『八幡』と『結衣』と『雪乃』のオムニバスストーリー 作:こもれび
○○「待てるかっ!! あ、かーのじょー、お茶しなーい?」
○○「もうっ! ダーリンの浮気者ぉーーーー!!」
いや、気の迷いだったんですよw つい書いてしまいましてww
とある作品とクロスオーバーしています。
ではどうぞ!!
「うー……さ、さみいな……」
「そうね、もうこんなに遅い時間だものね」
「すっごくお腹空いたしー。もー、今日の中二、本当に失礼しちゃう」
由比ヶ浜がその小さな頬を膨らませながら珍しく文句を言う。そりゃ、俺だって、文句の一つも言いたい気分だよ!
俺達3人は、総武線で遠くの……とある場所まで材木座の依頼でやってきた。その依頼というのがなんと『デートの手伝い』。正直他人の色恋沙汰なんて絶対引き受けたくなんて無いと思っていたのだが……
材木座の相手がどんな女性なのか知りたいという欲求に俺達はついに敵わなかった…
で、期待して、奴と一緒にここまで来た訳だが…
「あなたが材木座くんね? 初めまして、しのぶって呼んでね!」
その高い塀に囲まれた高校の正門に立っていたのは、今時珍しい、スカートの丈もきっちりと守ったセーラー服姿の女学生。はっきり言って可愛い……すごく可愛い……戸塚の次くらいに可愛い!
その可憐な少女を目の当たりにして、俺はもちろん、雪ノ下も由比ヶ浜も、口半開きで目が点になっていた。
な、なにこれ……どうなってんの? マジであり得ない。なんなのコイツ。なんでこんな可愛い子と知り合ったの? なんかマジでムカついてきた。
「は、はぽぉん…」
その子に微笑まれて、二の句を告げないでいる材木座を、俺達はさっさと放置して帰ろうと思ったのだが、このデブ、泣きながらすがりついて来やがった。
プルプル震えているし、生まれたての仔鹿はお前がやっても可愛くはねえんだよ。
どうやら、材木座がネットに投稿した小説のファンの子らしい。奴の良く分からないファンタジー小説の内容についてあれやこれや話しかけているし。でも当然のごとくかちこちで反応することが出来ない材木座。
ちっとはお前も話してやれよ!
仕方がないので、その子と材木座の後ろを俺達3人が一緒について歩くことに。挙動不審な材木とその子と一緒に、駅前のゲームセンターであれやこれや遊んで(いつの間にか由比ヶ浜に一緒にプリクラ撮らされたけど)、ちょっとケンタでお茶したりしていたら、どうも調子に乗ってきたらしい材木座のやつが『けぷこんけぷこん、お主たちもう帰ってもよいぞ? 我と一緒に居たいという気持ちは痛いほど解かるのだが、もうお子様が出歩いていい時間ではないのでな!』とぬかしやがった。あのデブ浮かれやがって。
怒りに震える雪ノ下を俺と由比ヶ浜で抑え込んだのは言うまでもないが、浮かれてくるくる回っている材木座にいつまでも関わる気は当然ない。俺たちは奴としのぶって女の子を放置して帰路についたわけだ。
で、今に至る。
「ちくしょー、材木座の奴、見せつけやがって」
俺のその独り言に、由比ヶ浜が。
「じゃ、じゃあさ……こ、今度中二の前で…その……、あ、あたしが腕を組んであげよっか」
「い、いや……そんなことされても恥ずかしいだけだから」
「えー、いいじゃん……ちょっとくらい……」
「だが、断る」
「断っちゃうんだ!」
ガーンという効果音が聞こえてきそうな顔を俺に向ける由比ヶ浜。なんでそんな顔になるんだよ! そんなに俺にくっつきたいのかよ。
「無理しない方がいいわ、由比ヶ浜さん。そんなことで危ないばい菌をもらっても困るでしょ?」
「おい……比企谷菌なんて存在しないからね。菌呼ばわりマジやめてね。死にたくなるから」
まったく、こいつら調子に乗って俺を弄りまわしやがって……はあ、無駄にイライラしたからマジで腹が減った。それに寒いし……ん? あれは……?
