開店してFクラスの店は予想以上の賑わいを見せていた。そんな中、オレとユリの一回戦の時間が迫る。
「ところで、タカ」
「なんだ?ユリ」
「一回戦の相手って……誰でしたっけ?」
会場に向かって歩いている中、まさかの発言に耳を疑うオレ。いや、まさかって程でもないか。
「心配すんな。着いたら分かる」
トーナメント表を見ると、雄二&明久ペアと姫路&島田ペアはDブロック。オレたちはCブロック。だから決勝戦まで当たらないってのは分かってる。はぁ、なるべく決勝まで駒を進め、そこでガチでやるふりをしながら負けるってのが理想か。
というか、特に一回戦から三回戦までは、一般公開無しでスケジュールもある程度詰めてるせいか……うっわ。凄いスピード。前の試合が終わったらすぐ次の試合って感じでどんどん進んでく。トーナメント表を見たが一回戦はパワーバランスの傾いた組み合わせが多い。だから、ハイペースで進むところもあるし、逆に拮抗するところもある。
そして、何の因果かは知らないが、オレたち二年Fクラスからの三組は初戦からBクラスが相手にいる。
「あ、由梨乃ちゃんに神白君」
「瑞希さんに美波さん。終わったのですか?」
「はい。無事勝ちましたよ」
「アンタたちも頑張りなさいよ」
「ま、善処する」
負けられない理由はある。だから負けない。
「じゃ、戻ってるわね」
教室に向かう姫路と島田。
「じゃあ、行くぞ」
「ふふん。私とタカが組んだんです。最強のペアですよ」
「最強ねぇ……」
ぶっちゃけ弱そう。意思疎通だけは完璧だが。
「ほう。お前たちが相手か」
「まぁ、俺たちが相手で運がなかったな」
相手は三年のBクラスペア。両方とも男だ。
「では召喚して下さい」
「「「「
一斉に召喚獣を召喚する。
「ああ、先輩方。今の台詞そのままそっくりお返ししますよ」
「「は?」」
現れた召喚獣。表示される点数。そこには……
『Fクラス 神白崇彰&黒栁由梨乃
数学 458点&49点
VS
Bクラス モブA&モブB
数学 178点&177点 』
軽くAクラス上位レベルの点数が表示された。
「おいおい、Fクラスでこんなに取れるなんて聞いてないぞ……」
「嘘だろ……この点数」
「ねぇ、タカ。もしかして、私って場違いですか?」
「気にすんな。そんなの見りゃ分かるだろ?」
「なっ!?ここは、私を慰める言葉を――」
「あ、お前一人で勝ったら、今夜の勉強はなしでいいぞ」
「――そんな言葉はいりません!私が欲しいのは勝利です!行きますよ先輩方!」
剣を構え、突撃するユリ。そして、
「うぅ……やられちゃいました……」
呆気なく戦死した。
「これで二対一だ。格の違いを見せてやるよ後輩!」
槍を構え、突き進む先輩。
「格の違いですか……見せられるといいですね」
そのまま銃を構えて発射。さすが先輩。一年長く操作してるだけあってこの程度は避ける。
「背中がお留守だ――」
「何かおっしゃいました?」
剣で切りかかってくるもう一人の先輩。その人の召喚獣の方を振り向かず、剣でガードし、
「先輩はお腹がお留守ですね」
回し蹴りをぶちかまし、飛んでく先輩の眉間に弾丸を当てる。これで一人。
「なっ……」
「すみませんね。こっちにも負けられない事情がありまして――」
驚いてる槍を持った先輩に近づいて、
「――これで終わらせていただきます」
首元を剣で一閃。一瞬で終わらせた。
「勝者、神白・黒栁ペア」
とりあえず、一回戦突破。
「帰るぞ。ユリ」
「……はーい」
ちょっと不服そうなユリを引き連れて帰る。
「たっだいまーん?雄二と明久は?」
「テーブル調達に行ったのじゃ」
「テーブル調達?何でだ?必要……あるけどないだろ?」
「それではどちらか分かりませんよ」
本来なら必要不可欠。だが、誤魔化せている現状では無用って感じ……あ、
「まさかバれたのか?」
「うむ……ちと迷惑客がいてのう。一瞬で広まってしまったのじゃ」
「なるほどね」
そのせいで客が少し減ったのか。
「ユリ。とりあえず、客引きよろしく」
「任せて下さい」
さて……と。
「奴らと合流するか。秀吉。何か聞いてるか?」
「ワシは回収班として動いてるだけじゃから何とも」
なるほど。確かにテーブルを
Prrrrr!
