「はぁ……はぁ……」
時計の長針と短針が垂直になったところで、最後の一人が学園の正門前に辿り着く。山道を抜け、道中の荒魂を斬り払いつつ進んで、ようやく学園へ戻ってきた隊員たちは、すでにかなりの疲労が溜まっているのか、多くの隊員がその場にへたり込んでいる。
「全く。お前たち弛んでいるぞ?」
年長刀使が、ばてている中等部刀使たちを見てため息を漏らす。
「そんなこと、言われましても……」
ヘトヘトになりながら、反論する中等部刀使が愚痴を吐く。
すると……
「おー。お前らご苦労だったな」
「皆さんご苦労様デース!」
正門から二人の刀使が、へばっている刀使たちのもとへ現れる。一人はブロンドの髪に、高身長と豊満な胸、そして透き通るような青い瞳が特徴の刀使—―古波蔵エレン。そしてもう一人の気怠そうにしている人物は、エレンに比べて低身長でありながら、背中の御刀が彼女の存在を際立たせている刀使—―益子薫。
「古波蔵さんに益子さん。お二人が何故……」
「さっき救援要請があってな。お前たちがある調査の途中で予期せぬ荒魂の大群との遭遇で身動きが取れなくなってるって」
「そこで私たちがその救援に呼ばれたわけデース……が、少々遅かったようですね」
と、救援という言葉を聞いて、一人の中等部刀使が思い出したかのようにハッとした表情になる。
「す、すみません!あの、先ほど雲雀鴫さんが救援に駆け付けて、その、あの人が私たちのために足止めを……」
その名前を聞いて、薫とエレンは目を見開く。
「オイ、エレン聞いたか?」
「リツリツが足止めを……。迎えに行ったほうがよさそうデスね」
そう言うと二人は、先の荒魂大量発生の現場まで向かっていく。
指揮をしていた刀使は、その意味を知っていたのか、「お気をつけて」と頭を下げる。
その意味を理解できなかった中等部の刀使は、どういうことなのか理解できない、という表情で首をかしげていた。
◇
「……はぁ、疲れた」
疲労感がうかがえる表情の中、立花は森を抜け、荒魂が大量発生した現場から数キロ離れた場所で一休みをしていた。制服は土で汚れており、頬や脚には切り傷が付いていた。鍛錬の時と同等に火照った身体から放熱するように深呼吸し、鼓動を落ち着かせる。汗がひんやりと冷たく感じ、小さな傷口にヒリヒリと染みる。
ことの発端は数分前に遡る。大型の荒魂を両断し、現場を後にしようとしていた立花だが、道中でも荒魂が現れ、その都度斬り伏せては進んでいた。しかし、慣れない足場に動きがいつもより鈍くなっており、自慢の御刀も生い茂る木々が邪魔で満足に振るえず、思いのほか苦闘を強いられた。そして道中では木の枝に引っかかったりと、泥だらけの状態を見る限りで、何が起きたかは見当がついていた。
そしてようやく森を抜けてから、今に至る。
「……」
何とか森を抜けたことに対する安堵の気持ちが有りつつも、立花は少し複雑な表情をしていた。
—―己惚れていた。
大型の荒魂を倒したのはまだ良かった。しかし、その後の小型の荒魂を斬り払いながら進むのは、少し無理があった。だからこそ、思うように御刀を振るえなかった。そういった自分の未熟さに悔しさを感じてしまう。しかし……
「……今後の鍛錬に追加するか」
出来ないならできるようにすればいい。そう結論付けた立花は、休憩を終えて学園に戻ろうとする。すると……
「お、ここに居たか。……とりあえず、どうしたんだ?お前。すごいことになってんぞ」
小さな救援が駆け付けたようだ。
「私も居ますヨ、リツリツ~!」
笑顔で手を振っている人物も現れる。
「二人とも、どうして此処に?」
「救援で呼ばれたんだが、誰かさんが仕事してくれたおかげで、お前が退避させた奴らは無事に戻ってきたし、これで俺もサボれる……はずだったんだが」
「救援に行ったのがリツリツだと知ったノデ、私たちでお迎えデース」
—―迎え。その言葉に、立花は少しだけ歯がゆくなった。
立花のそんな心情を察したのか、薫は少しだけ真剣な声で立花に声をかける。
「……誰にだって不得意なものがあるんだ。それを歯がゆく思う気持ちはわかるが、今は頼れ。俺もエレンも、誰だって誰かを頼ってきたんだから」
「……」
その言葉に、少しだけ拳を握る力が弱まる。そして……
「ねね~」
薫の言葉に同意するかのように、薫の頭の上から可愛らしい声が聞こえてくる。荒魂でありながら、人に仇名すことなく、人と共存をしている荒魂――ねねだ。ねねはその一声の後に立花の胸に飛び込んでくる。
「……ん」
飛び込んできたねねの背中を優しく撫でる。撫でているうちに、彼女の険しい表情は解けるように緩む。
「……やっとマシな顔になったな」
その言葉にハッとした立花は、ねねを持って薫の頭の上に戻す。その表情は無表情なものの、少しだけ顔が赤い。なお、ねねは少し名残惜しそうな表情で立花を見つめている。
「ほら、戻るぞ」
薫の言葉に同意する立花。
「さ、私の背中に乗るデース」
そして、唐突にエレンが背中を向けて屈んでいる。立花は「どういうことなの?」という表情でその光景を見つめている。
