『八幡』と『結衣』と『雪乃』のオムニバスストーリー 作:こもれび
特にタグも用意していないので、伏字しまくりです。ご了承ください。
あ、八結です!
『小説』とは、読んで字のごとく小さなお話のことを指すのが一般的なのであろうが、特にその中の『ライトノベル』と呼ばれる物は、やはり字のごとく軽く扱われることが多い。
だが、だがしかし、このラノベ、読む人によっては、歴史的世界的文豪の作品や、いつもエラく婉曲な言い回しをするなんとかの森の作家や、やっつけで大作を書き上げてしまう軽井沢に住んでいるミステリー作家の作品をも超える、心に残り、人生を変える素晴らしい作品ともなるのである。
かくいう俺にとって、今手に取っているこのラノベの作品は筆舌に尽くしがたい魅力を内包したものであり、これを超える作品に今後出会うことはないであろうと考えている。
読み進め、全てを読み終えた今、この感動をどう表現したら良いのであろうか。
主人公の苦しみが全身に伝わり、ヒロインのこの純朴な思いが胸を打ち、そして二人で達成したそこに広がった景色に涙が込み上げた。
これほど爽やかで、清々し思いはいつブリだろう。
ああ、この感動をどう表現すれば……
「ああっ! ヒッキー泣いてる! ねえねえゆきのん! ヒッキー泣いちゃってるよ! きもーい」
「あら? 貴方のような濁った目からも涙は溢れるのね。これは発見だわ」
そんなことを俺を覗き見るいつもの二人から言われ思わず目を瞑る。
いや、だって本当に泣いちゃっているんだもの。
「う、うるせいよ。俺だって感動すれば涙くらい出る。それから、キモイ言うな」
とりあえず仏頂面のままそんなことを言って涙を拭うと、わわわと、由比ヶ浜の奴がガタガタと椅子ごと俺の傍に移動してきて頭を下げた。
「ご、ごめんねヒッキー。なんかさ、男の子が泣いてるのって意外っていうか、不思議っていうか……ついね、酷い事言っちゃった。怒っちゃった?」
俺を下から覗き見るように眉を下げて謝ってくるし。
近い……っていうか、近すぎるから。
「そ、そうね、私も言いすぎてしまったようね。ごめんなさい」
雪ノ下までもが、対面で申し訳なさげに頭を下げるし。
「い、いや別に怒っちゃいねえよ。その、俺もちっと恥ずかしかっただけだ」
本当に恥ずかしくて、そんなことを言いながら頬を掻くと、もう一度二人が「ごめんね」と言って謝ってきた。
いや、本当に別にもういいのだが、なんだか今日は二人とも偉く優しいな。気持ち悪いくらいに。
「それで……ヒッキーは何の本を読んでたの?」
そう由比ヶ浜に聞かれて顔を向けて見れば、さっきよりも近い位置で俺の手に持った本を覗き見てるし。
な、なんか……なんかいい匂いが……
一日同じように授業受けていたはずなのに、女子ってなんでこんなにいい匂いすんだよ。き、気まずい!
「ま、まあ、これだな。「Reゼ〇から始まる異世界生活」ってやつなんだが……知ってるか?」
「あー! 知ってるよ! この前アニメでやってたやつだよね! 深夜に!」
と、かなり食いつきよく由比ヶ浜が反応した。
え? マジで知っているのか? 意外すぎる。
「超怖い奴だよねー、何度もスバル君死んじゃうし、悲しいしね」
本当に知っているみたいだな。盛り上がっている由比ヶ浜を見ながら雪ノ下が聞いてきた。
「それはどんなお話なのかしら?」
「あ、えとね、主人公のスバル君がね、エミリアちゃんを助けようって、何回も死んじゃいながらね、でもね、嫉妬の魔女のせいでね、言おうとすると、心臓ぐぁーってなっちゃってね、やり直して先に進んで、青い髪のレムちゃんがとっても可愛くてね、モーニングスターで何回も潰しちゃってね、崖から落ちたり、凍っちゃったり、食べられちゃったり、切られちゃったりね。でもそうそうベア子ちゃんも超可愛くてもう最高なの!」
と、一気にまくしたてるように言う由比ヶ浜。
「うん、だいたい合っているな」
「え? それで合っているの? 本当に!?」
驚いた顔の雪ノ下。目ん玉ひんむいているな。まあ、そうだよな。
でも本当に合ってんだから仕方ねえ。
俺は雪ノ下にこの作品の粗筋を説明。雪ノ下はそれをふんふんと頷きながら聞いていた。
このお話、リゼ〇とは異世界転移したナツ〇スバルのお話で----
と、説明しようと思ったけど、割愛(みんな話知っているもんね!)
