『八幡』と『結衣』と『雪乃』のオムニバスストーリー   作:こもれび

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(2)ただ今ホームレス中につき

 『事実は小説より奇なり』などとはよく言ったもので、まさかこんなことになるとは!?等と、テンプレの反応をしてみたところで、現実はなーんにも変わりはしなかったわけで……。

 しかも俺達からすれば、この経験もすでに2度目。さすがに2度目ともなればその驚きも半減以下……というより、もはや、『はあ、またか』と呆れ半分のため息しかでないわけで……。

 まあ、何が言いたいのかというと……。

 

「ヒッキー、このジャガ丸くん超おいしーねー」

 

「本当ね、ハーブかしら?ただのコロッケじゃないわね」

 

「おお。これは確かに旨い!原作でも、旨そうだなって思ってたんだよ」

 

 と、いうことで、このジャガ丸くんは本当にに旨かった!

 

「ちょ、ちょっとお兄ちゃん達、なんでごく普通に屋台でコロッケ買って買い食いしちゃってんの?小町達、全然ついていけないんだけど」

 

「あ、いや、これはコロッケの様に見えるが、ジャガ丸くんという正当なこの世界の食べ物だ。おまえも食べたいのか?ほら」

 

「あ、ありがとう……って、ちっがーーう!そうじゃなくて、なんなの一体!さっきまで奉仕部にいたと思ってたら、地震があって、そのあとはジャングルみたいなとこにいたし、そんでもってでっかい大魔神みたいなのがいっぱい出てきて、お兄ちゃん達魔法使っちゃってるし、やっつけたと思ったら、ドラゴンボ○ルのシェン○ンみたいなのと悟○みたいな人出てきちゃうし、っていうか、そのあと全員まとめて『リレミト』とかって魔法使ってここまで来ちゃうし~~~~はあ、はあ、」

 

「お、おお……説明ごくろう…。てか、よく大魔神知ってたな、あれは名作だよな」

 

 はあはあ、と、小町が肩で息をしているその後ろで、壁に寄りかかった平塚先生が言った。

 

「小町くん、あれは魔法ではないよ。『じゅもん』だ!」

 

「どうでもいいですよ!そんなことはぁ!」

 

「まあ、落ち着け小町。世の中、不思議なことがいくらでもあるってことだ。もうあきらめて、ジャガ丸くんでも食べろ、ほれ」

 

「はむっ……もくもくもく……うん、美味しいね、これコロッケっていうより、ハッシュドポテトが近いかな、お兄ちゃん……って、だからちがーーーーーう!もう、なに?なんでそんなに順応しちゃってんの?どう考えてもおかしいでしょ!!その辺歩いてる人達、耳とか尻尾ついてるし、刀とか持ってるし、お店の看板とか何て書いてあるか全然読めないし、ここ、絶対日本じゃないし!なんか、言っちゃってくださいよ、いろは先輩も!!」

 

 と言って、小町が後ろにいる一色を振り返ると、そこには宝石店のショーウインドウに顔を押し付けてうっとりとしている一色が。

 

「い、いろは先輩!?なにしちゃってんですか?」

 

「え、だって、ここファンタジーの世界なんでしょ?そしたら、なんかマジックアイテムっぽいのもあるかなって」

 

「お、一色……お前こういうの好きなのか……意外だな」

 

「し、失礼ですね、比企谷先輩はー。私だってファンタジーは憧れてますよー。人並みにはですけど。ディスティニー関係なんて大好きですよ。えーと、例えば……」

 

「お、おい、やめろ!ディスティニーネタは鬼門だ。過去に何人の作家さん達が賠償問題に巻き込まれたことか……おまけに今じゃ、宇宙で戦争してるお話も引っ掛かってきちゃう時代だし……まったく、寒い時代になったと思わんか?」

 

「って、なんでそこでワッケイン司令やるんですかー。そんな70年代生まれしか分からないようなネタで後輩に話しかけようとしてること事態がキモくてあり得ないので真剣に反省してください、ごめんなさい」

 

「お前、十分対応できてるからね、別に振っても構わんけど」

 

「わわわ……ま、まってくださいよー、先輩ちょっと話を」

 

「もーーー!ヒッキーてば、いろはちゃんと仲良くしすぎ!」

 

