清涼祭アンケート
学園祭の出し物を決める為のアンケートにご協力下さい。
『喫茶店を経営する場合、ウェイトレスのリーダーはどのように選ぶべきですか?』
【①可愛らしさ ②統率力 ③行動力 ④その他( )】
また、その時のリーダー候補も挙げてください。
土屋康太の答え
『【①可愛らしさ】 候補……姫路瑞希&島田美波&黒柳由梨乃』
教師のコメント
甲乙つけがたいといったところでしょうかね。
吉井明久の答え
『【①可愛らしさ】 候補……姫路瑞希 黒柳由梨乃 木下秀吉 島田美波』
教師のコメント
用紙についている血痕が気になるところです。
神白崇彰の答え
『【④その他(なんでもいい 信頼できる最高の幼馴染み)】 候補……黒柳由梨乃』
教師のコメント
君のことだからどうでもいいと言うと思いましたが、訂正し、真面目に答えてくれてよかったです。ただ、黒柳さんが紙を持ってきてくれたのはなぜでしょう?
坂本雄二の答え
『【④その他(結婚相手)】 候補……霧島翔子』
教師のコメント
どうしてAクラスの霧島さんが、用紙を持ってきてくれたのでしょうか?
明久が雄二に男子トイレに連れ込まれた。……いや、変な想像されても困るし二人の名誉が毀損されても……困る?ので誤解のないよう言っておくと、明久の女装のためだ。……あれ?この言い方だと色んな意味で危険だが……まぁ、やっぱり、無理だったな。うん。
じゃあ、オレは何をしているのかと聞かれたら、常夏コンビの見張りと、
「おいしい……しあわせなあじだぁ……」
だらしない表情をしているこいつの相手だ。
「たく……はい」
「あーん。……えへへ~……」
オレはショートケーキを一口分刺してユリの口の中へ。
別にこれぐらい造作でもないが……
『いいなぁ……羨ましい』
『ッチ。見せつけやがって……!』
『私もあんな彼氏がほしいなぁ……』
と、
「私からもお返し……はい」
「あーん。うん。おいしいよ」
と、傍目から見たらただのイチャつくバカップル(実際はカップルではなくただの幼馴染み)。そんな中であることを思いつく。
「……霧島。ちょっといいか?」
「……なに?」
オレは霧島を呼びつけ、思いついたことを伝える。すると、彼女はこくりと頷き、厨房の方へと去って行く。
「一口ちょーだい」
「いいよ。はい」
そう言って次はチョコレートケーキを一口分ユリの口へと持って行く。
「いいなぁ……私も吉井君と……」
「アンタたち……相変わらずね……」
「ラブラブのカップルですっ」
三者三様な意見。一つ言うことがあればオレたちはカップルじゃない。幼なじみだ(ここ重要)。
「……お客様。ご注文いただいた。カップル専用メニュー『ラブラブパンケーキ』でございます」
霧島が持ってきたのはハート型のパンケーキ。上にかかっているソースもハートをイメージするような形だ。
「おぉ。これが噂のカップルで食べると愛が深まるという……」
「……はい。カップル専用に出しており、お二人で食べればなお一層二人の愛は強固になるでしょう」
「なるほどなぁ。はいユリ。あーん」
「あーん。……んん……これまたおいしいです……幸せの味です……」
『ねぇね。私たちもあのメニュー注文してみようよ』
『そ、そうだな……!よし』
『店員さん!私たちのとこにもあそこと同じのを一つ!』
『お、俺たちのとこにも……!』
『じゃ、じゃあ……私たちも……』
完全に空気がピンクに染まる。もう、常夏コンビの声は誰にも届いていないだろう。時間稼ぎはほんと、疲れるなぁ……
「……ありがとう神白。いい案をくれて」
「いいって。気にすんな」
現在進行形で至る所から追加注文が殺到する。まぁ、お一人様が居づらくなるように見えるが、案外学園祭のノリでお一人様同士がっていい感じになってるとこもある。まぁ、そんな中で、男同士で、しかも食が目当てじゃないやつは浮くだろう。てか、すでに浮いてる。
「オレたちのせいじゃねぇが、あいつらがいることのお詫びとこれからすることのリスクを考えた結果だ。合わせてくれてありがとな」
「……これぐらい造作でもない」
「ただいま……ってなんだこの空気。甘ったるいんだが?」
とここで、雄二帰還。
「……神白のお陰」
