元女子高生の異世界廻   作:神崎あやね

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プロローグ
異世界と聖霊と契約?


春、まだ寒さが残る始まりの季節。

 

そんな日にわたし。

 

小渕さりなは、この世から消えた。

 

この世から消えた。なんて大仰な言い回しになってしまうかもしれないが、嘘でもなければ夢でもない。いや夢であったのならどれだけ良かったことか。

 

まだ恋する青春真最中の17歳のわたしには、この状況は、些か厳しいものがあります。

 

 

現実逃避が長くなりましたが、現在わたしは、異世界にいます。頭がおかしくなったの?と思いましたか?残念ですね、頭がおかしくなった方が幾分かマシになりそうです。

 

だって、わたしが現在いる場所は見たこともない大森林の中なのですから。

 

記憶を整理してみましょう。

 

 

学校から帰ってきてお風呂に入ってからご飯を食べて、歯を磨いてベットに入って寝て。目が覚めたらここです。

 

うん、さっぱりですね。そして問題が起きてきました。

 

太陽が嘲笑うかのように、わたしの残り少ない体力を削ぎに来ています。暑いです。

 

服装は何故か制服なので、汗のせいで少しブラとか透けてますし花の女子高生としては、最悪の気分です。でも、これだけ汗かいたら痩せれる?という状況を考えない考えも出てきてしまう辺り、わたしは女なのでしょう。

 

さて、見渡す限りの木木木木...です。

 

これが詰んだ。という奴なのでしょうか?

 

ちっとも笑えないです。草生えるとか言えません。

 

人間生き抜くためには、停滞は論外ですね...。では、水場を探して歩きますか。そのうち川や湖があるはずです。多分...いやきっと。

 

 

 

--------1時間経過。

 

 

「はぁはぁ...どうして川のせせらぎさえも聞こえてこないんですか...」

 

歩き始めて1時間。見えてくるのは、木木木木。木の見すぎで少し鬱になりそうです。こうなればやけくそです。叫んでみるしかないです。

 

お腹に力をいれて、空気を吸う。どうせ周りに知り合いなんていないんだ。なら出せる限りの大声で助けを呼ぼう。

 

「すぅーーーーー。どなたかいませんかーー!!」

 

はぁはぁと荒くなる呼吸を整えながら、ミジンコ並みの期待を乗せて耳を澄ませてみる。どんな音も聞き逃さない為に。

 

虫の音一つ無い状態で、風だけが草木を揺らしながら音をたてる。

 

 

--------こっち。

 

ん?今なにか聞こえたような?

微かだけど耳の奥に届くような透き通る綺麗な声が聞こえる。

 

-------はやくじかんがない。

 

 

時間がない?

慌てて辺りを見渡すも森全体から声が聞こえてくるから、どこから呼んでいるのか分からない。だけど聞いたことも無い声なのに不思議と安心感はあった。この声に従う、そう思えるほどに。

 

こういう時どうすれば...わたしは、静かに目を閉じる。そして走り出す。

 

「多分こっち!」

 

--------ちがう...はんたい。

 

急ブレーキをかけたわたしは、頬を少し朱色に染めながら方向転換をして走り出した。間違いは誰にでもあるものです。

 

-------いそいで、よるになるまえにみつけて。

 

その声に言われるまで気付かなかった。森の中だから元々少し薄暗かったけど、空を見ると夕焼け色に染まり太陽が沈みかけていた。

 

なんとなくだけど太陽が沈みきって夜になったら何か良くないことが起きる。それだけは、感覚で理解できていた。

 

暫く走ると一つの祠が見えてきました。祭壇なんて仰々しい物は見えないけど、祠の中には、一つ虹色に輝く綺麗な玉が置いてあります。

 

「綺麗...」

 

その綺麗さに完成された形、大きさ、輝きに思わず声が漏れる。時間なんて忘れてしまうほど、時が止まってしまうほどに、綺麗な玉。

 

--------はやく、さわって!

