刀使ノ巫女 燕を捉えし無銘の刀使   作:黒色ぬーめん

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色々あって、今更ながらに投稿いたしました。
気付けばこれ投稿したの1年前なんですって。今まで何をしていたんでしょうね本当に。


2話 始まり

古より 人々に災いをもたらす異形の存在――「荒魂」。

その討伐を使命とし、霊験(れいげん)あらたかなる「御刀(おかたな)」の所持を国から公認された「神薙(かんなぎ)の巫女」たち。

人は彼女らを――「刀使(とじ)」と呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――頂点を目指したいとか、誰かと戦いたいとか、誰かに勝ちたいだとか。

今までそんなことを深く考えたことが無かった。ただ、人並みに剣が振るえればそれでよかった。――あの剣技が、この目に焼き付くまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は午前の6時。朝日が顔を出し、木漏れ日が道場内を照らす。照らされた道場内には、一人の少女が鍛練を行っていた。

 

「496……497……498……」

 

風を切る音が、武道場内に響く。立花が回数を呟くとともに御刀――刀使と呼ばれる女性だけが扱える神器――を振るう。立花の御刀は通常の御刀よりも長く、そして重い。長さは約180cmで、立花の身長よりも高い。その御刀を、立花はまるでボディビルダーが何気なくバーベルを持ち上げるように、その御刀を振るい続けている。

 

「499……500……」

 

500回目の素振りを終えると、内側から湧き上がるように火照った身体を、ゆっくりと静めるよう呼吸を整える。大きく息を吸い込んでは、熱を逃がすように息を吐く。熱が、火照りが、呼吸と共に冷ましていくかのように収まっていき、頰を流れる汗の冷たさがハッキリと伝わっていく。この工程は、所謂刀の鍛冶に似ている。火照る体は熱せられた鉄で、素振りは鉄を打つハンマー。そうして幾度も調整を重ねて形を整えた鉄は、最後にゆっくりと冷やされる。そうして冷やされた鉄のように、彼女の呼吸、感覚、肉体の3つのコンディションが整ったところで、立花は御刀を構えた。その構えは両手を交差させるように剣を持ち上げ、右手は刃に近いほうの持ち手をしっかりと握り、左手はそっと持ち手の先を添えるようにししながら、刃を上向きにした構え。剣は視線と並ぶように真っすぐ伸ばすように固定し、目を閉じて数秒この姿勢を保っている。

 

静寂が道場内を包む。——あの時の剣劇が瞼の裏に蘇る。夢のような、けれど夢ではない、あの剣技。

 

「秘剣――」

 

ゆっくりと瞼を開き、前方に目を向けては、小さくそう呟く。そして——

 

「――燕返し」

 

そして、その長さの御刀が、風を越えて断ち切るように振り下ろされる。

 

「――……」

 

その空間だけ、時が止まったかのように静けさだけが立ち込める。あとは、立花の刀を振るったと残心のみ。

 

「……やっぱり夢で見たようにはいかないか」

 

しばらくして立花は御刀を鞘に収めては、少しばかり意気消沈したようにため息をついた。

夢で見た、疾風のような剣技。自分の御刀と酷似している刀を振るう剣士。その剣士が放った、“秘剣” と呼ばれる技――燕返し。立花が書物等で知っているソレとは全く違う代物で、一太刀目と寸分の狂いも無い全く同時の刃がどこからともなく現れる、非現実的な偉業の技。構えと動きは再現できた。しかし——あの技そのものを真似ることは不可能だと、改めて実感する。

 

「――……。」

 

これだけ不可能だと痛感したはずなのに、どうしてか立花の中には諦念は無く、それどころか無意識のうちに唇を噛んでいて、微かに血の味が口の中に広がった時にようやく気付く。何とも言えないような感情が渦巻いていくのを誤魔化すように、タオルで汗を拭く。

 

