バカテスト 現代社会
『PKOとは何か、説明しなさい』
姫路瑞希の答え
『Peace‐Keeping Operations(平和維持活動)の略。国連の勧告のもとに、加盟各国によって行われる平和維持活動のこと』
神白崇彰の答え
『United Nations Peacekeeping Operations(国際連合平和維持活動)の略。説明は略』
教師のコメント
そうですね。神白君の言うとおり、United Nations Peacekeeping Operationsとも呼ばれたりします。ただ、神白君は説明を略したのはよくありませんね。説明も簡単でいいので答えてください。
土屋康太の答え
『Pants Koshi-tsuki Oppaiの略。世界中のスリーサイズを規定する下着メーカー団体のこと』
教師のコメント
君は世界の平和をなんだと思っているのですか。
黒柳由梨乃の答え
『Panchi to Kick de Owaridesuの略。相手を倒す一連の流れのこと(タカがやってるので間違いありません!)』
教師のコメント
平和とは程遠いですね……
吉井明久の答え
『パウエル、金本、岡田の略』
教師のコメント
それはセ界の平和を守る人たちです。
二回戦。雄二たちは姑息な手で勝利を手にし、続くオレたちの試合。
「神白君と黒柳さんの勝利です!」
聞こえるのは勝者を告げる審判の宣言。え?どうやって勝ったか教えろって?まぁ、かいつまんで話すなら、
ユリを挑発する。
↓
特攻を仕掛け撃沈。
↓
オレが相手二人を倒して勝利。
要するに一回戦と同じ流れってことだな。で、教室に戻ろうとすると、
「お、崇彰に黒柳じゃねぇか。勝ったか」
「はい。もちろんです」
「なら、よかった」
やってきたのは雄二。ただ……
「どうした崇彰。携帯電話なんて取り出して」
「……もしもし警察ですか?誘拐事件です。野生の赤ゴリラが小学五年生くらいの女の子を誘拐しようと……!?」
次の瞬間、オレから携帯電話を奪おうとする雄二。
「テメェしゃれにならねぇだろうが!」
「こっちの台詞だバカ!テーブル強奪の次は少女誘拐かよ!問題行動も大概にしやがれ!」
「誰が誘拐なんぞするか!俺はこのチビッ子が人を探してるって言うから手伝っているだけだ!」
「チビッ子じゃなくて葉月ですっ」
と、雄二に誘拐された少女、葉月はオレたちの方を向く。
「へぇ~葉月ちゃんって言うんだね」
すると、ユリが恐怖心を与えないようにするためか、葉月と同じ目線に立つためにしゃがむ。そういやこいつ、言動が幼くて時々忘れがちになるが背がそこそこ高かったわ。というか女子の中では普通に高身長だし。
「はいです。シルバーのお姉ちゃん」
「うんうん。で、人を探しているって誰を探しているのかな?」
「お兄ちゃんを探してるんです……」
「うーん。家族のお兄ちゃんかな?名前は分かる?」
「……うぅ……名前は分からないです……」
はぁ。雄二もユリも優しいねぇ。人探しだなんて名前わかんなきゃ見つけるのは相当苦労するぞ?