動こうとしたところで鳴り響く携帯。着信相手を見る前にさっさと出る。
「もしも――」
『応接室から職員室そばの休憩室』
プツッ
切れる電話。通話時間は驚異の2秒。…………はぁ。
「秀吉。ちょっと行ってくるわ」
「う、うむ……任せたぞ」
今の声は雄二だった。で、ドタドタと聞こえたところと電話の内容からを察するに、応接室からパクったテーブルを背負いながら先生から逃げているのだろう。やれやれ……
「なるほどな……」
で、雄二が何であんな言い方をしたかは応接室を経由して職員室そばの休憩室へ向かう道中に理解した。
「たく。何で明久の上靴が廊下に落ちてんだよ」
走ってる最中に脱げたのか別の意図で使って落としたのかは知らんが自分で回収しろよ。普通に考えて。
そして、明久の上靴を回収し、歩くと、
「来てくれたか」
「あ、僕の上靴」
「ほらよ。はぁ。こいつらをテーブル泥棒として逮捕したら謝礼貰えるか?」
「安心しろ。今からお前も共犯だ」
何一つ安心できねぇよ。
「で?作戦は?職員室近くは警戒が強いんじゃねぇのか?」
「明久
「よし。分かった」
「いやダメだよね!?僕を犠牲にするつもり!?」
「と、普段なら行きたかったがこいつはトーナメントでの俺の相棒。ここで死んでもらっては困る」
「ッチ。命拾いしたな」
「いや僕ら味方だよね?ね?」
そうだな。確かにオレたちは(利害が一致している間は)味方だな。
「で?結局作戦は?」
「
「最高だな
「それって、作戦ないのに等しいんじゃ……」
いや、決して作戦がないわけじゃない。強行突破も立派な作戦の一つだ。間違いない。
「よし。ここからはスピード勝負だ。一人のミスが命取りになると思え」
「オーケー」
「……絶対僕ら捕まるよ――」
「行くぞ!」
「おう!」
「――ね……って置いてかないでよ!?」
騒ぐ明久を無視して突撃するオレと雄二。
以下ダイジェスト版でお送りします。
「なっ!?カギがかかってるだと!?」
「どけ。蹴り壊す」
「いやいや壊すのは流石に――」
ドォン!
「本当に蹴り壊したぁ!?」
「急げ!
「おう!
「ちゃっかり僕に罪を着せようとしないでよ!」
時には明久のせいにして……
「次は文化部の部室だ!」
「また扉を破壊するか?」
「いや、流石にそれはやめておこう」
「よかった。雄二にも常識があ――」
「代わりに壊すのは窓だ」
「――ると信じたかったんだけど!?」
「よし!
「その通りだ!」
「違うから!僕は被害者だからね!?」
時には明久を盾にして……
「どうする!次は職員室か?」
「よし!明久とテーブルを交換するよう交渉するか!」
「等価交換だな!」
「全然等価じゃないからね!?どうしたら僕がテーブルと同じ価値に……」
「おい明久。素晴らしいテーブルさんとお前の価値を一緒にしてやるって言ってんだ」
「ああ。味のなくなったガム程度の価値のお前と違ってテーブルさんには無限の価値があるんだぞ」
「逆だよね!?何で僕の価値がテーブル未満なのさ!後、僕の価値が味のなくなったガムってどういうことさ!」
「「真実だろ?」」
「よし、貴様ら決闘だ!二人ともボコボコにしてやる!」
時には明久を売りに出そうとし、どうにか必要数のテーブルを確保したのだった。
そして二回戦開始の時は刻一刻と近づいてくるのだった……。