『八幡』と『結衣』と『雪乃』のオムニバスストーリー 作:こもれび
ルゼーブ……
たしか、ロードス島戦記に出てきた、暗黒の島マーモの闇の森に棲むダークエルフの族長の名前だったか?。
小説だと、最後の邪神戦争の時に、自分達の闇の森に誘い込んだフレイムだとかの王国軍を、炎の精霊王を召喚して全滅させたんじゃなかったか?自分達もろとも全員丸焼きにして……
っていうか、今はいったいいつなんだ?
こいつがルゼーブっていうんなら、あの時死んでるはずだし、生きてるってことは、あの小説の時代よりも前なのか?
いやいや……
たしかルビス様は、何万年も大昔にカストゥール王国があったとか言ってたから、あのロードスの時代からすれば全く合わない計算だ。
カストゥールを起点に考えれば、ロードスのあの小説の時代はその500年後。
で、今は正確にはわからんが、少なくとも数万年未来ってことになる。
数万年経って、機械文明が発展してねえのは、つっこんじゃ駄目なんだろうが、まあ、神とか魔法のせいなんだろうな。
というか、そうなると、あのルゼーブってやつは、本当にあのロードス島戦記に出てきたルゼーブ本人で、死なずに生き長らえてたってことか?
ダークエルフだって、ハイエルフみたいに永遠に生きられるって話してたしな。
じゃあ、あれ、マジで本物のルゼーブかぁ……
マーモ帝国の最強の闇の精霊使いで、暗黒のダークエルフの長で、複数の精霊王すら従えていたっていうあの……
やばい……さ、サイン貰ってこようかな……
「ちょっとヒッキー?」
「はっ!?い、いや、な、なんにも考えてないぞ!ちょっと好きな小説のキャラと遭遇しちゃって心を奪われてたなんて……」
「はあ、心を奪われていたのね……」
「んぐ、ま、まあほら、あれだ!リゼロ観た直後に、『すいませーん』って、声を掛けられて振り向いたら、そこに、小林祐介君がいたみたいな?もしくは江口拓也」
「まったく……なんの例えなのかさっぱりわからないのだけれど、あなたがこの状況にまったく動じていないことだけは分かったわ」
「うん。あ、あたし、ちょっと怖くなってたから、ヒッキーのお陰で少しホッとしたよ」
「お、おう?」
俺のローブをぎゅっと握りながら、由比ヶ浜と雪ノ下がそう語りかけてくる。
っていうか、由比ヶ浜……今マスクまでして正体隠してんだから、ヒッキーっていうな!あれ?でもヒッキーじゃどうせわからんか。
「おやおや、あなた方は相当余裕がおありのようだ。この状況で物怖じしないとは……本当に素晴らしい」
いやルゼーブさん、そうは仰いますがこんな状況に放り込まれてどう反応していいやら分からないだけですからね。
はあ……だが、まあ、会話は成立しているわけだし、ちょっとこっちからもお願いしてみますかね。
俺は、そっとルゼーブに視線を送り話しかけた。
「あ、その……なんだ、俺たちとしてはあんたと争う気はないんだ、初対面だしな。さっきはうちのモンスターが勝手に飛び出しちまったのは謝るよ。すまん。だから、まあ、その女の子を連れて帰らせてもらえないかな、ダメかな?」
「ダメですな」
うっは、ルゼーブさん即答だよ。
「この少女の内には『古の悪魔の魂』が宿っている。悪魔とは、神の対局に位置する魔性の神秘。そしてその魔王の一柱の魂をこの娘は宿している。お分かりかな?この娘の魂は悪魔を受け入れそしてそれに耐えうる器なのだよ。破壊神の降臨先としてこれ以上相応しい器はないとは思わないかね」
流れるように語るルゼーブの言葉を聞きながら、俺は刹那、思考の渦に入った。
悪魔?器?なんのことだ?
ルゼーブがやろうとしてることは、なんとなく分かる。ロードス島戦記の原作で、黒の導師バグナードやウッド・カーラが執り行なおうとした、神の『器』への降臨だ。
ロードス島戦記の中だけでも、数回神が肉体へ降臨したことがあったはずだ。
カーディス信仰の長、亡者の女王ナニールの魂を受け継いだ、小ニースが自分の意思でカーディスの降臨を阻止すべく、大地母神マーファを身に降ろしたのがひとつ。
それと、ルゼーブの同僚とでも言えばいいのか、マーモの幹部だった暗黒司祭ショーデルは、死の間際にその身に暗黒神ファラリスを降臨させて、自分の命と引き換えに、ヴァリスの聖騎士を皆殺しにしたのもひとつ。
基本、神の降臨は、その『器』たる人間を死に至らしめる……ということだった気がする。
小ニースが死ななかったのは多分主人公補正もかかってるし、話が進まなくなるからだろうが、基本『死ぬ』のだから、それはやっちゃまずいだろう。
だが、なんで一色なんだ?
一色なんて、最近異世界に転移してきただけのただのレベル1の一般人だぞ?
悪魔の魂?
