マクロスΔで生存戦略   作:雑食

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短めなのでもう1話今日は投稿。


Turn 1 Poison

「おめでとうございます!可愛らしい女の子ですよ!」

 

暗いところから急に明るい所へと出たかと思えば次は大きな手で抱えられて抱き締められた。慌てて手足をバタバタさせてもがこうとすると決して痛くはないが更に強く抱きしめられる。

 

ふと手足に不自由さを感じて見てみると…紅葉のような可愛らしいちんまい手とちんまい足がちょこん。

 

そしておんぎゃあおんぎゃあと元気な泣き声がすぐ近くで聞こえる。

 

あれ、手足短くなった?

あれ、今泣いてるのもしかして私?

 

今世の母に抱かれた安心感と暖かさに意識を落としながらも結論を出す。

 

 

あ、これ転生ってやつかァ…。

 

 

 

 

 

 

オハイオ州!

 

間違った。おはよう!

 

気付いたらいつの間にか転生してた私もなんだかんだとすくすく育ってもう7年。元気に母と2人で今日を慎ましやかに生きています。

 

父はいない。母を捨てた父の見る目は本当に無いと思うし、母は子供を身ごもった妻を捨てるような父と別れて良かったねと言いたい。

 

鏡を見るとそこに映っているのは母親譲りの麦穂の様な肩口で切りそろえられた金髪に、母曰く、父譲りの深みのある青い目の子。今世の私はなかなか恵まれた容姿を得たらしい。

 

そして前世と大きく違う点はこれ。

 

髪の先についたハートの形の感覚器官。

 

 

 

『ルン』

 

 

感情に合わせて淡く光を放つそれを持つことは当初私に大きなショックを与えた。まずはこの世界が前世に友人に勧められて観た『マクロスΔ』の世界であること、それから自身が30年程しか生きられない事を意味していたのだから。

 

もう6年以上経ったから、諦めもしたし、短い人生をどうにかこのSF(少し不思議な)世界で出来るだけ充実させようとは思ってる。今思えばあの時は荒れたよなあ。赤ちゃんには勿体無いくらいの知性をしばらく放棄する程度には。

 

 

「…おはよう、エリシャ。」

 

「おはよう、お母さん。」

 

朝の挨拶を交わすと寝ぼけまなこの母は目をこすりながら木の椅子をひいて座った。目玉焼きを作りながらちらりと母の目のクマを見遣る。

 

「…お母さん…いつも朝に弱いのは分かるけど流石にココ最近は見てられないよ。ちゃんと寝てないでしょ。ルンも段々弱ってるし体に良くないよ。」

 

「そんなこと…無いわよ…娘に心配されるほどまだ耄碌してないつもりなんだけど……」

 

「毎朝誰が朝食用意してると思ってるんだこの人。ああ!もう、言ったそばから寝かけてるでしょ!」

 

作り終えたプレートを机に急いで置いて頭を机に打ちそうな母を支える。無理矢理右手にフォークを持たせるとやっと動き出した。

 

ふむふむ、今日もそこそこのでき…

 

「む。」

 

「あら。また?」

 

母は私の食べてる野菜の皿を一瞥すると横にどけた。

 

「入ってるね。ここに越してきてから初めてかな。」

 

空いている皿に野菜を吐き出すと、口のなかに仄かに香っていた毒の香りがマシになる。この特徴的なピリリ感は珍しい草を使ったな。

 

「毒に本当に強いわよね。貴女は。」

 

「そう育てたのはお母さんだからね、感謝してる。それにしても、もうここら辺も潮時かな。あそこの八百屋のおばちゃんに限っては無いとは思ってたけど…。」

 

そう、おかしな事に何故か度々毒を盛られる。

その度に引越してるはずなのに必ず数ヶ月住むと暗殺されかけるのだ。当然、私には殺されるような心当たりなど無い。

 

犯人としてまず母は有り得ない。小さな頃からこれを予見して毒には慣れさせられたからそれはない。だからこそ理由を知っているのだろうと問い詰めたこともあるが頑として口を割らない。

 

暗殺の事もそうだが、あと3年位で戦争があるだろうしさっさと国外に逃げてしまいたいのだが。

 

「やっぱりこの国出ようよ。もう逃げる所も少なくなって来たし、お母さんも体強くないでしょ?ね?外の星ならもっと…」

 

「それだけは駄目よ。さ、この話は終わり。お母さんちょっとお仕事の続きして来るわ。」

 

皿をひとまとめにして流しへ置くと母は背中を向けてリビングを出ていってしまった。

 

毎回こうだ。

 

所作に滲み出る所作の良さとかからみるにワケありなのだろうが、これ以上踏み込むなと線引きされては深く聞けない。

 

先が思いやられるなあ、と嘆息するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母が死んだ。こっち風に言えば、母の風が止まった。

お医者さんは過労死だと言っていた。最初は毒かと焦ったが妙に勘のいい母に限ってそんな事は無かった。

事実、亡くなる時まで母の白くなってしまった右手は内職するためのペンが握られていた。

 

体が強くないのに私をきちんとした学校に行かせようと女手1つで無理をしたのが祟ったのだろう。いつ殺されるか分からない状況というのも少なからず彼女を圧迫していた筈だ。

 

村長さんの計らいで母の好きだった丘の上に簡素な墓を作って貰った。

 

母の好きだった曲をずっと喉が枯れるまで歌った。この世界で歌は大きな意味を持つ。弔いにはぴったりだった。

 

 

 

日が落ちたころにやっと歌い疲れて座り込んだ。

 

夜風に当たりながらこれかどうしようかと考えふける。家計はそもそもの貧しさと度重なる引越しでいつも火の車だった。いくら13で結婚するのが普通と言えど、こんな小さな子供は流石に誰も雇ってくれない。頼れる人もいない。

 

いっそのこと、国外に逃げようか。

 

ぼんやりとしていると、誰かが来る気配がした。

 

「…誰?」

 

少年は墓の前にそっと花束を置くと、表情を変えずに名乗った。

 

 

「キース。キース・エアロ・ウィンダミア。ここに眠る女性の息子で、お前の兄だ。」

 

 

 

 

時が、止まる。

 

 

「お前を、迎えに来た。」

 

私は、国に、捕まった。




用語集
※本編にはあまり関係ない

『エリシャ』
1話から突然逃げられなくなった7歳女児。ただしウィンダミアボディなので既に地球人で10歳程度の容姿。

『母』
働き者だけど朝が弱すぎる。エリシャが料理できるようになったのは母が朝に働かなさすぎるせい。

『暗殺者』
気配だけは感じる人。ちょいちょい母娘に毒を盛るけど最近は諦めて別の方法を模索しようとした矢先に母親が過労死した。仕事が全く出来なかったので後日処分されるらしい。
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