するとその時であった。静寂に包まれた道場内に、立花の端末が鳴り響く。この警告音は、荒魂を感知した時に鳴る音だ。立花は不思議に思いながらも、端末を手に取って確認する。場所はそう遠くないところだが、()()()()()()()するなら時間がかかる場所だ。

 

「……いや、行かないよりはマシか」

 

御刀を鞘に納めると、立花は道場を後にして現場へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒魂討伐現場

 

 

「くっ!数が多い!!」

 

「頑張って!数が減っているから後もう少し!!」

 

「後衛は1匹に対して2人以上で対処して!無理せず数人で対抗すれば倒せるわ!!」

 

現場に早く到着した刀使たちは、荒魂を討伐していく。高等部の刀使たちが前線に立って荒魂を倒し、高等部が撃ち漏らした荒魂を中等部が討伐していく戦法。これにより荒魂を効率よく倒し、戦闘に慣れていない刀使でも、後衛で撃ち漏らした荒魂の1匹2匹なら討伐できるようになる戦法。確かにこれなら着実に数が減らせるし、しっかりと、そしてほぼ確実に荒魂を倒せるだろう。――しかし、実戦はそんなに甘いものではない。指揮をしていた年長刀使が想定していたよりも数が多く、30分はこうして持久戦を強いられている。そして、既に半数の刀使に疲労の色が出始めている。中には写シが剥がれ、1人ずつ戦線離脱していく。

 

「写シが剥がれた者は下がって!!剥がれた者を守りつつ、陣形を保って!!」

 

陣形内の隊長らしき人物が、写シが剥がれた者を下がらせつつ指揮を取る。いつ終わるとも分からない持久戦に、心身ともに疲労が蓄積されていく。しかし——そんな戦いに終止符が打たれるように、1人の刀使の一言が響く。

 

「これで、最後!」

 

やっと最後の荒魂を討伐する。何匹も現れた荒魂は討伐し終わり、後にはそよ風が木の葉に触れる音だけが、静かになった現場に残る。

 

「や、やっと終わった……」

 

荒魂との慣れない実戦、そして終わることのない持久戦によって、中等部の刀使たちは心身ともに疲労していた。そのためか、先ほどの刀使の声に安堵し、肩の力が抜けてその場にへたり込む。

 

そうして注意力が散漫になったからだろうか。

 

「!?気を付けろ!まだ荒魂の反応があるぞ!!」

 

指揮をしていた刀使が、端末を確認した瞬間に写シを貼り直し、御刀を構えながらも叫ぶ。それと同時に、先ほどよりも一回り大きい荒魂が襲い掛かろうとする。その相手は——先ほどへたり込んでしまった中等部の一人だ。

 

「まずい、そこの君!すぐに写シを貼れ!!」

 

指揮をしていた刀使は、中等部の刀使に叫ぶ。しかし、疲労と気が抜けたせいで身体が上手く動かない。――それは中等部の刀使本人も同じで、疲労と安堵、そして予期せぬ相手。それらが重なったせいで間に合わない。

時間が、ゆっくりと進むような感覚。全てがスローモーションのように動く。

 

――わたし、まだ……

 

中等部の刀使は涙目になりながら、その瞬間から逃避するように目をつぶる。まぶたの裏には、走馬灯が流れ、心のうちで死を覚悟していく。そして、その強靭な爪が幼い刀使に届く――

 

――ことはなかった。

 

荒魂の爪は、怯えて目をつぶった刀使に振るわれることはなく、代わりに土の上にドサッと、大きなものが落ちる音がした。一体何が起きたのだろうか。怯えた刀使が恐る恐る目を開けると、そこには一人の刀使が立っていた。ポニーテールの長い紺色の髪に、太刀よりも長く、そして細い御刀を持った刀使。背を向けているので顔は見えないが、その背中は、長い御刀を持ちながらも大きく、そして頼もしく映った。状況を見るに、目の前の刀使が、大きな荒魂の腕を切り落としたのだろう。そして自分を守ってくれた刀使なのだと、中等部の刀使はそう認識した。