「なあ、お前ら……ちょっとあそこ寄ってかないか?」
「え?」
俺の言葉に二人が顔を上げる。目の前のそこにあるのは……
赤ちょうちんをぶら下げた、屋台のおでん屋。線路わきの壁沿いに、風情のある木製の屋台が明かりを灯していた。酔っ払いのサラリーマンとかの先客もいない。ちょっと摘まむくらい出来そうだ。
「わあ! 屋台!? 初めてだし……あたし行ってみたいかも」
「そうね……丁度お腹も空いて来たことだし、私は別に構わないわよ」
「良し、じゃあ決まりだ」
俺は先に立って、のれんをくぐった。のれんの内側は、ポカポカ温かくてだし汁の香りが漂っている。仕切りの付いた鍋で煮られているおでんを見るだけで、腹が一気に空いて来た。
「ヘイ……らっしゃい」
渋い声で俺達を出迎えた店主は、おっさんかと思いきや、メガネをかけた同年代位のいかつい顔のお兄ちゃん。
「よっこいしょ……ってお前ら……なんで俺の両脇に座るんだよ!」
「えへへ……こういうところ初めてでさ……頼み方とか、良く分かんないからヒッキーに教えて欲しいかなって」
「わ、わたしも初めてなのよ……だから……あ、あなたに選ばせてあげることにしたわ」
くっ……雪ノ下の奴、自分が分からないくせになんで上から目線何だよ。まあ、仕方ねえな……
「好きな物頼めばいいんだよ。由比ヶ浜はおでん何が好きなんだよ」
「えーとね……はんぺんと卵と……あと、ちくわぶかとか?」
「じゃあ、お兄さんそれ! で、雪ノ下は?」
「わたしはそうね……大根とこんにゃくと厚揚げ? かしらね」
「そしたら、今言ったやつと、俺につみれと、竹輪と牛筋串ちょうだい」
『あいよ』と短く返事をしたお兄ちゃんが、俺達の前におでんを出す。俺はその大きな竹輪にまずかぶりついた。
はふはふっ……あったけー……ていうか、うめえ……美味すぎるな。やばい超うまい。
「美味しい……ねえ美味しいよヒッキー」
「ホントね……なにかしら? おだしが違うのかしらね」
その俺達の反応に待ってましたと言わんばかりに、目の前のお兄ちゃんが腕を組んで眼鏡を煌かせて出した。
「ふふ……ふふっふーむふーくくく……こちとらこの道30年……そんじょそこらのと一緒にされたらかなわいよほぉ」
声裏返ってるし……っていうか、あんた、俺達とそう歳変わんないだろう? なにこのテンション……
そうこうしてるうちに、両隣の二人を見たら、ハフハフいいながらぺろりと食べ終わってるし…
「はあ……美味しい! 今度はゆきのんが食べたやつ食べたいな……お兄さん、下さいな」
「わたしも、先程彼女に出したのと同じものをいただくわ」
「お、お前ら……良く食うな……」
「へへ……だって美味しいんだもん!」
「はいよお待ち……いやはあ、嬉しいねぇ……美味いって言われるのは最高だねえ。それもこんな可愛いお嬢さん達からなんてなぁ……あは、あははぁ、あははははははははは……ヒデキ感激ぃ!! なぁーんちゃって! なははははっははははは……」
だからあんた、歳同じくらいだろうって! なんで、笑いか方がそんなにオッサン臭いんだよ!
まあ、確かに美味いしな……文句はないのだが、この妙なテンションはいったいなんなんだか……ん?
「な゛っ!」
おでんを食っていた俺のすぐ鼻先に、そのメガネの兄ちゃんのドアップの顔が迫っていた。俺を覗きこむメガネがギラリと光る。そして小声で俺に囁く…
「ところで兄さん……この子達二人とも兄さんの彼女だーなーんてことは、ないよな」
「は? 彼女? ……な、ない………ないないない! こいつらただの部活の仲間」
メガネの兄さんはそれを聞くと、にまーっと笑った。
「なはーーーーだ、そういうこと! 仲良い部活なのね、あははー! そうだよ……そんなに何人も彼女いる奴居てたまるかってんだよ……なっ!! 兄さんもそう思うだろ? な! な!」
急に機嫌よくなるし……だから、なんなんだこいつは。
そんな感じで、椅子に座り直してさあ、残りのおでんを食べようと思っていたら、俺の後ろから…
「ケッ……なんだよ、しのぶの奴! あんな太いヤローのどこが良いってんだよ! ったくむしゃくしゃする……あ、おじさん、おでん盛り合わせ一つねー、辛子たっぷり入れて」
ポケットに手を突っ込んだ、セーターにマフラー姿の男が、俺の後ろから入ってきた。入ってきた途端……
「おわあっ! か、可愛い……にははははははっはははは……ねえねえ彼女達ぃ……どっから来たの? 名前は? 趣味は? 好きな男性のタイプは? ねえねえ……ねえってばぁー? にははははは」
うはっ……なんだこのナンパ男! 雪ノ下も由比ヶ浜も仰け反って思いっきり逃げてるし……て、いうか、俺の背中に寄りかかるんじゃねえよ!
「あ、え、えーと……つ、連れがいますから……あはは(ねえヒッキー…たすけてよぉ)」
由比ヶ浜が小声で俺に助けを求めるけど、なに? こういう時ってどうすりゃいいんだよ?
「連れ~?」
そいつが寄りかかる俺をチラリと見る。そして……
「そっかそっか!! お友達もいたんだねぇ……じゃあさ、ここでバイバイして俺と三人で一緒にどっか遊びに行こうよぉ。カラオケが良い? それともお洒落なカフェでレーコーとかでもいいし、なんなら朝までやってるディスコでもいいよ?」
「い、いや……俺達そろそろ帰るから……」
「ええ~? いいじゃんいいじゃん……君たち別につきあっちゃないんでしょ? 今日は出会った記念に僕が君たちをエスコートしてあげるからさぁ……一緒にたのしもうよぉ……にははは」
それを黙って聞いていた雪ノ下が、プルプルと震え出した。 あ……これあれだ……『この軟弱者!』とか言っちゃうやつだ……で、パチーンとひっぱたかれて地面に転がるのよね……あれ? それはモビルなんたらの方だった!!