 

少し焦っているような声に、我に返り祠の中にある玉に自分の掌をのせます。これで何も起きなければ、わたし結構痛い人ですよね..。

 

--------まにあった....これは『契約』。きみはちからをてにいれる。そのかわりだいしょうを3つはらってもらう。

 

頭の中に五月蝿いくらい響く声に驚くとその場が反転したような、空間が歪んでいるような感覚に陥る。力なんて、今まで女子高生をしていた、わたしが欲しいはずない。それに、代償を払わなくちゃいけないなんて嫌です。

 

心の中で拒む。『契約』なんてしません。

 

-------そっかそうだよね。きみはならそうするとおもっていたよ。でもね、いまこのくうかんはぼくときみだけのくうかん。そとにでてしまえば、もうよるになっている。このせかいでいきていくには、どうしてもちからがひつようだよ?このもりにいるのは、かきゅうばかりだけどれいをあげるなら、そうだね。ガーゴイルとかいるよ。

 

 

その声と、共にガーゴイルが頭の中で鮮明に浮かび上がる。人を騙し、弄び、壊し、喰らう。そんな恐ろしい悪魔のような化身。

 

体が震えがある。寒くも無いのに、震えが止まらない。

 

怖い、恐い。こんな化物の化身みたいなやつがいるなんて信じたくありません。

 

 

------でもじじつだよ?しょきゅうあくまだからよるにしかでてこないけどちゅうきゅういじょうは、ひるでもあさでもでてくる。でも、ぼくをつかえばきっといきのこれるよ?

 

貴女を使えば生き残れるの?

 

------きみがそれを望むなら。

 

分かりました。

 

「契約よ」

 

-------ありがとう。それじゃあ始めるよ。

 

 

時の理を越えし者よ。汝との『契約』今結ばん。汝に与えしは力。悠久を生き抜くための大いなる力。そして汝に求むるは、時間。そして姓。最後に僕との共存。

 

「改めてよろしくね。ボクは聖霊。この世界の理を護りし、力を与えし存在」

 

今まで声しか聞こえなかった存在が目の前に現れた。小学生低学年位の女の子。金色の美しい髪色でどこまでもこちらを見透かしたような、赤く光る瞳。神々しく見えるその姿は、幼い容姿よりも大人びて見える。

 

「精霊?」

 

ファンタズムとかゲームで出てくるアレだろうか。そんなことを考えていると目の前の女の子は否定してきた。

 

「精霊じゃなくて聖霊だよ。妖精とかではなく、聖なる存在。それが聖霊」

 

「聖霊.....」

 

風が頬を掠めた事で元の祠のある場所に戻ってきた事を理解した、わたしはあることに気付きます。

 

「な、何これ?」

 

そして驚愕することになります。

 

 

女の子には、本来付いていない筈の物が付いている。何回か触って確認するも毎回同じような感触と触ったことで本の少しだが快感が脳を刺激しますって何をわたしは言っているんですか...。

 

「嘘...嘘嘘嘘嘘嘘嘘....いやぁあああああ!!」

 

その反応は、元女子高生の反応としては当然と言えた。だが虫の音一つ無い静寂な森の中での悲痛な叫びはどこまでも木霊した。

 

したがって、その声に導かれてくる存在が入ることも当然の理だった。

 

叫び声も無く突如目の前に飛来した真っ黒な姿で悪魔のような翼を生やした何か。この生物なのかなんなのか、分からない存在。ですがわたしは、知っていました。先程無理矢理頭の中に流された映像に写っていたのですから。

 

「が、ガーゴイル....」

 

体が震えて膝が笑ってしまい、腰が抜けて女座りのままペタンッと地面の上に座りこんでしまいました。

 

ガーゴイルは、わたしから目を反らそうとしません。

 

恐い...恐い.....怖いよぉ。

 

「どうやらボクの御主人様は、怖がりのようだね」

 