 

その時怯えていた刀使は、真っ白になった頭の中で、こんな話を思い出していた。

 

――この学園には、3人の特殊な刀使がいる。

一人は古波蔵エレン。タイ捨流を扱う、学年一の金剛身使い。

一人は益子薫。益子家の娘で、相棒に荒魂を連れているらしい。そして圧倒的な破壊力を誇る力を持ち、単独でも持ち前の力を活かして戦えるほか、エレンとコンビを組んでいる時の強さは、誰も敵わないと言われている。

——そして3人目が、雲雀鴫立花。薫ほどではないが、その御刀は180センチもある長い刀を所持した刀使。そんな御刀を振れば普通は振れても大振りになるし、下手をすると降ることも出来ない御刀。それをいとも簡単に振るい、誰も知らない流派を扱う刀使がいる、と。それが――

 

 

「……ごめんなさい、遅くなった」

 

 

――今、目の前で長い御刀を構え直している人物であった。

 

「え、あ、あの……」

 

突然現れた人物。長い御刀。そして一瞬にして荒魂の腕を切断するほどの剣技。助られた刀使は、そんな情報量の多さに圧倒されてしまい、頭の中が真っ白になってしまっている。

立花は、そんなポカンと座り込んでしまっている刀使を見ては、「大丈夫そうね」と言うかのように視線を荒魂に戻す。

 

「…………」

 

荒魂は立花に対して威嚇のような咆哮をする。その咆哮により、ほかの刀使が警戒態勢に入る。――が、それは指揮をしていた年長刀使に遮られる。

 

「総員、動けるものはこの場から撤退せよ!動けないものが居たら担いで連れていく!」

 

その命令にほかの刀使は困惑するも、速やかにその場から撤退する。

 

「ここは任せてもいいな?立花」

 

撤退する中、指揮をしていた年長刀使は立花に向き直り、立花に確認する。立花も年長刀使の方へ目線だけを向け、小さく頷いた。

 

「……分かった。頼んだぞ」

 

そう言って年長刀使もそのその場から撤退する。

残るのは、片腕を斬られた大きな荒魂と、斬り落とした張本人、立花だけ。

 

「…………」

 

荒魂の唸り声と、そよ風が吹く音。――そして、先に動いたのは、荒魂の方であった。

大きな荒魂は、目の前の相手に対して脅威を感じていた。不意を突かれたとはいえ、自身の腕を斬り落としたのだ。そして、その攻撃が全く見えずに。

ならば、攻撃する隙も与えない。――そう考えたのだろう。通常の荒魂よりも速い速度で立花との距離を詰めんとする。そんな荒魂の行動に、立花は構えを解かずに迎え撃たんとする。そして、荒魂は相手を粉砕せんと、全力で突進してきたのだった。

 

一回り大きい立花には、この攻撃を避けるのは難しい。そして、既に避けられる距離でもない。

――だからこそ、立花は何時もと変わらないように、鍛錬で行っている素振りのように……

突進越しから綺麗に、振り下ろした。重力し従い、立花が磨き上げた技術が合わさり、荒魂は、綺麗に真っ二つに斬り伏せられた。

一太刀で荒魂を屠った立花は、自身の御刀を確認する。刀身に刃こぼれもなく、一切曲がっていない。

 

「刀身に歪みなし。全くの無傷ね」

 

御刀の状態を確認すると、立花は少しだけ微笑んでから、安心するかのようにそう呟いたのであった。




久々に書いたので載せる前に友人に何度も見直しして書きました。

多分次回からこのクオリティは維持できません

オリキャラをもう一人出すとして、どういう系がいいのでしょうか

  • マシュマシュな盾役系!
  • ライパルポジの二天一流系(それなんてゆk
  • クハハと笑いそうな人
  • ツンツン系の同級生刀使
  • そんなもの要らん!オリキャラはただ一人!!
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