「八幡!いい加減にしないと、本気で怒るわよ。私だっていつまでも穏やかではいられないわ」

 

「い、いや、ちょ、ちょっと待て、お前ら。なに?俺が悪いの?ちょっと話してただけなんだが」

 

「彼女である私たちを差し置いて、一色さんにデレデレしているのはどうかと思うのだけど!」

 

「そ、そうだよ。いろはちゃんとイチャイチャしたいなら、その前に、あたし達といっぱいシてからにしてよ」

 

「え?」「ん?」「へ?」「は?」

 

「ちょっ……ゆ、結衣先輩、何イッチャッテんですか!?」

 

「へ?なに?」

 

 回りにいる連中が一斉に真っ赤になって由比ガ浜を見つめるが、当の由比ヶ浜は頭にクエスチョンマークをつけて不思議そうにしてる。

 

「えーと、由比ヶ浜さん、教えてあげるから、耳を貸しなさい……ごにょごにょ」

 

 雪の下に耳打ちされて由比ヶ浜も赤面。まったく、こいつはいつになっても……まあ、そんなとこも含めて好きではあるんだが……

 

 長くなってしまったが、俺たちは今、とある大通りの路傍に佇んでいる。隣には某ロリ巨乳の神様のバイト先である『ジャガ丸くん』の屋台が。

 

 かのダンジョンの中層……確か18階層で、大量の変異種のゴライアスを倒した俺たちは、さっきの小町の言葉の通り、リレミトを使って一気に脱出した。本当は俺達だけで脱出するつもりだったのだが、どういうわけか出力が上がりすぎてしまっていたようで、その階層にいた全員を巻き込んでの脱出となった。その数およそ200人。

 突然に大量の冒険者が出現した、ダンジョン入り口は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。

 そりゃまあそうだ。ただでなくともこんな魔法を見たことない上に、死闘を潜り抜けた死にかけの戦士が200人、突然に現れたわけだから、そりゃあ腰を抜かすわな。

 

 当の転移に巻き込まれた冒険者達自身も訳がわかっていなかったから尚悪かった。その場の全員が慌てふためき、その混乱が収まるのに暫く時間が係ってしまったことは仕方がないことだと思う。

 まあね、この直前に、町の外周から神龍がダンジョンに向かって突入していったわけだから、地上の連中はさぞや恐ろしかったことだろう。

 

 そんなこんなで、俺達は地上に出た訳だが、事態を重く見たギルドの職員に神様達が強制連行され、ルビス様不在の今、俺達は右も左も分からないこの場所で途方にくれていると云うわけだ。

 だが、ここに居るのは、俺、由比ヶ浜、雪ノ下、小町、一色、平塚先生の6人のみ。オルテガとーちゃんはというと、『腹がへったーー』とか言って、さっきこのラノベの主人公のベル君達にたかって、どっかに食事に行っている。

 で、俺達もこの世界の金は一銭も持っていないため、さっきやっぱりベル君にちょっとだけ借りた。

 なんか、ベル君の俺達を見る目が、すごくキラキラしてて非常に居たたまれない。

 なんかこれってなし崩し的に、色々断れない状況に進んじゃってるような気もするんだが……。

 

 とまあ、借りた金でジャガ丸くんを買って食べつつ、ルビス様達が帰って来るのを待っているというわけだ。

 

「おーい、はちまーん。帰ったぞー」

 

 見ると、腹に手を当てて、陽気になってるとーちゃんと、何故か真っ青な顔になってる、ベル君達3人。

 

「ま、まさかな……50人前もたいらげちまうとは……」

 

「本当に信じられません!お一人で10万ヴァリスも食べてしまうなんて……。ベル様ぁー、ちゃんとオルテガ様達に請求してくださいね!これじゃあ、あっという間に破産ですよ」

 

「う、うん、リリ、分かったよ」

 

 着流しを来たヴェルフは呆れ顔、大きなバックパックを背負った小柄なリリはちょっと怒ってるな。ベル君はと言うと……まあ、仕方ないと思うが、顔面蒼白だ。

 オルテガとーちゃんに、『是非、ご馳走させてください!』とか、急に言い出したわけだしな。

 それは、ちょっと不味いんじゃねーか、って言おうとしたときにはとーちゃんもうノリノリで間に合わなかったからな。ベル君、ファイト!

