『八幡』と『結衣』と『雪乃』のオムニバスストーリー   作:こもれび

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間違えて、後半のお話を先に投稿してしまいましたね。
こちらの方が先になります。



いろはの日常

 こんにちはー、一色いろはです。

 

 私は今日、お仕事がお休みで、この真新しい新居の広ーいリビングで、冷房をガンガンにかけてソファーでタオルケットにくるまりながら、リオオリンピックの名シーン集とかを見まくってまーす。ホットココアを飲みながら。

 え?そんなことしてないで、なにかしろって?

 えーーー?

 そんなの~む~り~……

 だって、外の気温35度ですよ?

 そんなとこ出たら、一瞬で脱水症状になったあげく、私の真っ白な柔肌もあっというまに真っ黒に日焼けして、『一色くろは』になっちゃいますよー。

 あーあ、北海道だから夏は涼しいかと思ってたのに、なんですか、この暑さ……

 これ、すでに、北にある意味ありませんよ。本当に。

 あー、でもいいのです。

 誰になんの文句を言われるわけでもなく、好きなことしてダラダラして、自由気ままで、あー本当にしあわせー……

 

 って、あれ?なんかおかしいような……私なんでここに住んでるんでしたっけ……

 

「たっだいまー!いろはちゃーん、やっはろーーー!」

 

「帰ったぞー……よいしょっと……」

 

「あ、ゆいせんぱーい、先輩もー、お帰りでーす」

 

 と、いけないいけない、油断してた。

 ササっと起き上がって、タオルケットを膝掛け風にしてちょこんと座り直して、玄関を向く。当然、スマイルスマイル!

 先輩達は肩から自転車の入った大きな袋を担いで、玄関から入ってくる。すごい大荷物。とくに先輩は、出掛けたトキと同じように、背中に黒い大きなバッグを背負ってる。

 うわー。二人とも、日焼けして、真っ黒だー。

 

「楽しかったよー、いろはちゃん。すっごい暑かったけどね……えへへ」

 

「ほら、一色。土産だ。ほれ」

 

 と、渡された箱を開けると、なかには……

 

「あ、ありがとうございます……って、これ、シレトコドーナッツじゃないですか!?クマゴロンじゃないですか!!な、なんで、こんな話題のお土産チョイスできるんですか、先輩に!?」

 

「あん?話題?そーなのか?中標津で、結衣に言われて一緒に行って買ってきただけなんだが……」

 

「だから、言ったでしょ、ヒッキー。このお店が絶対いいよって。良かった。いろはちゃん喜んでくれてー」

 

「あ、結衣先輩が選んだんですね?なんだー、それならなっとく……って、ゆ、結衣!?い、い、い、今、先輩、結衣って!?」

 

「んあ、ま、まあ、なんだ、その……これからは、名前で呼ぶことにしたんだわ……」

 

「へ?え?って、ことは……」

 

「あ、あたしは、ヒッキーのことは、ヒッキーのままなんだけどね……えへへ……ヒッキーにね、プロポーズされちゃったんだぁー。えへー」

 

「え”っ」

 

「お、おい、何も今言うことじゃねえだろ……ったく」

 

「いーじゃん、帰ってきたんだし。この指輪もやっと嵌められるし……」

 

 うっとりと自分の左手を見つめる結衣先輩のその薬指には、綺麗なダイヤの指輪……

 

「って、ええーー!?ぷ、ぷ、プロポーズ!?先輩がーー!」

 

「ってなんだよ、その言い方は。俺がプロポーズしちゃいけないっていうのかよ」

 

「い、いえ、そうではなくてですね。ほら、私。私、このシェアハウスに引っ越してきたじゃないですかぁ、前回」

 

「お、おう?ま、まあ、そうだな」

 

「それで……それでですよ。普通ひとつ屋根の下に男が一人、女が二人いれば、あんなことや、こんな勘違いの一つや二つ……いやいや、五つ六つ起きて当たり前じゃないですかぁ!なのに、なんにも起きないままで半年も経って、なんで、普通にプロポーズしちゃってんですかぁ!?」

 

「んあ?お、お前なあ、半年ったって、お前だって、キャビンアテンダントの仕事でいつも忙しそうだったし、それに、もともと、俺と結衣は付き合ってたわけだしな……」

 

「だーかーらーですよ。先輩。普通、ほら、こういう、同棲ものって、自分の彼女より、知ってる身近な女の子に魅力感じちゃったりするわけじゃないですか。ネトリ、ネトラレ、NTRですよ。なんで、なんにもイベント起きてないんですかぁ!こんなの怠慢ですよ!怠惰デスよ!作者はなにやってたんですかー」

