『八幡』と『結衣』と『雪乃』のオムニバスストーリー 作:こもれび
「ハーレム?な、なんで俺に聞くんだよ」
突然ベル君から、ハーレムの作り方を聞かれたが、んなもん、俺が知るわけねーじゃん。大体、ベル君って、アイズなんたらかんたらが好きなんじゃなかったっけか?
ベル君は、モジモジしながら、チラリと室内を振り返って、そこにいる雪ノ下と由比ヶ浜の二人を見てから話す。
「だ、だって八幡さん。あんなに素敵な恋人さんが二人もいるじゃないですか!それに、あの料理が上手な子達も、八幡さんのこと好きみたいですし」
「はあ?あのな、雪ノ下と由比ヶ浜の二人とは付き合ってるが、小町は俺の妹だし、一色はただの後輩だ。勘違いすんな」
「そ、それでもお二人も恋人いるじゃないですか!どうやって仲良くなったんですか?どうしたらあんなに好きになってもらえるんですか?何故なんですか?教えてください!お願いします」
う、うわあ、ぐいぐい来るな。何故なんですか?って、そんなのナゼさんにでも聞けよ。あ、オルフェンズの最終回観てねえし、くっ!
それにしても、逆になんで『ハーレム』に憧れてんだ?普通にヘスティア様と同棲してる上に、酒場のお姉さん達とか、ギルドのエイナ?さんとか、あと、リリもそうだし、かなり手広くあっちもこっちも気を振り撒いてるしな。もう、ハーレム出来かけてね?
まあ、ベル君は基本的に『難聴系』の王道突っ走ってる主人公だしな。仕方がないのかもしれないが……。嫌味がないぶん、ワンサマーよりマシな感じではあるな。
だから、そうか。本気で『ハーレム』仕立ててやろうと思えば、すぐに出来ちゃうわけか。少なくともヘスティア様とリリと、シルって言ったか?あの酒場のお姉さんを入れた、この3人はベル君大好きっ子だからな。上手く誘導すれば、ハーレムは完成する。
んで、件のアイズなんとかさんは、別にそこまでベル君が強くなくても、充分脈はあると見た。(原作を読んだ限りでは……)
やりようによっては、本当にハーレム完成だな、うん。
「…………」
でも、なんかムカつくな。何が悲しくて、もともとモテモテの主人公のハーレムをわざわざ作ってやんなきゃなんねえんだよ。
そもそも、今の俺達のハーレム状態だって、たまたま雪ノ下と由比ヶ浜の二人が物好きだったってだけで、今までボッチ街道まっしぐらな俺からすれば、女子とろくな会話すらしたことなかった訳だしな。二人と一緒に居たいがために、俺なりに努力してるってだけのことだ。
そんなの一々説明したくもねえし、する気もないが。
うーん。
とりあえず、今一番重要なことは、『さっさと現世に帰ること』だ。
神龍はドラクエの世界に帰っちまったし、ルビス様は多分、召喚は出来るけど、返還は出来ないへっぽこだ。
となると、この世界で帰還の手段を探さないといけないわけだが、原作を読んだ限りではこの世界に異世界転移の手段はまだ無かったはずだ。まあ、作品自体がまだ途中で完結してないから、このあと何かしらの方法が出てくるのかもしれないが、今、それは当てにならない。
だから、帰還するための手段をもっていそうで、最も信用の高そうなものをって考えると……。
ちらりと、リビングに視線を移すと、テーブルで並んで。紅茶を飲みながら楽しそうに会話しているうちの4人の女子と、仰向けになって腹を摩りながらひっくり返っている幼女神!
