『八幡』と『結衣』と『雪乃』のオムニバスストーリー 作:こもれび
みんなへの恩恵の授与は結構あっさりと終わった。
まあ、俺自身、ほとんど時間かかってなかったから、簡単に想像はついてたけど、あまりにあっさりだったもんで、ちょっと拍子抜け。
一応、一色もいたし、裸をガン見してたら悪いと思って、俺は後ろを向いてはいたけれども……いや、決して、由比ヶ浜と雪ノ下の裸をもっと見たかったとか、そういうのはないから。そう、ちょっと、見えないのをいいことに、あれやこれやエロエロ……いや、イロイロ想像したりなんかしてないから……はい。
ま、まあ、そんなわけで、振り返った先には、もうしっかりと服を着たうちの女子たちが、ルビス様から渡された紙をしげしげと見ている最中だった。
べ、別にがっかりなんてしてないし!
と、俺の視線に気がついた一色が目を吊り上げて一言。
「比企谷先輩のスケベ」
「ぐっは……」
もう、何も言い訳出来ないので、歯向かいませんよ。はい。でも、なんか結構ダメージクルな…これ、はあ……
「あー、どれどれ?みんなのも見せてくれよ」
「うん、いいよヒッキー、はい」
由比ヶ浜に渡されてから、それをテーブルにおいて皆で見始めた。雪ノ下や一色達も近づいてきた。
さてと、じゃあ、こいつらのステータスはと……
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由比ヶ浜結衣
HP 6/6
MP 528/528
称号:元そうりょ(暫定)
性格:セクシーギャル
せいべつ:おんな
レベル78
ちから : 4
すばやさ : 4
たいりょく : 4
かしこさ :159
うんのよさ :233
最大HP : 6
最大MP :528
こうげき力 : 4
しゅび力 : 4
Ex : 4762908。
《じゅもん》
ホイミ べホイミ
ベホマ ベホマラー
キアリー キアリク
ザオラル ザオリク
ルカニ ニフラム
バギ ピオリム
マヌーサ ラリホー
ルカナン ザキ
バギマ マホトーン
バシルーラ ザメハ
フバーハ ザラキ
バギクロス
《スキル》
暴食
《発展アビリティ》
なし
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雪ノ下雪乃
HP 5/5
MP 622/622
称号:元まほうつかい(暫定)
みえっぱり
せいべつ:おんな
レベル77
ちから : 3
すばやさ : 4
たいりょく : 3
かしこさ :234
うんのよさ :191
最大HP : 5
最大MP :622
こうげき力 : 3
しゅび力 : 3
Ex : 4783211。
《じゅもん》
リレミト ルーラ
インパス トラマナ
ラナルータ シャナク
レムオル アバカム
メラ スカラ
ヒャド スクルト
ギラ イオ
メラミ マホトラ
ヒャダルコ ヒャダイン
ベギラマ バイキルト
イオラ マホカンタ
メラゾーマ メダパニ
マヒャド ドラゴラム
ベギラゴン モシャス
イオナズン パルプンテ
《スキル》
憤怒
《発展アビリティ》
なし
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比企谷小町
HP 3/3
MP 3/3
称号:なし
性格:おせっかい
せいべつ:おんな
レベル1
ちから : 1
すばやさ : 1
たいりょく : 1
かしこさ : 1
うんのよさ : 1
最大HP : 3
最大MP : 3
こうげき力 : 1
しゅび力 : 1
Ex : 0。
《じゅもん》
なし
《スキル》
怠惰
《発展アビリティ》
なし
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一色いろは
HP 3/3
MP 3/3
称号:なし
性格:おちょうしもの
せいべつ:おんな
レベル1
ちから : 1
すばやさ : 1
たいりょく : 1
かしこさ : 1
うんのよさ : 1
最大HP : 3
最大MP : 3
こうげき力 : 1
しゅび力 : 1
Ex : 0。
《じゅもん》
なし
《スキル》
色欲
《発展アビリティ》
なし
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アン
HP 35/35
MP 18/18
称号:なし
性格:あまえんぼう
せいべつ:ハーピィ・おんな
レベル4
ちから : 21
すばやさ : 45
たいりょく : 18
かしこさ : 22
うんのよさ : 30
最大HP : 35
最大MP : 18
こうげき力 : 21
しゅび力 : 18
Ex : 1549。
《じゅもん》
ピオリム ボミオス
《スキル》
傲慢
《発展アビリティ》
なし
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って、アンもかよ!?
