「はっ! ちょっとちょっと! いくら顔が良いと言っても言って良い事と悪い事はあるんだからね!? 四季様! ちょっとお灸を据えてあげましょう! そして下着は剥いて確かめましょう!」

「何を言っているのですか小町……それにこの方は嘘をついていないようですね。ええ、本当に一切。だから黒です。いや白です」

「四季様どっちかわかりづらい!? 彼の言葉が黒で下着が白なんですか!?」

「下着が黒ですが彼の言葉は白です。ですがその行いは黒です! しかし頭にきますが事実として彼は私の裁定を覆す力を持っています」

 

 彼女はあくまで地獄の役人だ。そして俺は彼女の判決など無視して後から強権でもって好きなように人を動かせるだけだ。眼の上のたんこぶみたいな存在だな俺は。

 

「そうなんですか!? え? じゃあ本当にあんた何者なの!? お釈迦様!?」

「今はアトラク=ナクァを名乗っている人里の素敵な妖怪です。よろしく」

「あ、これはご丁寧にどうも。私はこの三途の川で船頭をやっている死神の小野塚小町です。彼氏募集中です。仕事終わったら飲みいかない?」

「酒は飲まないけどいいよ。美味しい物でも食べに行こうか」

「やった!」

 

 そんな会話をだらだらとやっていると四季映姫は息を深く吸い込んだ。

 

「ただし! それ以外にも罪はありますからね! 貴方は男に耐性のない者に人妖関係なくいかがわしい誘惑をし、闘いを持ちかけています! それにより無用な争いも起きているではありませんか!」

「うわっ!? びっくりしたぁ……急に大声ださないでくださいよ。今あたいが口説いてるんですから」

「それは文句言われてもな。お互いに望む物を提供し合っているだけだが?」

 

 俺は闘い。むこうは……女の夢?

 

「小町は黙っていなさい! いけません。不潔です! 貴方は男女の仲を、女の欲を軽く考えすぎています! いつか痛い目を見ますよ!」

「それはついこの間見た気もする」

 

 幽香に見せられた。勝つには勝ったがあいつめルール無用の残虐ファイターだった。最近は基本ルールに則って闘ってたから逆に新鮮だった。昔はともかく今は俺も幻想郷で生きる一人なのでそちらに流されてはいけないのだ。

 

「ですので! 私が貴方を管理します! 閻魔として貴方に正しい愛と女性との付き合いを手ずからじっくり教え込んであげましょう! 大丈夫です! 稼ぎはあります! 貴方は家でじっとしていてください!」

「四季様!? それはもうむしろそっちの方が黒なんじゃ……」

「それはつまりここでやるって事か? それならいいだろう。そっちの小町ちゃんもおいで。主従まとめて娶ってやるさ。俺に勝てればだがな!」

 

 閻魔様と死神。こんなに珍しい相手と闘えるんだ。これを逃す手は無い。願ってもいない展開だ。

 

「いきますよ小町! 貴方のその精神にもお説教です!!」

「マジですか……ちょっと段階を飛ばしすぎな気もするけど。でもせっかく巡ってきたチャンス! 久しぶりの霊魂以外の肉のある男だしあたいもいっちょ婚活頑張るかー!」

「さあ白黒つけるか! 俺に黒星を付けたいと言うなら俺に勝ってみせろっ!!」

 

 三途の川を舞台に弾幕での闘いが始まった!

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

「……いやぁ……調子のってたな……二人まとめてとか言わなければ良かった……」

 

 俺は肩で息をしながらなんとか喉から言葉を絞り出す。軽い気持ちで挑んだ一対二は思いの外ギリギリの闘いとなった。身体はボロボロのクタクタだ。

 

 しかし白はこちらだ。

 

「……やっぱりこのくらいの格になると手強い」

 

 元より地獄の是非曲直庁のような組織に所属できるほどの連中だ。素の力からして違う。組織では下っ端と言えても閻魔も死神も幻想郷だと上の方もいいとこだ。

 

 やはり早急に元の力を取り戻しておかないと後々力不足だろう。原型も古き神の力も易々と使うものじゃない以上は仕方ない。

 

「まさか我々が負けるとは……流石はお釈迦様のお付きをされていただけはありますね。小町も今までに無いやる気を出していたのに……」

「そんな雲の上の人だったんですか!? それを言うなら映姫さまこそ……あんなに必死なの初めて見ましたよ?」

「仲が良いなアンタら……とりあえず今日のところは俺の勝ちだ。説教終了とみなして帰っても?」

 

