「では、次の方どうぞ」
「私が出ます。科目は物理でお願いします」
高橋先生が二回戦のコールをすると、Aクラスから佐藤美穂が出る。え?オレの処刑?既に処刑に来た奴はAクラスの床にキスしているが何か。
Fクラスからは……
「よし。頼んだぞ、明久」
「え!?僕!?」
明久出陣。
「大丈夫だ。俺はお前を信じている」
「安心しろ。オレも信じている」
自信たっぷりにオレたちは明久に告げる。
「ふぅ……。やれやれ、僕に本気を出せってこと?」
「ああ。もう皆に隠さなくても良いだろ」
「この場にいる全員に、お前の本気を見せてやれ」
『おい、吉井って実は凄い奴なのか?』
『いや、そんな話は聞いた事は無いが』
『いつものジョークだろ?』
Fクラスの救護班からは信じていないような感じで言っている。ちなみに処刑犯は始末したが救護班は始末していない。だって、歯向かったやつしか倒してないもん。
「吉井君、でしたか?あなた、まさか……」
対戦相手の佐藤は明久を見て戦く。
「あれ、気付いた?ご名答。今までの僕は全然本気なんて出しちゃいない」
袖をまくって手首を振ってる明久。そんな動き召喚獣同士の戦いには全く関係ないが。
「それじゃ、あなたは……」
「そうさ。君の想像通りだよ。今まで隠してきたけれど、実は僕――」
明久が大きく息を吸って、この場にいる全員に告げる。
「―――左利きなんだ」
『Fクラス 吉井明久
物理 62点
VS
Aクラス 佐藤美穂
物理 389点』
明久の召喚獣は瞬殺されて敗北した。
「勝者、Aクラス」
高橋女史の淡々とした勝者宣言。先ほどとは大違いで冷静だ。
「このバカ!テストの点数に利き腕は関係無いでしょうが!」
「み、美波!フィードバックで痛んでいるのに、更に殴るのは勘弁して!」
まあ、明久の召喚獣の操作能力がオレより上だとしても、六倍以上の点数差があったら勝ち目もゼロに近いよね。
「よし。勝負はここからだ」
「そうだね。これでイーブンだし」
「ちょっと待った雄二に崇彰!アンタら僕を全然信頼して無かったでしょう!」
「信頼?何それ?食えんの?」
「信頼?負ける方に信頼してたよ」
「………本気を出した左腕でお前らを殴りたい!!」
まぁ、明久なら1%ぐらいの確率で勝てると思ったよ。というか、Aクラスに勝てる可能性があるのはオレと姫路の単騎としての力。ムッツリーニの保健体育と雄二の作戦しかないんだ。ここで明久は出ざる得なかったんだよなぁ。
「では、三人目の方どうぞ」
「…………(スック)」
三回戦のコールに血だらけのムッツリーニが立ち上がる。
ここで科目選択権が効いてくる。ムッツリーニの得意科目である保健体育。その単発勝負ならAクラスにも負けていない。
「じゃ、ボクが行こうかな」
Aクラスからは……誰かよく分からない人が出てくる。転校生か?
「一年の終わりに転入してきた工藤愛子です。よろしくね」
やっぱり。
「教科は何にしますか?」
工藤が自己紹介を終えると同時に高橋先生がムッツリーニに尋ねる。
「…………保健体育」
ムッツリーニの唯一にして最強の武器が選択される。
「土屋君だっけ?随分と保健体育が得意みたいだね?」
工藤が余裕な顔をしてムッツリーニに話しかける。うーん。そんな余裕でいいのかな?
