東方 あべこべな世界で戦う    作:ダリエ

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36 祭りの後もしくは後の祭り

 俺は外での私用を粗方済ませた上で、頼まれていたお土産を抱えて妖怪の山に新しくできた守矢神社への参道を意気揚々と登っていた。

 

 今回の外遊で金策や道具の調達以外でわざわざ外に出て行く用事も無くなった。後は幻想郷で楽しくバトルライフを送って生きていける。気分は最高だ。

 

 さて、あの守矢神社一行を幻想郷に招いてから今日でおよそ二か月ほどが経ったことになる。その間の期間は俺はできるだけ神社にて彼女たちと一緒に同じ屋根の下で暮らしていた。これは彼女らにこちらの暮らしを指南するという名目の他に俺がこの世界の外の人間の一般的な生活を知りたいためでもあった。

 

 まあ生活スタイルというのは各家庭や住んでいる国と地域とか時代とか多くの要因でかなりの差異もあるが、その中の一例としては参考になった。そこからの推測でこちらの人の営みも察せられるだろうし。こういう何気ない知識が明日の不労所得につながるのだ。巣を張りさえすれば勝手に獲物が引っかかるような効率の良い蜘蛛めいた暮らしを俺は心がけたい。

 

 そしてその結論として……俺が誰かと普通に一緒に暮らすのは時期尚早だろうということがわかった。

 

 八雲一家や白玉楼の面々はそもそも人外だったり元人間とか半分人間とほぼ人外寄りだったことやそれに加えて俺がある程度客のような扱いをされていたので問題はなかったが、守矢神社では普通の暮らしをした。

 

 すると問題が発覚した。

 

 一例をあげると前の世界では男は風呂上りにパンツ一丁で歩き回るというものがわりとよく見られたそうらしい。気持ちはわかる。それがこちらでは単純に男女が逆転して女がパン一で歩き回る姿が頻出した。どうやら彼女らはそういう文化だったらしい。早苗とか神奈子とか風呂上りに血色よくほんのり湿った肢体を惜しげも無く晒して容赦なく徘徊しているのだから最初に見た時平静を保つのに焦った。

 

 こういうことならやはりヌーディストビーチにでも行っておくべきだったろうかとも思ったがそんなのは後の祭りだ。こんな物を毎日見せつけられたら流石の性欲薄めの俺でも五年と経たずにレッドゾーンへと行ってしまう。これでは俺が頑張って作っている君もアトラクさんに勝ってレッツウェディング!環境が崩壊する。

 

「アトラクさん? ああ、あの人なんか裸見せたら一発で抱けますよwwwちょろいちょろいwww」

 

 なんて風評ができてしまう。これはいけない。自分を律しなくては。性欲に流されるのだけはいけない。時の権力者もその多くが似たような過ちを犯しているのだ。気を付けよう。

 

 さて、そろそろ守矢神社に到着だ。早苗ならばもしかしたら既に射命丸を倒している頃だろう。つまみ食い……ではなく俺が稽古をつけてやっても良い時分だろうなんて思いながら石段を登り終えた。

 

「ただー……い……ま……?」

 

 石段の上にはまだ整備したばかりで綺麗に整っているはずの石畳があるはずなのに、その石畳は明らかに激しく損耗している。いかにも弾幕ごっこやりました、なんて感じの弾痕が至る所で自己主張していた。

 

 視線を動かす。鳥居には酒瓶を抱えた白い天狗、犬走椛が寄りかかって寝ていた。彼女だけではない。見渡すと山の面子が揃っているではないか。そしてどう登ったのか鳥居の上には文が座り込む。まあ鳥なら酔っぱらいながらもバランスを取れるのか?いやそんなことはいい。 

 

 他のにも秋姉妹やにとりに雛はもうその辺で寝転がっている。諏訪子は特におもしろい。なんと石灯篭に挟まっている。それどうやったの?

