恋愛感情ゼロの幼馴染と召喚獣   作:黒ハム

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試験召喚戦争編
Fクラスと書いて物置きと読む


バカテスト 化学

 

 問 以下の問いに答えなさい。

『調理の為に火にかける鍋を制作する際、重量が軽いのでマグネシウムを材料に選んだのだが、調理を始めると問題が発生した。このときの問題とマグネシウムの代わりに用いるべき合金の例を一つあげなさい』

 

 

 姫路瑞希の答え

『問題点……マグネシウムは炎にかけると、激しく酸素と反応する為危険であるという点。

合金の例……ジュラルミン』

 

 教師のコメント

 正解です。合金なので『鉄』ではダメと言うひっかけ問題なのですが、姫路さんは引っかかりませんでしたね。

 

 

 神白崇彰の答え

『問題点……知識のないバカに鍋を作らせた点。

合金の例……ジュラルミン(ユリが凄く強い合金とか書いても無視して下さい)』

 

 教師のコメント

 製作者に対する問題点ではなく、『マグネシウム』を用いたことによる問題点を書いてください。後、()の内容は流石にあり得ないと思いますが……

 

 

 黒栁由梨乃の答え

『問題点……マグネシウムの鍋が溶けちゃったこと。

合金の例……凄く強い合金(←熱に凄く強い!)』

 

 教師のコメント

 マグネシウムは融点が600度以上ですから、調理中には溶けるより別の問題が発生しますね。後、神白君には、敬服しました……。

 

 

 土屋康太の答え

『問題点……ガス代を払ってなかった事』

 

 教師のコメント

 そこは問題じゃありません。

 

 

 吉井明久の答え

『合金の例……未来合金(←すごく強い)』

 

 教師のコメント

 すごく強いと言われても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユリを引きずって三階。二年F組と書かれたプレートのある教室の前にオレたちは立っていた。

 

「なぁ、ユリ。ここは物置きじゃないのか?」

「奇遇ですねタカ。私もここは教室ではないと思いますよ」

 

 ふむ。これは、見かけによらず中は綺麗でしたってオチかな。そうだな。そうに違いない。

 そう思い扉を開けるとそこには……!

 

 

 かび臭い教室。

 

 薄く汚れた黒板。

 

 ひび割れた窓。

 

 朽ち果てた畳。

 

 今にも崩れそうな教卓などなど、挙げたらキリがない。そして、

 

 

「崇彰に黒栁か。まぁ、予想通りの面子か」

 

 教壇(?)に立つ赤ゴリラ。やれやれ、動物園の職員は何をやってるんだ?こんなゴリラを野放しにしておくなんて。

 

「おはようございます。坂本さん」

「うーっす、雄二」

「おはよう二人とも」

 

 にしてもパッとしないなぁ……

 

「そういや雄二。お前がこのクラスの代表か?」

「そうだな」

「凄いですね」

「まぁそうでもねぇよ。でも、これでお前らを含めた全員が俺の兵隊だな」

 

 この男が指揮官か……まぁいいか。

 

「んじゃ、オレは寝る。席は?」

「ああ、自由席だ」

「……あっそ」

 

 というか、Fクラスというのは席すら決まってないのかよ。

 そう思いながらオレは横になり、寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、黒栁。一ついいか」

「何かな坂本さん」

「……お前ら、それで付き合ってないんだよな?」

 

 坂本さんがおかしな質問を私にぶつけてきます。

 

「当然じゃないですか。私がタカと付き合うなんてありえませんよ」

 

 全く……何故みんな揃いもそろってそういう質問ばかりするのでしょうか。不思議で仕方がないですね。

 

「その割には膝枕をして耳かきまで……お前ら夫婦かよ」

「いえ、幼馴染です。幼馴染なら、当然でしょう」

「……なわけあるかっての」

「それにしても耳かきのしがいがあまりないですね」

 

 そう言えば一昨日の夜にしてあげたばかりでした。それは綺麗なはずですね。

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 

 気付けばチャイムがなりました。ということは、朝のHRの時間ですね。その割には担任の先生も来てないですし、席が二つ分空いているので、二名程遅れている人もいるみたいです。先生の代わりに坂本さんが教壇の上に立ってクラスの人たちを見下ろしています。彼は何を考えているのでしょうか。

 

 

 ガラッ

 

 

「すいません、ちょっと遅れちゃいましたっ♪」

「早く座れ、このウジ虫野郎」

 

 入って来た男子生徒を罵倒する坂本さん。

 

「聞こえないのか?あぁ?」

 

 はぁ。何故こんなおバカさんばかりなのでしょう。タカの所為ではぐらかされましたが、私は自分がFクラス所属なのが納得いきません。十問に一問は解けた自信がありますのに……。

