蒼の彼方のストラトス   作:インフィニット・フォーリズム

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「ーーーというわけで、ISはアラスカ条約によって戦争のための利用はできず、国家間でのコアの取引も禁止されています」

 

 よし、ここまでは予習のおかげでバッチリだ。

 まだ初日の授業だからか、内容は参考書+α程度でそこまで目新しいものではなかった。

 

「えー、ここまでで分からない人はいますかー?」

 

 IS基礎学の担当である山田先生がそう問いかけるが、手を挙げる者はいない。

 

「お、織斑君は大丈夫ですか?」

 

「大丈夫です。なんとか着いて行けてます」

 

 山田先生の問いに答えると嬉しそうに頷き、

 

「そうですか。でも何か分からないことがあったら遠慮なく聞いてくださいね。なんせ私、先生ですから!」

 

 と得意げに胸を張った。

 ちなみに山田先生は人並み以上にご立派な胸部装甲(おっぱい)を持っており、それが教壇前の席の俺に向かって突き出されたのだ。

 先生、それは思春期男子には刺激が強過ぎます…。

 

「わ、分かりました。何かあったら質問に行きます」

 

「はいっ!」

 

 満面の笑みで答える山田先生に邪な感情を抱き、罪悪感を感じる一限であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっといいか」

 

「ん?」

 

 二限(今度は一般教科の数学)の準備をしていると、聞いたことのあるような声で話しかけられた。

 

「もしかして、(ほうき)か?」

 

「ああ、話がある。屋上でいいか?」

 

 話しかけてきたのは、幼馴染である篠ノ之(しののの)箒だった。

 説明しよう。篠ノ之さんちは束さんの失踪を機に様々な組織から人質として狙われるようになり、日本政府によって保護を受けることになった。その際、家の場所を特定されないようにするため急遽引っ越したのだ。小四の頃である。

 

「あ、ああ」

 

「では行くぞ」

 

 そう言うと、箒は早足で教室を出て行った。

 慌ててそれを追いかける。

 

 

 

 屋上に出ると、少し風があった。

 

「それにしても久しぶりだな、箒。元気だったか?」

 

「ああ。お前も元気そうで何よりだ、一夏」

 

「そっか。あ、そういえば、剣道の全国大会優勝おめでとう、箒」

 

「な、なぜそのことを知っているっ⁉︎」

 

「なぜって、たまたまスポーツ誌で見たからだけど」

 

 メジャーなスポーツからFCまで網羅している愛読のスポーツ誌だ。

 

「なぜスポーツ誌なぞ読むっ⁉︎」

 

「俺はスポーツ誌を読むことも許されないのか…」

 

 今明かされる驚愕の真実ゥ、である。

 

「ま、まあ良い。しかし男の身でISを動かすとはな。ニュースを見た時は驚いたぞ」

 

「ああ、そのせいでIS学園には強制入学。俺の人生設計が水の泡だよ…」

 

「お前、その歳でもう人生設計をしてるのか…?」

 

 胡乱(うろん)げな眼差しを向けてくる箒。

 

「そ、そろそろ次の授業が始まるぞ、戻ろう」

 

 俺はその視線から逃れようと、先に教室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 二限の数学も無事に終え、しかし次に迫るIS系の授業に辟易していると、

 

「ちょっとよろしくて?」

 

 とお嬢様風な言い回しの掛け声を聞き、その方向を向いた。

 

「…なん、だと…」

 

 視線の先にいる人物を見て、俺は目を見開いた。

 そこには金髪ドリルのお嬢様がいた。

 

「な、何をそんなに驚いていますの? ふふん、さてはわたくしの美貌に見惚れていますのね!」

 

「………………な…のか…?」

 

「は? 声が小さくて聞き取れませんわ。もっと大きな声でお話しなさい!」

 

「金髪ドリルのお嬢様は二次元の存在ではないのか!?」

 

 その瞬間、教室の空気が凍った。

 

(説明しよう! 一夏はゲームのみならずアニメや漫画など二次元にも精通している真白の積極的な布教活動により、基本的なネタが分かる程度のオタク的教養を身につけているのだ!)

 

 ん? 今変な声に説明された気がしたが…、まさかこれが内なる自分⁉︎

 『くっ! 鎮まれ、俺の闇!』と中二な思考を一瞬したが、俺はもう高一。あの黒歴史を繰り返してはいけない。

 

「失礼、噛みました。何かご用でしょうか、お嬢さん?」

 

「…セリフを噛んだ前後の内容がまったく違いますが、まあいいですわ。わたくしに対しての礼儀を弁えているとは、男でもマシな部類のようですわね。特別にわたくしの小間使いにしてあげますわ」

 

「えっと、とりあえず聞きたいことがあるんだがいいか?」

 

「ええ、よくってよ。平民の声を聞くのも貴族としての務めですわ!」

 

「その縦ロールって、セットにどのくらい時間かかる?」

 

 金髪ドリルお嬢様の余裕そうな笑みにヒビが入った。

 またたく間に顔を真っ赤に染め、憤怒の表情でこちらを睨んでくる。

 

「あ、あなた、わたくしを馬鹿にしてますの!?」

 

「えぇー、聞きたいことを尋ねただけなのに…」

 

 許可もくれたのに…、なんという理不尽。

 

「………け」

 

「け?」

 

「決闘ですわっ! ここまでコケにされては、わたくしのプライドが許しません! 尋常に勝負ですわっ!」

 

 

 

「ふむ、それならば丁度いい」

 

 

 

 いきなり会話に差し込まれた別の声に驚き、前を見ると、

 

「クラス代表を決めなければならないのだが、クラスの女子共の神輿(みこし)にされそうな織斑と、このクラス唯一の専用機持ちであるオルコット。お前らのどちらかならば全員納得するだろう。その勝敗でついでにクラス代表も決めてしまえ」

 

 千冬姉が教壇で次の授業の準備をしていた。

 ハッと壁掛け時計を見ると、始業一分前。

 

「くぅっ! 次の休み時間に決闘の詳細を伝えますわ! 逃げないこと! よろしくて!?」

 

「オルコット、騒ぎ過ぎだ静かにしろ」

 

「は、はい。申し訳ありません…」

 

 金髪ドリルお嬢様(オルコットというらしい)が席に座るのと同時に始業のチャイムが鳴った。

 

「先ほど言ったように織斑とオルコットでクラス代表を決める試合を行う。他にクラス代表に立候補する者はいるか? ……、いないようだな。試合の日程や形式などは追って通達する。では授業を始める!」

 

 

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