『八幡』と『結衣』と『雪乃』のオムニバスストーリー 作:こもれび
嵐……
そうまさに嵐だった。
俺はそのとき、モンスターに躍りかかる平塚先生を見て、内心かなり焦っていた。
当然だ。
いくら逞しいと言っても平塚先生は俺と違って、ただの一般人。あのドラクエの世界で鍛えたわけでも、じゅもんをマスターしてるわけでもない。
そんな普通の女性が、どんなに強力な装備をしているといっても、どうにかなるなんて思うことはできなかった。
すぐに殺されてしまう……そう恐怖した。
だが、決してそうはならなかった。
オリンピック選手もかくやという跳躍を見せた先生は、身体を回転させながら竜牙兵のど真ん中へ飛び込み、そしてそのまま、まるでダンスでも踊っているかのように小刻みに体を運びつつ、右手に装着した黄金の爪で敵を撫でていった。
そう撫でていた。
激しい炸裂音も金属を切断する高音も響かないままに、竜牙兵たちはその身体をフルプレートの鎧ごと切り刻まれ、その場にガシャリガシャリと崩れ朽ちていく。
それでも竜牙兵たちは、同族の屍を踏み越えつつ、長大なハルバードを振りかざして先生へと迫る。と、それを当然の様にかわしながら、先生は白骨の山を築いていった。
なにこれ、南斗水鳥拳かよ、まじで!?
だが、やはりというか、圧倒的に多勢に無勢。いくら先生が俊敏だと言っても、これだけのモンスターに囲まれれば逃げ回り続けるのは至難の業。しかも相手はあの竜牙兵、動きは洗練されている。
ついにその一撃が先生へと放たれた。
「平塚先生!」
俺は思わず叫んだ。
なぜならば、剣戟を交わす先生の丁度真正面にいた一体の竜牙兵の放った鋭い突きが、先生の胸へと吸い込まれたように見えたからだ。
先生の装備はしんぴのビキニのみ。
その素肌のほとんどは表に晒されており、まさにその一撃は先生の大きく開いた胸の間へと放たれていた。
だが……
ガキンッ‼
「え?」
と思ったその瞬間あり得ないことが起こった。
先生の胸へと突き込まれたはずのそのハルバードの穂先が、甲高い音を立てて折れ弾けたのだ。
見れば、その先生の胸は、蚊にでも刺されたかのように少し赤くなっているだけ……
ええええ!?何で!?なんで刺さってないの?
歯が……いや、刃が立たないという文字通りのその状況に、俺は一瞬慌てたが、唐突にあることを思い出し一気に納得した。
「そうか、『般若の面』か……」
そう、般若の面。
あの面はただの呪われた武具ではない。
被ったものは精神に支障をきたし、混乱状態で誰彼構わず襲い掛かるという、とんでもなく迷惑極まりない機能がある反面、実はあの世界において最も優れた性能を有した武具でもあった。
その特殊な性能とは……
『守備力+255』
そう、あの呪いの面は、なんと装備者の守備力を半端なく底上げしてしまう。
ちなみにこの255というのがどれだけの位置かというと、今の俺の守備力が多分10前後……俺があのドラクエの世界で最終決戦フル装備状態で210くらいだった。で、今レベル4のアンの守備力が装備なしで18だったから、この+255がいったいどれだけぶっ壊れたレベルか想像に難くないだろう。
しかもだ。先生が着ているあのしんぴのビキニ。ただのエロい水着にしか見えないが、あれ実は守備力+90くらいの超高性能な鎧のはずだ。なにせあの勇者専用装備の『ひかりのよろい』より守備力が高いとかいう、公式チート水着だったはずだし。
つまり、今の平塚先生の守備力は、先生のデフォ守備力α+255+90=345+α。
やばい、先生硬すぎて、もうはぐれメタル状態じゃねえか。これ、もうなんか攻撃してる竜牙兵が可哀そうに思えてきた。
ともかく裸同然に見える先生だが、魔法の膜を張ってでもいるのか、身体そのものを硬質化しているのか良く分からんが、ともかく並大抵の攻撃では傷一つつけるのは叶わない状態だということは確かなようだ。
先生はそんな頑強な身体であっても、その殆どの攻撃はかわし続け跳びはねながら鋭い一閃を放ち続ける。刹那の攻撃の応酬。
次々と切り刻まれていく竜牙兵を眺め立ち尽くしていた俺。
そんな俺の眼前に、唐突に般若の面が現れた。
え?