 

 とりあえず全員に布をかけてやり、残りの顔を探す。早苗はまだ飲めないはずだし神奈子はそう簡単に酔いつぶれないはずだ。彼女は酒に強い。

 

 何が起きたかを聞くために二人を探そうと歩みを進めたら意外な人物に声を掛けられた。

 

「はぁいアトラク。おかえりなさい」

「紫?」

 

 八雲紫であった。そういえば彼女にはお土産買ってない。要求されたらどうしよう。

 

「私よ。お勤めご苦労様。何が起きたか知りたいんでしょう? 大部屋へと行きなさい。そこに二人ともいるわ」

「わかった」

「じゃあ頑張ってね」

「?」

 

 スキマから顔だけ出した紫の言う通りに、俺が出る前にはまだ一度も使っていなかった部屋へと向かう。いずれやるだろう宴会を行うために設けた大部屋だ。テーブルを設置したうえでそれこそ百人くらいは室内に収納できる間取りになっている。

 

 そこに二人がいるということはやはり宴会があったらしい。それにあの戦闘の後。これはもしかして……

 

 そんな不安を胸に抱えて大広間の前に着いた。そうして一度深呼吸をしてから襖を静かに開けると。

 

「ううぅ…………」

「んくんく……ぷはぁ!」

 

 首から「私は博麗の巫女に勝手に喧嘩を売って負けました」と書かれた紙を下げて泣きながら正座させられている早苗と未だに上座であぐらをかきながら酒を飲んでいる神奈子がいた。

 

 部屋は宴会後の食器や空き瓶がとっちらかったまさしく惨状だ。これは誰が片付けるんだい?もしかして俺が片付けなければならないのか?帰ってきたばかりで一度寝ようかななんて思ってたのに?ああ、気が遠くなるようだ。

 

 よく観察してみるとこの部屋にある酒瓶は確かここの神社用に用意した物の全てがあるように思う。いや、どうかしたらそれよりも多い。なんとか中身が残っている物も既に神奈子のテリトリーにある。回収は無理そうだ。すごい出費だぁ。

 

 ああ。だめだ。本当に気が遠くなってきた。俺にここまでのダメージを与えるとは。やるじゃないか守矢の神々。

 

 そして俺は一番大切なことにやっと気づく。

 

「というか異変終わってるじゃん」

 

 記念すべき守矢神社から端を発した異変第一弾は俺が一切の介入もできずに終わっていた。俺は床に膝から崩れ落ちる。

 

 今回。俺は守矢神社の面々を少し早めに誘致し、あらかじめ鍛え、そうして強くなっている彼女らを倒した後の最もできあがっている状態であろう巫女に異変の黒幕として今のパーフェクトな状態で満を持して闘いを挑むつもりだったのだ。

 

 それが帰ってきたら祭りの後だった。そしてなぜか宴会の片付けだけ押し付けられた。どうしてこうなった。

 

「チクショー!!」

 

 俺の叫びだけがむなしく妖怪の山に響いたのだった。

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

「ふっふっふ~ん」

 

 守矢神社での出来事から数日の時が経ち、博麗神社に一人の少女が降り立った。

 

 彼女の名前は霧雨魔理沙。白黒の魔法使い。普通の魔法使い。魔法使い系シーフ。星好きな魔法使い(水属性)。

 

 彼女を表す二つ名はたくさんあるがこの日に限って言えば、最も適当なのは()()()()()()である。

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

(今日はいっぱいきのこも採れたし途中で妹紅の奴にきのこをたけのこと肉も交換してもらえたからいつもより豪勢なきのこ鍋ができそうだな! 霊夢も喜ぶぜ!)

 

 先日の守矢神社の異変はほとんど霊夢の私事だったので人里からの報酬は得られなかった。前回の花の異変も結局は解決しなければいけない不利益もなかったのでそこでも報酬はなかった。そもそも解決できなかったというのは置いておく。

 

 故に今の霊夢は野良の妖怪を退治してなんとか日銭を稼いで食いつなぐ極貧生活を送っていた。魔理沙はそんな霊夢を心配してこうしてかかさず支援物資を持って来ていた。今日もそんな変わらない平穏な日だと思っていた。

 

(あれ?)

 

 空から博麗神社の裏側にある霊夢の住居スペースに魔理沙は直接着陸する。するとどうだろうか。何かいつもと違う。いや、いつもは聞かないような耳慣れない音が聞こえたではないか。

 

(新しい料理でも作ってるのか? 違うよな。ここにはもう米と調味料くらいしかないし……塩ごはんか?)