そんなもんこいつは持ってなんか……
あ……
俺は、この前のルビス様からの恩恵の授与の時のことを思い出す。
俺たちと一緒に恩恵を受けて、かつ、一色にも現れたもの……それは……
【スキル】
『色欲』
そうだ!
あのスキルだ。
あの女神フレイヤの魅了すら打ち消した超誘惑スキル。
もし一色に特別ななにかがあるとすれば、間違いなくこれだ。
でも、なんだ……悪魔?
そういや、なんかのファンタジー小説で見かけたことがあったな……
七つの大罪には確かそれを象徴するようななにかが……
たしか、『色欲』のそれは……
『アスモデウス』
あ、悪魔だ。
そうか……俺は『大罪系スキル』ってことに囚われすぎて、まったく気がついてなかったが、そうか、そういうことか……
でも待てよ……
そうなると、『悪魔』がいるのは色欲の一色だけじゃねえってことに……
雪ノ下雪乃『憤怒』悪魔『サタン』
由比ヶ浜結衣『暴食』悪魔『ベルゼビュート』
比企谷小町『怠惰』悪魔『ベルフェゴール』
アン『傲慢』悪魔『ルシファー』
うわわわわ……
俺がなんでこんなに詳しいかって?ま、まあ、中二病患者ならたいてい通る道だし、俺は転スラ読んだしな。って
、そんなことはどうでもいい。
悪魔の魂っていうんなら、今ここに一色以外に4人もいるってことになっちまうじゃねーか。
いや、ホントどうするよこれ。
カーディスって言えば、完璧な死の神様だ。
確か原作でも魂が降臨しかけただけで、死霊が飛び交って人間殺しまくってたな。
パッシブスキルで常時ザラキとかホントにもう鬼畜すぎるだろう……
おまけに、確かカーディスが呼び水になって、『終末の巨人』だっけか?
この世界を終わらせて、次の世界の苗床になるとかいう、お前は、大海嘯の後の王蟲か!!
というか、本当にやばい!
終末の巨人とかマジで神竜に喧嘩売ってる存在だもんな。
うん?
宇宙を神竜が作ったってことはだ、まさか終末の巨人は宇宙を壊せるのか?
ってことは、この世界って、俺たちの生まれた世界も含めて全滅するんじゃねえか?
ちょっとやばいなんてもんじゃねえぞ、これ。
これ、本気で世界終わらせる気なら、どんな説得も応じやしねえぞ、ルゼーブさん。
おいおい、自爆ついでに世界壊そうとか、どこのテロリストだよ。勘弁しろよ。
と、まあ、この間、0.01秒。
俺は速攻で思案を終わらせた訳だが、肝心の解決策はまったく思い付かなかった。
意味ねえ。
[newpage]
【用語解説】
※ほんともう俺ガイルとまったく関係ないことばっかで本当にすいません。
ということで、用語解説です。
『ロードス島戦記』
和製ファンタジー小説の草分け。水野了さんたちが実際にコンプティーク誌上でダイスを転がしながらテーブルトークRPGで進めたリプレイを元に小説を書いてました。
何度も新版を発売しているのですが、その度に新しいシナリオが追加されるという魔性の小説。ぐぬぬ、初版を持ってる私には知らないエピソードがいっぱいです……
『黒の導師バグナード、ウッド・カーラ、ルゼーブ、暗黒司祭ショーデル、亡者の女王ナニール』
ロードス島戦記に登場する敵役達!
詳しくはWikipediaへ!!(ひどい)
『邪神カーディス、大地母神マーファ、暗黒神ファラリス』
ロードス島戦記にでてくる神様達。
ちなみに、創世の時代に、カーディスとマーファが喧嘩して、二人ともほぼ相討ちで肉体を失ったのがロードス島でした。
マーファは死の間際に、カーディスの滅びの呪いから世界を守るために、大陸からロードス島を切り離したらしいです。
『小ニース』
マーファの大司祭ニースの孫娘で、ナニールの魂をもっていたが故にカーディスの器とされてしまった、不幸なヒロイン。
そのときの超不幸な主人公スパークの決死行で異世界に飛ぶも、無事に帰還して、その後はスパークと結婚、王妃になりましたとさ。なんだこれ、スパークムカつくな。
『終末の巨人』
世界を滅ぼしたあと、始原の巨人になって世界を作るらしいです。
うん、今回はロードス一色でしたー!!
【追加解説】
まだ色々あったので追加です。
『カストゥール』
ロードス島戦記に出てくる、すでに滅びた古代魔法王国の名前。魔法の力で蛮族(今のロードスの住民の祖先)や、エンシェントドラゴンすら使役していたが、蛮族の反乱によって滅びた。強力なマジックアイテムを作り、後世にもそれを残している。
『小林祐介、江口拓也』
声優さん。
誰の役をやってるのかはWikipediaで!!(ひどすぎる)
それにしても江口さんの声はレパートリー広すぎだと思う。うん。
『大海瀟、王蟲』
言わずと知れた風の谷のナウシカのクライマックスですねー。って、知らない?
はい、漫画版を読みましょう。