恋愛感情ゼロの幼馴染と召喚獣   作:黒ハム

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船越先生と書いて明久の恋人と読む

「雄二、すまない!」

 

 Fクラスの本陣に戻ってきたオレはそうそうに雄二に頭を下げる。

 

「どうしたんだ?お前が謝るなんて珍しいが、何かやったのか?」

「オレは……ユリを助けられず。補習室に送ってしまった……すまない」

「過ぎたことを気にしても仕方がない。お前が無事で何よりだ」

「ありがとうな。雄二」

 

 ……まぁ、ユリを補習室に送り込んだのオレだけどな。あいつには勉強が必要だ。少なくともこんなDクラス戦よりもな。だったら、戦死させて、補習室に送り込んだ方がいい。……本当は混戦の中殺るつもりだが、予想以上にワンサイドゲームで終わってしまったからな。

 

「とりあえず、作戦を考えたい。崇彰。この後どういうプランがベストだと思う?」

「そうだな。姫路を使うのが一番いいだろ」

「同感だ。タイミングは他クラスも下校する時。下校する生徒に紛れ込ませて奇襲させるつもりだ」

「なら、オレはあえて目立って囮をやるか。必要だろ?そういう役をする奴が」

「確かに、お前に気をとられてくれれば、姫路なんて、存在を認識すらしないかもな」

「だったら……」

 

 雄二とオレが最終的にどういうプランでDクラスの代表の首を取るか、プランを話し合ってた時、

 

「坂本。それに神白も」

「なんだ須川?何かあったのか?」

 

 明久率いる中堅部隊に所属しているはずの須川が本陣にやってきた。

 

「時間稼ぎの為に偽情報を流したい。先生たちに向けて」

「なるほどな……おい崇彰」

「なんだよ」

「お前が放送を流せ」

「はぁ……オーケーだ」

「なら、俺は本陣に戻ってるぞ」

 

 そう言うと走って戻る須川。

 

「で?誰に向けてどんな内容でだ?」

「そうだなぁ……ターゲットは船越先生。内容は……まぁ、明久が告白するために体育館裏で待っているとかでいいな」

「了解だ。ちょっと行ってくる」

 

 そう言い残し、放送室へ向かう。

 放送室の機材を適当に動かして、放送出来るようにする。……よし。

 

 

 ピンポンパンポーン《連絡致します》

 

 

 さぁ、始めようか。

 

 

《船越先生、船越先生》

 

 

 明久。悪く思うなよ。

 

 

《二年F組の吉井明久君が体育館裏で、船越先生を待っています》

 

 

 さよならだ。明久。

 

 

《生徒と教師の垣根を超えた一人の男と一人の女としての大事な話があるそうです》

 

 

 あ、でもすぐに向かってもらわないと困るか。

 

 

《すぐに体育館裏に向かってほしいとのこと。以上二年F組神白崇彰からでした》

 

 

 船越先生。

 四十五歳。女。独身で数学の教師。

 婚期を逃して、ついに生徒たちに単位を盾に交際を迫るようになった。

 

 

 まぁ、明久はすぐに向かえないが待たせた時間の分だけ奴の貞操は大変なことになるだろう。というか、貞操を45歳のオバさんに奪われるのか……おえっ。まぁ、オレは既に奪われた後だけど。

 

 

『崇彰ぃぃいいいいいいいいいっ!』

 

 

 どこからか声が聞こえてくるな……。…………オレ知~らね。

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 一旦教室に戻って二教科ぐらいテストを真面目に受け終えた後、雄二と教室で時を待っていた。

 

「明久、よくやった」

 

 明久が戻ってくると雄二がらしくないことを言っていた。それも、無茶苦茶晴れやかな笑顔で。

 

「校内放送……聞こえてた?」

「ああ。バッチリな」

「しっかりと、全校に響かせたぞ」

「シャァァァアッ!」

 

 オレの存在に気付くと左手で包丁を持ち、避けにくく致命傷になりやすい肝臓を。右手の靴下……いや、靴下に砂を詰め込んだ即席のブラックジャックだな。それをオレの頭目指して振り下ろす。

 やれやれ……。

 

「あの放送の指示を出したの雄二だぞ」

 

 バックステップで、凶器の当たるまでの時間を稼ぎ淡々と真実を告げる。

 

「お前のせいかぁぁっ!」

 

 明久は左足を軸にして反転。雄二に凶器を向け、そのまま――

 

「あ、船越先生」

 

 ――そのまま卓袱台を勢いよく蹴散らし、掃除用具入れの中に隠れた。

 

「バカだろあいつ」

「さて、そんなバカは放っておいて、そろそろ決着をつけるか」

「そうじゃな。ちらほらと下校しておる生徒の姿も見え始めたし、頃合いじゃろう」

「…………(コクコク)」

「おっしゃ!Dクラス代表の首級を獲りに行くぞ!」

『おうっ!』

 

 そして、教室を出ていったところで雄二が声を出した。

 

「あー、明久。船越先生が来たってのは嘘だ」

 

 さぁ、Dクラス狩りを始めようか!