ぐっ!あ、あの世界じゃ、透き通るような白い肌を、雨露みたいに煌めく薄い布で全身を覆った絶世の美女で、めっちゃドキドキしちゃってたのに……。今じゃ、ちびま○子ちゃんじゃないか。若しくは、ポ○ョ。
はあ、幻想を打ち砕かれて、感慨もなにもあったもんじゃないが、背に腹は変えられない。なんと言っても神様だ。下手な魔法使いより、よっぽど神秘に近い。この精霊神(ひと)に助けを求めるしかないか。
長々と思案してしまったが、漸く俺の方針が定まった。
じーっと俺を見て、待っているベル君を見やり、声をかけた。
「えーとな。こういうのは、男の俺より、あいつらの話の方が身になると思うんだ」
そう言って、ベル君の背中を押して、リビングでくつろぐ女子達の元へ。
「え?え?」
冷や汗を掻きながら訳のわかっていないベル君がちょっと慌て始めた。うん、まあ、わかるよ。いきなりよく知らない女子のグループに放り込まれたら、そりゃ緊張するよな。そんで、ちょっと、『ひょっとしたら仲良くなれるんじゃないか?』なんて淡い幻想を抱いて、決死の覚悟で話し掛けて、『ちょっ、なにコイツ!キモっ!』って目で射殺されちゃうんだよ。目で。当然会話なんてないわけだ。ソースは俺。ぐふうっ。じ、自分で古傷抉っちまった。
グッドラック、ベル君。
由比ヶ浜達に、耳打ちして、ベル君を頼んだ俺は、ひっくり返って気持ち良さそうに寝ているルビス様の首根っこを捕まえて、持ち上げてから話しかけた。
「ルビス様、ちょっと話があるんだが、今からいいですか?」
「うん?べつにいいけど?」
「んじゃ、ちょっと、差しで話しましょう」
「え?ふ、二人?やだ、わ、私、まだ心の準備が……」
「ないない。そーいうのないから」
「あ、やっぱりー。人間になったから、ちょっとやってみたかったんだよね」
「あー、はいはい、じゃあ、行きましょうね」
「むがー、こ、子供扱いするなー」
ジタバタするルビス様をぶら下げたまま、俺は隣の部屋に向かった。
× × ×
「えーと、まずは自己紹介した方がいいのかな?あたしは由比ヶ浜結衣、よろしくね、ベル君」
「では、次は私かしら。雪ノ下雪乃よ。よろしく、ベルさん」
「えー、私は後輩の一色いろはです。いろはって呼んでくださいねっ」
「はいはーい、八幡の妹の小町でーす!ベルさんてー、なんか可愛いですねー。守ってあげたくなっちゃう感じですねー」
「あー、はいぃ。えと、ぼ、僕は、べ、ベル・クラネルって言いま……す。い、一応、ぼ、冒険者やってます」
な、なんでこうなっちゃったんだろう……。
目の前には、綺麗な女の子が4人も居て、みんなが僕を見つめてる。ううっ……に、逃げ出したい。
最初は、こんな綺麗な人達と付き合ってる八幡さんに、ハーレムの極意を聞こうと思ってただけだったのに。
『いいか、ベル!男なら、何がなんでもハーレムを築くのじゃ』
八幡さん達を見てたら、いつかのお祖父ちゃんの言葉が
急に頭に浮かんできて、これは聴かなきゃダメだ!って。
だって、いままで、色んな冒険者とか、神様とか見てきたけど、ここまでしっかり『ハーレム』やってる人いなかったし。
それに、八幡さんて凄い『魔法使い』なのに、なんかとっても優しいし、結衣さんとか雪乃さんとかを前にすると、すごく格好いい男の顔になるし。
でもでも~~
いきなりこれはないですよー。ぼ、僕になんの恨みがあるんですかー。き、緊張しちゃって、は、話なんか出来ませんよ。
そんなガチガチの僕に、結衣さんが話し掛けてきた。
「えーと、ベル君て、好きな人がたくさんいるって本当なの?」
な、なんで?八幡さん、さっきなんて言っていったんだろう?
