『八幡』と『結衣』と『雪乃』のオムニバスストーリー   作:こもれび

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皆さんご存知の通り、原作の結衣はサンタの正体のことを知っています!!

が、この作品の結衣はどうもそうではないみたいですよ。


サンタを信じてるガハマさんと、ゆきのん・八幡が一緒に居るだけの話

「今年はサンタさんなにくれるかな?」

 

「へっ?」「え?」

 

 机に両手で頬杖をついてる由比ヶ浜が、脚をぶらぶらさせながらそう呟いた。それを聞いた俺と雪ノ下は咄嗟に顔を見合わせる。ま、まさか、本気じゃないよな?

長机の対極にいる雪ノ下が、由比ヶ浜に向かって口を開きかけた。

 

「あ、あの……由比ヶ浜さん……サン「ふぇっクッション!」」

 

 俺は慌てて雪ノ下の言葉にくしゃみをかぶせた。そして奴の目を見る。

 雪ノ下は怪訝な顔で俺を見つめた。そう、その顔はこう言っている。

 

『高校生にもなってサンタがいるなんて信じてる事、彼女が恥を掻く前に早く教えてあげるべきだわ』

 

 俺は横目で雪ノ下を睨んだ。

 

『いやいやいや……信じているんならそれでいいじゃないか。人の夢をわざわざ壊すんじゃねえよ』

 

 俺と雪ノ下の無言の攻防の間で、一人目を輝かせる由比ヶ浜。

鼻歌を歌いだしそうなくらい上機嫌だ。いや、待てよ? 別にこいつはサンタからのプレゼントが楽しみなわけで、別にサンタを信じてるとは言っていない。要は親からのプレゼントを暗喩してサンタと言っているだけなのかもしれない。

 よし、それならちょっと、聞いてみるか。

 

「なあ、由比ヶ浜……サンタはソリで飛んでくるんだから、あんまり重たいものは運べないよな」

 

 よ、よし、これなら『俺はサンタを信じているわけじゃないけど、子供の夢を壊さない程度には対応できる男なんだぜ』をアピールしつつ、冗談で済まして自分にノーダメージでいける。さて……

 由比ヶ浜は俺に顔を向けたあと、にこっと微笑んで…

 

「そうなんだよねー。だから前に『お城が欲しい』って頼んだ時に、『それは大きすぎてソリに乗らないよ』ってママに注意されたんだー。だから、今は小さい物をお願いしているんだよ」

 

 おおふ……はい、すいません、やっぱりガチでした。

 

「お、おお……そ、そうか……」

 

 そんな俺を雪ノ下が横目で睨んでいた。

 

『だから言ったでしょう……(言ってないけど)……こういう事は早く教えてあげるべきだわ』

 

『い、いや……それでもな、信じている奴の夢をわざわざ壊す必要はないと思うぞ。俺だって、初めてサンタが居ないと聞かされたときは、そりゃショックだったからな。だから、俺はいまコイツにそんなショックを与えたくなんてないんだよ』

 

『そ、それは私もそう思うのだけれど……でも、それで恥を掻くのはやっぱり可哀そうだわ……わたしは小学校に上がる前に姉さんにサンタがいないと暴露されたのだけど、だから現実を直視できるようになったとも言えるわ。由比ヶ浜さんが現実を見ないということに貴方は果たして責任を取れるのかしら?』

 

『うぐ……、せ、正論を……』

 

 俺の顔を見ながら、雪ノ下が勝ち誇ったような笑いを浮かべる。ぐっ……無言の攻防でも、やっぱりこうなるわけか……。何俺、超ゆきのニスト!!

 そんな雪ノ下に向かって由比ヶ浜が口を開いた。

 

「ねえねえ……ゆきのんはサンタさんに何をお願いしたの?」

 

「わ、わたし……は……」

 

 雪ノ下が、困った顔になって、言葉に詰まった。チラチラ俺の方を見てくるし……。もう教えたいなら教えれば良いだろ。俺は何も言う気はねえ……

 由比ヶ浜がにこにこしながら雪ノ下に近づく。

 

「わ、たしは……頼んでないの、そう、お願いしてないのよ……もう子供じゃないから」

 

 おお……なかなか無難な答えをしたな。俺が雪ノ下に顔を向けると、ちょっと頬を染めて顔を背けた。意外と可愛いとこあるじゃねえか。

 由比ヶ浜はそれを聞いて、

 

「ふーん……そうなんだー。あ、じゃあさ、あたしがゆきのんの分も頼んであげるよ」

 

「え? で、でも……それは悪いわ」

 

「いいのいいの……多分ゆきのんも私と同じ物欲しいんだろうし……ついでだからさ」

 

「……? そう? なら、お願いするわね」

 

「うん! えへへ……」

 

 俺は嬉しそうな由比ヶ浜の顔に、ホッと胸をなで下ろす。でもなんだ? 由比ヶ浜は何をお願いする気なんだ?

雪ノ下も欲しい物で、手に入る物ってなんだ?