「見りゃ分かる。この面子でこんな状況を作り出せんのはこいつしかいない」
今回はプラスのことをしたからな。うむ。いい働きをした。
「で、明久は?」
「ん」
完全に空気に侵食され、口を開けない常夏コンビ。そんな彼らのもとへと行くのは一人のメイド。誰あろう。明久である。
『お客様。ご注文はなさらないのですか?』
『ちゅ、注文か……』
『でしたら、あちらを食べるのはどうでしょう』
そうして、カップル専用メニューを指す明久(メイドver)。
『お二人ともお似合いのカップルですよ?』
『『誰がこんな奴と!』』
と、この甘い空気をぶち壊すように二人の野郎の野太い声が響く。一瞬にしていちゃついていたカップルやこの機に乗じてお一人様を狙って話しかける奴らの視線を集めた。
『ふふっ。冗談です。でしたら――私と食べませんか?』
そう言いながらハゲの腰に抱きつく明久。
『そそそうか。お前俺に惚れて』
動揺するハゲ。怨嗟を込めた眼差しで見るモヒカン。そして、
『くたばれぇぇっ!』
『ごばぁぁっ!』
明久(女装)が坊主頭に綺麗にバックドロップをかました。
しかし、浅かったためにハゲはすぐ復活する。が、
『こ、この人、今私の胸を触りました!』
明久の悲鳴が聞こえる。その悲鳴で、
『なんて最低な野郎だ!』
『そうよ!自分に彼女がいないからって!』
『そんな奴がモテるわけないじゃない!』
『男の片隅にもおけねぇぞ!』
『この女の敵!』
周りにいた客は全員常夏コンビの敵に早変わり。そりゃそうだな。ただえさえ、いちゃついてる空気の中、雑音をぶち込み、挙げ句のセクハラ(実は嘘だが)。そりゃ怒るわ。
『ちょ、ちょっと待て!バックドロップする為に当ててきたのはそっちだし、大体お前は男だと――ぐぶぁっ!ごふぅっ!』
必死に弁明しようとする坊主。だが、
「こんな公衆の面前で痴漢行為とは、このゲス野郎が!」
「彼女がいないからってメイドに手ぇだしてんじゃねぇよ!このセクハラ野郎が!」
オレと雄二が成敗ということで、坊主に一撃ずつぶちかます。
「何を見ていたんだ!?明らかに被害者はこっちだろ!」
「黙れ歩く社会のゴミ!何被害者面してんだうっとうしい!どう考えても加害者だろうが!」
「そうだ!たった今、あのウェイトレスの胸を揉みしだいていただろうが!俺たちの目は節穴ではないぞ!」
正直言って節穴だろう。
「ウェイトレス。そっちで倒れている男は任せたぞ」
「こっちは任せろ」
「え?あ、はい。分かりました」
オレたちは坊主を明久に任せる。すると、明久がブラと瞬間接着剤を出す。が、今は何でもいい。
「さて、痴漢行為の取調べの為、ちょっと来てもらおうか」
「そうだな。さらに今流れてる虚偽の噂についても聞かせてもらおうか」
指を鳴らしながらモヒカンに近寄る雄二とオレ。さてさて、じっくり吐かせて鉄人にでも押しつけようか。この社会のゴミを。
「くっ!行くぞ夏川!」
モヒカンはこれ以上は更に立場が悪くなると思って逃げ出そうとする。もうすでに状況は最悪だが。
「こ、これ、外れねぇじゃねぇか!畜生!覚えてろ変態めっ!」
一方の坊主は明久によって付けられたブラを付けたまま走り去って行った。いや、お前の方が変態だろ。
「逃がすかっ!追うぞアキちゃん!」
「了解!でもその呼び方は勘弁して!」
二人を追って明久と雄二も飛び出す。やれやれ、
「すみません。皆様の大切な空気を壊してしまって……」
一応迷惑をかけたので謝っておく。
『お前たちは悪くないぞ!』
『よくやった!お前たちは男の鑑だ!』
『ありがとう!』
拍手喝采。そんな中、
「かっこよかったですよ」
『『『ひゅ~!』』』
ユリが頬にキスをしてくる。やれやれ、
「行きましょう」
「ああ」
会計を坂本雄二一人で済ませ華麗に去って行く。(ん?坂本雄二一人で済ませて金を払ってないのかって?いや、夏目漱石一枚か坂本雄二一人って言われたら当然坂本雄二一人でしょ)
余談だがこの後『Aクラスのカップル専用メニューを食べた二人は永遠に結ばれる』なんていうジンクスができて、カップルや両片想いの連中が押し寄せて大繁盛したそうだ。
「やれやれ。少し目立ってしまったか」
「えへへ~」
そういや、敵情視察なはずなのに売り上げに貢献してしまったな。まぁいいや。
