『八幡』と『結衣』と『雪乃』のオムニバスストーリー   作:こもれび

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台本形式最後の作品です。
八色ファンは読まない方が良いかも。


(4)キスして欲しい一色と奉仕部三人が一緒に居るだけの話

 好きな人……

 私は今まで本気で人を好きになったことがないのかもしれない。特に何もしなくても、男の子達は私を誘ってくれるし、もう何回も告白もされた。自分が他の女の子と比べても、魅力がある女の子という自信も多少あった。

 そんな私が初めて気になった男性……その人のこと意識してしまったのは間違いない。その人は面倒くさがりで、人付き合いが苦手で、礼儀知らず、いつも一人で居ることを好んでいる。

 でも、こちらの様子をつぶさに見ていて、気が付かない所にいつも気をまわしてくれる。要は恥ずかしがり屋さん。 

 そんな風に思っていた。一人っ子の私にとっては、まるでお兄ちゃんの様な……

 でも、そんな彼には、心を許している二人の女性がいた。あのものぐさな彼がその二人にだけ見せる顔……優し気なその表情……

 それは壁になって私の前にそびえていた。

 私には超えることが出来ないその壁……

 だからだろうか? 私はその壁を越えてみたくなった……

 この感覚はなんだろう……

 あの葉山先輩に振られた時とも違う。

 私が本当に欲しい物はいったいなに?

 

 教えて下さいよ……ねえ、せんぱい……

 

 

 

 

八幡「よお、一色」

 

いろは「ひゃい! せ、先輩!? なんですかぁ、きゅ、急に声を掛けないでくださいよぉ!」アセリ

 

八幡「お、おお……す、すまん。そんなに驚かしちまうとは思わなくてな」タジ

 

いろは「それで、何なんですか急に。今日は結衣先輩と雪乃先輩とラブラブしてないんですか?」チラ

 

八幡「はあ!? な、なに言ってんだお前……」

 

いろは「え? だって、この前二人と結婚するって……」

 

八幡「ばっ……!? お、お前、何言ってんだ! そんなわけあるか! なに寝ぼけてんだよ!」クワ

 

いろは「えっ? じゃ、じゃあ、先輩って誰とも付き合っていないんですかあ!?」

 

八幡「つきあう!? あ、あるわけないだろ……俺だぞ」アセ

 

いろは「そ、そうですか……。まったく先輩は先輩ですね……。はっ!? そうやって彼女いないアピールして彼氏いない私とお近づきになろうとかしてるその魂胆見え見えなんでホント勘弁してください、ごめんなさい」ペコリ

 

八幡「お、おお……別に告白したわけじゃないけどな。ま、まあ、いいや。んじゃまたな」シュタッ

 

いろは「ま、待ってくださいよぉ! 可愛い後輩置いていくなんてひどいじゃないですかぁ」ムカ

 

八幡「いや、だってお前が嫌がったんだろうが」

 

いろは「字面通り受取んないで下さいよぉ! 嫌がるわけないじゃないですかぁ。あ、先輩ヒマですよね」キラリン

 

八幡「その質問明らかにおかしいだろ。それに俺、これから部活なんだけど……」

 

いろは「じゃあ、問題ないですね。依頼します。すぐに生徒会の仕事手伝ってください」キパッ

 

八幡「はあ? そういうことは雪ノ下を通してだな」

 

いろは「問答無用ですよ! こっちは緊急事態なんです。そんな暇ないので今すぐ来てください」

 

八幡「なんだよ……! ったく、しょうがねえな」

 

いろは「可愛い後輩の為ですよ。急いで急いで!」ニコリ

 

 

 生徒会室

 

 ガラガラ……

 

八幡「なんだ? 誰もいないのかよ」キョロキョロ

 

いろは「はい、みんなはもう帰りましたよ。きゅ、急用ができたとかでぇ~」スットボケ

 

八幡「? はあ? ホントかよ」

 

いろは「ほ、ホントですよぉ。あ、先輩、のど乾いてません? これ、良かったらどうぞ」ハイ

 

八幡「って、お前、そのペットのドリンク、お前の飲みかけじゃねえか」タジ

 

いろは「え? 先輩って、そういうの気にする派なんですか?」ウワメヅカイ

 

八幡「あ、当たり前だろ……嫌だよ、そんな恥ずかしい事できるか」

 

いろは「はぁー……、こんな美少女が飲んで良いって言ってるのに、ほんと先輩って奥手なんですねぇ」ハァ

 

八幡「自分で美少女とか言うんじゃねえよ。ってか、な、なんだ? 急に抱き付いて」ビクッ

 