「何か特徴はあるかな?」
優しく問い掛けるユリ。たぶん、子どもの扱いはオレより上手いだろうな。そして、オレより子どもに好かれそうだ。
「えっと、バカなお兄ちゃんでした」
「「「…………」」」
一瞬無言になるオレたち。そう来るか。そう来るのは流石に予想外だ。
「……おい。何だバカなお姉ちゃん。オレを見てもオレは違うからな」
「バカなお姉ちゃんって何!?私はバカじゃないですよ!?」
「なぁ、葉月。このバカなお姉ちゃんよりそいつはバカだったか?」
「はいですっ!」
即答か……なるほど。
「よし、
「だな。黒柳のおかげで候補が絞れた」
「えーっと。喜んでいいやつですか?これって」
「ああ。ユリのおかげで尋ね人が文月学園全男子生徒からオレと雄二を除く二年Fクラス男子まで絞れたんだ。よくやった」
「わぁーい……っておかしいな?褒められたはずなのに何故か涙が……」
それはオレが褒めてないからな。
そんな涙を隠しながら葉月の手をひくユリ。
後ろから見るその姿は、姉妹と言うより親子のようだった。
「…………てか、やっぱ子どもには好かれるんだな」
「それは精神年齢が近いからか?」
「正解」
「いや、もうちょいフォローしてやれよ」
フォロー?事実じゃないか。
と、阿呆なことを後ろで言っていると我が
「あれ?黒柳さん。その子は妹?」
「可愛い子だな~。ねえ、五年後にお兄さんと付き合わない?」
「俺は寧ろ、今だからこそ付き合いたいなぁ」
入ってそうそうにユリと葉月はクラスの男たちに囲まれてしまう。
店には客がゼロ。なるほどな。暇なんだろう。
「あ、あの、葉月はお兄ちゃんを探しているんですっ」
「えーっと、皆さん。葉月ちゃんはお兄ちゃんを探してるそうです。我こそはそのお兄ちゃんって人はいませんか?いたら手をあげてください」
すると、何人かの
「ちなみに、そいつの特徴は『バカなお兄ちゃん』らしいぞ」
オレがそれを言った瞬間、手を挙げようとした奴は全員手を降ろす。
そりゃそうだ。ここで手を挙げたら、自分はバカですと公言しているに等しいからな。……ま、公言しなくともここにいるやつは全員バカだろうが。
「それだけじゃもう絞り込めないだろ……他には特徴があるか?」
雄二が葉月に問い掛ける。
「あ、あの、えーっと、その……すっごくバカなお兄ちゃんだったんです!」
「「「吉井だな」」」
一瞬だった。その大きすぎる特徴を聞いた瞬間、全員の思考が一致した。明久が泣きそうな顔をしているが知らね。
「全く失礼な!僕に小さな女の子の知り合いなんていないよ!絶対に人違い――」
「あっ!バカなお兄ちゃんだっ!」
明久がそんなの違うぞと抗議するように大声で叫ぶ。しかし、現実は非常なり。葉月は明久に駆け寄り、抱き付いた。
「絶対に人違い、がどうした?」
「人違いなら現状をどう説明する?」
「……人違いだと、いいなぁ……」
雄二とオレの問いに、現実から逃れようとする明久。諦めろ。これが現実だ。
「って、君は誰?見たところ小学生だけど、僕にそんな知り合いはいないよ?」
明久はそう言うと、葉月の顔を見るため(多分)に一旦葉月を引き剥がす。
「え? お兄ちゃん……。知らないって。ひどい……」
あーあ。やっちまったかぁ……これは泣かせたか?
「バカなお兄ちゃんのバカぁっ!バカなお兄ちゃんに会いたくて、葉月、一生懸命『バカなお兄ちゃんを知りませんか?』って聞きながら来たのに!」
違った。明久が泣かせたと言うより明久が泣かされてる。
「明久――じゃなくて、バカなお兄ちゃんがバカでゴメンな?」
「そうじゃな。バカなお兄ちゃんはバカなんじゃ。許してやってくれんかのう?」
「バカなお兄ちゃんは本当にバカなんです。ごめんね。葉月ちゃん」
「お前ら追い打ちをかけてやるなよ。バカなお兄ちゃんはバカだからそう呼ばれてるに決まってるだろ?てわけで、葉月。こいつはバカだから君のこと覚えてなかったんだよ。ごめんな」
雄二、秀吉、ユリにバカと呼ばれ、オレからはフォローすると見せかけてやっぱり落とす。この短時間で明久はバカと連呼されまくり本当に可哀想(笑)だ。
「でもでも、バカなお兄ちゃん、葉月と結婚の約束もしたのに――」
おっと。この子超巨大な爆弾を落としたぞ。と、その爆弾に反応したのは、
「瑞希!」
「美波ちゃん!」
「「殺るわよ!」」
「ごぶぁっ!?」
島田アンド姫路である。明久は二人の急襲を受け、戸惑ってる。いや、ほんとに災難だな。お前。
「姫路に島田か。どうやら勝ったようだな」
そんな明久と違って、落ち着いて話し掛ける雄二。
「瑞希、そのまま首を真後ろに捻って。ウチは膝を逆方向曲げるから」
「こ、こうですか?」
やべぇ。3Dのスプラッター映画か?リアルスプラッターか?
「ちょっと待って!結婚の約束なんて、僕は全然――」
「ふえぇぇんっ!酷いですっ!ファーストキスもあげたのにーっ!」
再び投下される爆弾。葉月はきっと無自覚爆弾魔だな(納得)。
「由梨乃!包丁を持ってきて。五本で多分足りるはず」
なるほど。首に両手首と両足首に一本ずつ刺すつもりか?