なんと言えばいいのか……相変わらず、つっこみどころが多すぎて、どこからつっこめばいいのかわかんねえ。
とにかくスキルがヤバすぎる。
何?暴食、憤怒、怠惰、色欲、傲慢って?これに後、嫉妬と強欲があったら、『七つの大罪』じゃねえか。そりゃ、ファンタジーとかなら超メジャーなスキルだけどさ……これ基本闇落ち仕様スキルだろ。とくに由比ヶ浜の暴食がヤバイ。大概のメジャーどころのファンタジーなら、仲間のスキルを喰われたり、記憶を喰われたり、あとは無限に食べ続けて世界を荒野にしたりとか、そういやいろんな設定あったな。
そんなことを考えながらみんなを見た。
雪ノ下と由比ヶ浜の二人は俺と同様に唖然呆然。小町とアンはよくわかってない顔でニコニコしているが、一色が猛烈に不機嫌そうな顔で口を開いた。
「なんか、私超弱いんですけどぉ……なんですか?レベル1って!?それに、スキル『色欲』とかって、なんか私、すごくエッチみたいじゃないですか!?」
「って、俺に向かって怒鳴るんじゃねえよ。俺が決めたわけじゃねえし……それにその変なスキルってんなら、雪ノ下も由比ヶ浜も、小町も……それに、アンもじゃねえか!?っていうか、アン?モンスターなのに、なんで、恩恵受けられんだよ。たしか、この世界って、人間関係しか恩恵うけられないんじゃなかったか?」
「そ、そうです!な、なぜアンさんに……モンスターにも
と、俺の言葉を受けて詰め寄ってきたのは、いつの間に起きたのか、カタカタと顎を震わせた、たぶん焦った顔してるフェルズ。
そうだよな、フェルズが一番気になるはずだ。だって、何百年も生きて、実際に神々と交流もしつつ、恩恵を受ける冒険者達を見続けてきたわけだしな。そりゃあ、いきなり自分の常識をひっくり返されたら、こういう反応にもなるわな。
「えー、そうなの?今までがどうかは良く分かんないけど、私のやり方なら、私の子供たちにこういう恩恵?を授けるくらいならできるよ。モンスターだってこの世界の一部だしね。だって、この世界作ったの私だし」
ルビス様はそう言いながら、えへんとない胸を張る。
「っていうか、ルビス様?さっきから聞きたかったんだが、このステータスの表記はなんなんだよ!?全然フェルズとか、アスフィさんとかと違うじゃねえかよ」
と俺が言った脇で、
「え?違うの?」
由比ヶ浜がキョトンとした顔でアスフィさんたちを見る。見られた二人は、一瞬息をつめてたじろいだが、観念したように、コクリと頷いた。
流石に他人にほいほいとステータスを見せないのが、ここのやり方だ。そもそも、レベルとかスキル隠して、もしもの時に備えてるくらいだし。冒険者同士の殺しあいもあるくらいだしな。
まあ、こんだけ俺達のステータス見ちまった今じゃ、流石に隠す訳にもいかねえだろうけどな。一応、聞いておくか。
「あー、ちなみにフェルズたちのレベルって、いくつなんだ?それくらいなら教えてくれるだろ?」
すると、頭をかいたフェルズがぽそり。
「私は……レベル4だ……。だが、この身体になってからは完全にステータスの上昇は止まってしまったがな」
フェルズが言った後、アスフィさんも続いた。
「わ、わたしも……レベル4……です……」
なんでいい辛そうなの?この人は。
また、なんか隠してそうだな……まあ、別にいいけと……。
「たしか、今一番レベル高いのは、【フレイヤ・ファミリア】のオッタルとか云うやつで、レベル7だったかな?」
「え?じゃ、じゃあお兄ちゃん達、レベル78とか、めっちゃ強いんじゃないの?」
驚く小町に俺は言った。
「いや、お前な……俺達そんなに強そうに見える?筋トレとジョギングくらいしかしてないんだよ?いやいやそうじゃなくて、かなり話が逸れたな。ルビス様?なんでまた、あっちの世界のステータスなんすか?」
ルビス様はきょとんとして、
「え?だめ?」
はい、これだ。
