ダンジョンで美醜逆転は間違っているだろうか? 作:夜と月と星を愛する者
そいと、補足
アキレウスは第二再臨の見た目だが、武器もないし盾もなければ宝具もない。あるのはその身ひとつだけ(その体も宝具だが)
チュンチュン
湖の近場にある寝床から1人の男が出てきた
「んーー!……朝か…夢じゃ……ないんだな。……はぁー…」
昨日の事が鮮明すぎて現実味を帯びず……いや、もともと転生してる時点で現実味もへったくれもないが
「さて、まだ、早いし……この体のスペックを確かめるか」
アキレウスの肉体と言っても中身は異世界から来た普通の男なのでまずは体を慣らさなくてはいけない
「昨日のミノタウロスでわかったが、脳が肉体に追いついてない。1日2日で大きな成果は出ないと思うが……まずは走るか」
そう言って、クラウチングスタートの構えをして…踏み込む
ピシュン!!
「はぁ!?…やべ!」
予想外の速さに驚き目の前にあった岩に激突した
ドゴーン!
「イタ……くはないな。蚊に刺されたみたいな感じだ……本当にこの体は凄いな。よし!足の速さはFateのアキレウスと同等だが、体に脳が追いつかねぇ…練習あるのみ!」
時には木にあたり
バギッ!
また岩にあたり
ドゴーン!
魔物をひいて
グギャ!?
時間にして大体1時間
「ふぅ、スタミナもあるし文句なしの高スペック。速さも慣れたな。もともと肉体はアキレウスだからいわば数日筋トレしてなかった人程度しか落ちていなかったのか…」
そう、ボディビルダーでも数日筋トレしないでいると筋肉は落ちる。この場合は転生したのもあるが、中身が高校生なので、少しこの体に追いつかなかっただけなのだ
「それじゃあ…次は…英雄威光はいいな。それならアポーツの方を練習するか……」
アキレウスは目の前にある木の枝に手を向けて
「アポーツ!」
シーーーーン
「って!出来ないんかい!……ん?」
僅かだが、アポーツと唱えた途端体から何かが抜けるようなのを感じた
「てことは、間違ってはいないが、何か条件があるのか……今の体から抜けていった何かか?……だが、一体その何かはなんだ?………」
(何かとはなんだ?…このスキルを満足に操作できるはずの何か………いや、待てよ?アポーツってのは一種の念能力みたいなものだったはずだ、だったらこれはスキルというより…“魔法”?……じゃあ、何かはもしかして魔力か?……だが、どうやって物を取り寄せる。魔力だとして、魔力を操作できないといけないのか?……わからん!)
流石に昨日から異世界に来たばかりの人間にはなかなか難しいようだ
(ん?)
その時、天から神託がくだった
『逆に考えるんだ、魔力を操作しなくていいじゃないかと』
(あ、安○先生!……そうか、魔力を操作しないんじゃなくて、魔力を込めればいい!)
神託(w)の言葉により逆転の発想をすることにより。魔力を操作するんじゃなくて、取り寄せるものに魔力を込めればいいという考えが浮かんだ…アキレウスは早速木の枝を掴むと
「……あれ?魔力ってどう込めるんだ?」
今この場に誰かいたのならズコーー!っといった感じで頭から地面を滑っただろう
「…あ、アポーツを唱えた時に抜ける感覚がしたが、それをどうにか上手く扱えれば……『アポーツ』!」
(よし、魔力が抜ける感覚がした、これをどうにか体の中で……ん?やり方がわかる。これもアキレウスが体そのものに身につけたからか、ありがとうアキレウス)
英雄アキレウスのお陰で、なんとか魔力を掌に集めて木の枝に練ることとに成功した。そして距離をとって
「…よし……『アポーツ』!」
パシ!
見事、木の枝はアキレウスの腕に収まった
「よっしゃ!成功した!……あ」
喜ぶのも束の間、アキレウスは大切な事を忘れていた
「やべ!ベルのとこに戻らねぇと!」
流石に時間も時間なので、ベルは既に起きているだろう。そしてアキレウスは来た道をアキレウスの俊足を持って駆けた
「ヒッグ…うぅ…アキレウスさん〜……」
戻るとそこには膝に頭を埋めて泣いているベルがいた
「す、すまねぇ!」
と、そこに物凄い速さで戻ってきたアキレウスが、謝った
「うあ…アキレウスさんー!!」
声を聞いて顔を上げるとそこには昨日と同じ姿をした、アキレウスがいた、そして感極まってアキレウスの胸にベルは飛び込んだ
「すまなかった、ちょいと鍛錬してたら遅くなっちまった」
「ううん…ちゃんと戻って来てくれたから嬉しい……でも…寂しかった…また、1人になるんじゃないかって、心配で…」
(そうだったな。ベルの爺さんはベルを置いて何処かに行っちまったんだったな…)
「大丈夫だ、昨日今日の付き合いだが、お前とは仲良くなったからな。お前を1人にはさせないさ」
アキレウスはベルの頭を撫でながら囁いた
「ッ……それって……告白?」
「……んん〜……そう…だな…」
ベルの上目遣いに根負けしてアキレウスは肯定した
「え!?そ、それって、つ、つまり!ぼ、僕とアキレウスさんが、つ、付き合うってことだよね!?」
行程を飛ばしながらいつのまにか恋人まで進んでるが、アキレウスは彼女が出来たことがない。こんな可愛い子と付き合えるならいいやと思い
「まぁ、昨日会ったばかりの男と付き合うってのもどうかと思うが、まぁベルがそれが本望だったらそれでいいぞ」
「〜〜!!や、やった!僕にも彼氏ができた!……あ、えっと、それと、昨日会ったばかりの人と付き合うっていっても僕の村に商隊の人たちが来てそのら中に男の人がいて、あって1時間も経たずに僕の村の女の人と付き合って、家の中に入っていったよ?」
(えぇ〜〜……そんなの出会い系サイトでも起きねぇぞ、しかも家の中に入っていったって……一体ナニをしたんですかねぇ?)
