インフィニット・ストラトス 黒髪と銀髪は学園に 作:ニックネームは忍者
夏……それは暑い日である。
そんな暑い路上にシャルロット・デュノアは立っていた。
「…………」
目の前には千冬と一夏とライが住んでいる家であった。
「大丈夫、大丈夫……今日は家に居るって言ってたから」
「…………?」
シャルロットはライが家に居ると聞いて、直接会いに来たのだ。約束はしてないが家に居るのは間違いない。シャルロットがぶつぶつ言っている間に後ろには一人の男が立っていた。
「……シャル?」
「え!? ライ!? どうしてここに!!」
シャルロットの後ろに立っていたのはライだった。声をかけようにも一人言を言っていてどうしようかと考えていたのだ。
「……一応住んでいる家の前でそんな事言われるのは答えるのも困るんだが」
「あ、そうだよね……あの、本日はお日柄もよく―――」
「??」
シャルロットはよくわからない言葉を言って、ライは混乱した。
「そ、そうじゃなくて! IS学園のシャルロット・デュノアですが“織斑ライ”はいらっしゃいますか?」
「一応目の前にいるのだが……」
目の前にいるのはそうだが、織斑ライ……臨海学校の後、入学前に断っていた養子の件をライは正式にお願いした。まだ完全ではないが千冬の養子となっている。
養子と言っても千冬の子供の関係ではなく、織斑家の家族……つまり千冬の弟が一人増えたことになった。ライは千冬さんのことを千冬
「そ、そうじゃなくて……き―――」
「き?」
「―――来ちゃった……」
「――――――」
顔を赤らめて恥ずかしそうにシャルロットは言った。
『思考停止……直ちに再起動に移行……』
「(うわー! 僕の馬鹿! 僕の馬鹿! 何彼女みたいな事を言ってるのさ!!)」
シャルロットは自分のいった言葉に焦っていた。ライはあまりの言葉と顔にフリーズした。現在復旧作業を行っていた。
『身体に正常の確認……再起動開始』
「(一瞬俺はどうしたんだ)……来たのか、なら上がってけよ」
「上がっていいの!?」
「まぁ、千冬姉さんも一夏も別に何も言わないと思うから問題ないよ。それとも他に行くところがあるのか?」
「無いよ!! 全然全く微塵もないよ!」
「そうか。ならどうぞ立ち話も何だしさ」
「…………」
ライは鍵を開けてシャルロットと家の中に入った。
・・・
「(ここに住んでいたんだ)」
シャルロットはリビングのソファで腰を掛けていた。
「ねえライ、家事とかは一夏と二人でやっているの?」
「そうだな、千冬さんは忙しい人で二人で協力しながらやっているな。当番表もあるがお互いの都合があってごちゃごちゃするときもあったかな」
「そ、そうなんだ(二人って将来いい旦那さんになりそうだよね……旦那さんかあ~)」
シャルロットが浮かれている間にライは冷蔵庫から麦茶を用意していた。
「シャル、麦茶だよ。今朝作ったから味が少し薄いかも知れないがどうぞ」
「う、うん……(ライと二人っきり)」
ガチャ
「ライ、ただいま~」
「ごきげんよう、ライさん……と、シャルロットさん?」
「お帰り、一夏と―――」
「セシリア?」
一夏も同じく、家に入ろうとしたらセシリアが家の前に立っていたのだった。
……
「セシリア、俺の分まではいいのに……何だか悪いね」
「気にしないでください。ライさんも食べてほしいので(ライさんだけかと思ったらシャルロットさんも……でもシャルロットさんなら問題ありませんわ)」
「(やっぱ二人っきりって短い時間だよね)」
二人は帰省してる間を狙ったが、考えることは一緒だった。セシリアはケーキの手土産を持ってきた。今はそれを食べていた。
「お、上手いな!」
「確かに上手い……プリンは美味しいな」
一夏はショートケーキ、ライはカスタードプリンだった。
「二人も食べるか?」
「いいのか一夏? 食べさせあいみたいなことをして」
「「!?」」
二人が一夏とライの方を見ていたので一口あげようとしたがライが口をつけてある食べ物をあげるのは女子は嫌がると思って、一夏に言うが、二人は逆だった。
「確かにそうだな、やめとくか」
「あぁ、俺達もう口つけたから―――」
「そんな事無いよ!」
「そんな事ありませんわ!」
二人の声に一夏とライは驚いた。皿からケーキが落ちそうだった。
「そ、そうか……」
「じゃあ、どれがいいかな?」
「ぼ、僕はライのプリンがいいかな」
「わ、わたくしは一夏さんのショートケーキがよろしくてよ!」
「…………」
ライの目には二人が見えない握手をしてるように見えた。
そしてライはシャルロットに、一夏はセシリアにへと一口あげた。二人は幸せそうな顔をしていた……。