「い、いえ、た、たくさんなんて、そんな……す、好きなというか、憧れてる人は……いますけど」
なんだか、誤魔化せない。好きな人……になるのかな。
「憧れてると言うことは、あなたからすれば手の届かない存在の女性……ということになるのかしら?」
「そ、そうですね。そうだと思います。ぼ、僕なんかじゃ全然釣り合いとれない……ですね」
そうなんだ。僕なんかじゃ釣り合わない。強さも、レベルも違いすぎる。
「なんかー、ベルさんってぇ、ひょっとして最初から諦めちゃったりしてますぅ?それじゃ、絶対上手くいきませんよぉ」
「え、えと、あ、諦めて……諦めてはいません。ただ、今の僕じゃ、あの人の脇に並ぼうなんて烏滸がましすぎて」
そうだ、今の僕にはその資格はない。僕はまだ全然だ。彼女に並んでいい存在じゃあない。
「でもでもですねー。小町は、そうやって諦めきれないって頑張ってる男の人、素敵だなって思いますよー。最初っから諦めちゃってた、どっかのゴミいちゃんより、スタートラインはよっぽど良いですよ」
「???そ、そうなのかな。なんにも出来ないくせに、でしゃばって、どんどん愛想つかされちゃったりしてるんじゃないかな?」
そう、彼女の周りには凄い人が沢山いる。彼女に肩を並べるに相応しい勇者がたくさん……。でも、そこに並びたいって頑張ってる僕を、彼女は認めてくれるのかな?待っていてくれるのかな。アイズさんは……。
「ベル君が好きなんだって気持ち、よく解るよ!ベル君なら絶対うまくいく。うん!あたしも応援しちゃうね」
「そうね。貴方がそこまで彼女のことを思っているなら、きっと上手くいくわ。だって、彼女は貴方以上に貴方のことを思っているのだもの」
「え?し、知っているんですか?ぼ、僕の気持ちを?い、いえ、そうではなくて、ぼ、僕のことをす、好きでいてくれているってことなんですか?」
「えー?。一目見れば分かりますよ!ね、小町ちゃん」
「はいです。絶対ベルさん、愛されてます」
え?ま、まさか、この人達、会ったことあるの?アイズさんに……。そ、そうか、八幡さんか……。あの人、知ってたんだ。そうに違いない。
でも、そ、そうなのかな。ほ、本当にぼ、僕のこと、考えてくれてるのかな?す、好きだって想ってくれてるのかな?あ、アイズさんは!
「あはは……ベル君、すっごく嬉しそう。そっか、怖かったんだね。嫌われるのって、ホント怖いもんね。でも、大丈夫だよ。あたし達もついてるからね。後は、ベル君が頑張るだけだよ。ねえ、ちゃんと聞いてました?」
え?
急に結衣さんが、玄関の方に向かって声をかけた。
ま、まさか……。
「早く来てあげてください。男の子が一世一代の告白をしようって頑張っているのだから」
来てるの?ここに……?
「男の子の気持ちを他人に言わせておいて、自分はでてこないなんて本当にズルいですよぉ」
ぼ、僕なんかのために……?
「もう答えは出てますよ。小町達の応援はここまでです。ベルさん、頑張って」
アイズさんが……!
皆さんの声のあと、入り口の方へ視線を向けると、扉の脇に人影が……。
アイズさん……。
その影は少し震えた感じで壁にもたれてる。
アイズさん……。
そして、ゆっくりこちらへ……。
アイズさん……。
アイズさん、アイズさん、アイズさん、アイズさん、アイズさん、アイズさんっ!!
僕は立ち上がって、その影に向かって叫んだ。
「ぼ、僕は、僕は貴女が……」
その影は、びくりとなって、立ち竦んでいる。そして、そのままじっと動かない。
待ってる……。
待ってるんだ……、僕の言葉を……。
だったら、言わなきゃ、頑張って言わなきゃ。
『イケー!男ならイクのじゃー』
なんか、お祖父ちゃんっぽい声もきこえる。
そうだ!今なんだ。頑張るなら、今なんだ!
僕は、腹に力を込めて続きの言葉を放った。
「す、す、好きです!!大好きです!!」
影が飛び上がり、そして凄い勢いで僕に飛び付いてく……る……?え?
「ベルくーーーーん!!う、嬉しいよぉ!ボクもだぜ!!ボクも君のことが大好きだよーーーーー!!」
「ええええええええ?か、神さまあーーーー?」
パチパチパチっ
「おめでとう、ベル君!」
「おめでとう」「よかったですねえ」「うー、いいですねーうらやま」
な、なんか拍手上がってるしぃ!?
「なんだよ、うるせえな、お前ら」
神様にぎゅうぎゅうに抱き締められた僕を、八幡さんが濁った目で見下ろしていた。