いろは「先輩はちょっと女性に抵抗感持ちすぎです! で、ですので……わ、私が少し練習させてあげます」

 

八幡「れ、練習だと? おい、仕事はどうし……」口塞ぎ

 

いろは「今は私のことだけ見てくださいよ……せんぱい……」ウルウル

 

八幡「うっ……だからその目は止めろっての……。で、何をどうすればいいんだよ」アセ

 

いろは「そうですねぇ……抱き付く所までは平気そうですからね。じゃあ、キスしてもらいましょうか」ニコ

 

八幡「き、キス~!? なんでだよ」

 

いろは「だって、男女の間の事でしたら、キスは基本中の基本ですよ。そんなことも知らないんですか先輩は!」ニヤ

 

八幡「まあ、そうか……じゃあ」ガバッ

 

いろは「!? ふぇっ! ちょ、ちょっと!? 先輩~!? か、顔近づけて何する気ですか!?」アセリ

 

八幡「え? い、いや、だってお前がキスしろって……違うのか?」

 

いろは「はわわ……だ、だって、先輩、間接キスも嫌がってたじゃないですかぁ!? なのに、なんでいきなりキスしようとしてるんですかぁ!?」アセアセ

 

八幡「え? だって、人の飲み物に口付けたりしたら、何言われるか分かんねえだろうが。中学の時も、ドリンクの回し飲みでキモがられた奴いたしな。そんなことしたら、マジ苛められるし」

 

いろは「は!? じゃ、じゃあ、本当のキスはなんで出来るんですか!?」

 

八幡「え? だって、キスしてたってキモがる奴いなかったし…これも中学の時の話だが、校舎裏でキスしてる奴らがいたんだが、結構な人数で目撃されたけど、別にそれで苛められたりしてなかったからな」

 

いろは「なんですかその理論!? 先輩は苛められるか、られないかで決めてるんですか!?」クワッ

 

八幡「まあそうだな。必要があればどんなに嫌われても平気だが、何にもなくてわざわざ自分を危険に晒そうとは思わない。ボッチが無難に学校生活を乗り切るためのスキルの一つだな。それよりどうすんだよ。キスすんのか、しないのか」ギンッ

 

いろは「は!? え、えっとですね……こういう場合は想定してなくて……っていうか、先輩は本当にキスして平気なんですか?わ、わたしこう見えても、ま、まだキスしたこと無いんですよ! ま、まさか、先輩ってもう誰かとキスしたり」アセ

 

八幡「んん? なんだか分かんねえけどな……なんでそんなに気にするんだよ……あ、でも、そう言えばこの前由比ヶ浜と……」ポツリ

 

いろは「ええ!? ゆ、結衣先輩とシちゃったんですか?」クワッ

 

八幡「シちゃったってなんだよ。なんか悪い事したみたいに言うんじゃねんよ。いやなに、この前クラスに居る時に試しに由比ヶ浜としてみようってことになってだな……」エート

 

いろは「は!? だ、ダメですー! ダメダメ……絶対ダメー」カアッ///

 

八幡「だから最後まで聞けって。別にそんときはだな……」

 

 ガラガラ

 

結衣「あ! ヒッキーやっぱりここにいた」ビシッ

 

雪乃「まったく貴方ときたら、今日は大事な約束があったでしょう? なんでこっちに断りもなく一色さんのところにいるのかしら」フゥ

 

八幡「あ? だってそれは一色がだな」

 

いろは「は!? ちょ、ちょっと待ってくださいね皆さん。わ、私今非常に混乱しておりまして……」ムムム

 

結衣「どうしたの? いろはちゃん。なんだか顔真っ赤だけど?」

 

いろは「ひゃっ……い、いや、あのですね……そうだ! あのぅ、結衣先輩はキスってどう思います!」チラリ

 

結衣「ん? キス? なんで?」

 

いろは「い、いや……あのですね、結衣先輩って頼まれたら誰とでもキスしますか?」

 

結衣「え!? し、しないよ……そんな事絶対……」アセ

 

いろは「じゃ、じゃあですね……先輩に頼まれたらどうしますか」

 

結衣「うん、するね!」キパッ

 

いろは「ふぁっ!! なんでですかぁ? キスですよ! チュウですよ!」

 

結衣「えっと……? なんでって言われると、ねえ、ゆきのん」チラリ

 

雪乃「そうね……一色さんがなんでそんなことに拘るのか分からないのだけど、比企谷君相手でも、キス位してあげてもかまわないのではないかしら…」

 

