『八幡』と『結衣』と『雪乃』のオムニバスストーリー 作:こもれび
まったく……なんてこった……
俺の目の前にはでかいバーバリアンの頭と、その手前にまさに骨と皮しかない黒ローブの骸骨……フェルズの後頭部が。そんなフェルズと俺は筋骨隆々のバーバリアンの背中に無理矢理デフォルミス・スパイダーの出した粘着性の高いいとで体を固定し、そして……
数十メートルの高さを飛び跳ねまわるバーバリアンに必死にしがみついていた。
い、いや、まじでこれ死ぬから!!
というか、最初に全速力で走りだした瞬間に、もう完全にアウトだったし。
なにがって、上下に揺さぶられて、脳が……脳が震える~~~~~~(物理的に)
気分的には最初、マジンガーZにパイルダ―オンした感覚だったんだが、今のこの感じは、終わりのない富士急の絶叫系アトラクション(安全装置なし)に乗ってるといえばいいのか。
とにかく、さっきカーディスの肩から飛び降りたときのはヤバかった。
着地の瞬間マジで内臓全部飛び出すかと思ったし。
言い出しっぺのフェルズの奴はと言えば……
「……エンチャンテッド……エンチャンテッド……ぶつぶつ……」
あ、これダメになっちゃってるやつだ。半分失神しながら身体強化魔法使い続けてるな。
そんな俺達二人を背中に乗せたバーバリアンは、左手に身体をすっぽり隠せるほどの巨大な銀の丸い盾(?)を持ち、それを正面に掲げ、右手には、7mはあろうかという、長尺の銀の槍(?)というかこん棒(?)というかを持って、それを構えている。
うん、遠目に見れば、スリーハンドレッドのスパルタの兵士にでも見えるんじゃなかろうか?ま、サイズ的にはバーバリアンの身長が3m以上あるから、巨人すぎるのだけれども。どんな攻撃もこいつには通用しないと思わせる圧迫感があるはずだ。
だが、近づいてみると、あらびっくり。
でっかいバーバリアンが手に持っている丸い盾は、どう見ても、デカいくも(笑)だし、手に持ってる巨大な得物は、胴体をまっすぐピンと伸ばしたへび(笑)。
そう、実はここに至って俺たちがとった作戦、フェルズのやつが喜色満面に気持ち悪い顔して提案してきたそれは……
『アストロン・アタック』
うん、名前だけ聞くとなんか凄そうな響きがあるけど、要はデフォルミス・スパイダーとサンダー・スネイクにアストロンをかけて、その魔法物理攻撃完全無効状態の盾と武器としたわけだ。
確かに、発想としては悪くないとは思う。
かつて賢者呼ばれた奴がが思いつく内容としてはあれだけどもな。俺はもっと真田昌幸ばりの奇襲とか戦術とかを言い出すのかと思ってたよ。
そんなんだから愚者とか呼ばれちゃうんじゃねえのか?あ、これ自称だったっけ。まあいい。
『攻撃は最大の防御』とはよく言ったもので、『最強の盾で攻撃』しているわけだから、そりゃまあ有用だわな。
俺達は、そんなフェルズの奇策に命を救われ、カーディスの腕をもぎ取り、そして、こうやって対峙することが出来ているというわけだ。
× × ×
兎にも角にも、絶体絶命のあの時、このフェルズの思い付きに俺達は懸けることにした。
だが、問題があった。
アストロン状態の2匹の重量がとてつもなく重かったためだ。
渾身の力のバーバリアンでさえ、両手で持ち上げるのが限界。質量保存の法則とかどうなってんだよ?これだからファンタジーってやつは……まあ、俺が使ってる魔法なわけだから文句は言えねえけど。
そんな状態であったから、なんとか武器と防具として使うためにも、バーバリアンを強化する必要があったわけで、フェルズの奴がエンチャント系の魔法をかけてみた。
だが、それでも2匹を持って大立ち回りをするには力が不足していた。
バーバリアンの『ちから』(?)の数値がどれくらいなのかは不明だが、少なくともドラクエ時代の俺の力よりは弱いはずだ。あの頃の俺は、アストロンをかけた雪ノ下達を片手で放り投げることもできたしな。ま、そんなことをしたとは本人たちには言えはしないのだが……