「え、えーっと……私はどうすれば……」
突然の指名に戸惑うユリ。姫路が明久の口を引っ張る中、オレはそっと、
「いいかユリ。包丁って言うのは食材をさばくものだ。残念ながら明久は食材じゃない」
「そうです!包丁は料理人の命です!人を刺すものではありません!」
「さすが崇彰!君は僕のみか――」
「だから、日本刀にしておけ」
「はい!」
「――たじゃないよね!?あぁ待って黒柳さん!日本刀でもしゃれにならないから!」
と、日本刀を探しに何故か
「た、大変ですタカ!何故か日本刀がありませ……どうしたのですかタカ!?頭を抱えて……まさか
頭痛の種はお前だよバカ……。オレはバカな幼なじみに頭を抱えるしかなかった。
あまりのことに他の皆も静かになる。
「あ、お姉ちゃん。遊びに来たよっ!」
と、このタイミングで葉月が島田にお姉ちゃんと言ってる……まさか姉妹か?おい、どっちでもいいがさっさと気付よお互い。
「ああっ!あのときのぬいぐるみの子か」
テメェ。思いきり知り合いじゃねぇか。何が知らねぇだこの野郎。
「ぬいぐるみの子じゃないです。葉月ですっ」
葉月が頬を膨らませる。怒ってるつもりだろうか?
「そっか、葉月ちゃんか。久しぶりだね。元気だった?」
「はいですっ!」
「うんうん。それは良かった。それにしても、よく僕の学校が分かったね」
「お兄ちゃん、この学校の制服着てましたから」
そう言いながら葉月は明久の制服を引っ張る。なるほどな。そりゃここだって分かるわ。
「あれ?葉月とアキって知り合いなの?」
「うん。去年ちょっとね。美波こそ葉月ちゃんのこと知ってるの?」
「知ってるも何も、ウチの妹だもの」
「へ?」
うん。知ってたから……何でもっと早く気付かないんだよ。
「吉井君はずるいです……。どうして美波ちゃんとは家族ぐるみの付き合いなんですか?私はまだ両親にも会ってもらってないのに……。もしかして、実はもう『お義兄ちゃん』になってたり……」
ほう。これが姫路の本性か?なかなか面白そうだな。
「あ、あの時の綺麗なお姉ちゃん!ぬいぐるみありがとうでしたっ!」
葉月は姫路を見てぺこりとお辞儀をする………ん?ちょっと待て。まさか……
「こんにちは、葉月ちゃん。あの子、可愛がってくれてる?」
「はいですっ! 毎日一緒に寝てます!」
……ふぅ。
「何でお前ら全員気付くのおせぇんだよ!」
「こらタカ!いきなり大声出して葉月ちゃんが怖がっちゃうでしょ?」
「そうだよ崇彰。それに大声出してもいいことないよ?」
ははっ。こっちも大声出したくて出してんじゃねぇよ。馬鹿どものせいで疲れてんだよ。
「ところで、この客の少なさはどう言う事だ?」
と、ここで雄二が教室内を見渡しながら言った。そういやこんな頭のおかしなやりとりで忘れていたが今のFクラスに客はいない。何でだ?
「そういえば葉月、ここに来る途中で色々な話を聞いたよ?」
「ん?どんな話だ?」
雄二が屈んで葉月の目線に合わせる。オレとは違ってしっかり気遣いをしているようだ。
「えっとね、中華喫茶は汚いから行かない方がいい、って」
「……何?」
確かにこのFクラスはおんぼろだ。どれだけあがこうとその事実は覆らない。だが、飲食店を出す以上衛生面には注意を払った。それを汚いと言うって事はつまり……
「誰かが意図的に流してる……か」
「おそらく、例の連中の妨害が続いてるんだろう。探し出してシバキ倒すか」
「例の連中……ですか」
「お前らは大会中で知らなかったな。お前らが一回戦に行ってる最中――」
と雄二が言ってくれたことを簡単に説明するなら、三年の
「例の連中の妨害って、あの常夏コンビ?まさか、そこまで暇じゃないでしょ」
常夏コンビ……なるほど。分かりやすくて良いな。
「そうだとしても。まずは様子を見に行く必要があるな」
「だな。それにもし、犯人が常夏コンビじゃなくても、潰す奴がそいつに変わるだけ。行くしかねぇな」
「そうだね。少なくとも、噂がどこから流れてどこまで広がっているのかを確認しないと」
恐らくかなり広まっているだろう。葉月でも聞いたくらいだから。……そう考えると早急に対処からのフォローが必要だな。