 

「……雄二、何やってんの?」

「先生が遅れているらしいから、代わりに教壇に上がってみた」

「先生の代わりって、雄二が?なんで?」

「一応このクラスの最高成績者だからな」

「え?それじゃ、雄二がこのクラスの代表なの?」

「ああ、そうだ」

 

 それにしても、座布団ぐらいはまともな奴が欲しかったですね。しみじみ思いますよ……そもそも今の時代で椅子ではなく、座布団支給の時点で疑問を感じますが。

 

「席に着いてもらえますか?HRを始めますので」

「はい、分かりました」

「うーっす」

 

 気付けば担任の先生が教壇の上に……よかった。西村先生のようなちょっと見た目が怖い先生じゃなくてよかったです。

 

「えー、おはようございます。二年F組担任の福原慎です。よろしくお願いします」

 

 先生は黒板に名前を書こうとしてやめました。どうやらチョークがないようです。

 

「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されていますか?不備があれば申し出て下さい」

 

 うーん……一年生の時から噂には聞いていましたけど、この設備は酷すぎですね。机と椅子すらなく、代わりに卓袱台と座布団ってあたり、酷さを感じます。

 

「せんせー、俺の座布団に綿がほとんど入ってないですー」

「あー、はい。我慢してください」

「先生、俺の卓袱台の足が折れています」

「木工用ボンドが支給されていますので、後で自分で直してください」

「窓が割れていて風が寒いんですけど」

「わかりました。後でビニール袋とセロハンテープの支給を申請しておきましょう」

 

 ……不備を申し出ても返されちゃいますね。ふむ……私のような美少女が申し出れば通るのではないのでしょうか?

 

「……むにゃ……それはない……」

 

 私の膝の上に頭を乗せている男が何か寝言で言いましたね。思い切り頬を抓って差し上げます。寝言だからって何でも言って良いわけではありませんよ?

 

「では、自己紹介でも始めましょうか」

 

 そう言って指差された男子生徒はその場で立ち上がり、自己紹介をする。

 

「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」

 

 あ、木下さんも居たんだ。独特の言葉遣いと男子の中でも小柄な体。入学当初は彼を女子と間違えていたのも仕方がないと思えてしまう。

 

「…………土屋康太」

 

 相変わらず土屋さんは口数が少ないなぁ。小柄だけど運動神経はある程度いいって、タカが言ってましたね。

 それはそうと、見渡す限り私以外の女子がいませんね。もしかして私って、このFクラスというむさ苦しい教室に咲く一輪の花って奴ですか?

 

「島田美波です。海外育ちで、日本語での会話は出来るけど読み書きが苦手です」

 

 おっと、これまた知り合いですね。半分予想通りと言いますか、彼女がいるという事はまぁ、想像通りですね。だって、ドイツ育ちで、まだ日本語にそこまで慣れておらず英語もイマイチだったんですからね。

 

「趣味は吉井明久を殴ることです☆」

 

 特定の相手に対し、恐ろしく危険な趣味を持っていますね。まぁ、私に被害はなさそうなのでいいですが。

 

「――コホン。えーっと、吉井明久です。気軽に『ダーリン』って呼んで下さいね♪」

 

『ダァァーーリィーーン!!』

 

 野太い声の大合唱ですね。私はもちろん叫んでいません。ただ、タカを起こさないようそっと、耳を手で塞いであげたくらいです。私って、もしかしなくともできる女ってやつですかね?

 

「――失礼。忘れて下さい。とにかくよろしくお願い致します」

 

 席に着く吉井さん。まぁ、彼も去年同じクラスだったわけですが……多くないですか?去年のクラスの人たち……何だか関わりが多かった人たちが集まっている……っと。気付けば私の番のようですね。

 

「私は黒栁由梨乃と言います。勉強はちょっと苦手ですが頑張っていきたいです」

 

 ……何故でしょう。先ほどまで興味なさそうに聞いていた人たちも、私の自己紹介は真面目に聞いてくれていた気がします。

 

「あ、この寝ているのは神白崇彰です。私の生まれながらの幼馴染ですね。皆さん。私たち共々お願い致しますね」

 

 このままでは、タカが自己紹介をスルーされてしまいますね。さりげなく気付ける私って偉いかもしれません。

 ちなみに、タカとは生まれながらの幼馴染と言っていますが、彼とは生まれた病院どころか病室も一緒で生まれた日も一緒です。さすがに、生まれた時間に数時間ほどのズレはありますが。一応、私の方が早く生まれたそうなので私の方がお姉さんですね。その後……というか、私たちが生まれる前から私の両親とタカの両親はある程度仲がよかったそうなので、私たち自身もずっと一緒に育ってきました。だから、タカのことならある程度分かります。どうですか、凄いですよね。

 

 

 ガラッ

 

 

 そんなことを考えていると教室の扉が開きます。

 

「あの、遅れて、すいま、せん……」

『え?』

 

 教室全体から疑問の声が上がります。入ってきたのは一人の少女。誰でしたっけ?彼女。

 

「丁度よかったです。今自己紹介しているところなので姫路さんもお願いします」

「は、はい!あの、姫路瑞希といいます。よろしくお願いします……」

 

 姫路さん……あぁ、彼女ですか。聞いたことありますね。でも、何でこのクラスのいるのでしょうか?