「そ、そうか、さて、それじゃあオラリオに行くとするか、まずは片付けないとな」
「う、うん……えへへ」
ベルは流れるような動作で俺の横に並び恐る恐る俺の手を握ると、そのまま腕を抱きしめた
(……柔らかいものが俺の腕に!)
アキレウスが煩悩に悩まされながら片付けをするといつもより少し遅いくらいで準備が整った
「さて、それじゃあ行くか!」
「う、うん!」
森を抜け、歩道を歩くこと1時間
「スーリスーリ……えへへ〜」
ベルはアキレウスの腕を離さずずっと抱きしめたまま歩いていた、流石にこんな嬉しそうにしているベルに辞めろとは言えず、こんな状態が1時間も続いていたのだが、流石に歩くペースが遅いと感じだアキレウスは
「なぁ、ベル」
「ん?なに?」
「オラリオに早く着きたいからお前を抱っこしていいか?」
「え?え!?だ、抱っこ!?てことはお、お姫様抱っこ?」
アキレウスはおんぶの事を考えていたのだが、ベルがキラキラした目で此方を見てくるので今更違うとは言えずまた肯定してしまった
「えへへ、僕一度でいいから男の人にお姫様抱っこして欲しかったんだ」
ベルの見た目も相まって、その2人は姫を抱っこする騎士に見えなくもない
「そうか……かなり早いが問題ないよな?」
「早いってどれくらい?」
「馬車の全速力の数十倍」
「え?」
ベルが疑問を投げかける前にアキレウスは地面を蹴った
「うわぁぁ!!は、速い!速すぎるよ!アキレウスさん!」
「そういえば、せっかく俺たちは付き合ってるんだ、さんなんて堅苦しいことは言わずアキや、レウスって呼んでくれ」
「え?じゃ、じゃあ……れ、レウス?……〜〜〜!!!は、恥ずかしい!」
「今の可愛いかったぞ、それと何回も呼んでたらいずれ慣れる」
「そ、そんなー!?」
少女を抱っこして歩道を駆けていく1人の戦士にして英雄はオラリオに向けて駆ける。誰よりも。何よりも速く駆ける
「はぁ、はぁ、はぁ……は、速すぎるよレウスぅ…」
ベルは息を切らせオラリオの城壁が見えるところまで走ってくると、流石にベルの体力が持たなかったので、近くの草原に腰を下ろしていた、因みに膝枕…膝枕!←ここ重要
「と言っても俺がベルを膝枕してるんだがな」
「え?」
「いや、なんでもない。さて、ベルも大丈夫そうだし行くとするか、最初は宿をとらねぇとな……と、そういえば昨日倒したミノタウロスからドロップしてたミノタウロスの角を売らねぇと、流石にベルにいつまでも助けれもらってばっかじゃ悪いしな」
「ぼ、僕は大丈夫だよ?むしろ、レウスと一緒にいれるなら僕はなんだってするし」
「コラ、女の子がなんでもなんて事は言っちゃダメだ……まぁ、その気持ちは嬉しいがな」
アキレウス改めレウスは頰をぽりぽりと掻きながら気持ちを伝えた
「さて、それじゃあまずはオラリオでミノタウロスの角を売って、宿をとって、それから所属するファミリアを探すとするか」
「うん」
そして、2人がオラリオに入ると奇異の視線とリア充へ向ける視線、そしてアキレウスを情熱的に見つめるこの世界では美しい女性たち
「うぅ」
「大丈夫だって、周りの事なんて気にするな。ベルがしたいようにすればいいさ」
「…そ、そう?…だったら…えい!」
ベルは意を決してアキレウスに抱きついた
「いや、まぁ、したいようにすれば良いとは言ったが、これじゃあ逆効果……いや、むしろ女たちが寄ってこなくなるからむしろ好都合…」
「え、えっと…迷惑だった?」
「……いや、むしろこれで良い」
周りの視線を気にする事なくレウス達はオラリオを散策し、途中に寄った武器屋でミノタウロスの角を売ると12000ヴァリスとそれなりの収入になったので、それなりに良い宿に泊まることができた、そしてなんやかんやで夜になり宿のご飯を断ると散策中に見つけた良い店に向けてレウス達は足を進めた
「えっと、どこに向かってるの?」
「豊饒の女主人」
「え?豊饒の女主人って人々から不人気だけど、僕みたいな人や神々からは人気のあの店?」
そう、本来だったら美少女達が接待をしてくれることで人気の店なのだが、この世界では美醜逆転しているので、人々からは不人気なのだ、だが、神々は人間とは違い美醜逆転をしていない。つまり美少女は美少女という考えなので、男神達はよく通っている
「…お?着いたぞ」