 二人でお互いを微妙に評価しあっているところに口を挟む。早う帰って飯食って寝たいんじゃ。紅魔館から直接来たからもう夜だし。

 

「いいえ! それはそれ、これはこれです! 貴方にはしっかり説教をさせてもらいます! 付いてきなさい!」

「ご愁傷様色男~。さあ私も疲れたしひと眠りするかなぁ「小町!!」わかってますよ~! はーい渡し船出航しまーす!」

 

 小町が戦闘から避難していた魂たちを呼び戻す。こんな時間でも仕事はするらしい。ご苦労なことだ。

 

 俺は弱っている体を掴まれて川向こうの裁判所まで連行された。彼女らは二対一だったので俺と比較するとそこまでのダメージはないらしい。

 

「勘弁してくれ……」

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 咲き誇る花の異変は終わった。霊たちも花から巣立って三途の川を渡り、受けるべき裁きを受けて逝くべき場所へと逝ったのだ。

 

 幻想郷では最後の桜だけが残ったがそれもいずれ散るだろう。かつて日本の武士(もののふ)たちが桜を愛した理由である咲いてはすぐに散るその様に美しさを見出したのと同じように。

 

 さて。そんな異変のことを知っていた俺はと言うと。

 

「さて。貴方のその女も男も区別をしない隔たりの無さはこの世界においてはとても得難い美徳です。他の方々も貴方のような規範を心に生きてほしいと思いますがこの世界は決して平等ではありません。いいですか? この世界ではかつて貴方の生きた世界とは違い、男性ははるか太古の昔からその数は少なかったと言われています。大前提としてその二つの分類は最初から等価値ではないのです。片や存在そのものが希少な男性。片や半分減ったとしてもそれでもまだ多いくらいの女。当然そんな女の中でも優劣があります。なのに貴方は好んで容姿の劣る女性を好んで誘惑する……全く貴方は淫魔ですか!? そんなことでは幻想郷中の妖怪がダメになってしまう……ちょっと聞いてるんですか!?」

「聞いてまーす。仕方ないだろう。俺にも好みくらいはあるしそもそも強い妖怪はみんなお前らの言う容姿の劣った女なんだから。俺は闘いたいんだ! それと俺は蜘蛛だって言ってるだろ!! 誰が淫魔だ!! 吊るすぞ!」

「何ですかその返事は! 貴方はちょっとどころでなく業が深すぎます! 別に女に手を出すのは悪いことでもありませんしやめろとも言いません。繁殖に励むのは生物としての義務ですし健全な男性としてむしろよろしい。ただ粉をかけるのは百年くらいは私と百歩譲って小町くらいにしておきなさい。このままでは貴方を結婚詐欺師として裁かなくてはなりません。それでは手元におい……オホン」

「映姫さまも結構男運も縁も無いんですよ。ごめんなさいねぇアトラクさん。あたいらがここは奢ってあげるから許してやってよ。お酒飲む?」

 

 ミスティア・ローレライの店で飲んでいた。そう、またなんだ。妖怪と閻魔と死神では他に行くところがないとも言うが。映姫も小町もガブガブ酒を飲む。当然俺はお水。お水美味しい。カフェインはダメ。

 

「それはまあある程度は理解している。俺ももう二年くらいはここにいるからな。それと酒は結構と言った。飲めるが飲まない主義だ」

「白」

「ありゃ! 四季様が白って言うなら本当だ。残念だねぇ」

「便利だな。まるでポリグラフだ」

 

 ポリグラフ。所謂ウソ発見器。彼女は能力の応用かはたまた自身の職業柄かそれと同様の力があるらしい。

 

「鏡も使ったらなんでもわかるんだけど非番で使うのも問題だしね。そうだ! せっかくだし四季様の力を使って質問でもさせてもらいますかね! 親睦深めようじゃないさ!」

「小町お前……上司を合コンのグッズみたいに使うとは」

 

 怖い物知らずか。しかし映姫も疲れていたのか既にかなり酔いが回っているらしい。黒と白しか言わなくなっている。

 

「白」

「四季様も良いってさ!」

「それは了承なのか? まあいい。探られて困るような腹はない。存分に聞くといい」

 

 

 それから俺は彼女の質問に答えていた所で正気を取り戻した映姫に彼女をおもちゃにしていた件でさらに説教を食らうことになったのだった。




一人で勝手に少年漫画級のインフレをしていく男スパイダーマッじゃなくてアトラクさん
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