 

「いや、こもれびのやつはすっかりダンまちとりゼロに嵌まっちまって、帰ってこれなくなってたみてえだな」

 

こもれび『へっくち!!うー……寒気?…』

 

「な、なんですかぁ、それは!それに、このシェアハウス、たしか、もう一部屋ありましたよね!?ね!?普通、そこに、可愛い女子が入って、なんか、ちょー複雑な人間関係になったりとか……」

 

「あれ?お前に言って無かったっけか?入居するやつきまったんだよ……っていうか、マジで知らないのか?一昨日からもう入ってるはずなんだけど」

 

「へ?え?ええ!?」

 

 と、何か背筋に流れる嫌な汗を感じながら、そっと、その誰も住んでいなかったはずの部屋の扉へ視線を向けると、そこには……

 

 ギ……ギギ~~……

 

「や、やあ、みんな」

 

「は、は。は、は、葉山先輩~!?」

 

 そこにいたのは葉山先輩。

 高校時代よりがっしりしたそのタンクトップ姿を見て、思わず絶叫。

 葉山先輩は、頭を掻きながら私に言った。

 

「あ、あー、ごめん、いろは……俺が帰ってくると、いつもいろはがそのソファーで寝てたし、くつろいでるみたいだったから、なかなか声を掛ける機会が見つからなくて……、本当にごめん……」

 

 ぺこりと頭を下げた葉山先輩の隣で、荷物を片付けてた先輩が言った。

 

「えーとな、夏から葉山が北見の病院で働くことになってな。ちょうどこの部屋も空いてたし、ここに住めよって俺が誘ったんだよ」

 

 なんか先輩が鼻を膨らませて、満足げな顔になってるし……

 

 ということは……

 

 

 ぎ…………ぎゃああああああああああああああーーーーーーー!!

 み、見られちゃってたぁーーーー!!

 仕事から帰って、そのまま脱ぎ散らかしてたのも、寝る前に読んでたレディースコミックも、食べ散らかしてたポテチもぉーーー……

 お、おかしいとは思ってた……寝て覚めたら、読んでた本はテーブルの上に置いてあったし、下着のままで突っ伏してたはずなのに、朝起きたらタオルケットかけてあったりとか……

 これ、全部、葉山先輩がーーーー!?

 

 

 

 

「……………………………………………………………………死にたい……」

 

 

 

「やっはろー!隼人くん!お茶淹れてきたよー。みんなで食べよ!ドーナッツ!」

 

「あ、ああ、やあ、ゆい……がはまさん、お帰り。良い色に焼けたね」

 

「へへー、結衣でいいってば。もう、ヒッキーも名前で呼んでくれるし。でも、ちょっと焼けすぎちゃった、見て見て、レーサーパンツの境目がこんなに……」

 

「って、おい!結衣、人にふともも見せようとしてんじゃねえよ。とくに葉山には絶対見せるな」

 

「あ、そっか、ごめん」

 

「あはは……俺も見ないように気をつけるよ。それよりも、さっき聞こえたんだけど、プロポーズしたんだな。おめでとう」

 

「あ、ありがとう。ほ、ほら、ヒッキーもお礼言いなよ」

 

「なんで、こいつにお礼言わなきゃなんねえんだよ。ま、そういうことだから、よろしくな」

 

「もう……ヒッキーってばー」

 

「あはは……」

 

 

「って、なんで、みんなそんなに楽しそうなんですかー!わ、私がこんなに死にそうになってるのにいいいい!」

 

 

「まあ、仕方ねえだろ。どうせあれだろ?一人でソファーでだらしなく寝てたりとか、服脱ぎ散らかしてたとか、どうせそんなのを葉山に見られたーとか、後悔してんだろ?」

 

「ぎゃああああああああ!だ、だから、いちいち声に出して言わないでくださいよぉ。もう、私生きてられないー」

 

「ったく、大袈裟だな、お前は。じゃあ、お前に良い話を聞かせてやる。これは、俺の友達の友達のはなしなんだがな……」

 

「あ!ヒッキーの話だね」

 