何かを言おうと雪ノ下が口を開きかけたその時のことだった。
「グぬぬぬぬぬぬぬぬうううう……き、貴様ぁ、あたるぅっ!? 黙って聞いてれば調子に乗りくさってぇ……もぉう我慢ならん」
突然メガネの兄さんが袖をまくって、その男を睨み付けて声を張り上げた。
「ゲッ! め、メガネ……なあんでお前がおでん屋やっとんのじゃ……ついに金に困って退学でもしたか」
「じっさまの屋台手伝っとるだけじゃ、このボケっ!! 今日という今日は本当に勘弁ならんわっ! うちの客にまで手をだしよって、ゆるさぁああああん!!」
にじりにじりと、メガネの兄さんがマフラー男に近寄る。そうしたら今度はその後ろから可憐な声が!!
「ちょっと、あたるくん!?」
ん? この声は……聞き覚えあるな?
そうだ、さっきまで材木座と一緒に居た……
「しのぶ~……!! なーんだ、ちゃんと戻って来てくれたのかぁ……俺はいつでもしのぶの事しか考えてないよー!!」
「そんなこと言って……じゃあ、さっきはなんで私を無視したのよ!! あのまま、あの人と一緒にどこまでも行っちゃっても良かったの?」
「そんなことないよ……俺は本当にしのぶの事心配で心配で……」
「信じられない! どうせ『あの女』の方が大事なんでしょ……ふんっ」
「違うってぇ……しのぶが一番だって……なっ、なっ? 機嫌なおそうよ」
「本当? 本当に信じていいの?」
「ああ! もちろん! だからさ! これから一緒にデートしようなっ! なっ!」
そう言って、しのぶって子を抱きしめてるし……な、なんなんだコイツ……雪ノ下と由比ヶ浜は……あ、やっぱり目が点になっているな。まあ当然か、こんなナンパ男の行動なんて理解できなくて当たり前だよな。
おっと、そういえば材木座の奴は……おお、いたいた……壁にもたれかかって、魂抜かれたみたいな顔になっているな。惚れた女は目の前でこのたらしに抱きしめられているし……マジむごい。合掌。
「あ、あ、あたるぅっ! お、俺の話はまだ終わっていないのだぞっ!! 今日という今日は絶対にゆるさ…」
メガネの兄さんがお玉を振り上げてそう吠えたその時のことだった。
「ウチのダーリンから離れるっちゃーーーーーー!」
空の上から雷が…そのメガネの兄さんのお玉に落ちた!
「ちいぃぃぃぶあぁぁぁぁぁぁぁ……」
兄さんが訳の分からない奇声を上げて倒れる。 これ、マジでやばいんじゃないの!?
気が付いたら、俺達の目の前に、しのぶって子と同じセーラー服を着た、緑色のロングヘアーの女の子が立っていた。
「ダーリンっ! また、ウチに隠れてこそこそしのぶなんかと……今日という今日は絶対に許さないっちゃ!」
その女の子は、心なしか青白くパチパチ光って見えるのだが……。なんだ? 目の錯覚か? とりあえず明らかにお怒りのご様子ではあるな。
「ま、待て……ラム! は、話せばわかる! な!? な!?」
「問答無用だっちゃー---------」
「ぎぃやああああああああああああーーーーーー……た、助けてくれぇーーーーーーーー」
「あ……あたるくん!?」
「待つっちゃ、ダーリンっ!」
ギャー……と悲鳴を上げて、あのナンパ男が走って逃げて行った。それを追いかける黒髪と、緑髪の二人の女の子。
なにこれ……?
「あ、嵐のようだったわね……いったいなんだったのかしら?」
雪ノ下が、ポソリと小声でこぼす。
「さあな。世の中には、物好きがいるってことなんじゃないか?」
俺がそう呟いた後ろで、由比ヶ浜がポツリと言った。
「ゆきのん…あたし諦めないから!」
え?
なぜか由比ヶ浜が、俺と雪ノ下を凝視して小さくガッツポーズしてるし……どうしちゃったの? お前?
ま、とにかく、腹も膨れたし、メガネのお兄ちゃん倒れちゃっているけど(まあ、息はあるし大丈夫だよな)、そろそろ帰らねえとな。
「じゃ、まあ……帰りますかね」
俺のその言葉に、二人も一緒に立ち上がった。
それにしても……
『うるせいやつら』だったな……
あ、材木座…まあ、いいか。
声の出演
比企谷八幡・・・江口卓也
由比ヶ浜結衣・・東山奈央
雪ノ下雪乃・・・早見沙織
材木座義輝・・・檜山修之
諸星あたる・・・古川登志夫
ラム・・・・・・平野文
三宅しのぶ・・・島津冴子
面堂終太郎・・・神谷明
メガネ・・・・・千葉繁
了
こもれびはアニメ派なので、メガネの存在肯定です!