「もう、リツリツが疲弊しているので、私が運んであげるんデスよ~?」
「いや、そこまで疲弊していないけど」
「リツリツ、その状態では説得力が無いデスヨ?」
「……」
それを言われると言い返せなくなる、と心の中でつぶやく立花。
「いやでも、だからって—―」
「いいから早く乗れ」
迷っていた立花の背中を薫が強く押す。その反動で立花はバランスを崩し、そのままエレンの背中に乗りかかる態勢になった。
「よいしょっと。それでは、長船まで戻りマスヨ~!」
「お~」
薫のやる気のなさそうな掛け声と共に、迅移で学園に戻るエレンと薫。そして立花は、恥ずかしそうな表情でエレンにおんぶされながら、長船に連れ戻されるのであった。
◇
「—―……そうか。今回のことは災難だったな」
時間は遡り、薫とエレンが立花を連れ戻そうとしていた頃であった。学園の学長室にて、今回大量の荒魂と遭遇した年長刀使が報告を行っていた。その報告を聞いていた長船女学園の学長—―真庭紗南は、目の前の刀使に労いの言葉を送る。
「ただ、今回のことで信憑性は高まったかと」
「やはり、赤羽刀を所持していたか?」
「通常よりも多くの荒魂に、あの先にも存在していたより大きな反応も確認されました。まだ憶測の域を出ておりませんので、確証はありませんが……」
学長は「うぅむ……」と、唸ったような声で考えている。
「……わかった。報告ご苦労だったな。下がってくれ」
その言葉に、その刀使は扉へ向かい、再度学長にお辞儀をしてから部屋を後にした。
「……若い奴らには、まだ荷が重かったかもしれんな」
真庭紗南は、自分の考えよりも少しばかり悪い方向に向いていた状況に頭を悩ませていた。
すると……ノックがかかる。
「入れ」
学長の声の後に、扉が開く。頭にねねという荒魂を乗せた刀使の益子薫と、ブロンドの髪色と青い瞳が特徴の古波蔵エレン—―と、エレンの背中で熟睡している雲雀鴫立花の姿が。
「……なぁ、どういう状況なんだ?」
「バ……学長が救援に行けって言ってた部隊から、コイツが助けに行ってたと聞いたんでな。運んできた」
「今ではぐっすり寝てしまって動けまセーン……」
学長は薫が一瞬言いかけた言葉を無視しつつも、二人の報告を聞く。
「赤羽刀を持った相手だってのは間違いないな。あの付近だけ荒魂の数が多すぎる」
「お前もそう感じるか」
「俺も半信半疑だったがな。あそこに近付いた時からねねがずっと森を睨んでいた」
「ねねっ!」
薫の頭上で、相槌するかのように鳴くねね。今回の部隊。それは赤羽刀—―荒魂から取り出された、錆びた御刀を指す—―を所持した荒魂の調査ということだった。しかし、その荒魂を見る前に予期せぬ荒魂の大群が現れたため、部隊は疲弊しきって調査どころではなかった。もし立花が駆け付けるのが遅かったら、死傷者が出ていてるかもしれなかった。
「今はまだいいが、森から出てきて人を襲う可能性もある。早めに対策しないと街にも被害が及ぶぞ」
薫が真剣な表情で学長を見つめる。その表情を見て、学長は「なら……」と一言言うと、
「食い止めてくれる優秀な刀使が必要だな。なぁ?薫」
「オイ、まさかと思うが……」
「仕方ないデース、薫。こればかりはお休みはデキマセンヨ~?」
「俺の意思は無視かこの野郎……」
学長が何を言おうとしているのか察して嫌な顔をする薫と、それを慰めるエレン。
「まぁ、そういうことだ。部隊の編成は私がやっておこう」
こほん、と咳払いをして学長は改めてしっかりと二人の刀使を見つめて、はっきりと言い伝える。
「お前たちに任務を言い渡す。——益子薫、古波蔵エレン。お前たち二人が今回の赤羽刀を所持した荒魂討伐を命ずる」
それは、先の調査よりも困難となり得る任務の通達であった。
◇
宙を浮いている、もしくは深い水の中にいるかのような、ふわふわとした感覚。花をくすぐるような、ほんのりとした甘い香り。遠くで誰かが話す声が聞こえるが、よく聞き取れない。耳を澄ませようとしても、気怠さと眠気が、聞き耳立てるのを阻害する。
—―今は、このままでいいかな。
しばらく考えていたが、この心地よさに身をゆだねるように、立花はエレンの背中で夢の中へ深く潜っていくのであった。
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オリキャラをもう一人出すとして、どういう系がいいのでしょうか
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ライパルポジの二天一流系(それなんてゆk
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クハハと笑いそうな人
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ツンツン系の同級生刀使
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そんなもの要らん!オリキャラはただ一人!!