 

 酒もこの前萃香に飲み干された。

 

 その音は、例えると渇いた木に金属がぶつかるような音。コンッ、カツンッ、チャリンッ、と言ったような高い音だ。それがだいたい三十秒に一度のペースでこの神社には鳴り響いていた。

 

 コンッ!カッ!カッ!チャリーン…………

 

(まただ。なんなんだぜこれは? とりあえず霊夢に問い詰めるのが早いか)

 

 魔理沙はそのままこの時間に霊夢がいつもいるだろう部屋に足を運んだ。すると魔理沙が開けた襖の前に彼女は座り込んでいた。

 

「うおっと!? 危うく蹴飛ばすところだったぜ。霊夢そんなところで何してるんだ? って、お前泣いてるのか!?」

「ああ、魔理沙……」

 

 驚いたことに霊夢は泣いていた。あの霊夢がだ。妖怪を無慈悲に退治する博麗の巫女が、鼻をすすりながらさめざめと泣いているのだ。これはどういうことなのか。魔理沙は困惑した。

 

 すると霊夢の方がゆっくりと言葉を発した。

 

「お」

「お?」

「おさい……せん……お賽銭の音がするの」

「!?」

 

 魔理沙は音の方へと反射的に顔を向けていまう。今も魔理沙の耳まで届いている謎の甲高い金属音。そうだ。あれはお賽銭の音だ。久しくお賽銭の音など聞いていなかったので魔理沙はついつい失念していた。

 

「いったい誰が!? 誰か確認したのか!?」

 

 霊夢は首を横に振って否定する。

 

「その……怖くて……私の姿を見せたらいなくなりそうで……」

「鶴の恩返しか!? いいから行くぞ! この神社でお賽銭入れようなんて頭がイカれた奴のご尊顔を拝んでやる!」

「やめて魔理沙! お賽銭を入れてくれる参拝客は神様よ!」

「逆だ逆! 参拝客が神様を拝みに賽銭持ってくるんだぜ! それに巫女なら神様に姿の一つでも見せるんだよ! 引きずってでも連れて行ってやるからな!」

 

 魔理沙は霊夢をそのまま引きずって拝殿まで突撃する。

 

 この貧乏で力だけのブサイク巫女しかいない神社に賽銭を恵んでやる人物。気が触れたくらいの奴ならともかくこれで霊夢の感心を買ってなにか利用しようと言うのなら紫にチクって幻想郷の闇に葬ってやると魔理沙は考えていた。

 

 カコーンッ!カッ!カッ!チャリーン……

 

 まただ。下手人は未だにこんなことをしている。

 

 霊夢は貧乏から脱却できる喜びと得体のしれない賽銭の恐怖でなんとも表現しがたい表情で泣き笑っている。

 

(私はもうこの状態のこいつが一番怖いぜ……霊夢が役に立たないならこの魔理沙さまがお前の正体を暴いてやる!)

 

 二人は遂に拝殿の前へと躍り出る。そして犯人へと向かい合った。

 

「何者だ! 名を名乗れ!」

「ああ。やっと来てくれたか。どこかに遊びに行ったかと思ったよ。俺に名前はない。呼び名で困るのならアトラク=ナクァで通しているからそう呼んでくれ。霧雨魔理沙」

 

 その人物は男だった。かなり整った容姿をしている。魔理沙は検分する。

 

 背は香霖よりも高く、体もあいつよりも頑強そうな体格だ。表情も気だるげなあいつと比べるとキリリとしていて覇気があるように思う。そして自分が見た男の誰よりも存在感を感じる男だと。魔理沙はそう分析した。

 

 変わったところだとその男はここらでは珍しい洋服を身に纏っていた。男の洋服なんてのはここでは本当に珍しい。女ならばそれこそ魔理沙自身やアリスに紅魔館の住人など多くの人物が着用しているが男だとそうそう出てこない。まあ魔理沙自身は男などもう長い事森近霖之助以外と会っていないのでどこかで流行っていたとしても知らないのだが。

 

 身に纏う衣服とは別に男はその手に袋を持っている。中は見えないがおそらく小銭だろう。もう片方の手には袋から取り出したであろう人里で流通している硬貨をその手で弄んでいる。

 

 間違いなくこいつが賽銭異変の犯人だと魔理沙は確信した。

 

「私のことを知っているのか?」

「俺は幻想郷のだいたいの奴ことは知っている。そっちの巫女は例外であまり知らないが。なんなら初めて元気な姿を見たくらいだ」

 

(霊夢を知らない……? ということは霊夢が目的じゃないのか?)