 

「いやぁー、うめかったぁ。ここの飯はオラ達の世界よりずっとうめーなー」

 

「そ、そうか……良かったな、とーちゃん」

 

 俺のそばに来て、満足そうに笑うとーちゃんに答えたその時、壁沿いに立っていた平塚先生が突然俺の前に飛び出して、そしていきなりその場で土下座!

 OH!本家本元だあ、とか、ベル君達がなんか騒いでるが。

 

「ご、悟○さん、いや、オルテガさん!わ、わたしに、わたしに界○拳を、界○拳を教えてください。なんでもします。亀の甲羅も背負います。なんならノーパンでパンチラしても構いません。お願いです。この通りです」

 

 は?あの先生?だから別人ですよ!この人。それに、その最後の辺り、人としてどうなんですか!

 とーちゃんもなんか不思議そうな顔して頭掻いてるし。

 

「なんかよくわかんねーけど、強くなりてーってんなら、一緒に修行すっか?」

 

 その言葉に、先生はガバリと顔を上げる。

 うわあ!ちょっと嬉しそうに目を潤ましちゃってるんですけど、そんなに強くなりたいの?どこ向かってるの?旦那さん候補からだけはどんどん遠ざかってる気がしますよ。

 そんな嬉しそうな先生を見つつ、とーちゃんはいつものずた袋に手を突っ込んで何かごそごそと探していた。そして……。

 

「なあ、おめえ、静だっけか?そしたら、そんな格好じゃあアブねえからこれに着替えろよ、ほれ」

 

 と言って、手にもっているのは……。

 

「って、とーちゃん、それ『まほうのビキニ』じゃねえか!」

 

 チラリと由比ヶ浜達を見ると、顔を真っ赤にしてぶんぶん首を振ってるし。

 大丈夫だよ。もうお前らに着せたりはしねえから。

 すると、とーちゃんが言った。

 

「違うってー。これは、メダルおじさんとかって奴からもらった『神秘のビキニ』だぞ。なんでも、魔法とかに耐性つくみてえだな。あ、メダルおじさん、八幡達によろしくって言ってたぞ」

 

 メダルおじさん、くれたのかー。というか、いくらなんでも先生も着たりしないだろう……って!

 気がついたら、俺達の目の前に、バッチリ神秘の水着を着たダイナマイツボディーの平塚先生(アラサー)が!いつの間に着替えたんだよ。は、早すぎだろう!

 

「ごくぅ……オルテガさん!これで一緒に行けますか!」

 

 先生超やる気満々だな。

 そうしたら、とーちゃんがまたもやずた袋から何か取り出した。

 

「うしっ!なら、オメーにこれやるよ。剣より使いやすいだろう」

 

 そう言って、先生に投げて寄越したのは……

 

 『黄金の爪』

 

「こ、こんなの貰っちゃって本当にいいんですか?」

 

「ああ、ピラミッドっつうとこ行ったら、置いてあったんだ。結構使いやすいと思うけどな」

 

「あ、ありがとうございます、師匠!」

 

 なんか先生の中ではいつのまにか師匠になってた模様。

 というか、町中でビキニで泣きながら黄金の爪抱き抱えてるって、一体どこのS○D?

 これで終わりかと思ってたらとーちゃんが更にもうひとつ……

 

「ひゅー!なになに?このお姉さん超魅力的!」

 

「ねえねえ、僕らもう堪んないんだけど、一緒に遊んじゃおうよう!」

 

「俺ら、いくらでも相手出来るぜ。たっぷり楽しもうよぉ」

 

 もともと美人の平塚先生が、さらに過激な格好をしてるせいで、ウザい自意識過剰系冒険者が集まってきてしまった。まったく、冒険者の連中はどいつもこいつも。

 以前に、雪ノ下と由比ヶ浜が絡まれた経験もあったから、とりあえず追っ払ってやろうと立ち上がったのだが。

 

『ふしゅるるるる……』

 

 下を向いている平塚先生が唐突に言葉にならない音を口から漏らした。そして次の瞬間……

 

「「「ぎゃああああああ!ば、ばけものだあああ!!」」」

 

 先生を囲んでいた冒険者達が一斉に叫んで、腰を抜かししてヘタリ込んでいる。

 そして、その中央で、先生がゆらりとゆっくりと立ち上がった。

 殆どの肌が露になったその身体は抜群のプロポーションも相まって、艶かしくも美しい。だが、その右手には金色に輝く鋭く長い爪が伸びており、その顔には奇っ怪な鬼の面が……!

