恋愛感情ゼロの幼馴染と召喚獣   作:黒ハム

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清涼祭の夜と書いて想う心と読む

 清涼祭一日目も終わり、二日目に向け準備をする人や帰宅する人がいる中、私はタカの傍についています。

 皆が仕事に戻り、その後西村先生がやってきて、軽い事情聴取と現在の状況について話をしました。そして、清涼祭一日目が終わったタイミングで私とタカの分の鞄を吉井さんと瑞希さんが持ってきてくれました。これには感謝です。あ、ちなみに制服に着替えましたよ?流石にタカの目が覚めたらすぐに帰れるようにです。あれ?もしかして配慮ができてるって感じですかね?

 

「……はぁ」

 

 あの時以来でしょうか。ベッドの傍らで眠るタカのいつ起きるかを待つのは。よくも悪くも前とは状況が違います。違いますが……

 

「…………うっ」

「起きましたか!?」

「…………ユリ……」

 

 虚空に手を延ばすタカ。なるほど。寝言ですか……と思ってると、

 

「……ごめんな…………」

 

 手をバタンと降ろす……というか、な、泣いてます!?あの人の心が実はないのではと専ら噂になっている(私の中だけですが)あのタカが泣いている!?この男が泣いた事なんて片手で数えるほど……あれ?そもそも泣いたことありましたっけ?……じゃなかった!ともかくほとんどありません!あわわ!こういうときはどうすればいいのでしょう!ここはラマーズ呼吸法で落ち着きを……じゃなくて!えと、えーっと!

 

「はっ!」

 

 ここはあれです!久し振りに私の方が生まれた時間的にお姉さん(ただし数時間程)でしたから威厳を見せるために、

 

「よしよし。大丈夫ですよ。私がついてます」

 

 撫でましょう。寝ているタカの頭をなでる。ふむふむ。普段というかやったことありませんでしたね。ほうほう。こんな感じですか。なんだかタカが可愛く思えてきました。

 

「そう言えば寝ているときにタカもよくなでてくれましたね」

 

 私の寝相が悪いや寝起きが悪いなんて言ってはいますが、なんだかんだで一緒に寝てくれます。気分次第ではタカの方が自発的になでてくれたり抱きしめてくれたりキスは……ほとんどないですね。悲しいことに。

 

「日頃の恩返しですね」

 

 全く、これでタカに恩がまた一つ増えて……あれ?増えたと言うより返した?あー恩返しって口で言ってましたね。建前じゃなくて事実だった?あれ?冷静に数えてみるとこの男には数え切れないほどの恩があるような。実はそんなにないような……。まぁいいです!きっと幼馴染みの間で恩の数なんて数えるものじゃないです!恩とか貸し借りの関係じゃないです!………………そうですよね?そうって言って下さい。そうじゃないと私はタカに一生頭があがりません。あれ?それって今と変わらないような……

 

「…………ありがとな」

「へ?」

 

 あれ?今何か声が……あ、寝言ですね。というか涙止まりましたね。ふふん。撫でたかいがあったというものです。

 

「ふぁああああ……」

 

 そういえばなんだか眠いです……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識が覚醒した。頭をなでられる何ていう久しく味わってなかった感覚が最初にあった。次にあったのは目から液体が流れる感覚。血じゃないから涙だろう。血ならなでとるやつが発狂しないわけがない。

 

「日頃の恩返しですね」

 

 だろうな。お前ぐらいしかいないだろう。……たく。別に恩義なんて感じる必要はないのにな。オレもお前に助けられ……………………ているよな?うーん。怪しいが助けられていると言うことにしておこう。まぁ、あれだ。オレはアイツを助けてるなんて恩着せがましいことを言うつもりはないってだけだ。だからま、

 

「…………ありがとな」

「へ?」

 

 あいつがただの寝言だと思ってスルーしてくれる。そう思って一応お礼は言っておこう。こいつの事だからオレが倒れてからずっとそばにいるだろうし。

 

「ふぁああああ……」

 

 さてどのタイミングで目覚めようかと考えていると急に腹部当たりに重さを感じた。こいつ。まさか……

 

「…………すー」

 

 ……だと思ったよ。看病っていうか看ている奴が寝てどうする。しかも寝ているやつの上で。

 とりあえず、目を開けて周囲を確認。ここは保健室。時刻は清涼祭一日目が終わって少したった頃。周囲にこいつ以外の人影なし。カバンはそこに二つ。ユリは着替え済み。……なるほど。大体把握した。

 

「仕方ねぇな」

 

