一つの質問をここに提示しよう。
『幼馴染は必ず恋愛感情が存在するか否か』
この質問の答えは至ってシンプル。
『ケースバイケースである』
当然だ。世の中の全幼馴染が結びつくとは限らない。だから、この答えが的確であろう。
では、彼と彼女の場合はどうなのか。答えは……今は不明だ。
これは、彼と彼女の物語……真実の愛を見つける(?)物語……。
四月。春は出会いと別れの季節とも言うらしい。
オレたちがこの文月学園に入学してから二度目の春が訪れた。去年、三年生だった先輩は卒業をし、今年は下級生が入学してくる。そんな時期だ。
桜舞い散る校門へと続く坂道。舞い散る花びらの美しさに心を惹かれながらオレは坂道を一歩一歩踏みしめて――
「ねぇ、タカ。回想シーンのところ悪いのですけど」
――いたところで隣を歩く彼女に遮られた。
「……何だユリ。せっかく人がこの景色の美しさに、心を惹かれていたところなのに……」
「それは、どっちでもいいですよ。そんなことより、あれを見てください」
そう言ってユリが指さす方を見てみる。校門?いや、彼女が指しているのは違う。あれは……
「おはよう。黒栁に神白」
「おはようございます。西村先生」
「……はぁ。何故こんな美しい景色に、アンタみたいなむさ苦しいおっさんが立ってるんですか?そこはせめて、この景色に合う女性が立つべきでしょうが。ということで、チェンジを所望します」
「ふむふむ。それって、私みたいな?」
「お前は論外だ」
「ふーん。そんなこと言っちゃうのですかー」
そう言って頬を思い切り引っ張ってくるユリ。痛いからやめてほしい。
「……神白。何故お前は挨拶すらまともにできないんだ?」
「……おはようございます。鉄人」
「……お前。堂々と鉄人と言ったな?」
「はい、言いました」
この目の前に立つむさ苦しい男。この男はこの文月学園の生活指導部の鬼である。本名、西村宗一であだ名は鉄人である。余談だが、この男はオレとユリの去年の担任でもある。
「……まぁいい。二人とも受け取れ」
そう言ってオレとユリに差し出してくる茶封筒。なるほど、ここに自分の所属するクラスの書かれた紙が入っているのか。
「本当に面倒な方法を取っていますね」
「仕方ないだろう。ウチは世界的にも注目されている最先端の試験システムを導入した試験校だからな。変わったやり方だろうが仕方ない」
「あーそうですか」
そう言って封筒の口を適当に破く。隣でわざわざハサミをカバンから取り出そうとしているユリとは大違いだ。というかお前、学校にハサミを持ってきていたんだな。
そして、折り畳まれた紙にはこう書かれていた。
『
この学園ではクラスをAからFの六つに分けている。そして、クラス分けのやり方だが、春休みに行われる振り分け試験。そこでの点数順にAクラス、Bクラス……と一クラス五十人ずつ割り振られる。まぁ、二年生は一学年三百人だからな。三百人って今思うと多い気がするな。
「全く……最後の教科で保健室に行って途中退席しなければ上のクラスに上がれただろうに……」
「まさか、タカ。本当にやったのですか……?」
「ふぁ~あ。まぁ、どうせアイツらがFクラスに来るからな。楽しんで行こうぜ~」
「やれやれ、タカはバカですね」
「そんなことを言うならユリ。お前のも開けてみたら?」
「はぁ……。まぁ、タカより上のクラスというのは分かっていますが……ってあれ?」
ハサミを使い、ご丁寧に開けた茶封筒。その中に折り畳まれていた紙には……
『
「……西村先生。同姓同名の別の人のを間違って開けてしまったようです。私のをもらえますか?」
「……この学校にお前の同姓同名の別人はいない」
「……はい?」
現実を受け入れられないユリ。やれやれ、これだからオレの幼馴染は……
「神白。黒栁を連れて行ってくれ」
「へーい。ほら、行くぞ」
そう言って首根っこを掴み、ズルズルと引きずっていく。
「ま、待ってください先生!再審を!再審を要求します!」
「はいはい。再審しても結果は変わらないからな」
「そ、そんなことないはずです!はっ!もしや、これは誰かの陰謀なのでは……」
「さぁ、楽しんでいこうぜー」
そのまま下駄箱で靴を履き替え、自分の教室に向かって歩いていく。
さぁ、どんな生活が待っているのだろうか。実に楽しみだ。