いろは「ちょ、雪ノ下先輩まで? え? だって、ほら、キスですよ」アセアセ

 

八幡「もう……さっきからうるせいな。ほらキス位簡単だろ……おい、由比ヶ浜」クイッ

 

結衣「うん、ヒッキー……ん」

 

いろは「はうあ!? だ、ダメ、ダメですって! しちゃダメなんですよ! その……人前とかじゃ!?」クワアッ

 

八幡・結衣・雪乃「なんで?」ハテ

 

いろは「そ、それはですね……えっと、き、キスは、す、す、好きな人とするものであってですね……ごにょごにょ……」///

 

結衣「ん? ゴメンね…良く聞こえなかったんだけど」

 

いろは「だからですね……キスは……って、結衣先輩、先輩のこと好きなんですか? どうなんですか?」オラ

 

結衣「ふぇ!? へ!? い、いや、それはちょっと……えへへ……」テレ

 

いろは「雪ノ下先輩は、先輩のことどう思ってるんですか!? 好きになっちゃたんですか!?」オラオラ

 

雪乃「質問の意図が読めないのだけれど、この人ならぬ下等生物に好意を抱いていると思われるのは心外ね」キパッ

 

八幡「雪ノ下……俺目の前にいるからね……人のこと単細胞生物みたいに言うのマジやめてね」ジロリ

 

いろは「だったら!? だったらですよ! いいですか!? 好きでもない男性にキスをすることに抵抗がないってのはおかしいじゃないですか!? なんでキス出来るんですか!」クワッ

 

八幡「お、おい……一色。ちょっと落ち着けって。そもそもお前が俺にキスしてくれって頼んできたんだろうが!」

 

いろは「は!? な、な、なんで今それバラシちゃうんですか!? ちょっと、先輩頭おかしいんじゃないですか!?」アセアセアセ…

 

結衣「なーんだ、いろはちゃんも仲間に入りたかったってことなんだね。そうならそうと、先に言ってくれればよかったのに」ホッ

 

いろは「へ!?」

 

雪乃「そうね。でも、生徒会長が奉仕部に入部するというのもおかしな話なのだけれど、まあ、客員部員という扱いなら問題ないかしらね」ヤレヤレ

 

いろは「へ? え? な、なんの話なんですか?」

 

八幡「だから……お前キスしたいんだろ? まあ、ちょうどいいや、雪ノ下、由比ヶ浜、コイツも連れて行っちまおう…」

 

いろは「えええ!? 何するんですかぁ!? いったい何を……」アセリMAX

 

結衣「えーとね、いろはちゃん。実は新しい奉仕部の挨拶を、うちのクラスの姫菜が考えてくれてね……とりあえず、奉仕部部員と、なんでか分からないけど隼人君は、部室に来た時の挨拶はキスすることにしようってことになったの。まあ、隼人君はヒッキーが担当らしいんだけどね。で、その練習を今日することになっててね……だから、ほら、ゆきのん……ん」

 

雪乃「……ん」

 

 チュッ

 

いろは「ほわああ……な、なにしちゃってんですかぁ……お、お、女の子同士でチューとか!」

 

結衣「??……え、何? やっぱり変なのかな? 姫菜が超ノリノリだったんだけど……ねえ? ゆきのん」

 

雪乃「そうね……欧米では一般的な挨拶とも聞いたことがあるのだけれど、やっぱりやり方が違うのかしらね? これは練習が必要ね。さ、一色さんも一緒に行きましょう」

 

いろは「え? ちょ、ちょっと……そう言う問題じゃない気がす……い、いやあ……離してぇ……」

 

八幡「本当にお前さっきから何なんだよ。ほら、用もなさそうだし、さっさと行くぞ。海老名と葉山待たせて、後でグジグジ言われるのは嫌だからな。とりあえずマウスウォッシュは買ってあるから安心しろ」キパッ

 

いろは「〇×▲□~!?」//////////////

 

 

ガラガラ……ピシャッ!

 

 

 

 

 

 

 私には気になる人がいる。その人は、捻くれてて、優しくて……でも、その人はいつでもその二人だけを見つめている。そんな3人の持つ雰囲気……それは壁になって私の前にそびえていた。

 私には越えることが出来ないその高い高い壁を……私は……

 

 

 

 

 

いろは「やっぱり越えられなかったよぉ」グスッ

 

小町「……ですよね」ウンウン……涙

 

 

 

 

 この日、この奉仕部の新しい挨拶は、葉山と一色の必死の抵抗により廃案となったことは、言うまでもない。

 

 

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