その言葉に振り返ると、どこから取り出したのかわたしの身長を優に越えているだろう剣を聖霊は持っています。

 

「せい、れい?」

 

「うんそうだよ。この程度の相手に今更怖がる必要なんて本来無いんだけどね。君はもう十分すぎるほどの力を手にしているんだから」

 

そう言いながらわたしの前まで移動してきた。その背中は、幼い女の子なのに、とても大きく感じてもう恐怖心は無くなっていました。ほんと不思議なことばかり起きますね。

 

「あ、そうそう。男の姿で女座りは、どうかと思うよ?」

 

そう言われて自分を見ると、成る程。気持ち悪いですね...慌てて正座に切り換えました。

 

「それじゃ、戦い方をレクチャーしてあげるね」

 

今まで此方を見ていたガーゴイルが、痺れを切らしたのか羽を一度羽ばたかせ5mほど浮き上がった。そのまま鋭く尖った爪を此方に向けて滑空してくる。真っ直ぐ重力に逆らわずに急降下してくるガーゴイルは、人間の出せる速度を越えていると思ったが不思議と遅く見えてしまう。

 

ガーゴイルの姿が、瞬きや翼の羽ばたきや、息づかいまで。

 

「それじゃレクチャー1。これが魔法だよ。セイレントスフィア」

 

剣を持っていない方の手をガーゴイルに向けて言葉を紡ぐと、ガーゴイルの周りが突如光だして爆発した。

 

ガーゴイルは、爆発により後方に吹き飛んだが空中で体勢を整えて此方を警戒している。

 

「今のは、光系統の魔法だよ。魔法には、初級魔法から上級魔法。これ以上、上になると位階魔法と言われていて人智を越えていると言われているね。第1位階魔法から第11位階魔法まであって第が大きくなるほど魔法の威力も上がっていくよ。そして更にその上に神級魔法も存在していて、この魔法は少し特別なんだけどね、世界の理を崩す魔法とも言われているんだよ」

 

「世界の理を崩す魔法...?」

 

「うん、そう。おっと、この続きは、ガーゴイルを倒してからにしようか」

 

ガーゴイルは、上空で黒い球を生成していた。バスケットボールくらいの大きさの黒い球が5つほど浮いている。

 

「アレを使ってくるということは、ボク達を食料から敵と判断したんだろうね。普通の人間がくらったら穴だらけになっちゃうだろうし」

 

ガーゴイルは、1発黒い球を放ってくる。速度的には、対したことはないから案外簡単に避けれそう。

 

「あれ追尾機能付いてるから、避けようとか考えないでね?さて、それじゃレクチャー2だね」

 

そう言いながら、一閃。甲高い鈴の音が聞こえたと思ったら黒い球は真っ二つに斬れて消失した。全然見えなかったけど、聖霊が剣を横に一閃したんだと思う。

 

「今のがレクチャー2。簡単に言えば剣を一閃して切り裂いただけだけどね。魔法だけに頼ってたら勝てないって事」

 

ガーゴイルは、今の出来事に焦ったのか黒い球を一気に放ってくる。焦っているせいか、動きが乱雑になっており至るところにクレーターが出来上がっている。

 

「あれが下級悪魔と言われている由縁でもある。直ぐに焦り、攻撃が単調になる。そんな奴に恐れることはないよ。それじゃここからはボクの御主人様の実戦だよ。経験は積んでおかないとね」

 

倒してくれると思っていたわたしは、心中穏やかではありません。

 

目の前にいるのは、人間でもなければ獣でもない。悪魔なのです。少し前まで普通の女子高生だった女の子に、戦わせるなんて何を考えているんですかね。

 

聖霊から教えてもらった事は、魔法と剣の使い方ですが、魔法に関しては、一発ですしどんな魔法が使えるのかわたし分かりませんし。剣なんて、そもそも持っていませんし。

 

どうしろと?