疑問に思う間もなく先生の黄金の爪が俺に向かって振り下ろされる。
俺は慌てて呪文を唱えた。
「あ、アストロン!」
× × ×
覚醒した時、俺は地獄を見た。
いや、本当の地獄なんか見たことはないが、多分これが地獄の風景なんだろうなって思ってしまったわけだ。
なぜなら、俺の周囲360度すべてが白骨で埋め尽くされていたのだから。
切り刻まれ動かなくなった竜牙兵達。まさに足の踏み場もない状況。
あれ、さっき確実に俺を殺しにきてたな。
っていうか、多分、アストロン状態の俺も散々攻撃したんじゃねえか?
これ、なんで俺のまわりだけこんなにうず高く骨がつもってんだよ。明らかにここで殺戮しまくってんじゃねえか。
平塚先生、超怖い。
顔をあげてみれば、もう相当に暴れたのだろう、辺りに骨の残骸が転がるばかりで、先生はといえば、遠くの方でまだ動く竜牙兵にとどめを刺して回っているところだった。
だから、超怖いですって!
そして、俺は首を廻らす。
ダークエルフの女やフェルズ達の姿はないな。
俺がアストロン状態のときにどこかに隠れたか……
じゃなきゃ、とっくに平塚先生に八つ裂きにされているからな、逃げててくれてればいいが。
とーちゃんはといえば、さっきと同じ位置でルゼーブを睨み続けていた。ルゼーブも同様にとーちゃんへ顔を向けている。だがその顔にもはや余裕はまったくなく、歯を食いしばっているように見えるし、確実に冷や汗をかいていた。カーディスも汗かけるのな。
そんなルゼーブが唐突に声をあげた。
「ば、ばかな……なぜ、貴様はなんともない?ひ弱な人間ごときがなぜ……」
言いながら腕を伸ばしたままプルプルと震えているルゼーブ。
とーちゃんはといえば、微動だにしていない。
これはなんだ?なにかルゼーブのやつがやったのか?
あ、ひょっとしてあれか……?
俺はさっき自分が食らった身体の腐食攻撃のことを思い出していた。
あのときもルゼーブは今と同じように俺に向かって手をかざし、その途端に俺の足が腐り始めたんだ。
思い出すのも恐ろしいが、ルゼーブはいまやあの邪神カーディスだ。
滅びの権化の彼女は、大地母神マーファとの死闘の末にロードス島にその屍……まあ、今わきで転がってるこの巨大なやつがそれなんだが、その屍を中心に『滅びの呪い』を発動し、大地を腐らせたって伝承があったはずだ。たしかロードス島戦記の解説書かなんかに。
だから、腐食攻撃できてもなんにもおかしくないわけだが、まさか今それをとーちゃんに向かって仕掛けてるのか?見ててもなんにもわからんのだが。
全くなにも変化のないとーちゃんが、ゆっくり、ゆっくりとルゼーブへと近づき始めた。
「なぜ効かん!なぜ死なん!なぜ貴様にこのカーディスの呪いが効かんのだ」
その慌てた雰囲気のルゼーブの言葉にとーちゃんがぽそりと答えた。
「おめ、今なにかやってたのか。この『ピリピリ』したやつか?こんなんでオラがダメージ受ける分けねーだろ。これなら毒の沼地の方が何倍もいてーぞ。おい、遊んでねえでとっとと来いよ」
とーちゃんは歩みを止めない。
「くっ……な、ならば、これだ……『我が忠勇なる僕、破壊の巨人たちよ。今こそ我が求めに応じ、その身を現せ!!出でよ、そして、ここに死を撒き散らせ』」