 さて、帰るか。サングラス……面倒だしいいか。というかなくしたし。

 

「よっと」

 

 ふぅ。寝起きにこれはきつい。後地味に腹部とかが痛い気がする。ま、気がするだけか。

 と玄関まで鞄二つにユリを背負って歩いて行くと、

 

「あ、崇彰!」

「目覚め……なんだその状況」

「明久に雄二か。おはよ」

 

 運よく?この二人に玄関で出会った。

 

「具合は?」

「見ての通りだ……というか、驚かないんだな」

「まぁな」

 

 そのまま一緒に並んで帰ることにする。まぁ、途中までは一緒だし。

 予想通りというか、ぶっ倒れている間にこの眼のことは話済みのようだ。ま、どうせ島田と姫路、葉月に見られていたんだ。ばれるのも時間の問題だったか。

 

「準決勝のことはすまなかった。不戦敗になっただろ?」

「ああ。決勝は俺たちと常夏コンビだ」

「でも、崇彰が謝ることじゃないよ。おかげで姫路さんたちは無事だったんだし」

「ところで明久。雄二。黒幕は分かったか?」

「ババア曰く教頭だとよ」

「そう……」

 

 なるほどな。潰す相手はお前か。

 

「こりゃあ、たっぷりお礼しておかねぇとな」

「はははっ。崇彰らしいね」

「だから、常夏コンビは任せたぞ。オレたちの分まで」

「任せておけ」

「うん。二人の分まで頑張るよ」

「じゃ、オレはこっちだから」

 

 そう片手を挙げ、別れを告げようとする。

 

「言うまでもないがお前は明日黒柳と登校してこい。今日のような襲撃があったらかなわんからな」

「はいはい。ま、言われなくてもそのつもりだ」

「うんうん。清涼祭が終わったらFFF団による処刑だね」

「は?何で?」

 

 全く会話の流れが読めなかった。は?マジでどうしたらそうなるんだ?

 

「何でって……うらやましいんだよこの野郎!こっちはむさいゴリラと一夜明かそうってのにそっちは美少女と一晩をともにするなんて……!」

「どうやら、勉強漬けにしてほしいらしいな……!」

「お前ら相変わらずだな。ま、学校を存続させるためだ。それまでは協力するか」

 

 今度こそ「また明日」と言って去って行く。利害が一致している間のこいつらは頼もしい。一致しなくなった途端敵だがな。

 というか、友人同士でコロコロ敵と味方が入れ替わるのも珍しい話だな。ほんと。いや、多分ただのバカだな。親友以上知人以下の金箔並みの厚さの関係……言ってて意味分かんねぇわ。なんだそれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………むにゃ?…………はっ!」

「起きたか?バカ」

「こ、ここはどこ!?今何時!?あ、タカ大丈夫ですか!?……というかおなか減りましたね」

「はぁ……言いたいことを一個に絞れ」

「じゃあ、このおいしそうな匂いは何ですか?(タカ、大丈夫ですか!?)」

「本音と建前が逆だろ。とりあえず、夕飯を作っといた。もうできたから食うぞ」

「はーい……って大丈夫なんですか!?寝てなくていいんですか!?」

「大袈裟すぎだ。もう治ったから心配すんな」

 

 たく。目覚めたら目覚めたでうるせぇ。てか、欲望に忠実すぎだろ。起きておなか減ったとか言う必要あるか?

 

「いいえ、心配です!心配すぎて食事が喉を通りませんよ!」

「現在進行形で飯食ってるお前に言われてもな……説得力皆無だろ」

「…………(さー)」

 

 目をそらしご飯をパクり。……はぁ。

 

「そ、そうです!心配なので今日の夜は添い寝してあげますね!」

「昨日しただろ。後、もう心配してないことはよく伝わった」

「というか、大変です!お昼寝をしすぎて夜眠れそうにありません!」

「ガキか!」

 

 ただ、どーせ、別で寝るって言っても「眠れません」とか言って乗り込まれるんだろうなぁ……面倒くせ。

 ま、こいつも今日一日疲れてるだろうから、結局オレより先におちるだろうな。

 と、阿呆な会話を繰り広げながら飯とその片付けも終わらせ、風呂も一緒に入った。そして、現在オレの部屋にいる。

 

「今日くらいは勉強なしでいいぞ」

「おぉー!」

 

 喜ぶユリ。ま、勉強嫌いのこいつにとってはここまで苦痛だっただろうな。

 

「よーし、じゃあゲームしましょうよ!」

「バーカ。明日も出し物はあるんだ。さっさと寝るぞ」

「えぇー少しだけ。ね?」

「オレは寝る」

 