多分この人またなんにも考えてねえな。
「いや、だめでしょう。そもそも、俺のレベル78って、こっちの世界のレベルいくつに相当するんすか?」
「え?78は、78じゃないの?」
「いやいやいや……さすがにそりゃないでしょう!どんだけここの連中と差があるんだよ?」
「え?でも、八幡くん達、大魔王ゾーマも、神龍様も倒しちゃったでしょ?私よりずっと強いでしょ」
「「はあっ?」」
ルビス様の言葉にフェルズとアスフィさんがすっとんきょうな声をハモって上げる。
「い、いや、あのな?倒したは倒したけど、ほとんどとーちゃんだぞ?やったのは。それに、そんときの肉体はあっちの世界の俺らに返しちまったし。」
「ちょ、ちょっと待ってください!し、神龍様って、この前18階層に現れた巨大な緑のドラゴンのことですよね?あ、あれ……あのお方を。倒されたのですか?」
言葉をかぶせてきたのはアスフィさん。今、ちょっと神龍をあれ呼ばわりしようとしてたよな?別に言い換えなくてもいいんじゃないか?でも、ちょっと面白かった。
「倒した……っていえば、そうかもだけど、俺らだけじゃ絶対無理だったな。オルテガとーちゃんがいたから勝てただけだ。俺達は自分の身体を守るだけで精一杯だったよ」
もう本当……あの時いったい何回神龍に吹っ飛ばされたか……MP枯渇するまでベホマ使いまくって、やっと生きてたって感じだったしな……
あーいやだ、思い出したくもない。
そんな俺に再びアスフィさんの声。
「で、でも、あなたは……あなたがたは神をも倒されたのでしょう?ならば、そのレベルが例え78と言われても信じられますよ」
「んん?そうなのか?別に信じなくてもいいけど、流石にあんたらのレベルと同じ土俵だとは思えないんだよな……そもそも、あっちの世界じゃすぐにレベル上がるし」
レベル1で、スライムを10匹も倒せばレベル2になる。こっちは確か、何ヵ月、何年も経験値を稼いで、しかもレベルに相応しい『冒険』をして、始めてレベルアップ。ほいほいレベリングできる向こうの世界とはやっぱりちがうんじゃねえかな?
「あー、それはね」
と、ルビス様。
「向こうの世界とこっちの世界じゃマナの量が違いすぎるんだよ」
「は?マナ?マナってあれか、魔法の元みたいな?」
俺の言葉に雪ノ下があきれた感じで言う。
「じゅもんを行使するときの術の中にマナ操作が組み込まれているのよ?知らなかったの?」
「知らねーよ、そんなこと。というか、なんでお前は知ってんだよ」
「あら?自分が使う神秘くらい気になるものじゃないかしら?私なりにじゅもんを解析していたのよ」
「まあ、お前らしいっちゃお前らしいか……、で、そのマナの量がなんとかってどういうことだ?要はその量でじゅもんの強さが変わるとかってことですか?ルビス様」
そう言うと、腕を組んだルビス様がうーんと唸った。
「ちょっと違うかな……マナはもともと精霊界のエネルギーのことなんだけど、あ、精霊界っていうのは、神々のいる精神世界のことね。ふつう私たちはこの地上みたいな物質界ではなく、天界って呼ばれる精霊界にいて、マナで自我を形成してるんだけど、この物質界に存在するすべてのモノにもマナが含まれててね、草や、木や、大地や海、当然だけど、みんなもマナを持っていて、そのエネルギーを使って、魔法とか、身体強化とかできてるわけ」
なんかいきなりまた小難しい話を語り出したなこの人。
一応、ちゃんと聞いておくか。
「でね、使うマナの量が多ければ多いほどじゅもんとかの効果は増大するんだけど、じゅもんてさ、もともと必要なマナが満たされさえすれば、それで発動しちゃうのよ。だから、まあ、単純に強くしようと思ったら、そういう風に設計しなくちゃならないからね。一概には言えないんだけど……」
「えーと、じゃあ、そのルビス様の世界と、こっちの世界とで、マナの量が違いすぎるって、どういうことなんすか?」