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 Dクラス代表 平賀源二 討死

 

『うぉぉーーっ!』

 

 叫ぶFクラス。項垂れるDクラス。作戦は無事成功し、姫路が代表平賀の首を獲った。オレはあたかもDクラスの大将を狙っているふりをして近衛部隊の排除に徹していた。まぁ、明久も結果的に排除に貢献してくれたからよしとしよう。

 

「坂本!握手してくれ!」

「俺も!」

 

 雄二を見るともはや英雄扱い。Fクラスの人たちに囲まれてしきりに握手を求められていた。

 

「雄二!」

「ん?明久か」

「僕も雄二と握手を!」

 

 明久も英雄の雄二に握手を求め、手を突き出した。

 

「ぬぉぉっ!」

 

 

 ガシィッ

 

 

「雄二……!どうして握手なのに手首を押さえるのかな……!」

「押さえるに……決まっているだろうが……!フンッ!」

「ぐあっ!」

 

 握手を求めた明久は手首を捻りあげられていた。そして、

 

 

 ゴトッ

 

 

 明久の握り込んでいた包丁が床に落ちた。

 

「…………」

「…………」

 

 二人の間に流れる沈黙。

 

「雄二、皆で何かをやり遂げるって、素晴らしいね」

 

 バカだろ。こんな状況でごまかせると思ってるのか?

 

「僕、仲間との達成感がこんなにいいものだなんて、今まで知らな関節が折れるように痛いぃっ!」

「今、何をしようとした」

「も、もちろん、喜びを分かち合うための握手を手首がもげるほどに痛いぃっ!」

「おーい。誰かペンチを持ってきてくれー」

「す、ストップ!僕が悪かった」

 

 やれやれ。阿保らしい。

 

「まさか姫路さんがFクラスだなんて……信じられん」

 

 Dクラス代表の平賀がヨタヨタとこちらにやってくる。

 

「あ、その、さっきはすいません……」

「いや、謝る事は無い。Fクラスだと侮っていた俺たちが悪いんだ」

 

 姫路は謝ったが、別に謝る必要はない。これは勝負だからな。

 

「第六天魔王がFクラスにいた時点で、もっと警戒すべきだったかもな」

 

 何で第六天魔王なんて、本能寺で焼き討ちされそうなあだ名で呼ばれているのだろうか。

 

「ルールに則って教室を明け渡そう。ただ、今日はもう遅いから、作業は明日で良いか?」 

「もちろん明日でいいよね、雄二?」

「そんな必要ねぇよ。明久」

「え?どういうこと?崇彰」

「我らがリーダーはDクラスの設備を奪う気はない、だろ?」

「ああ。その通りだ」

「雄二、それはどういう事?」

「忘れたか?俺たちの目標はあくまでもAクラスのはずだろう?」

 

 まぁ個人的にはここでも充分設備はいいと思うが。

 

「でもそれなら、何で標的をAクラスにしないのさ。おかしいじゃないか」

「少しは自分で考えろ。そんなんだからお前は近所の中学生に『馬鹿なお兄ちゃん』なんて愛称を付けられるんだよ」

「なっ!そんな半端にリアルな嘘をつかないでよ!」

「そうだぞ雄二。近所の幼稚園児だったはずだ」

「違う!近所の小学生に……ハッ!」

「「…………小学生に……だと」」

 

 嘘だろコイツ。冗談が冗談じゃなくなった……。

 

「と、とにかく。Dクラスの設備に一切手を出すつもりはない」

「それは俺たちにはありがたいが……。それでいいのか?」

「もちろん、条件がある」

 

 そりゃそうだよね。これで解放したらこの戦争の意味を聞きたくなる。

 

「一応聞かせてもらおうか」

「なに。そこまで大した事じゃないさ。俺が指示を出したら、窓の外にあるBクラスの室外機。それを動かなくしてもらいたい」

 

 雄二が指す室外機はDクラスの窓についているがDクラスの物ではない。Dクラスの設備は平均より少し貧しい普通の高校レベルの設備だからエアコンはないのだ。アレはスペースの関係で間借りしているBクラスのもの。

 

「設備を壊すから当然教師にはある程度睨まれるかもしれない。だがそう悪くない話だろ?」

 

 Dクラスからしたら悪くはない取引。オレや雄二、明久ならともかく。上手く事故に見せかければ厳重注意で済むはずだ。それだけであのFクラスに少なくとも三ヶ月間、行かなくていいならいいはずだ。

 

「それはこっちとしては願ってもない提案だ。しかしなぜそのようなことを?」

「次のBクラス戦の作戦に必要なんでな」

「そうか。ではこちらはありがたくその提案を呑ませて貰おう」

「タイミングについては後日詳しく話す。今日はもう行っていいぞ」

「ああ。ありがとう。お前らがAクラスに勝てるよう願ってるよ」

「ははっ、無理するなよ。勝てっこないと思ってるだろ?」

「それはそうだ。FクラスがAクラスに勝てるわけがない。ま、社交辞令ってやつだ」

 

 平賀はそう言って、去って行った。まぁ、オレも勝てるとは思ってないけどさ。

 

「さて、皆!今日はご苦労だった!明日は消費した点数の補給を行うから、今日のところは帰って休んでくれ!解散!」

 