 

 『般若の面』

 

 ジパングに伝わる呪われた武具。その装備者は凄まじいまでの強靭な肉体へと身体を変化させ、あらゆる物理攻撃を軽減させてしまう。だが、この面は身体だけでなく、心も蝕みその精神を錯乱させる。そして、目につくもの全てを殺傷する存在となってしまう。

 

 な、なんてもんを先生に被せんだよ。

 

 先生はヘタリ込んでいる冒険者達を見定めながら、その黄金の爪を振り上げた。

 

「ぎゃあああああああ!」

 

 絶叫した冒険者の一人は、その股間が盛大に濡れてしまっていた。って、き、キタネエ。

 

「おいおい、おめえの相手はオラだって」

 

 黄金の爪を冒険者に突き立てようとした先生の手をとーちゃんが掴むと同時に、先生はその長い足でとーちゃんの頭めがけてカミソリのような鋭いけりを入れようとする。

 それをかわしたとーちゃんは先生の腹へ拳を突き入れようとするも、尋常ではない素早さで先生はそれを回避、すかさず黄金の爪でとーちゃんを切り刻もうとラッシュを開始……

 

「んじゃ、オラ達、ちょっくらダンジョンで修行してくっから、八幡、またなー」

 

 そう言いながら、先生のラッシュをかわしつつ、とーちゃん達はダンジョンの方向へ。そして、思い出したようにとーちゃんが何かを叫びつつ、またずた袋から黒く長いモノをとりだして、俺に向かって投げた。

 

 ズァンッ!!

 

 とーちゃんが投げたそれが凄まじい勢いで飛んできて、俺の足元に突き刺さる。

 鈍い金属の輝きを放つ、その幅広の剣には非常に思い入れがあった。

 

 『雷神の剣』

 

 あの世界で、俺が最後まで使い続けた神代の武器。どんなに切っても殴っても歯こぼれ一つなく、念じて使えばベギラゴンを放つ最強の剣の一つ。

 やれやれ、またコイツを使うことになっちまったか……って、この身体じゃ、使うの初めてか。

 

 柄を握り、思いっきり引き抜いたのだが、お、重い……さすがに身体は一般人だから、仕方ないが、こんなに重たいの使ってたんだな。団扇あおぐみたいに振り回せてたのにな。

 なんて感慨に耽っていたら、呆然と佇む一団の中から、例の鍜冶師が走り寄ってきた。

 

「あ、あんた、ちょっとその剣見せてくれ。な、なんだよ、これは、なんなんだよぉ」

 

 近寄ってきたのは当然ヴェルフ。驚愕の表情で俺が手に持った雷神の剣を見続けている。

 

「これは、魔剣だな。でもただの魔剣じゃねえ。俺の作る魔剣のように、耐久値が低いわけでもないし、魔力のストックがあるわけでもねえ。この剣は、魔力を吸っているのか……それも、呼吸をするように……生きてるってのか……ちくしょう!なんてこった。こんな化け物、いや、神秘の剣が存在するなんて。なあ、あんた、この剣貸してくれ。なあ、頼む」

 

「べ、べつにいいけど」

 

 重くて持てねえし。

 

「ほ、ほんとか?わ、わりい、恩に切る」

 

 俺はヴェルフに雷神の剣を渡した。ヴェルフのやつはそれを恭しく抱えて、腰袋から出した白い晒しを丁寧に巻き始めた。

 

「えーとさ、ヒッキー?なんか色々あったけど、あたし達まだなんにも決まってないね」

 

 その由比ヶ浜の言葉で、その場にいる全員を見る。なんとなくだが、全員疲れきっていた。

 

「あー、今日の寝床、どうしようか?」

 

 そう言って初めて気がついたが、とりあえず俺達今、ホームレスだった。

 

 

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