フェルズには悪いが、少し見積もりが甘かったようだな。フェルズの使うこの世界の魔法と、ドラクエの世界のじゅもんとではやはり出力・強化の幅が大分差があるようだ。
その時、ふたたびルゼーブの声とともにカーディスが魔法を発動しようとしていたために、この場を逃れるためにアストロンを掛けようとした俺の前で、バーバリアンが全身の筋肉を震わせて、その顔面を真っ赤に染めたままアストロン化した2匹を持ちあげたのだ。
そして、俺とフェルズの前に立った。
「お前……」
俺にとってゼノスという存在は、原作のウィーネや、アンのように人語を解し、言葉を話し、表情や仕草で応対できる人間の姿に近いものであると認識していた。
だが実際は、そのような対応をとれるゼノスはごく僅かな数でしかなく、多くのゼノスは感情を持ち、人語を解してはいても、その姿は限りなくモンスターであり、そして言葉を話すことが出来ない。
そんな彼らをアンのように人間として扱うことはやはり不可能だ。
そう、そんなウソや誤魔化しだけで、彼らを受け入れることは今の人間には無理なのだ。
それを、多分、バーバリアンも分かっている。
だが、それでも、俺達の前に立つ。
どうして、そこまで……
そう、俺は分かっているんだ。
迫害され、排除され、そして本当の一人きりになってしまうことへの恐怖を。
ぼっちは寂しくないんじゃない。それに耐えられないことを知っているから、ぼっちを気取っているんだ。
俺がそうであったように、彼らゼノス達もきっと同じように、本当に失いたくないものを守ろうとしているんだ。
その守りたいもの、それは……
『絆』
仲間との絆、知り合いとの絆、友達との絆。
俺やフェルズが、いったい彼らにとってどういう存在なのかはわからない。
だが、俺達が彼らを守りたいと思ったように、きっと彼らも同じように考えてくれているのだろう。
俺は、なんとも言えない申し訳なさにふたたび胸が震えた。
そして、その衝動のままに、そっとバーバリアンの背中に手を置き、呟いた。
「ありがとうな……」
その瞬間、バーバリアンがびくりと全身を震わせた。
そして、少し離れている俺にもわかるくらい、全身の筋肉を漲らせて熱気を放出する。
その顔は、やかんのお湯が沸いてしまうんじゃないかというくらいに真っ赤になっていた。
「『【アースクウェイク】』!!」
ルゼーブの呪文とともに、地面が激しく振動を始める。普通の地震ではない!完全な陥没だ。
足元を失い、落下し始める俺達に、逆に上空へと吹き上げ始めた足元の岩石が、今度は鋭い鏃となって襲い掛かってきた。
完全な詰みゲーだ。何これ、『怒首領蜂(どどんぱち)』かよ。弾幕系シューティングはお呼びじゃねえんだよ。
その強烈な礫の嵐の中で、バーバリアンが動いた。
両足を開いて沈み込む地面に食い込ませて固定し、横から襲い掛かってくる岩石をへびランスで粉砕する。そして真上に掲げたくもシールドで、滝のような岩石の雨を完全にしのいだ。
「おい、なんかバーバリアンの動きよくなってねえか?」
「君はまったくわかってないのだな……」
はあ……と、なぜかフェルズがため息をついた……ように見えた。いや、だって骸骨だからほんと分かんねえんだよ。
フェルズはそんな白骨の頭でやれやれと首を横にふる。
「惚れた相手に礼を言われたら、そりゃ頑張るしかないだろう……まったく君は乙女心を理解していない。本当に朴念仁だな」
お前はバカか?みたいな感じでそう言われ、だが、俺はどうとも答えられずに呻くことしかできなかった。
このとき、バーバリアンの身体は俺のスキル『女難の相(ハーレム)』の権能により、フェルズの掛けた身体強化魔法が凄まじくその効果を跳ね上げていたことを俺は理解していなかった。
ただただ、その時感じたのは……
恋する乙女、マジッパねえ……
と、なんか戸部みたいに思ってしまっていたのだった。
「ブモウ♥」