 さてと、オレとユリの分の荷物をまとめて……

 

 

 ガラッ

 

 

 補習室の扉を開ける。

 

「おーいユリー帰るぞー」

「………………(ブツブツ)」

「ん?ユリ?」

「……シュミハベンキョウ、ソンケイスルヒトハニノミヤキンジロウ」

「あ……」

 

 ユリだと思ったソレはもうユリではなかった。

 

「……シュミハベンキョウ、ソンケイスルヒトハニノミヤキンジロウ」

 

 ただ、ひたすら問題を解くことしかできないモノに変わり果てていたのだ。

 

「さてと、コレを家まで持って帰るのか。なかなか面倒だけど仕方ねぇか」

 

 やれやれ、誰のせいだよ。あ、鉄人のせいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユリの家についたオレは、放心状態(どちらかというと洗脳状態?)のユリをリビングの椅子に座らせ、エプロンを身につけて料理を始めた。

 ユリとオレは近所……というか隣人だ。え?予想通りだって?まぁ、そんなことはおいといて、ウチとユリの両親が話し合った結果中学入学くらいから、特別な日(例えば誕生日とか)を除き、朝昼晩のご飯はオレたち二人が勝手に作って勝手に食べることになっている。放任主義ってやつかな。まぁ、二人とも自炊できるし問題ない。

 オレにとってはユリの家は第二の我が家だし、ユリにとってもオレの家は第二の我が家だろう。お互いの部屋は二階の窓を開けたらすぐのところにある。お互いの部屋の窓を開ければ会話も出来るし、オレは窓を伝って互いの部屋を行き来できる。電気がついているかも普通に分かるため、いつ寝たかとか帰ってきたかもお互いにバレバレだ。まぁ、だから昨日帰ってきた時間とかバれたんだけど。

 

「ほら、ユリ。出来たぞ」

「……シュミハベンキョウソンケイスルヒトハニノミヤキンジロウ」

「……まだこれかよ」

 

 やれやれ、食べさせないといけないのかよ……というか、朝昼晩全部食べさせてねぇか?今日。

 そう思いながら風呂の準備。別に風呂には今でもよく一緒に入ってるから、そういう抵抗はない。まぁ、互いに用事があったり気分次第では一緒に入らないが。

 服を脱がせ、ユリの歯を磨く。やれやれ。これだと、子どもを相手しているみたいだ。

 

「…………はっ!私は今まで何を……!」

 

 湯船に浸からせるとどうやら正気に戻ったようだ。

 

「やっとお目覚めかよ。お姫様?」

 

 シャワーで身体を洗いながら問う。

 

「って誰のせいだと思ってるの!」

「鉄人」

「……否定はしないけど」

 

 そして、湯船に浸かる。いいね。少し広い風呂って。高校生二人が入っても窮屈すぎることは無い。まぁ、それでも少し手狭だがそれはオレたちの背とかが大きいからだろう。

 

「ったく。まずお前をここまで持ってきて夕食を作って歯も磨き、身体も洗ってやったんだ。感謝しろよ?」

「いや、身体を洗ってから湯船に浸かるのは当然でしょ」

 

 何言ってるの?って感じで見てくるユリ。

 

「やれやれ、相変わらず面倒見がいいことで」

「うっせ。というか、夕食当番お前だろ。作ってやったから明日は自分で起きろ」

「嫌です。今思ったのですが、無防備な女子高校生の身体を隅々まで洗うということが出来たのですよ?というわけで、明日の夕食も作って」

「……はぁ?断る」

「じゃあ、明日の昼にジュースおごって」

「嫌だ。というか、お前に夜ご飯まで食べさせたんだ。後、片付けもしたし。オレの方が働いただろ。だから、明日は自分で起きろ」

「……タカの眼って綺麗ですよね。普段からカラコンなんて付けなくていいのに」

「うっせ。話を逸らすな」

 

 というか、オレがカラコンを付けている理由知ってるだろ?

 

「……はぁ。やれやれです」

「こっちが言いてぇよバカユリ」

「分かりましたよ。でも、本当にいいんですか?」

「何がだ?」

「私に自分で起きさせて何が起きても知りませんよ?」

 

 ユリは学力的にはバカな部類に入る。というか、明久と遜色ないレベルだ。断言出来る。

 ただ、明久も含めバカなのは学力的()()ってだけで、頭が悪すぎるわけでは無い。だから、まぁ、ユリの場合は多少は頭も回るし、特にオレ相手にはよく回り()()()。つまり何が言いたいかといわれると……

 

「……分かったよ。今回のはお互い差し引きゼロにしよう」

「わぁーい」

 

 オレはこう言うしかなくなるのだ。

 

「さて、私はあがりますか」

「そうか。なら、オレも」

「何言ってるんですか?タカは後十分ぐらい湯に顔を沈めててください」

「……はぁ?」

「だって、私は着替えているところをタカに見られるのですよ?……恥ずかしいじゃないですか」

 

 そう言いながら浴室を出ていくユリ。

 一ついいことを教えてやろう。

 

 お前それ全裸で言うセリフじゃないからな。

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