マクロスΔで生存戦略   作:雑食

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主人公はもちろん前世の事を正確に覚えているわけがありません。従ってマクロスΔも映画まで見たけどちょいちょい覚えてない…つまり?


Turn 2 Friend

突然現れた兄と名乗る少年の差し出した手を私は迷うことなく掴んだ。

 

今までどこにいたのか。何故迎えに来なかったのだなど怒る訳がない。ルンから母の死に対しての悲しみと悔しさが痛いほど伝わって来るからだ。

 

ああ、この人は大丈夫な人だ。

 

黒い機体の飛行機に乗せられ着いたのは、遠くからしか見たことのなかった王宮殿。黒く冷たくそびえ立つそれをボーッと眺めていると先を急がせられた。

 

見張りの騎士達はキースを見て道を開けるが、その後から付いてくる私に一瞬固まって驚く顔になるのがなかなか面白い。

 

2人とも並んで歩いたら血の繋がった者同士というのは一目瞭然だ。それだけ私達は似ていた。

 

 

ふと前を歩くキースの足が大きな扉の前で止まったので同じように止まる。

 

「陛下に緊急の要件だ。通して欲しい。」

 

扉の横の騎士は頷き扉を開け中の…恐らく陛下に確認を取りに行った。

 

ちらりとキースの顔を見た。キースはこちらを見ず扉の方をじっと視線をやったまま口を開いた。

 

「一つだけ忠告する。」

 

「何ですか。」

 

「陛下を…父親と呼ぶな。陛下と、そうお呼びしろ。」

 

苦しそうな顔をするキースに複雑な気持ちで頷くしかなかった。拗れていますね、の一言をなんとか飲み込む。

 

 

扉の奥には大きなベッドがあって、そこには何度かテレビで見たこの国の王が、近くにいた護衛の騎士を下がらせた。

 

「何の用だ。キース。」

 

頭を抑えられて一緒に跪かされる。好奇心がわいてちょっとだけ顔をあげようとするともっと強く抑えられた。

 

「今朝、母の風が途絶えました。ひとつの忘れ形見を残して。」

 

「そうか。」

 

ブチッと頭の中で何かが切れた。立ち上がってその声の主を真正面から睨んだ。忌まわしいことに目は確かに、そっくりな色をしていた。

 

「そうか、だけですか?何か仰ることはないんですか…?」

 

「おい、無礼だぞ。」

 

「いいえ、やめません。私達はこれまで何回も殺されそうになってたっていうのに、母は1回だって貴方に恨み言は言いませんでした!私がこの国を出ようと言ってもそれだけは駄目だと言い続けましたし、何かをずっと信じて生きていたんです!それに対して、あなたはその一言で終わらして」

 

 

腹に鈍痛が走った。一瞬肺から空気が押し出され息が詰まる。

 

床に倒れてからキースに殴られたことを認識した。

 

 

「ぐうぅ…」

 

「陛下の御前だぞ!弁えろ!」

 

頭がすっと冷えこのわからず屋にどうにかして反撃しようかと注視して、やめた。キースの拳も震えていた。

 

沈黙が流れる。

 

「よい。やめよ。」

 

キースが無言で元の位置に戻って跪く。

 

「そなた、名前は何と言う。」

 

「……エリシャと言います。」

 

「そなたは母とよく似ているな。特に、言いたいことをはっきりと述べる所がそっくりだ。そんな彼女の事を余は確かに愛していた。」

 

「今更…!」

 

「そうだな。今更だ。結局私は彼女ではなく国を選んだ。一国の王としてただの召使いを妃としては認められなかったからな。」

 

なにも、言えなくなった。

 

ズルい。

国を捨てて母を選んで欲しかったなどと言えない。この国は母の誇りでもあったのだからそんなこと、言えるわけがない。

 

「先程の無礼の罰として、今後は王家の名前を背負うがいい。今日からそなたはエリシャ・エアロ・ウィンダミアと名乗れ。」

 

そこから先はあまり覚えていない。

気づいた時には、与えられた狭くも広くもない部屋で枕に顔を押し付けて泣いていた。

 

 

 

 

 

 

「おはようございます私!今日からもううじうじするのはやめよう!はい!」

 

母はこういう切り替えは大切だと…あ、やべ、涙が出てきた。やめだやめだ。

 

とりあえずこういう時は体を動かすに限る。隣のキースの部屋に突撃しに行こう。あの無愛想な感じのキースと言えど、まだ9そこらなんだから新しく出来た妹の可愛さに悶え苦しむといいぞ!

 

よーし、出発だ!

 

「おはようございます。」

 

いままさに出ようとした扉の向こうから聞いたことのない声がした。どうぞ、と声をかけるとそこに居たのは20歳位の城のお手伝いさんだった。私の感覚だとまだ若いと思うのだけどウィンダミアでは多分そこそこベテランな方だろう。

 

そんなベテランさんがどうしてここへ。

 

「えっと…何の用でしょうか。」

 

「私、本日からエリシャ様付きになりました、使用人のソフィアと申します。よろしくお願いします。」

 

「よ、よろしくお願いします。」

 

待って、専属のメイドさんがついちゃうの?こんな可愛い人にお世話やらせるなんてそんな贅沢が許されていいのか。百歩譲っていいとして、同じようにキースも専属のメイドさんがいるということになるのではないか。

 

法廷の判決を。

ギルティです裁判長。

 

「それではまず今後の御予定を申し上げます。エリシャ様はこのあと御朝食を召し上がってもらった後、午前中みっちり淑女の為のマナー講座を受けていただきます。御茶の飲み方から、テーブルマナー、挨拶の仕方などやることは沢山御座いますので張り切って御参加下さい。そして、御昼食を挟んで午後はダンスレッスンが入っております。」

