『八幡』と『結衣』と『雪乃』のオムニバスストーリー 作:こもれび
と見せかけた、ただ単に俺ガイルメンバーはこのすばの話で盛り上がっているだけのお話です(なんだそれりゃ)
「ねえヒッキー、『このすば』って読んだ?」
「は?」
部室でいつも通りラノベを読んでいた俺に、スマホを弄っていた由比ヶ浜がそう話しかけてきた。
「『このすば』って、『この素晴らしい世界に祝福を!』ってやつか?」
「うん、それそれ」
「まあ、読んだけどな、一応今出てるとこまで全部。っていうか、なんだ?長い文章を読めないアホの子のお前が急にどうした?」
「ちょっとヒッキー酷いし!あたしだって本くらい読むし、しょーせつ? だって読めるし!!」
「なんで、小説のとこがちょっと自信なさげなんだよ。別にいいんだが……それで? それがどうした?」
「あ、えとね、この前いとこの子に借りてさ、少し読んだらはまっちゃって、毎日少しづつ読んでてさっき読み終わったの!! それでさ、ヒッキーも読んでたらその話もできるかなって思って……えへへ」
なにがえへへだよ。
そんな嬉しそうに俺を覗き見るんじゃねえよ、恥ずかしくなっちゃうだろ、まったく。
「そうか。ちなみに、確かスピンオフも合わせて全部で12巻出てたはずだが、全部読んだのか?」
「うん、全部読んだよー。もうね、めぐみんが可愛くて可愛くて。主人公のカズマ君がヒッキーにちょっと似ててさ、そこも良かったし!」
「いや、俺はあんなヒキニートじゃねえっつーの。地味に人のことディスってんじゃねーよ。っていうか、どうせ全部流し読みだろ?本当に内容覚えてんのか?」
「うー、そ、そう言われると自信はないんだけど、結構読むのに時間かかっちゃったし……でも、大体はわかるよ」
「ふーん?なら、紅魔の里のめぐみんのともだちの名前、とりあえず4人言ってみ?」
「あ。えーと、『あるえ』でしょ? 『ふにふら』でしょ? 『どどんこ』でしょ? えーと今三人だよね、あと、えーとえーと……」
「もう一人は『ゆんゆん』ね、他には、『ねりまき』とか、『そけっと』、男のキャラだけど『ぶっころりー』とかね。『こめっこ』は妹だから除外して支障はないわね」
と、急に横から声がしたと思ったら、発言したのは本を見ながら長い黒髪を手櫛でサッとかき上げたゆきのんさん。
「そうだそうだった、ゆきのんすごーい」
「なにお前? お前も読んでたの?」
「ええ、最近話題だったし、それにたまには気分転換に、貴方が読んでいるような通俗な本も読んだりするわ」
「あんまりそうやってラノベを下に見るもんじゃねーよ。みんな頑張って書いてんだからな。それにしてもお前まで読んでたとはな。ま、確かに面白い作品だしな」
「だよね! あたしも読み始めたら止まんなくなっちゃってさ。気が付いたら全部ダウンロードしちゃってたの」
「お前WEB派なの?」
「うん! だって、スマホに全部入るし、お手軽だしねー。後、ダウンロード特典小説もついてたし、短いやつ」
「え? そうなの? どれどれ、俺にも読ませてくれよ、その特典小説」
「うん、いいよ! はい、どうぞ」
「呆れたわね、そう言って女子のスマホを覗き見ようなんて……いよいよクズマ……いえ、クズ幡と呼ぶべきかしら?」
「いやいやいや、ちょっとなにそれ雪ノ下さん? いよいよって何? ちょっと上手い事言ったからって、嬉しそうな顔しないでね? 俺はお前のおもちゃじゃないですからね」
ガラガラ……
「むっふ~~ん! 今日も今日とて、我参上!! さあ、奉仕部の諸君!! 新作である!! 読んでくれたまへ」
「なんだよ、材木座。急に現れんじゃねえよ、うっとおしい。今忙しいから廊下で待ってろ」
「そ、そうか、それは失礼……って、誰も客はおらぬようだが?」
「いや、お前の相手をしたくないだけだから、気にしないでさっさと帰れ」
「はぽん!! ひ、ひどい、八幡酷い!!」
「もう、可哀そうだよヒッキー。中二だって頑張って生きてるんだからね」
「そうよ、クズ幡、一寸の虫にも五分の魂というのよ。彼だって必死なのよ」
「ぶひぃっ!!」
「いや、お前らの方がよっぽど酷いからね。ほら、材木座のやつ白目向いて、びくんびくん始めちまったじゃねえか、って、雪ノ下。お前その呼称定着させようとか思ってんじゃねえよ」
ああ、いい笑顔だなあ、この野郎、雪ノ下。お前絶対悪の女幹部とか似合うと思うぞ。
「はあ、ったく仕方ねえな。ほら、読んでやるからさっさと寄越せよ」
言って、床でぴくぴくしてる材木座から、いつも通りプリントアウトされた小説の束を受け取ると、それを二人にも手渡した。
そして、タイトルを見てみると。
「なになに……『この素晴らしいダクネスに祝福を!!』? っておまえこれSS(2次小説)か? それもこのすばの?」
材木座は、腕を組んでうんうんと頷いて立ち上がる。
「うむっ! 時代は、もはや文芸ではなく、エンターテインメントに移ったのだ。となれば、ちまちまとオリジナルで訳のわからんにわか小説を書くよりも、人気作品にあやかってそのキャラの魅力を描き出したファンアートこそが至高。我はこれからSSを書きまくり、そして、その線からプロデビューすることにしたのだぁ!!」
「お前な……相変わらずのぬるま湯路線の上に、今までの自分の行為を全否定するとか、屑すぎてどうかとは思うが、まあ、二次創作から有名になって行ったまんが家とか小説家は確かにいるしな(まあ、最終的にはオリジナル作品書いて成功してるんだけどな)」
「うむうむ!! で、あるので、さあ、今回は自信作。さあ、読んでくれたまへ」
「えー。お前が自信あるって、そうとう前のめりっぽいから、きつそうなんだがな」
「いいじゃん、ヒッキー。このすばなんだしさ、読んでみようよ」
「珍しく由比ヶ浜が乗り気なのは妙な気分だが、まあ、読んでやるとしますか」
それから、しばらく、ぺらりぺらりと俺達は読み進めた。
が!!