「お兄ちゃん、葉月と一緒に遊びにいこっ」
葉月が明久の手をギュッと握って言う。その事に明久は少し困った顔をしている。そりゃあ、常夏コンビの妨害がなく、平和な学園祭なら、明久は葉月と一緒に遊んでいるだろう。だが、悪いが明久は必要な人材。遊ばせてる暇も余裕も今はない。
「ごめんね、葉月ちゃん。お兄ちゃんはどうしても喫茶店を成功させなきゃいけないから、あんまり一緒に遊べ無いんだ」
そのことを分かっているのか、明久は葉月の頭を撫でながら、答えた。
「む~。折角会いに来たのに~」
しかし、葉月は不満気に頬を膨らませた。事の大きさを理解してくれない……はぁ。
「…………ッチ。これだからガキはきら――」
「えい」
軽い声と共に後頭部に伝わる衝撃。おそらくチョップされたのだろう。誰が犯人かは分かりきってるので、そいつの方には身体を向けず背中越しに話す。
「何だよ」
「タカには分からないかもですが、これぐらいの女の子が
「んなことは分かってんだよ」
「私は相手してほしいのにあしらわれる側の気持ちは痛いほど知っています。確かに、現状の私たちに彼女の存在はマイナスかもしれません。でも……それでも……」
「…………はぁ。あの頃のことを根に持ってるのか?」
「根に持つ?そんな資格が私にあると思ってるのですか?」
「さぁな」
……少なくともオレは後悔してるが。
でも、まぁおかげで頭は冷えた。葉月という存在をマイナスではなく、プラスに見よう。
「……ふぅ。明久。葉月を連れてけ」
「え?でも……」
「仮に風評被害の原因を絶てたとして、その後に利益を出すにはやはり、敵情視察は必要不可欠。誰も小学生連れて情報収集に来ただなんて思わねぇだろ」
「そうだな。幸い、今はちょうど昼飯時だ。飲食店をやってる他のクラスを偵察するならタイミングとしちゃベストだ」
オレと雄二がフォローする。明久もほっとした様子だ。
「ん~、そっか。それじゃ、一緒にお昼ご飯でも食べに行く?」
「うんっ」
明久の問いに、先程までの膨れ顔から一転して満面の笑みになる葉月。単純だな。でもまぁ、それでいい。変に気を遣ってもらっては困る。
「じゃあ葉月、お姉ちゃんも一緒に行くね」
妹に対しては優しい姉。島田の本性かもしれないな。
「ふむ。ならば姫路と雄二、崇彰に黒柳も一緒に行くと良いじゃろ。召喚大会もあるじゃろうし、早めに昼を済ませてくると良い」
「そうか。悪いな、秀吉」
「いいんですか?ありがとうございます。木下君」
「常夏コンビのツラでも拝んでやるか」
「言ってることが悪人ですよー」
明久と島田姉妹だけでなく、オレたちも加わる事になった。結果総勢七名という大所帯になった。
「それでチビッ子、さっきの話はどの辺で聞いたのかを教えてくれるか?」
「えっとですね……短いスカートを穿いた綺麗なお姉さんが一杯いるお店――」
「なんだって!?雄二、それはすぐに向かわないと!」
「そうだな明久!我がクラスの成功の為に、低いアングルから綿密に調査しないとな!」
葉月の話の中で奴らにとって心躍るようなワードが聞こえた瞬間、明久と雄二は下心丸出しな顔をして全力でダッシュして教室を出た。
「アキ、最低」
「吉井君、酷いです……」
「お兄ちゃんのバカ!」
「あれ?葉月ちゃんがいないとどこのクラスか分からないのでは……?」
女性陣の罵倒(一人ズレてる)もさほど気にしてない様子だ。……あほくせぇ。
「あれ?タカはダッシュで行かなくていいんですか?」
「阿呆抜かせ。誰がそんなことぐらいで、走って行くかっての」
「ほらほら~本当はあの二人のように走りたいのでしょう?隠さなくていいのです!私はしっかり慈愛のこもったこの瞳で見届けてあげますから」
「阿呆なこと言ってないで行くぞ」
オレはユリの手を引くようにして歩き始める。
「後、手を放すなよ」
「ま、まさかタカ……私とデート気分を味わいたいから走らずに……」
「お前は手を放すとすぐ迷子になるからな。オレから絶対離れんなよ」
「……って何歳児を相手にしているつもりですか!?いくら私でも迷子になりませんよ!」
とかなんとか言いつつ繋がれた手は目的地まで離れなかったことを記す。