少し高い位置に浮かび上がったルゼーブがその両の腕を広げ詠唱した瞬間、その周囲に4つ超巨大な魔方陣が出現。
そして、大きな振動とともに、その輝く魔方陣から次々と超巨大な人の形をしたものがせりあがってっきた。
最初に現れたのは、全身に鱗を巡らせた濃緑色の巨人。そして、その隣には銀に輝くまるで鎧をまとったような巨人が、そして、今まさにその上半身を出現し始めているのは、顔や肩や胸を分厚い氷で覆った淡水色の巨人……そして、次は……と、
残りの魔方陣へと視線を動かそうとしたそのとき、突然その『音』が聞こえてきた。
ドッパァアアアアアン‼
なんだ?と思ってそっちへ顔を向けてみれば、
一番最初に現れた緑の巨人が、腹を押さえるようなポーズのままで、その背中から大量の緑の体液を弾きとばしているところ……、そして、良く見れば、その背中に豆粒のように浮かんでいるのは、まぎれもなくとーちゃんだった。
いつの間に移動したのか、どうやらとーちゃんがあの緑の巨人の腹をぶち破ったらしい。
次の瞬間、とーちゃんはその巨人の頭を猛烈な勢いで蹴った。刹那、巨人のその頭部は膨らんだ風船を破裂させたように一瞬で消しとんで消滅した。
なにが起こった?
と考える間もないままに、とーちゃんはその隣の銀の鎧の巨人のもとへ。そのままさっきの緑のやつと同じように頭を吹き飛ばしたあと、大地に降りてから銀の巨人の足を掴んでそのまま振り回し始めた。そして、さあ今出ようとしている氷の青い巨人にむけてその身体を何度も何度も叩きつける。
まるでもぐら叩き。
叩いている銀の巨人も、叩かれている水色の巨人も、
どちらもその身体がひしゃげ辺り一面に体液を撒き散らしまくっていた。
そして、止めとばかりに一度巨人を掴んだまま天井付近まで飛び上がったとーちゃんがその巨人のぼろぼろの身体を力の限り、まだ半身が魔方陣から出切っていない水色の巨人へと叩きつける。
爆縮‼
まるで世界が終わったのではないかと錯覚するような大音響と衝撃波を伴ったまま、その衝突した2体の巨人は木っ端微塵に爆裂四散した。
そして当然だが、その大地やそこに展開していた魔方陣も消滅。良く見れば、倒れていた巨大なあの不滅のはずのカーディスの骸の下半身もその爆裂に巻き込まれて消しとんでしまっているし。
え?おれ?
うん、当然だけど、あの瞬間アストロンしたよ?
当たり前ー。
だから今はちょっとタイムラグがあった後の世界なわけだ。
辺りは壁も天井も崩れまくって、もうもうと土煙があがって視界が非常に悪い。
とりあえず埋まらなくて良かったーと思っていたのだが、今さらだが、足が超震えてきた。
なにこれ?
いや、おかしいでしょ、いくらなんでも。
ほんのついさっきまであのルゼーブと俺たちはここで一応『死闘』してたんだよ?
何度も死にそうになりながら、一色を助けて、カーディス(ダミープラグ)を倒して、そんで、あのルゼーブだってもう少しのところまで追い込んで……
それなのに、この数分というか、僅かな時間の間に、平塚先生ととーちゃんはいったい何をやらかしてくれちゃってんの!?