「ばっ……ちげーよ。友達の友達のH君の話だ!でな、H君は、ある日風邪をひいて学校を休んだんだが、昼くらいには元気になっちまってな。もう、元気になればそりゃ、遊びたいに決まってる。おまけにそこは他に誰もいない自分の家だ。いろいろHなことにも興味深々だったH君は、親父の秘蔵のエロ本とかエロビデオをこっそり拝借して、むふふとリビングで楽しんで見ていたんだが、ハッと気がつくと、廊下からこっちを冷ややかに見つめるパジャマ姿の小町の視線……」

 

「うわー」

 

「やっぱりヒッキーの話だった……小町ちゃんも風邪引いて休んでたんだね……ヒッキーって前からそんなにHだったの?……あ」

 

「あ」「え?」「ん?」

 

「な、なんでもない、なんでもないし!あはは……はあ……」

 

「ま、まあ、だからな、人間関係一度壊れても、頑張りゃ直せるって話だ」

 

「あ、壊れちゃったんだ……」

 

 はあ、と悲しげにため息をつく先輩。もう、なにこの話?

 葉山先輩も気まずそうに笑ったままだし、なんか、私もいちいちこだわるのがバカバカしくなってきた。

 

「うーーー、じゃあもういいです。ドーナッツいただきますからね!!いっただきまー……」

 

「はちえもーん!助けて欲しいでござる~~」

 

「なんだよ、ざいもくざん、いきなり入ってくんじゃねーよ」

 

 ガチャアッ!って音がしたと思ったら、玄関の方から飛び込んでくる指ぬきグローブのおデブさん。たしか、ざい、ざい、材木屋さん?

 飛び込んでいきなり先輩に抱きついてるし。

 

「暑い!うざい!臭い!だー、離れろ材木座、うっとおしい~」

 

「わ、我と貴様は共に戦った、言わば戦友。た、頼む、今こそあの暁の盟約に従い、主君である我を守り助けておじゃれ。頼むー我をかくまって……」

 

「って、はいはい。一緒に戦ってもいねえし、盟約もねえから、さっさと帰れ。はい、お帰りはあちらな」

 

「そんな殺生なー。は、八幡、我は追われておるのだ。頼む、一生のお願い!一生の~」

 

「お前なあ……たまたまこの前釧路で会ったから、住所教えてやったけど、なにも毎日のように来ることねえだろ。ここは、お前の別荘じゃねえっつーの。だいたい何から逃げてんだよ。お前そこそこ売れっ子作家になったんだから、もっとちゃんと仕事しろって……あん?」

 

 材木屋さんにしがみつかれた先輩が、玄関の方を見たとたんに息を飲んだ。

 私もつられて、そっちを見ると、

 

「あの~、ここに材木座先生はきてませんか?」

 

「ひぃっ!!」

 

 悲鳴をあげる材木さんを見つめるのは、小柄で髪を伸ばしたパンツルックの……絶世の美少女!?え?

 

「あー、いたー!もう、材木座君、締め切り目の前なんだから早く書いてよ」

 

「嫌でござる、無理でござる。インスピレーションが枯渇したでござる~」

 

「もう……そんなこと言ってたら、連載作家なんてできないよ?ほら、一緒に考えてあげるから、早く帰ろう。みなさん、どうもお騒がせしました。すぐに引き上げますので……え?」

 

 その美人は、私たちを見回して目を見開いていた。

 そして、わなわな震えながら、声を出した。

 

「は、はちまん!?」

 

「「「「ふぁっ!!」」」」

 

 先輩も含めた全員がハモって声をあげる。

 え?先輩、こんな可愛い人とも知り合いなの?というか、先輩のまわり可愛い人多すぎですよ……う~……

 それから、その娘は、

 

「由比ヶ浜さん」

 

「え?」

 

「葉山くん」

 

「うん?」

 

「それから。一色さんだよね?」

 

「へ?」

 

 うそ……私まで~……

 って、なんで、知ってるの?私、こんな娘知らないです……あれ?でも、どっかでみたような……

 

 みんな一様にその髪の長い娘をみつめながら、そして、しばらくして、ハッとなった様子で、口を開いた。

 わたしも、唐突に、あることを思い付いたんですけど、まさかそんなわけは……って、頭を振った。

 そんななか、ブルブル震えていた材木座先生の声。

 

「もう許してくださいませ……戸塚殿」

「戸塚!?」「彩ちゃん!?」「戸塚君!?」「戸塚先輩!?」

 

 

 

「あ、うん。みんな久しぶり。えへ」

 

 

 

 首をかしげて、その長い髪を揺らすのは、間違いなく天使でした。

 

 あれ?北の国って、こんなお話でしたっけ?うーん……

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