 

ガーゴイルを見上げる、わたしに対して黒い球。それも先程よりも3倍近い大きな球を作り始めました。渦巻くように練られた球は、空気を吸い込んでいるのか、風が吸い込まれていきます。あ、男の姿になったときに制服も何故か男物に変わっていたのでパンチラとか気にしなくてすみました。

 

木々は揺れ、黒い球の周囲は空間が歪んでいるようにも見えます。

 

「聖霊さん。わたしは、どんな魔法が使えるんですか?」

 

「それは、御主人様次第だけど第3位階魔法くらいなら使えると思うよ?ボクが使えるのは、第5位階魔法までだけど、ボクとの『契約』によって、色々と跳ね上がってる筈だから」

 

答えになってませんね...困りました。人智を越える魔法が使えることは、驚きですが何でも良いので使える魔法が知りたかったのに。

 

「どうやったら使える魔法が分かるんですか?」

 

「心を落ち着かせて目を閉じてみて、自ずと分かるはずだよ」

 

この状況で目を閉じるのは、些か以上に怖いですが仕方ないですね。

 

目を閉じると周りの音が急に静かになる。分かる。聞いたことの無いような魔法の名前も、どういう能力なのかも。

 

これは、使えますね。

 

 

ガーゴイルは、十分に準備が出来たのか不適な笑みを浮かべてきます。その笑みに今からドギツイのかますので覚悟していて下さいね?

 

ガーゴイルは、両手を空に掲げてわたしに向けて降り下ろしてきます。黒い球は、螺旋回転しながら近付いてきます。

 

「御主人様、そろそろ魔法使わないと厳しくない?」

 

心配になったのか聖霊が声をかけてくるけど、相手の不意を狙うなら、相手が油断するとき。それは攻撃が当たる直前なのです。

 

今!

 

「ゲート!」

 

わたしと黒い球が当たる直前。もう避けることすら出来ない状況で魔法の発動。わたしの目の前の空間が捻れて、捻れた空間にガーゴイルの作り出した黒い球は吸い込まれていく。そして、わたしは、ゲートの出口をガーゴイルの後ろに作り出します。

 

「これで終わりです」

 

黒い球がガーゴイルに当たるとガーゴイルを突き破り爆発しました。ガーゴイルは、粉微塵になり焼失しました。良い気味ですね。

 

 

「まさか移動系の魔法で相手の攻撃のカウンターに使うなんて...御主人様は、ボクが考えていたより凄い人なのかも」

 

戦いが終わってようやく落ち着くと一つ気掛かりな事がありました。

 

「その御主人様という呼び方は止めてくれませんか?わたしの名前は、小渕さりなです」

 

「それならボクの事も聖霊なんて呼ばないで名前を付けて欲しいな」

 

「名前をつけるんです?」

 

「ボクには、まだ名前が無いからね」

 

見た目は、金髪幼女だから...食蜂いや、忍も良いかな?駄目?それなら....。

 

「アイリスなんてどうかな?」

 

「アイリス...うん。素敵な名前をありがとう。さりな♪」

 

迂闊にも目の前の金髪幼女の笑顔に目を奪われてしまった。こんなにも可愛く笑うことも出来るのですね....。男になってしまったからなのか、わたしの心臓は暫く騒がしかった。




【紹介】
人物名
・小渕さりな
年齢
・17歳▶15歳
性別
女▶男
身長
・153㎝▶165㎝
髪色
・茶色▶白色
使用魔法(使用した魔法だけ書き込みます。随時増えていきます)
・《ゲート》無の魔法の第1位階魔法。一度行った場所であれば、風景を思い描くだけで移動することが出来る。空間を捻れさせて移動させるので今回のように、カウンターとしても使用できる。
持ち物
・特になし。


【紹介2】
人物名
・聖霊▶アイリス
年齢
・?
性別
・女
身長
・125㎝
髪色
・金色
使用魔法
・《セイレントスフィア》光の上級魔法。相手の周囲に光の粒子を凝縮させて爆発させる。
持ち物
・剣《断罪の血》

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