 どうせ、その少しが長引いて途中で寝落ち。ちょっと考えただけでこの後の展開が手に取るように分かるな。

 

「ぶー。仕方ないですね」

 

 すると、オレの布団に入るユリ。

 

「電気、消してくださいねー」

 

 そして、オレの枕に頭を乗せ。寝る準備万端のようだ。

 

「…………はぁ」

 

 何というこの気持ち。やり切れなさというわけではないが。まぁ、予想通り過ぎるんだよなぁ。

 電気を消して、オレも自分の布団。ユリの隣のスペースで横になる。

 

「ねぇタカ」

 

 すると、オレの上に覆い被さってくるユリ。寝るのに重いからどいてほしい……とは口で言えるわけもなく、無駄だと分かりつつも目で訴えかけてみる。

 

「質問。いい?」

「改まってどうした?」

「最初に約束してね。聞かれたことには嘘をつかないって」

 

 別にオレはこいつに対して嘘はつかない。真実を小出しにして騙すことはあるが。ただ、こんなことを言うって事は……何かありそうだが。

 

「はいはい」

 

 裏があると分かりつつも別に断る理由がないので了承しておく。

 

「もし嘘をついたらキスするからね」

「本当のことを言ったら?」

「舌を入れる方のキスをしてもらいます」

 

 なんだこいつ。一切交渉じゃないが、いや、言ってる意味が分からん。今に始まったことじゃないが。何、オレは質問に正直に答えてそのうえこいつにディープキスをしろと?何言ってんだ本当に。

 

「はぁ。まぁいいや。で?質問は?」

「もし、準決勝戦で勝っていて、吉井さんと坂本さんと決勝で当たってた時。タカは勝つ気ありましたか?」

「つまり?」

「もし、決勝戦まで行っていたとき、タカはワザと二人に負けるつもりだった。違いますか?」

 

 オレはユリにキスをする。もちろん。あいつの望んだ方のだ。

 

「ああ。負けるつもりだったな」

 

 ユリが酸欠になる寸前まで彼女の口内を蹂躙した後、呼吸が整うのを待ってから正直に答える。

 

「じゃあ、オレから質問だ。いつから気付いていた?」

「最初から……というのはさすがに嘘です。私が四回戦に勝って喜んでいたときに、タカが優勝はできないと考えているようでしたからね。それでです」

 

 なるほどな。あの時に思考が読まれたというか分かってしまったわけか。

 

「ということで、今度は私から……」

「おい。そんな話はしてないぞ」

「まぁま、いいじゃないですか」

 

 じゃあ、最初の取り決めは何だったんだよ。そう思いながらユリの侵入を許すことにした。

 

「次です。今度。何処かのタイミングで一緒に出かけましょう」

「もはや質問ですらなくなったな」

「…………嫌ならいいんです。彼女さんやバイトとかで忙しいことぐらい知ってます」

「……はぁ」

 

 オレの弱点をあげろと言われたら多分こいつだ。こいつには甘くなっている。あの時の自分とはまるで違うな。

 

「誰が嫌って言った。行ってもいい。だからそんな顔すんな」

「へへ~」

 

 抱きしめてくるユリ。

 別に出掛けるのはいい。今回の大会。もし、裏で学園長(ババァ)が何も起こしてなくて普通の大会だったなら、オレが本気を出していれば優勝はそんなに難しいものじゃない。こいつは半分は姫路だろうが自分の目的があったからこそオレとこの大会に出場した。賞品の中に()()があることを知って。なら、その埋め合わせじゃないが出かけるくらいなんともない。…………それに、こんな幕引きにしてしまったからな。

 

「約束。忘れないでね」

「アホか。お前が忘れない限り忘れねぇよ」

「ならいいです。ふぁあああああ」

 

 安心した様子で大きな欠伸を一つ。

 

「ユリ」

「ふぁい?」

 

 オレはユリを抱きしめ返す。

 

「お前だけは何があっても守ってみせるからな」

「おかしなタカです。そういえば、そうでした」

 

 すると、ユリはキスをしてくる。

 

「ありがとうね。守ってくれて。お礼を言うの忘れてました」

「……あれくらい当然のことだ」

「ふふっ。素直じゃないですね……」

 

 そのまま静かになったユリ。寝息が聞こえ始めたことから寝たのだろう。やっぱり疲れていたんじゃねぇか。……というか、結局どかなかったし。

 …………考えても仕方ない。オレも寝るとするか。明日も早いしな。

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