と、そこへ、由比ヶ浜がいきなり聞いてきた。
「ヒッキーはさ、ヒロインならエミ〇アちゃんとレ〇ちゃんとどっちが……好き?」
なんでこいつは『好き』のとこに微妙にアクセント持ってくるんだよ。もうその唇の動きが気に成っちゃって仕方ないだろう?
「そ、そんなのどっちでもいいだろ?」
「えー? 教えてよ。じゃないと、これから毎日リゼ〇の話で盛り上がれないじゃん!」
毎日するのかよ。ま、まあ、それも悪くないかもな……
いやいやいや、何を考えてんだ俺は。
女子と会話する内容じゃないだろ、そもそも。でも、確かにネタがあると話しやすいのは確かか……
そんなことをもんもんと考えていたら、由比ヶ浜が言った。
「じゃさ! 二人で一緒に言おうよ! ね? それならヒッキーも恥ずかしくないでしょ!」
いや、女子といっせーのはそれだけで相当ハードル高いと思うのだが……
と、思っていたのに、由比ヶ浜はお構いなしに、いっせーのーと言い始めやがった。
わわわ……
慌てて、俺は……
「「レ〇!」ちゃん。わ、わー、一緒だねヒッキー。えへへ」
その屈託のない由比ヶ浜の笑顔に思わずどきりと胸が高鳴ってしまう。
でも、俺にとってこの作品のヒロインはあくまでレムなわけで、正ヒロインのエミ〇アには申し訳ないが、スバルとレ〇には幸せになって欲しいって切に思ってしまう。
とくに、今眠ってしまっているレ〇のことを考えるとね。もう胸が張り裂けそうで……
「ね、ヒッキー。レ〇ちゃんていつ目覚めるのかな?」
「え? そ、そりゃあ、暴食を倒してから……って、あれ? おまえ何でレ〇が眠ってることを知っているんだ? アニメじゃそこまでやってねえはずだが」
「あ」
由比ヶ浜も顔を見れば、耳まで真っ赤になって今にも湯気が出そうになっている。
あれ? なんだ? どういうことだ?
「ふふふ……」
なぜか雪ノ下が口に手を当てて小さく笑い始めてるし。なんでわらってんだ?
雪ノ下は可笑しそうに笑いながら口を開いた。
「なるほど……由比ヶ浜さんはこの話をしたくて、この前比企谷君のラノベを見ていたのね」
「わわわ、ゆ、ゆきのん、それ言わないで!」
慌てて雪ノ下に駆け寄る由比ヶ浜。
なんだ? どうなってんだ?
雪ノ下は由比ヶ浜の制止も効かずに続ける。
「この前あなたがマックスコーヒーを買いに行っている間に、この娘あなたの本をこっそり見ていたのよ。つまり、あなたと話すために、その本を調べて自分でも読んだということでしょうね」
「え?」
「ゆ、ゆきのんってば‼」
笑う雪ノ下の肩を掴んでぶんぶん揺する由比ヶ浜。もう見る間に真っ赤になっていく。
ということはなにか? こいつ俺とリゼロの話をするために、この本をわざわざ読んだのか? そ、そうまでしてこの話を……、お、俺と?
「あらあら、今度は比企谷君も真っ赤になってしまったわね。これは熱くて大変だわ」
そんなことを宣う雪ノ下の脇で、真っ赤になった俺と由比ヶ浜の二人。
き、気まずい……
どうすりゃいいんだー‼
「え、えと、また一緒にリゼ〇の話……したいな……ヒッキーと……良い?」
オズオズとそう言う由比ヶ浜。
そんなの俺が言えるのは一言だけに決まってる。
俺は由比ヶ浜を見ずに一言だけ言った。
「ああ……」
雪ノ下がただただ微笑んでいた。
あー、早くレ〇目覚めねえかなー。
了