「でも、ボクだってかなり得意なんだよ?……君と違って、実技で、ね♪」
ブシャァ
ムッツリーニの鼻から血が出てきた。
「そっちのキミ、吉井君だっけ?勉強苦手そうだし、保健体育で良かったらボクが教えてあげようか?勿論実技で」
今度は明久に誘いをかけて来た。
「フッ。望むところ――」
「アキには永遠にそんな機会なんて来ないから、保健体育の勉強なんて要らないのよ!」
「そうです!永遠に必要ありません!」
「…………………………」
「島田に姫路、明久が死ぬほど哀しそうな顔をしているんだが」
「その辺でやめてあげて」
今の彼を見ると凄く悲しくなってくる。
「つ、土屋君!?大丈夫ですか!?」
すると、高橋女史が血だらけで倒れるムッツリーニに声をかける。
「ムッツリーニ!?大丈夫か!」
慌ててオレ、雄二、明久の三人も駆け寄る。
「…………すまない」
「そんな!ムッツリーニ!」
「畜生!さっきまでの出血に加え、今ので限界が来たのかよ!」
「…………先に……逝く(カクッ)」
「ムッツリーニィーー!」
「秀吉!輸血パックを!大至急だ!」
「分かったのじゃ!」
「明久!ムッツリーニを安全なところまで運べ!」
「わ、分かった!」
明久がムッツリーニを運び、急ぎ秀吉が輸血の準備に取り掛かる。
「どうする雄二。科目が指定されちまってる」
「ああ、姫路をここで出すわけにもいかないしな……」
そう。相手の実力が未知数な以上、ここで無闇に姫路を出したくない。
「どうする?降参するか?」
「いや、今後のためにも戦力は把握したい。誰かぶつけた方がいい」
確かに、それもそうか。
「なら、ユリを出すか」
「そうだな」
「高橋女史。ムッツリーニの代わりにユリを出していいですか?」
「ええ。異例の事態ですので」
「黒栁!代理で行ってこい」
「分かりました」
オレたちが下がり、代わりにユリが出る。
「思い切り行ってこい」
「分かってます」
ユリにそう告げた後、下がるオレと雄二。隣ではムッツリーニの輸血が開始されていた。
「へぇーキミはさっきの」
「黒栁由梨乃です。よろしくお願いします工藤さん」
「黒栁さんかぁ。見た目は清楚系なのに中々のこと言ってたね」
「中々のこと?」
自覚がないのかあのバカは……。
「別にタカには普通ですよ?」
平然と言ってのけた。おーい。工藤がちょっと固まったぞー
「キミたちは付き合ってるの?」
「いいえ?ただの幼馴染です」
うんうん。激しく同意しよう。
「あれ?そうなの?」
「はい。まぁ、私のファーストキスもあげた普通の関係ですよ」
一つ疑問。普通の幼馴染ってキスをするものなのか?いや、普通というには少し、仲がいいと思う。
「へぇーちなみに、その先の事は?まぁ、神白君だったかな?彼、肉食系に見えるけど実は草食系男子だと思うからその先の事なんてしてないと思うけど――」
「え?(ピーー)の事ですよね。もちろん。したに決まってるじゃないですか」
何故か胸を張って言うユリ。
驚愕を隠しきれないAクラスの面々。
鼻からの出血が増えるムッツリーニ。
武器を構え、処刑の準備を始めるFクラス救護班。
「アハハ。ということは、黒栁さんって処女じゃないの?」
「そりゃタカと性行為をしましたからね。当たり前です」
コンコン
『これより、異端審問会を始める。会長に代わり今回は横溝が会を進める。罪人神白崇彰――』
「ちなみに、どっちから?」
「私ですね。タカにしましょと言って返答を待たずに。タカも童貞をその時卒業しましたからね。幼馴染ですから卒業するのも一緒です」
「実はこっちが肉食系か……」
「はい?」
実は両方とも肉食系ですが。何か?
『――判決。とっとと死刑!』
『『『異議なしっ!』』』
襲いかかるFクラス。先ほど沈めたやつらも復活し、一斉に武器で攻撃を始める。
「へ、へぇー。そうなんだー」
顔を逸らして言う工藤。こいつあれか。性行為の実践豊富に見えるが実は未経験っていうタイプか。見栄を張るのは良くないよ。工藤が話してる相手はただのバカだから。
「コホン。試合を開始して下さい」
「はーい。
「
『Fクラス 黒栁由梨乃
保健体育 63点
VS
Aクラス 工藤愛子
保健体育 446点 』
雷光を纏った斧で一閃。ユリの召喚獣は一撃で戦死した。
「勝者、Aクラス」
Aクラス戦第二回戦。
Aクラス、佐藤美穂VSFクラス、吉井明久。
勝者、Aクラス、佐藤美穂。
Aクラス戦第三回戦。
Aクラス、工藤愛子VSFクラス、黒栁由梨乃。
勝者、Aクラス、工藤愛子。
Aクラス戦場外戦。
Fクラス、神白崇彰VSFFF団。
勝者、Fクラス、神白崇彰。
Fクラスはこれで一勝二敗。ふむ。Fクラスには後が無くなったな。