 

「はいっ!質問です!」

 

 男子生徒の一人が右手を高くあげる。

 

「な、なんですか?」

 

 ふむ。質問の内容か……スリーサイズでも聞くのでしょうか。でも、それはセクハラですよ?まぁ、私のスリーサイズはタカが完全に把握していると思いますが……。

 

「なんでここにいるんですか?」

 

 えーっと、私の記憶が正しければ、姫路瑞希さんは可憐な容姿は言うまでもなく人目を引きますが、何より成績が凄かったはずです。入学して最初のテストで学年二位を記録していて、その後も上位一桁以内に常に名を残すほどですね。タカも確か常に学年一桁を記録していましたね。おかしいです。何故一緒に育ったはずなのにここまで差が生まれてしまったのか。

 そっか、それなら疑問があっても不思議ではないですね。Aクラスにいると誰もが思っていたはずの彼女が最下層のFクラスにいますからね。タカは……あぁ、アレですね。ほんのちょっと不真面目な部分といいますか、ちょっと性格がアレなんでFクラスにいても不思議には思われないですね。やれやれ、頭脳で私に勝てていても性格面では彼に負ける気がしませんね。

 

「そ、その……振り分け試験中に高熱を出してしまいまして……」

 

 かわいそうに……途中退席で0点扱いだなんて……。まぁ、ワザと途中退席した男が私の膝の上で気持ちよさそうに寝ていますが。

 

『そう言えば、俺も熱(の問題)が出たせいでこのクラスに……』

『ああ、化学だろ?あれは難しかったな』

『俺は弟が事故に遭ったって聞いて心配で実力が出しきれなくてな』

『黙れ一人っ子』

『前の晩彼女が寝かせてくれなくて』

『今年一番の大嘘をありがとう』

 

 おっと、このクラスは想像以上にダメかもしれない。

 

「で、ではっ、一年間よろしくお願いしますっ!」

 

 彼女は数少ない女子だ。仲良くしたいなぁ……。

 その後も淡々と自己紹介は進んでいった。途中ちょっとうるさくしていた吉井さんや坂本さんを叱ろうとして、先生が教卓を叩いたところ一瞬で塵と化しました。……大丈夫かなぁ……色々と。

 

「坂本君、キミが自己紹介最後の一人です」

「了解」

 

 気付けば自己紹介も最後の一人である坂本さんの番まで回っていました。

 そして、ゆっくりと教壇に向かっていきます。その姿に吉井さんやタカといる時のようなふざけた雰囲気はない。そのまま、教壇に立って、こちらに振り向きます。

 

「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも、好きなように呼んでくれ」

 

 普段であれば、ここでふざけた発言をする者が居てもおかしくないです(例えばタカとか)。しかし、彼の姿を纏う雰囲気を感じ口を開く者は誰もいなかった……。

 

「さて、皆に一つ問いたい」

 

 私たちFクラスの代表さんは、ゆっくりと全員の目を見るように告げます。

 間の取り方が上手いせいでしょうか。全員の視線は坂本さんに誘導されました。

 みんなの様子を坂本さんは確認し、そのうえで、教室内の各所に視線を散らします。

 

 

 かび臭い教室。

 

 古く汚れた座布団。

 

 薄汚れた卓袱台。

 

 

 私も彼につられるようにしてそれらの備品を眺めます。

 

「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが――」

 

 一呼吸おいて、静かに告げます。

 

「――不満はないか?」

 

『大ありじゃぁっ!!』

 

 二年F組の魂の叫び。この叫びは耳を塞いであげたタカにも届いたでしょう。

 

「だろう?俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている」

『そうだそうだ!』

『いくら学費が安いからってあんまりだ!改善を要求する!』

『そもそもAクラスだって同じ学費だろ?』

 

 そうです。最低限の設備を要求します。

 

「みんなの意見はもっともだ。そこでこれは代表としての提案なのだが――」

 

 野性味満点の八重歯を私たちに見せて告げます。

 

「――FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」

 

 こうして、私たちの代表は戦争の引き金をひいたのでした。

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