『八幡』と『結衣』と『雪乃』のオムニバスストーリー   作:こもれび

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(13)ヒッキーと同棲したい

 今日は12月25日。

 昨日の夜は本当に色々なことがありましたが、結果としては全てリセットとなりました。

 江ノ島さんも橋本さんもあんなに酔っていたのですけどね、昨日の内容の一部始終を覚えていたようで、朝起きて開口一番であたしは謝られました。

 まあ、とりあえず今はもう問題は解決したわけなんですけどね、江ノ島さんにはもう見守りはしなくて平気ですからとそれだけ言って本人にも了解をもらいました。

 これでもう江ノ島さんのストーk……けほんけほんっ!! は! ないと思います。 

 というか信じます。

 橋本さんも何やら江ノ島さんにシラフで説教しはじめましたしね、江ノ島さんを教育するって、宣言していましたし、橋本さんもこれから忙しそうです。

 ということで、早朝に二人して仲良く帰っていきました。

 

 さて、この新居に残されたのはあたしとヒッキー、それと……

 

「っていうか、隼人君はなんで北見に来たの?」

 

「ん?」「は?」

 

 朝ごはんのパンを食べながら、隼人君とヒッキーの二人が変な声をだしているし。

 

「言ってなかったっけ?」

 

「うん、聞いてないし、なんも言われてない」

 

「そうだっけ?」

 

 首をかしげるヒッキーに隼人君がはははと軽く笑っていた。

 

「ひどいな比企谷。もう大分前に君に頼んだじゃないか。家に泊めさせてくれって」

 

「お前に頼まれたけど、嫌すぎて記憶から消していただけだ。まあ、泊めてやったんだからノーカンな」

 

「君にはそれでいいだろうけど、急に泊めることになった由比ヶ浜さんには申し訳ないだろ」

 

「あ、それは良いの、全然。それとね隼人くん。前みたいに結衣でいいよ。なんかさ、名字で呼ばれると嫌われちゃったみたいでちょっと寂しいし」

 

「そうか? ならそうさせてもらおうかな。いいかな、比企谷?」

 

「なんでそこで俺に聞くんだよ? 別にお前らが決めたんならそれでいいだろ?」

 

「そういうわけにはいかないだろ。だって君たちは結婚予定なんじゃないのか?」

 

「結婚!?」「予定?」

 

 思わずヒッキーと二人してむせてしまった。

 というか、いきなり予想外すぎだよ。

 きょとんとした隼人君が、やっぱり首をかしげながら聞いてきた。

 

「違うのか?」

 

「違……うというか、いまのところはというか、まだというか……ってか、俺たちのことはどうでもいいんだよ。今由比ヶ浜はお前のことを聞いていたんだろうが」

 

「あ、そうだったね」

 

 憤慨しているヒッキーとニコニコしている隼人くん。

 うわわ。隼人くん、ヒッキーの扱いめちゃくちゃ上手くなっているし。

 隼人君は、まあ、たいした話ではないよと前置きしながら言った。

 

「今度、母のつてで、北海道各地に展開している病院に勤務することになってね。まだ、配属地は決まっていないんだけど、とりあえず北見の病院にインターンで入ることになったんだよ。それで、今回はその下見で来たってわけなんだ」

 

「へえ、隼人くん、お医者さんになるんだ。すごいねー」

 

「そんなことないよ。結衣だって小学校の先生じゃないか。まだ親の(すね)(かじ)っている身の上の俺からすれば、きちんと働いてこんな綺麗なマンションで生活している、結衣も比企谷も本当に凄いよ。尊敬する」

 

「うるせえ、お前に尊敬される謂れはねえよ。喜色悪い」

 

「相変わらずだな、君は。ま、君を褒めるのは俺の趣味みたいなものだから諦めてくれよ」

 

「悪趣味すぎるだろ」

 

「ちょっとヒッキー、隼人君に冷たすぎ! あ、ごめんね隼人くん。ヒッキーはあたしがちゃんと叱っておくから」

 

「なんでこいつのことでお前から叱られなくちゃならないんだよ。母ちゃんか」

 

「だれがヒッキーのママよ」

 

 キーっとヒッキーを睨んでいた脇で、はははと、また隼人君はさわやかに笑った。

 

「本当に仲が良いんね、君たちは。本当に……羨ましいよ」

 

「ええ? 隼人くんは誰とだってすぐ仲良くなれるじゃん。それに隼人君には優美子だって……」

 

 と言いかけて、そう言えばもうあれから何年も経っているし、二人が今でも仲良くしているかどうかなんて本当に分からないことだったから口をつぐんだ。

 優美子は総武高校の時のクラスメートで、あたしの友達だった。

 この隼人君とは特に仲が良くて、あの時はまだ付き合っていなかったけど、きっといつか二人は付き合うんだろうなって、そんな風に思っていたの。

 でも、その前にあたしが転校してしまったから、どうなったのかは本当に分からない。

 急に口を噤んだあたしのことを察してくれたのか、彼は優しい声で言った。

 

「優美子とはもう暫く会っていないんだよ。俺たちも色々あってね」

 

「そう……なんだ」

 

 色々……

 あったんだよね。きっと。あたしはその辺のことは知らないのだから深入りは出来ないし、きっとしてはいけないことなんだ。

 他人事でかき回していい話ではきっとないはずだから。

 そう思っていたら、急にヒッキーが割り込んできた。

 

「あんまり気を遣うんじゃねえよ。別に聞かれてまずい話なんて、『俺達(○○)』には何もないんだからな」

 

「そうなの?」

 

 ヒッキーは一度隼人君の方を見た。

 すると、彼はこくりと頷いて見せる。それを確認してからヒッキーは口を開いた。

 

「お前も知っている通り、俺と葉山と……それと雪ノ下は同じ大学へ通っていたんだ」

 

「そうなの? ゆきのんも?」

 

「へ? 言わなかったっけ」

 

「聞いてないし」

 

 また変な顔になったヒッキーが頬をぽりぽり掻いている。

 あんまり責めても可哀そうだよね。そう思ったあたしは、どうぞどうぞと彼へと話を促した。

 

 そして語られた内容……

 

 それは、あたしの知らない、ヒッキーとゆきのんの物語だった。

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