「ん? なんだ? カズマが急にダクネスを好きになったのは、置いておくとして、なんで、ダクネスが王国の姫になってんの?」
「それは我の独自設定によるもので、アニメでダクネスの背景が描かれていなかったからな、そこは設定を盛りに盛って盛り上げようと……」
「ちょっと、めぐみんが爆裂魔法以外の魔法もつかっちゃってるよ? なんか火とか水とかの魔法使いまくってるけど」
「おお!! まさにその通り!! 原作ではあの爆裂魔法だけであったのでな、ここは活躍させようかと……」
「このラスト……魔王がドラゴンなのはいいとして、主人公のカズマが勇者カズマになって激闘の末に倒しているのだけれど、これは?」
「うむうむうむ!! まさにそこは王道ファンタジー路線としてだな、やはり苦難を乗り越えて感動のエンディングを……」
「「「って、これこのすばじゃ(ねえ!)(ないし!)(ないわね!)」」」
ここは3にんハモった。
当たり前だ。
「材木座、お前、ひょっとしなくても、原作小説読んでねえだろ」
「アニメだけであるな……あれは非常に面白かった!! であるから、こうして続きをだな……」
「はい、ダウト!!」
「はぬんっ?」
「お前な……普段オリジナル書いてるからわかんねえかもだが、アニメの後も続きの原作があるんだから設定変えて書いてSS投稿サイトにでも載せようものならファンにフルボッコにされるぞ、お前。『こんなのこのすばじゃねえ、ふざけんな』とか『この作品は原作を読んでないアホな作者が書きました』とか、『アンチヘイトタグつけろや、オラ』とか『くそつまらない駄作です』とか、意識高い系のファンに書かれちゃうんだぞ、わかってんのか?」
「ぐ、ぐぬぅ、何かすごく真に迫ったコメントで、まるで実話のよう(実話です)で言葉もないが、言わんとしたいことは分かっ……りましたです。はい」
「それに大体なんでヒロインがダクネスなんだよ。ここは『クリス』に決まってんだろうが!!」
「待ってヒッキー、ヒロインはやっぱり『めぐみん』だよ。だって、こんなにカズマを好きなんだよ? 応援してあげたいじゃん」
「ちょっと待ってくれないかしら由比ヶ浜さん。ここはやはりヒロインは『ゆんゆん』ではないかしら? こんなに友人を欲しがって努力しているのに報われないなんて、あんまりだわ」
「お前な、なにボッチなとこに共感しちゃってんだよ。そもそもそれならヒロイン枠じゃなくてもいいだろうが、ここはやっぱりこの、『実は私は~~~』な、クリスに決まってんだろうが!!」
「ぜーったい、めぐみんだよ!! めぐみんじゃなきゃ、嫌だ!!」
「いーえ、ヒロインはゆんゆんよ! そうでなければ私は納得しないわ」
「あ、あのう~~、我はやっぱりいつもドキドキさせられちゃうダクネスが~~……」
「その後の展開知らないお前が決めてんじゃねえよ!! ダクネスはねえよ! ねえ」
「そうだよ」「そうね」
「ぶひいいい!!」
そんなこんなであーだこーだ言ってたら。
ガラガラ
「邪魔をするぞー。ん?どうした?もめごとかね?」
入ってきたのは平塚先生。
「いや、別にもめごとって程のことじゃあ……あれ? 先生何手に持ってるんすか?」
「あ、この本かね? いや、実は最近ラノベにすっかりはまってしまってねー。帰宅してから酒を飲む以外特にすることもないので、ちょっと買って読んでみたのだがこれが面白くてね。こんなに楽しんだのは、『機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ』以来だよ。うん、本当にすることなくてな、読書が進む進む」
うっ……
これが嫁き遅れたアラサー美女の実態か……
誰か本当のホントに貰ってあげて!!
「で、何を読んでるんですか?」
「ああ、『この素晴らしい世界に祝福を!!』というやつなのだが、知っているかね?」
「やっぱりそれですか!! ええ、知っていますよ。ちょうどその話をみんなでしてたとこですから。ちなみになんですが、先生にとって、この作品のヒロインって言えば誰です?」
「へ? ヒロイン? うーん、そうだなー。アクアだな。うん」
と、即答。
「え、えーと、嫌な予感しかしませんが、理由を聞いてもいいですか?」
「笑ってもいいとも!! なんちゃって……うぉっほん! アクアが一番の理由は、一番フリーダムなとこだな。うん。やりたい放題で、好き勝手やって、酒好きで、でも仲間思いで優しくて、ちょっとおっちょこちょいだけど、それでも可愛げがあるしな……まさに私のようだとは思わんかね?」
ええ、そうですねー。
と、俺も由比ヶ浜も雪ノ下も鼻白んでしまっているが……
先生、アクア目指しちゃったら、きっと旦那さん候補とは一生出会えませんよーと、三人で心で泣いたのであった。
誰か本当にもらってあげ……いや、助けてあげて!
「あ、我の小説の感想は?」
「「「没!!」」」
「ぶひぃ」
了