 まあ、いいか。本人は満足そうだし。

 夢は夢のままでもいいと思う。現実に向き合って嫌な想いや、後悔をするくらいなら、そんな現実はないままに、知らないままでもいいのかもしれない。俺は嫌だけどな……でもそれは俺の事であって万人の事ではない。リア充にはリア充なりに、ぼっちはぼっちなりに矜持があるってことなだけだ。

 

 リーン……ゴーン……

 

「あ、そろそろ下校時刻ね。では、帰りましょうか」

 

「だね」

 

 俺達は荷物を持って、廊下に出る。そしていつものように、雪ノ下が部室に鍵をかけたその直後、由比ヶ浜が俺と雪ノ下の手を掴んだ。

 

「ふぁっ? な、なんだ」

 

「ど、どうしたの? 由比ヶ浜さん」

 

 由比ヶ浜は俺達の顔を交互に見た後に恥ずかしそうに笑った。

 

「えへへ……メリークリスマス。ヒッキー、ゆきのん……これからも宜しくね」

 

 にへらっと笑った由比ヶ浜が俺達の手を強く握る。お、おい……ドキドキしちゃうからちょっと勘弁して! 雪ノ下も当然困惑顔だ。

 そして、手を離した由比ヶ浜が、「じゃあ、帰ろう!」と一人声をかけて、それに従って俺達は一緒に昇降口へ向かった。

 

 

 

 

 その晩の事……

 

「くっそ……由比ヶ浜の奴、今日はいったい何だったんだよ」

 

 俺は一人悶々としてなかなか寝付けないでいた。手に残る、由比ヶ浜の温かくて柔らかな手の感触が、妙に生々しく思い出される。うう……だから嫌なんだよ。勝手に盛り上がっちまうから……いかんいかん……とにかく寝よう。

 布団を頭まで深くかぶり、耳を塞ぐと、なんとなく眠りに落ちていく感覚があった。

 

 シャンシャンシャン……

 

 どこかで鈴の音が聞こえる気がする。

 その音は穏やかで、安心感があった。その音に導かれるように、俺は自然と体を起こす。体は重いがなんとか動くことが出来た。

 

 シャンシャンシャン……

 

 音はさっきよりだいぶ近くで聞こえる。

 体は相変わらず重かったが、頬に当たる微かな風がどうしても気になって……

 

ん? 風?

 

俺はそっとと目を開けてみた。すると……

 

「あ……やっと気づかれましたな」

 

「は? な、なんだぁ?」

 

 俺のすぐ隣には、サンタの格好をして丸いサングラスをかけた小柄なオッサンが、手綱を握って座っていた。目を前に向けると、そこには6頭のトナカイが。

そして見下ろすと、そこには、街明かりに煌く、夜の千葉市の風景が広がっていた。

 

「は? あー? えーと、どうなってんだ? あんたは誰なんだ? な、なんで俺はこんなとこにいるんだよ」

 

「わてはサンタだす。兄さんを迎えに来たんだすよ」

 

「迎え? なんで? はっ? そうか! これは夢だな……夢に決まってる!」

 

 そのちっこいオッサンは俺をチラリと見るとにやりと笑った。

 

「まあ、そういう事だす。でも兄さん幸せだすね。こんな素敵な夢の中に招待してもらえるんだすから……」

 

「招待? どういうことだよ……」

 

「ああ……もう、でも今はしゃべってる暇はないんだす。兄さんなかなか寝てくんないから、もう遅刻なんだすよ……さぁて、スピード上げますからね、舌かまんといて下さいだす。そりゃー」

 

「ぎゃああー」

 

 トナカイの引くそりが猛スピードで進んだ。そりゃもう気を失うくらいの激しさで。

辺りの景色が全く見えないまま、体中をぐわんぐわん振り回されたまま、俺は必死にソリにしがみつくしかなかった。どれくらいの時間が経ったのか……気が付くとそりが停まっていた。

 

「さあ、着きましただすよ……お兄さんお気張りやす」

 

 サンタがそう声をかけたところで、俺は地面に降り立った。周りは真っ暗で何も見えない。ここはどこだ?

 

「なあ、おい、ここはどこなんだよ……って、あれ?」

 

 振り返ると、もうそこにはサンタはいなかった。

 ったく、どうなってんだ。

 

 カラーン……カラーン……

 

 遠くで鐘の音が聞こえる。音の方に顔を向けると、そこには白壁の教会が立っていた。そこに続く青々とした芝生の上の石畳を俺は歩く。そして、大きな協会の木の扉の前に立つと、俺はゆっくりその扉を開けた。

 

 ギイィィ……

 

 重たい扉の開く音が辺りに響く……

中に足を踏み入れると、正面の上の方に、青や緑のステンドグラスの飾り窓目に入った。それは、陽光に煌いて、その光を俺の足元に落としていた。そして顔を正面に向けると、そこには……

 