続く三回戦。相手の不戦敗で終わった。今回はお相手が男女の組だったが……ああ。Aクラスの店に行って時を忘れたのかな?ま、いいが。
そして、明久と雄二の組も不戦勝。こっちは食中毒。うん。何も言わねぇ。で、現状の課題。一度失った客を取り戻すかだ。
「で、何かもの凄いインパクトがあるやつやらねぇと客は来ねえぞ」
「だな。流れた噂のせいもあるが、誰かさんがAクラスでとんでもないことしてくれたお陰でAクラスに客が殺到している」
はっはっはっ。
「というわけで裏切り者。案出せ」
裏切り者か……
「確かにオレのせいだな。ま、そこは認めてやるよ」
「で、タカ。アイデアはあるのですか?」
「まぁな。ざっと何通りか浮かんだが、一番はこれだ」
そう言ってあるものを取り出す。
「中華とコレで、安直すぎる発想だが効果は絶大なはず」
「チャイナドレスですか……ふむ。安直ですね」
「じゃが、インパクトがあるのは確かじゃろう。これを宣伝用に――」
「ああ。コレを――明久と雄二が着る」
「……なるほど」
「「ちょっと待て」」
と、ここで明久と雄二からストップがかかる。
「……はぁ。なんだ?このインパクト重視のオレの案にケチをつけんのか?」
「インパクトを重視しすぎていろいろアウトなんだよ!」
「おいおい想像してみろよ。明久と雄二がこのチャイナドレスを着て接客してる様子…………おえっ」
「だ、大丈夫ですか!?」
急に込み上げてくる吐き気のあまり口元を押さえ跪くオレ。それを見て心配するユリ。
「……テメェ……雄二……明久……!お前ら……吐き気のするような想像をさせてんじゃねぇぞ……!」
「「責任転嫁が甚だすぎだこの野郎!」」
「やっべ……マジで気持ち悪い……」
「「自爆してやがる!」」
クソ……!お前らのチャイナ姿なんて誰に需要あんだよ……!おぇ……。
「誰だ……!こいつらにチャイナドレスを着せるって言ったやつ……!とりあえず処刑だこの野郎」
「それはタカですね。仕方ありません。私が代わりに処刑してあげます」
そう言うとオレを寝かせて、回復体位を取らせるユリ。
「全く。そんなの想像したら気持ち悪いに決まってるじゃないですか。バカですね」
そして背中をさすられる。
「……よし。あの馬鹿どもは置いといて話を進めるぞ」
「うーん。崇彰のアイデア自体はいいと思うんだけどなぁ……」
「だな。これは、秀吉と姫路、島田、黒柳に着てもらう」
「賛成。冗談でも僕らは着ちゃいけないよね」
「ワシが着るのはいいのかのう……?」
あぁ、大分よくなってきた。
「たっだいま~!って、なんだ。アキってばメイド服脱いじゃったんだ」
「あ……残念です。可愛かったのに……あれ?どうして神白君は倒れているのですか?」
「お兄ちゃん。葉月もう一回見たいな~」
と、ここで三人が戻って来た。
「あはは。残念ながら、ただで人のコスプレを見られるほど世の中甘く無いよ?」
明久がにこやかに笑って断った。笑顔だな……お前。
「そういうことだ。姫路に島田、クラスの売り上げの為に協力してもらうぞ」
そう言った雄二と明久は逃さないよう、チャイナを片手に退路を断った。
二人の目には彼女らが獲物に見えているのだろう。
「な、なんだか二人とも、目が怖いですよ……?」
「凄く邪悪な気配を感じるんだけど……」
若干引き気味になる獲物……じゃなかった。姫路と島田の女子二名。
「やれ、明久!」
「オーケー!へっへっへ、大人しくこのチャイナ服に着替え痛ぁっ!マジすんませんした!自分チョーシくれてましたっ!」
「弱いな、お前……」
「あほくさ……」
一瞬にして島田が近づく明久の腹と頬を殴り、腿を蹴る。あっさり、迎撃したとこを見て雄二とオレは呆れるしかない。
「どうしてまた、急にそんな事を言いだすのよ?前に須川はチャイナドレスを着たりする事は無い、って言ってたと思うけど」
明久を迎撃した島田は渋い顔をする。そんなこと言ってたのか?ま、オレは知らんな。
「店の宣伝の為と、明久の趣味だ」
「明久はチャイナドレスが好きだから。な?」
「大好――愛してる」
「……お前は本当に嘘を吐けないヤツだな」
「バカだろ……お前」
「し、仕方ないわね。店の売り上げの為に、仕方なく着てあげるわ」