「うんとね、私の世界というより、神龍様がいるせいなんだよ」
「は?」
「神龍様って、この宇宙を作ったくらいの大神なんだけど、正直凄く燃費悪いの。神は基本精神体でマナで形成されてるからね。何かするたびに、マナを吸収し続けるんだけど……ほら、神龍様、大きいから……。神龍様が宇宙を駆け巡るだけで、小さい星なら、マナを全部吸い尽くされて消滅しちゃうくらいなんだよね……」
「なにそれ、超怖いんですけど!」
「だから、私の世界に来て貰って、ゼニス城でジッとしてもらってたんだよ。正直言えば、あの私の世界のマナの使用量の90%は神龍様用だからね」
「そんなに使ってんすか?大飯ぐらいすぎでしょ!じゃ、じゃあ、何?そののこりの10%で、じゅもん使ったり、モンスターと戦ったりみんなしてたわけか……」
なんかゾーマとかバラモスが世界征服しようとする気持ちなんとなくわかっちゃったかも……
神龍いたら、好きなことできなさそうだもんな、マジな話。まあ、それはいいとして、
「じゃあ、この世界はどうなんすか?」
「ここは、邪神の墓場はあるけど、別にマナを消費してるわけじゃないし、むしろ穢れたマナを放出してるくらいだからマナは多いよね。だから、こんなに神達が大手をふって闊歩できるんだけど……。最初の話にもどるけど、私とか神龍様の世界はマナの絶対量が少ないから、動くのもかなり大変だし、じゅもんもちょっとやそっとじゃ使えないから、じゅもん自体の完成度も高いと思うんだよね。結構昔から賢者って呼ばれる人たちが研究してきてたし……で、対してこっちの世界はというと、基本マナが多いから、どんな術式でも大抵の魔法は使えちゃうし、戦闘も容易。でも、逆に言えば試練が少ないとも言えるかな?そういう違いがあるわけです。わかったかな?」
試練とかどうとかなしで、あっちの世界じゃはぐれメタルで簡単にレベル上がるんだよな……とか、思ってみちゃったり。
「要は向こうの世界じゃ、重りを背負いに背負いまくった上に、常にエネルギーをあのでかいのに吸われぱなしで鍛えてたから、バンバン強くなったと……で、じゅもんもなかなか使えないから、より精密により実用的に作り込まれたと……そういうことか……まあ、なんとなくわかった。じゅもんの威力が強いのも、俺達のMPが多いのも、全部この世界にいるせいってことだな。じゃあ、本当に俺達のレベルとフェルズ達のレベルはイコールなのかよ」
「多分そうだと思うけど?あんまり気にしなくていいんじゃないかな?八幡君達、充分強いし」
あい変わらずルビス様も適当だな。
ならなにか?俺達のちからとかすばやさとかは、今普通にレベル1なわけか。小町や一色が女子の標準だとすると、俺や由比ヶ浜たちが、少し鍛えてるからステータス高いってのはなんとなく解った。
だとすりゃ、レベル4のアンが実は一番強いんじゃねえか。しかも、さっきつっこみそこなったけど、ピオリムとボミオス覚えてるし!何気にチートだろ、これ。
まてよ……
アンがレベル4でこのステータスなら、同じ4のアスフィさんやフェルズ達もこの近くの数値ってことか?
ヤバイ、この人ら実はロマリア行くどころか、ナジミの塔にも上れないじゃん!
ていうか、それならドラクエのモンスター強すぎだろ。今の俺たちのステータスならスライムに瞬殺されちゃうしな。はわわ。
と、考えつつ、不意に思い出した。
「じゃあ、レベルカンストのとーちゃんって……」
「ああ、オルテガさんは、まだまだレベル上がってるよ!神龍様に頼んで、リミッター解除してもらったみたいだし、レベル上限もうないから、青天井だしね。まあ、いまレベルいくつなのかは知らないけど……」
俺はみんなを見渡して言った。
「もう、全部とーちゃんに任せとけば良くね?」
その言葉に、さも当然という具合にみんな一斉に頷くのだった。