 

「ちょっとストップ。」

 

「ええ、何でしょう。」

 

「勉強しないの?ほら、例えば数学とか歴史とかそういうのは?」

 

「あれは男の学ぶ物です。エリシャ様の教育はお前に任せる、とお兄様からの御命令ですので従っていただきますよ。」

 

思わず白目を剥きかけた。

技術力のあるウィンダミアの中心の教育を受けられるのではと期待していたのにこれだ。

 

朝食を食べ終わった私は支度は自分でやると渋るソフィアを部屋から追い出して、窓から逃げ出した。キースの部屋からこっそり持ってきた服を着て。

 

 

 

 

 

 

城の探索を続けているとなんだか厳つい鎧のおじさんが向こうからどしどしと音を立ててやってきた。

 

「おい、お前!」

 

後ろの誰かに声をかけているのだろうか、と後ろを振り向くが誰もいなかった。自分に指を指して首を傾げる。

 

「お前の事だ。こんな所でウロウロ何をやっているんだ。後少しで授業が始まる。将来騎士になりたいと思うなら遅刻は許されないぞ。」

 

「すみません、今日から参加するのでまだ分からなくて…。」

 

「場所位事前に把握しておけよ。全く、今日だけだ。案内しよう。」

 

「ありがとうございます。」

 

心の中でガッツポーズをする。これで男と同じ授業を受けられる。万歳三唱だ。淑女教育?知りませんね。

 

しばらく歩くと教室と思わしき場所へ着く。私が空いてる席に座ると厳ついおじさんは黒板の方へと行った。あ、教官だったのか。

 

一限は数学だった。いや、まだ算数と呼べるレベルだが6歳から8歳の生徒に対して教えるには高度だ。流石は国民全体が早熟の国である。

 

「なあなあ。お前、見ない顔だな。名前なんだよ。」

 

隣の席のいかにもやんちゃっ子君が話しかけてきた。あれ。どっかで見たことあるなこいつ。

 

「人に聞く前に自分の名を名乗ったらどうなの?」

 

「ボーグ。ボーグ・コンファールト。」

 

「!!ぶふっゴホッゲホッゲホッ」

 

思わず咳き込むと教官に当てられた。解せぬ。いや、解けるけども。簡単に解けるけども。

 

黒板から帰ってきたらすごい心配された。

 

「大丈夫か?」

 

「全然、大丈夫。あ、名前だったか。オレの名前は…エリック。エリック・バートン。よろしくねボーグ。」

 

「ああ、よろしくなエリック。」

 

今度は2人まとめて煩いと問題を当てられた。可哀想なボーグ。わからない問題に当たったらしくウンウン唸ってたから慰めつつちょっとだけ教えてあげた。

 

それがプライドに触ったらしい。

 

「お前に教えて貰わなくても出来たんだからな!次の実践訓練では俺がお前を驚かせてやるからな!」

 

子供らしくて私は嫌いじゃないよ。

 

お次は実践…つまりは軍人の卵らしい訓練の時間だった。ここでまずいのが、この授業、上級生のクラスと合同でやるそうだ。

 

まずい。あの鬼いさんに脱走がバレてしまう。

 

いや、これは千載一遇のチャンスでもある。今回の訓練はどうやら組手、格闘がメインで、上級生と下級生が戦うことで下級生の指導をしていくものだ。

 

つまり、昨日殴られた仕返しをすることも出来る。

 

まずは下級生同士で2人組になって組手だ。

 

「やっつけてやる、エリック。」

 

「出来るもんならやってみな、ボーグ。」

 

ボーグはリベンジへのやる気、私もある意味リベンジへのやる気で満ちている。こちとら前世の柔道思い出してちょくちょく暗殺マンを撃退してきた経験があるんだぞ…簡単にやられてたまるか!

 

 

「ハァハァ…クソ…。やるなお前。」

 

「いや、オレもヒヤッとした瞬間が何度もあったぞ。やるなボーグ。…だけどオレの勝ちだもんねー!」

 

「キーーィィイ!」

 

何この子煽るの楽しい…。

 

震えていると笛が鳴った。ここからは上級生と下級生の試合だそうだ。下級生が上級生にお願いしに行くのが習わしだそうで、ボーグとはここでお別れだ。

 

悔しがるボーグにヒラヒラと手を振ってキースを探す。あれ、もしかしなくてもあの人だかり?

 

「キース先輩!ぜひ僕とやって下さい!」

 

「おい、俺が先に予約してたんだぞ!割り込むな!」

 

「予約とかそんなの無いだろ!キース先輩!僕を選んで下さい!」

 

「先輩!」

 

嘘だろ。人気すぎるだろ。

くうぅ…今から行っても無理だろうか。

 

とんとん、と肩を叩かれる。

 

「ねえ、君。」

 

振り向いてひぇっと声が出そうになる。

いくら7年前の記憶とはいえコイツは覚えている。鬼畜腹黒眼鏡宰相、ロイド・ブレーム。

 

「1人だったら私と試合、やりませんか?」

 

「め、眼鏡…」

 

「?」

 

「眼鏡がお似合いですね!」

 

そうでしょう、と満面の笑顔をたたえた腹黒眼鏡に私は連行されたのだった。




用語集

『エリシャ』
涙腺ゆるめ

『エリック・バートン』
適当に思いつきで作った偽名

『ボーグ君』
いじりがいがある。猫みたいだなと主人公は思ってる。
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