「そ、そうですね!お店の為ですしね!」
島田と姫路が、了承する。店のためとかなんとか言ってるが本心は違うだろう。
「お兄ちゃん、葉月の分は?」
「え?葉月ちゃんも手伝ってくれるの?」
「お手伝い……?あ、うん!手伝うから、あの服葉月にもちょうだい!」
まじか。ある意味すげぇな。
「けど、ごめんね。気持ちは嬉しいんだけど、葉月ちゃんの分は数が――」
「…………!!(チクチクチクチク)」
「む、ムッツリーニ!どうしてそんな凄い勢いで裁縫を!?って言うかさっきまでいなかったよね!?」
「…………俺の嗅覚を舐めるな」
何故だろう。おかしいなぁ。格好良い台詞のはずが、凄く格好悪く見える。
「それじゃ、三回戦が終わったら着替えますね」
姫路がそう言いながら腕時計を確認している。なるほど。姫路たちの試合はこれからだったか。
「いや、今着替えてもらいたい」
「「え?」」
雄二の言葉に二人の声がハモる。
「宣伝の為だ。そのまま召喚大会に出てくれ」
確か、どっかのタイミングからか一般公開が始まるんだったな。大会には当然客が集まっているから宣伝には持って来いだな。
「こ、これを着て出場しろって言うの……?」
「流石に恥ずかしいです……」
まぁこの二人がそう言うのも無理もない。観客には一般客だけでなくこの学校に注目しているメディアもいるだろう。それを含めると、かなり大勢の人の前でチャイナドレスを着て動き回ることになる。それは流石に恥ずかしいと思う。…………てか、オレもそんな大勢の前でグラサンとかやばくね?
「二人とも、お願いだ」
明久はそう言うと二人に対して頭を下げる。いつになくこの男は真剣な顔だ。そう、真剣に女性陣にチャイナドレスを着てもらおうとお願いしている。やれやれ、
「明久……。お前は本当に――チャイナが好きなんだな……」
「メイドにチャイナ――本当にそういうのが好きなんだな……」
本当にこの男はそういうのが好きなのだろう。
「もしかして吉井君、私の事情を知って――」
「仕方ないわね。クラスの設備の為だし、協力してあげるわ。ね、瑞希?」
姫路の言葉を遮った島田が色よい返事をする。
「あ。は、はいっ!これくらいお安い御用です!」
姫路も快諾した。残るは……
「由梨乃ももちろん着るわよね?」
「もちろんです。クラスのために私もやりますよ」
ユリだが、姫路の事情を知り尚且つ女性陣は全員着替えるという状況で断るわけもない。まぁ、そんなの関係なしにこの程度のお願いなら快諾するだろうが。
「それなら二人はスグに着替えて会場に向かってくれ。大会では自分たちの所属がFクラスである事を強調するんだぞ」
そうすれば喫茶店の宣伝とFクラスのレベルのPRになる。一挙両得。二つの目的を同時に果たすことができる。
「オッケー。任せておいて。行くわよ瑞希」
「はいっ」
チャイナドレスを抱えて教室を出て行く島田と姫路。
「じゃあ、行ってきますね」
「ああ。悪いな」
オレから離れユリも着替えに向かう。
「…………できた」
「わ、このお兄さん凄いです!」
一方のムッツリーニ。神がかった技術とでも言うべきか、葉月用のチャイナドレスを完成させていた。
「ふむ。それでは着替えるとするかの」
「ちょ、ちょっと秀吉!ここで着替えるの!?きちんと女子更衣室で着替えないとダメだよ!」
確かに今は客ゼロでもいつ客が来るか分からない現状。この場で着替えるのはあまりよろしくない選択だが……だからって女子更衣室で着替えるのはおかしくね?
「……最近、明久がワシの事を女として見ておるような気がするんじゃが」
「気のせいだ。秀吉は秀吉だろう」
「そうそう。秀吉は秀吉。違わないだろ?」
「うんうん。雄二と崇彰の言うとおりだよ。秀吉は性別が『秀吉』で良いと思う。男とか女とかじゃないさ」
「……俺が言ったのはそういうことじゃない」
「……違うわこの大馬鹿野郎」
どうやら明久の思考回路は(やっぱり)逝かれているらしい。きっと世界最高峰の医者でもお手上げなレベルだろう。
「んしょ、んしょ……」
「……………………!!(ボタボタ)」
「は、葉月ちゃん!君もこんな所で着替えちゃダメだよ!ムッツリーニが出血多量で死んじゃうから!」
理由がおかしいからな?そこ。