 純白のウェディングドレスを着た二人の少女が立って俺を見ていた。俺はそのどちらのことも良く知っている。

 それに驚愕しつつも慌てて自分の格好を見てみれば、俺は真っ白なタキシードに身を包んでいた。ついで視線を巡らせれば、俺が立つその赤い絨毯の両脇の椅子には、たくさんの人が座っていた。俺の両親や小町、それによく見ると、戸塚や材木座、葉山に三浦に海老名さん……それに、平塚先生やかわ、かわ……何とかさんもいる。

 

 俺は両側にいるその連中の視線に怯えながら、真っすぐ二人の元へ歩いた。

 目の前には肩の大きく開いたウェディングドレスを着た由比ヶ浜と、それとは対照的に首まですっぽりと覆われた白のウェディングドレスの雪ノ下の二人が姿勢をただして立っていた。二人とも腕にブーケを抱えている。

 

「もう、ヒッキー遅いし……」

 

「本当にね……新婦を待たせるなんて、最低の新郎だわ」

 

「お、おい……ちょっと待て! どういうことか俺には話が見えないんだが?」

 

 俺のその言葉に由比ヶ浜がニコリと微笑む。

 

「だから、これは結婚式なの。ヒッキーとあたし達とのね」

 

 その言葉に続いて、由比ヶ浜と雪ノ下が腕を組んで俺に近づいて来た。

 

「は、はあ? け、結婚式だと!? これは、夢だろ? そうなんだろ?」

 

 その俺の言葉に由比ヶ浜は嬉しそうに、雪ノ下は赤い顔でちょっと恥ずかしそうに言った。

 

「そうだよ。夢……あたしの夢だよ! あたしは、ヒッキーとゆきのんと3人で居たいの……だからね、結婚しよ!」

 

「ふ、不本意だけれど、由比ヶ浜さんがどうしてもというので、仕方がないのよ。特別に貴方と結婚してあげることにしたわ」

 

 にへらと笑った由比ヶ浜が俺に抱き付く。そしてそのまま口づけをしてきた。その後、由比ヶ浜に押されるように、今度は雪ノ下が恥ずかしそうな表情で俺の唇にそっとキスをする。

い、いやいや、いやいやいや!!

な、なんで俺は今キスしてるんだ!?

しかもこんな唐突に!! 

え? へ? 

ゆ、由比ヶ浜と雪ノ下と!!

 

もう訳が分からないままに、何やらもやもやと色々なものが身体の内から湧き上がり続けているのをそのままに、正面に向き直ってみれば、そこには神父の格好をしたさっきの丸メガネのサンタがニヤリと笑って立っていた。

 

「ここに誓いの口付けを持って、3人の結婚を認めるだす。ア~メン!」

 

 ワッと、俺達の後ろの席の連中が一斉に歓声を上げて立ち上がって拍手をした。そして俺の両腕に抱き付いている二人が俺に向かって囁いた。

 

「えへへ……これから宜しくね。ヒッキー……ううん、八幡!」

「私も……お願いするわね……その……優しくしてね……は、八幡……」

 

 そう言った直後に、二人はその手に持っていたブーケを高く高く放り投げた…

 

 

 

 

 

 

 ジリリリリリリリリ…

 

「ハッ!!」

 

 俺は飛び起きた。由比ヶ浜は? 雪ノ下は? 教会はどこだ?

 辺りを見渡すと、そこはただの俺の部屋。昨日眠る前と全く変わっていない……

 

「はあ……なんだ……夢か……」

 

 そりゃそうだ……。

あんなこと現実に起こるわけがない。大体二人と結婚だなんて……バカバカしい……

 俺の自意識過剰も行きつくとこまで来てしまったようだ。こんな訳の分からない夢を見るなんて……

 まじで気持ち悪い。

 俺は気持ちを切り替えて、支度をして家を出て学校へ向かった。

 でも、何かおかしい……?

さっき朝食の時、小町が妙に赤い顔をして俺のことをチラチラ見てたしな……それに途中で俺と目のあった、かわ、川……なんとかさんも、赤い顔して視線逸らしたし……なんだ? 一体……

 

「やっはろーヒッキー」

「おはよう……比企谷君……」

 

 正門の方から俺を呼ぶ声が聞こえる。顔を上げればそこには、ついさっきまで夢の中で白いドレスに身を包んでいた彼女達二人が立っていた。

 

「おお……おはよう……珍しいな、朝から二人が一緒にいるなんて」

 

 二人は俺に近づくと、急に俺の手を掴んだ。由比ヶ浜は嬉しそうに、雪ノ下は赤い顔でちょっと恥かしそうに……ってこれって……

 由比ヶ浜は微笑みながら俺に囁いた。

 

 

「いつまでも3人一緒だよ……は・ち・ま・ん!」

 

 

 

「はぁ、本当に若い人たちの夢は羨ましいだすな。わてももう一度青春とかしてみたいだすね」

 

 そんな声が空の上から聞こえたとか聞こえなかったとか。

 

 

 

 

 

 

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