なんていうか、さっきまでの俺のシリアス、まじで返して‼お願いだから‼
あまりにめっちゃくちゃになったこの大空洞でそんな文句を思いつつも、あの平塚先生の凶行と、とーちゃんの非常識な殺戮を思い出して、恐ろしさに失神しそうになるのを必死に堪えていた。
それにしても久々にとーちゃんが戦うとこ見たけど、マジであの人おかしい。
てか、あれで実は魔法使ってないわけだからね。なんで、ただ蹴っただけで物体が消滅するのン?それに、なんで力一杯叩きつけただけであんな核爆発みたいなのが発生するのン?八幡、本当にわかんない。
「おのれ……おのれ、おのれ、おのれおのれおのれ‼殺す‼殺してやる‼貴様は俺がこの手でぶち殺してやる‼」
「お?やっとやる気になったか?いいからとっとと来いよ」
そんな声が靄の向こうから聞こえてくる。
どうやらルゼーブととーちゃんの様だが……
と、次の瞬間、辺りをおおう土ぼこりが一気に吹き飛んで消えた。そして、正面を見れば、ルゼーブがその右腕を上空へとかがけてなにか呪文を詠唱している。
何をするのか?と思ったそのとき、突然ルゼーブがその口角をあげた。
「くくく……だが、そのまえにだ。貴様に絶望をプレゼントしてやろう。そこにいるなデカルチャーズ。お前にもだ。これからこの俺が、強大な力を持ったお前たちに最高の贈り物をしてやる。神となったこの俺がなあ」
言って、その全身が光い輝くと同時に、なにか巨大なエネルギーのようなものが上空へと放たれたことを感じた。
「おい、おめ、今何をした?」
瓦礫の上にとーちゃんがたっていて、そうルゼーブへと声をかけた。
そんなとーちゃんの左手には、ぐったりして動かなくなった平塚先生のすがた。ピクピクしてるから死んではいないようだが、扱い雑すぎないか?
「くくく……よかろう、殺す前に教えてやる。お前たちは俺を怒らせた。抵抗をしなければ楽にしなせてやったところだが、もう遅い。お前たちには自分の死よりも深い絶望を与えてやる」
自分の死よりも深い絶望って、まさか……!?
俺がハッとなって顔をあげたその時、満足そうな笑みをしたルゼーブが俺へと視線を落としてきた。
「そうだデカルチャーズ……くくく……貴様の大事な大事なあの仲間たちを皆殺しにしてやる。あの大切な女どもをなぁあ。たった今地上へこの俺の眷族たちを解き放った。地上の連中どもにはどうしようもないだろう、瞬く間にオラリオも世界も火の海だ。クク……くはぁっはっはっは……」
高らかに笑う、ルゼーブ。
俺はそんなやつを見ながら歯噛みした。
くっそ、どうすりゃいいんだ。
「なあ、八幡」
ふいに横から声がして顔を向ければ、そこにいたのはとーちゃん。さっきまであの瓦礫の山にいただろう?って思いつつも、まあ、とーちゃんだからなと納得。もはやこの移動速度は瞬間移動のそれだろう。
とーちゃんは真面目な顔で俺に聞いてきた。
「あいつ神様なのか?」
その問いに俺はすぐに頷いて返した。
「ああ、そうらしい。どうやったんだか分からないが、邪神カーディスってやつに完全になっちまってるらしい。身体も魂もな」
「そうか……なら、オラには倒せねえな」
「え?」
今、何て言った?
オラには倒せないって、おいおい、この後に及んでそりゃねえだろう。
「とーちゃんが倒せねえって、どういうことだよ。じゃあ、どうしろって……」
「落ち着けよ八幡。オラには倒せねえんだ、オラじゃ神サマの身体をばらばらには出来ても魂までは壊せねえんだ。神竜にもそう言われたしな」
「だからどうしろ……」
言いかけた俺に向かってとーちゃんがまっすぐ指を指してきた。
え?俺?
「なにを……」
「だからおめだよ、八幡。おめの電気の魔法なら神サマだろうが悪魔だろうがなんだろうが消し去れるって言ってたぞ。だから神竜はおめとは戦いたくねえってな」
「は?ま、まてまてまて、とーちゃん。俺?俺が倒すって?いや、いやいやいや無理だろうそんなの。だって俺さっきあいつに殺されかけたんだぞ?現に足も手も腐ってたじゃねえか」
「だーいじょうぶだって、おめえなら出来んだろ。それにこれ」
「え?」
とーちゃんがいきなり俺のはだけた背中をバンと叩いた。
めっちゃ痛いが、そうではなくて、そこに在るもののことをポショポショと耳打ちしてきたんだ。
「ええ!?ま、マジか?」
「おう‼マジだぞ。だから手伝ってやっからオメがとどめをさせよ」
俺はそのとーちゃんの言葉にゴクリと唾を飲み込んだ。
とーちゃんがここに来ておれに嘘をつくわけはねえ。それに言われてからなんとなく意識してみたら、それの存在を知覚できるようにはなっていたし。
どうする?できるのか、俺に?