 

 意外にもその男は霊夢のことを知らないと言った。目的は霊夢のだろうと思っていた魔理沙からすれば予想外だった。ひとまず勝手に検討を付けていたような悪人ではなさそうだとは理解した。

 

「とりあえずこれはもういいな。よいしょっと」

「「!?」」

 

 男はギシリと階段を踏み鳴らして賽銭箱の真ん前まで近寄ってから、その袋をひっくり返した。すると、中からは大量の硬貨がそのまま賽銭箱になだれ込む。ちらっと見えたがあれは高い方の硬貨だ。それがあれだけの量あれば確実に霊夢の生活は向上するだろう。

 

「……もしかして神様?」

「馬鹿言ってんじゃないぜ霊夢。お前からしたら神様かもしれないけどさ」

 

 気持ちはわかるが今は黙っていてほしいと魔理沙は思った。最近は神降ろしの修行などもしているようだし、先日がそれこそ神と闘ったがそれはそれだ。

 

 しかし、またまた魔理沙にとって予想外の展開が待っていた。

 

「おお! 流石に巫女なだけはあるな。わかるか。フフフ。俺も最近神になったんだ。司るのはこいつらさ」

 

 男はそう言って神社の柱を這っていたそれに指を向ける。

 

「蜘蛛……?」

「ああ。俺は全ての蜘蛛を守護する神。そして同時に太古より生きる名前の無い蜘蛛の妖怪だ。さらに今は人里の住人で服屋を営む幻想郷の素敵な服屋さんアトラク=ナクァ。よろしくな。実はお前たちの服もいくつかは霖之助に渡した俺の糸で作られているんだぞ? 今日は着ていないみたいだが……」

「ちょっと言ってることが理解しづらいけど……お前が妖怪だってことは理解できたぜ! さあ! 妖怪風情が神社に来るとはどういう事か答えてもらおうか!」

 

 魔理沙はその情報量の多さからとりあえず自分の考えに都合の良い妖怪と言った部分だけを取捨選択して抜き出した。妖怪ならおいたをするなら男だろうととりあえず弾幕ごっこで退治すればいいからだ。

 

「このおバカ!!」

 

 ガスッ!

 

「痛いだろ霊夢! 何すんだよ!?」

 

 お祓い棒で頭を殴られた魔理沙が堪らず抗議して霊夢を睨む。その顔はさっきまでの役に立たなそうな物ではなくいつもの気色を取り戻していた。いつもの頼れる幻想郷の素敵な巫女さんだ。

 

「このバカ魔理沙! 相手はあの神奈子や諏訪子みたいな馬鹿神じゃなくて親切に賽銭までしてくれた礼儀正しい神様よ! 元が妖怪だろうが人間だろうがどんな神様だろうと礼を尽くしなさい! なにより私の前で男性に手を出したらアンタ退治するわよ!!!」

「はいぃ!!」

 

 魔理沙からすれば賽銭したとかそういうのは一切関係ないが完全に気圧された。男性云々に関しては霊夢が正しいがそこはもう気迫で負けた以上間違っていようが抵抗は不可能だった。後は事の成り行きを見守るのみだ。

 

 余談だが霊夢の仕事には里の守護もあるので必然里から出ない男性の守護も勝手に内容に入っている。なので見た目とは関係なしに博麗の巫女は一定の人気を維持している。姿を見せなければの話だが。

 

 二人の話を生暖かい目で見守っていた男が機を見て喋り出す。

 

「実は今日はその件で来たんだ」

「と言いますと?」

 

 霊夢が慣れない敬語を使っているのに笑いそうになった魔理沙は巫女の鋭い眼光で睨まれ大人しくなる。

 

「いや。実は俺。あの異変の黒幕なんだよね」

「「え?」」

 

 一拍開けて。

 

「「ええええええええ!?!?!?」」

 

 今度は守矢神社の空に二人の驚愕が響いたのだった。

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

「つまり、今回の異変は本当は前々からこっちに来るはずだったあの守矢神社の馬鹿どもを一足先に引き込んだお前こそが黒幕だったっていうことか?」

「そうだ」

「でもあのアンポンタンの早苗がどういうわけか先走って、アトラク様がおられない間に私にわざわざ喧嘩を売りに来て、想定よりも早く対決が始まったせいで帰還が間に合わずに予定が狂ったと?」

「うん」

 

 俺はそう応えてうなずく。なんとも情けない話だ。

 