「ここが、豊饒の女主人」
「さて、それじゃあ入るか」
カランカラン
「いらっしゃいませにゃ……にゃ?……お、おおおお男にゃぁぁぁ!!?」
店員の茶髪の猫人のアーニャは大声を出して驚愕した、男神ならともかく、この店に男の人が来るのは久しい。そしてそれがイケメンだったら尚更
「…2名なんだが……いいかい?」
店中の人達の視線を浴びながらレウスは質問する。ベルは既に視線に耐えられずレウスの服を摘んで後ろに隠れてる
「にゃ!?…ど、どうぞにゃ!カウンターでいいかにゃ?!」
どこか興奮しているこのウェイトレスはレウスに詰め寄った、いつも男からは舌打ちされたり目を背けられたりしたが、レウスはジッとアーニャを見つめているからもしかしたらワンチャン?と思っているのだ……しかし、レウスの後ろにいる女の子を見てそれは確信に変わった
「(このイケメン。もしかしてミャー達のような子が好きなのかにゃ?後ろにミャー達並みに醜い子を連れてるし。触られているのに嫌な顔ひとつしないにゃ……とうとつミャーにも春が来たにゃ!?)」
アーニャが頭の中で妄想をしているので、レウスはどうしたものかと迷っていると
「そ、それでは私が席にご案内しますね」
銀髪のヒューマン。シル・フローヴァがレウス達を席に案内した
「…にゃ!?イケメンはどこ行ったにゃ!?……あぁ!シル狡いにゃ!ミャーが席に案内するにゃ!」
「いいえ、アーニャはお客を放置していたので、私が席に案内するんです!」
アーニャが左手、シルが右手を引っ張り。ベルがお腹に抱きつくという他の人がみたら修羅場だなと思う光景だが、その中心にいるレウスからすると
(修羅場って見てるぶんには楽しいが、その中心にいるとこれはなんとも言えない気分になるな)
「コラ!あんたら何してるんだい!さっさと客を席に案内しな!」
その時、厨房から背の高い人が怒声を浴びせると
「「は、はい(にゃ)!!」」
なんとか修羅場は収まり2人で席に案内をしてくれたのでレウスとベルは席に着くと
「それじゃあ俺はこれを頼む」
「あ、僕はこれをお願いします」
レウスはステーキをベルはパスタを頼んだ
そして、10分も経たずに料理がテーブルに置かれた、酒もあった
「ん?この酒は?」
「ミアお母さんが迷惑をかけたお詫びだと」
いつのまにかレウスの隣の席に座っていたシルが説明をした
「俺、酒飲んだこと無いんだがなぁ……まぁ、ものは試しだ」
ベルがパスタを口に運ぶのと同時にレウスは酒を飲んだ
「プハァ!初めて飲んだが上手いなこれは」
「そうかい?だったらジャンジャン頼みなよ!」
レウスの賞賛にミアは嬉しそうにしながら豪快に笑った
そして、2人が料理を口に運び、シルとアーニャ、偶にエルフの人からの質問を返していると
「ミアー!来たでー!」
赤い髪をして狐目の女……たぶん女が複数の女性を連れて店に入店したそして、エルフの人が席に案内して
「それじゃあ!乾杯!……っかぁ!やっぱ酒は美味いでー!」
レウスが入店した人たちを眺めていると
「あの人たちはロキ・ファミリアの人達なんですよ。このオラリオの最強の一角であの席についている人たちが主神ロキ、団長のフィン……」
シルが説明をしている中でレウスは驚愕していた
(なんで、なんで……なんでフィン・ディムナが女なんだよ!?しかもよく見たらガレス以外全員女じゃねぇか!あの弱者を虐げるベートも女になってるし!?クール系の美女だし!?本当どうなってんだこの世界!?)
すると、レウスの視線に気づいたのか、腰まで伸ばした金髪の子が此方を振り向いた
「……え?」
金髪の子が声を上げると他の人たちも不思議に思って、その視線を追うと
「…ん?」
男がいた……そう、男がイケメンがいた、この店に
「「「「「え?」」」」」
「……なんだよ…」
レウスは流石にロキファミリアの人達から一斉に視線を向けられいつものお気楽な事はできず、疑問を投げかけることしかできなかった
「「「「「「えぇぇぇぇ!!?男の人ぉぉぉぉぉぉ!!?」」」」」」
まだ、夜は始まったばかり
「ところで豊饒の女主人で僕一切喋ってないんですけど?」
気にしたら負けだよベルきゅん
「ベルきゅんって何ですか!?」
5600文字……う、うーん…このままだと男性キャラがほとんど女体化する事になりそう(;´・ω・)