いや、でも…
そのとき、とーちゃんが俺に言った。
「なあ、守ってやれよ八幡。おめえの手で」
その言葉、その意味するところ。そんなの言われなくたって分かってる。
俺は自分の拳をぎゅっと握り、そしてとーちゃんを見て頷いて答えた。
「さて、別れは済んだかな?諸君。『神を殺せるのは神だけ』。それはこの世界の理であり、真理だ。そして、そんな神に弓引くおろかな存在……くくく……貴様たちにその報いを与えてやる。さあ、死ね、絶望しろ、そして消滅するがいい」
「『ギガデイン』」
自身の周囲に暗黒の大穴を開いたルゼーブに向かって俺はギガデインを放った。
あれはブラックホールかなんかか?
俺の稲妻はルゼーブの身体を焼きつつも、その穴へと吸い込まれるように消えていく。
「っつ……き、きさま……くく……くくく……どうやら、貴様の魔法の効果もここまでのようだな、デカルチャーズ‼さあ、死ね‼今すぐ死ねぇ」
ルゼーブは自身の周囲に展開したブラックホールをどんどん大きく膨らませていった。
瓦礫や、砕けた竜牙兵たちがつぎつぎにその穴に飲み込まれていく。
そして、やつはさらに空中に魔方陣を展開し、そしてそこから亡霊のようなモンスターを溢れるように出現させ続けた。
「くはははははは……もはや手加減はなしだ。私のもつ最大の魔力で貴様たちを消滅させてやる。さあ、死……」
「死ぬのはおめだよ、ルゼーブ。さあ八幡、かましてやれ」
「なっ……!?」
そう、俺はもう一度ルゼーブへと向けて手を伸ばした。
隣にはとーちゃんたちがいる。
平塚先生は一度目を覚ましたが、暴れる前にとーちゃんが殴ってふたたび気絶させられてまだ抱えられている。ひでぇ。
そう、さっきの『ギガデイン』はただの牽制だ。
あれでルゼーブを倒しきれないことはもう分かっていたしな。
だから、少し、ほんの少しだけやつの油断を誘いたかった。
そう……この『新しく覚えたじゅもんの準備』のために……
力がみなぎる……
気力があふれでる……
全ての命の力が、すべての存在のエネルギーがここに……
草も、木も、アロエも、動物も、モンスターも、ダンジョンでさえも……
「みんな、俺に力を分けて……って、これ俺の台詞じゃねえな。よしやるぞ、とーちゃん」
「ウッし!やっちまえ、八幡」
「な、何を……、」
慌てて俺たちへ複数の魔法を放ったルゼーブだがもう遅い。もはや、この俺のじゅもんは完成したのだから……
そう、俺は新しいじゅもんを覚えてしまったのだ。
多分、あのカーディス(仮復活)を倒したときに。
なんとなく、レベルアップの効果音を聞いたような気もしたし。
そして、覚えてしまったこのじゅもん。これはまさに今このときにこそ意味のあるじゅもんだったのだ。
そして俺は絶叫した。こいつを倒すために、彼女たちを守るために、万感の思いをこめてやつに向かって……
そう、そのじゅもんとは……
「『ミナデイィィィィィィィィン‼』
そのとき、俺は光を見た。
真っ白な光。音も、色もなにもかもが白で塗り消された世界……
そして、その光がすべてを……やつの放ったモンスターも、魔法も、奴自身さえも飲み込み、そして消し去って行くのを……
「ば、ばかな……」
光の中でもがくルゼーブ。
やつのその身体には瞬く間に亀裂が走り、そしてポロポロと表皮がめくれ粒子となって輝き始めた。
そんな奴の口が微かに動く……
「お、俺が……か、神へと至った、、こ、この俺……が、死……まだだ……まだ、死ねな……奴を、こ、殺す……ま、まで……は………………」
光の奔流に沈むルゼーブの最後の言葉を……
俺は聞いたような気がした。