「意図的に会わなかった訳でもないがお前たちには中々会えなかったからな。春雪異変とか永夜異変で一応決戦の場にはいたけど。これから始まる異変の前にちゃんと手合せと顔合わせをしておきたかったのだが……タイミングを逃してしまって今日は自分からこちらに来たわけだ」

「そういうことなら別に今日のように普通に来てもらえばよろしかったのに」

「そうだな。なんでそんなまどろっこしいことしたんだ?」

「あーそれは」

 

「それは私が教えてあげましょう」

 

 なんの変哲もない空間に一筋の線ができ、そこが開く。中からは声の主である紫が出てきた。

 

「「「紫」」」

「あらあら。三人揃ってご挨拶ね」

 

 紫と呼んだ二人の顔はどちらも歓迎してるとは言えない表情だった。かくいう俺もそういう顔をしているつもりだ。

 

「またアンタは今回の件どうせ全部知ってたんでしょ。この腹黒!」

「何しにきやがったこの性悪スキマババア!」

「お前絶対あの時の宴会来てたろ。よくも片付け手伝わずに帰りやがったな。そういうとこだぞ」

「まさかそこまで言われるとは思わなかったわ。二人はいずれこき使ってやるとしてアトラク? 宴会を開いたのならホストが用意から片付けまでするのが道理じゃなくて?」

「俺は開いてもいないしなんなら一切の飲食もしてない。片付けしかしてない。早苗は結局足がしびれていた上に徹夜でおねむだったから寝かせたし、神奈子も諏訪子も酔ってて使い物にならなかったから俺一人で後始末をやったんだぞ!? それにその日の家事までだ!!」

 

 帰ってきてすぐで疲れてたし眠かったのに!

 

「ええ……紫そのこと知ってて一人でやらせるとか性格悪すぎない?」

「諦めろ霊夢。紫はそういう奴だ。私でもそういう状況ならちょっとは手伝うぜ?」

「いいぞ! もっと言ってやれ!」

「アトラク……貴方ね……!」 

 

 もう予定を変更してこいつと闘おうかとすら俺は思い始めた。今ならあの力を使わずとも五分に持ち込めるだろう。

 

 するとまたしても人が来た。ただ彼女らが来ることは予定されていたことだ。

 

「遅れたかしら?」

「アトラク来てる~? お、霊夢に魔理沙に……紫もいるの? なんで?」

「アンタたち今日は何しに来たのよ」

「そんな嫌そうな顔しないでおくれよ~。ここでは宴会すれば過去は全部水に流すんでしょ? それに今日は普通にお願いがあって来たんだよ。ねえ神奈子?」

「ええ。霊夢。前のことは素直に謝るわ。私たちの監督不足だったわ」

 

 神奈子がそう言うと諏訪子と二人で頭を下げた。

 

 神が頭を下げるなど、なんて神奈子は言いそうだが巫女相手なら良いのだろうか。それともこれは彼女の保護者としてだろうか。まあ今回話をスムーズに進めるためには大事なことだ。

 

「……わかったわよ! それで話って何よ?」

「この博麗神社に私たち(守矢)の分社を建てさせてほしい。建てると言っても小さい祠程度の物を置くだけだから特に心配しなくていい。作業も全部こっちでやるから」

「まあそれくらいならいいけど……後からウチを乗っ取ったりしないわよね?」

「しないしない。そもそも現状でこの地での信仰は私たちの方が集めてるんだからいらないのよ。アトラク(こいつ)は信者が人じゃなくて蜘蛛だから争うことも無いし。早苗はなんでわざわざケンカ売ったのかしらね」

「アンタら好き勝手言ってくれるわね……!」

 

 神奈子がナチュラルに煽っていく。まあ事実だししょうがないだろう。実際に彼女たちは信仰を得ていて俺は神としては人からの信仰を受けない。蜘蛛飼っている人からは受けられそうだけど社とかないから願えない。

 

「落ち着けよ霊夢。それでこいつがわざわざ異変を起こしてまで私たちと闘おうとしたのかの理由を聞こうぜ?」

「ああ、そういえばそんな話だったわね。ほら紫、さっさと言いなさいよ」

「ええ良いわよ。でもてっとり速い方が良いでしょう? 万事何事もね」

 

 紫はそう言って俺たちを見まわしてから続けた。紫の口から出たその言葉は俺からすればとても都合の良い言葉だった。

 

「だから魔理沙。それと神奈子。貴女たちアトラクと闘いなさい」

 

 

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