「そんなに食べたいなら貰えば良かったのに」
「そうだよな……なんで選ばなかったんだろう」
ピンポーン……
「誰だろう……」
「見てくるか」
インターホンが鳴り、全員で玄関に向かう。
…………来客は三名で箒と鈴とラウラだったのは言うまでもない。
・・・
少し前のリビングは人が少なかったが今では七人になっている。
「来るなら来るって言ってくれば良かったのに」
「仕方無いだろう……今朝になって暇になったのだから」
「そうよ! それとも何? いきなり来られると困るわけ? エロい物でも隠すとか?」
「私は突然やって来て驚かせてやろうと思ったのだ……どうだ? 嬉しいだろう」
「「……」」
ラウラは平然の様に言う。女子の四人はラウラを見ていた。
「(何だか“この自信が羨ましい”みたいな顔してるな)それにしてもどうする一夏?」
「そうだよな……外は暑いし、家の中で何かするか?」
「「賛成!!」」
家で何か遊ぶと言うと女子たちは大賛成した。
「(当たり前だ! わざわざ一夏の帰省している日を狙ってきているのだ!)」
「(外に出て五反田兄弟でもあったら台無しじゃない!)」
「(何か、一夏さんに関しての情報を一つも得たいものですわ!)」
「(織斑教官の家でも興味がある……)」
「(チャンスがあればライの部屋を見てみたいしね)」
それぞれの欲望が絡み合っていた。
「この人数か……何かあったかな?」
「とりあえず、何か物はあるはずだ。一夏、すまないが手伝ってくれるかな?」
「ああ、いいぜ」
数分後……
「ほう、我がドイツのゲームだな」
「そう、バルバロッサ……これなら楽しめるさ」
ドイツのゲーム……カラー粘土で作ってそれで何かを当てるゲーム……七人でしばらく楽しんだ。
・・・
「何だ? 靴で予想が着いたがやはりお前たちか……」
「「織斑先生!?」」
皆で遊んでいると千冬が帰ってきた。
「お帰り千冬姉、早かったんだな、食事は? まだなら何か作るけど……」
「いや、外で済ませて来た」
「そうか。ならお茶でもいる? 暑いのと冷たいのどっちがいい?」
「そうだな……外から戻ったばかりだし、冷たい物でも貰おうか」
「わかった」
一夏は冷蔵庫に向かって、ライは千冬が脱いだ上着を畳んでいた。
「千冬姉さん、部屋の掃除はしておいたよ。取りに行ったクリーニングもクローゼットにしまっておきました」
「そうか……いつもすまないな」
「いえ、俺は出来ることをやっているだけです」
ライと一夏は手慣れているかのように動いていた。
「(何なのこの雰囲気)」
「(まるで夫婦みたいですわ)」
「(ふむ、自宅での教官はこんな感じなのか……)」
「(ライって家でもこんな感じなんだ)」
二人の光景をガールズ達はあまり面白く見ていなかった。その視線が千冬に気づく。
「?……一夏、直ぐにまた出る、仕事だ」
「え? 今から?」
「そうだ。お前らと違って、教師は夏休み中でも忙しいのだ……お前たちもゆっくりしていけ……泊まりは駄目たがらな。ライ、上着をいいか」
「はい、気を付けて」
「わかっているさ」
ライが預かっている上着を千冬が受け取ると扉まで歩く。扉を閉めようとしたが後ろに振り向いた。
「……それと篠ノ之」
「は、はい!」
「……たまには叔母さんに顔を見せてやれ……長いこと帰っていないのだろう」
「……はい」
そう言って千冬は扉を閉めた。
「教師ってのは大変だな」
「あぁ……(何だか気を使わせたような気がするけど)?」
ライが千冬に申し訳ないと思っていると女子の視線が二人を見ていた。
「一夏とライ……何だか織斑先生の奥さんみたいだった」
「え?」
「何?」
「あんたって相変わらず千冬さんにべったりね」
「普通だろ? 兄弟だし」
「俺は居候の身で感謝してるつもりだが……」
「「…………」」
二人の考えは良い考えは大切にしてる。悪い考えはシスコンに近かった。
・・・
「もうこんな時間かそろそろ夕食か」
「冷蔵庫に全員分の量が無いな……買い出しに行くか」
外は夕方で夕食の時間……冷蔵庫の中は全員分の量が無く、二人で買い出しに行こうとするが……
「それならあたしが何か作ってあげる!」
「わ、私も作ろう!」
「じゃあ、僕も手伝おうかな」
「無論私も加勢する」
女子たちも同行して、料理を披露したいみたいだが……
「……仕方ありませんね~ではわたくしも―――」
「「あんたはいい!!」」
「??」
一人だけは料理をせずにしてほしかった。
――――――――――――――――――
そしてライたちはスーパーで買い物をしていた。個人で必要な品を買っているが、ライと一夏はかごを引いて、側にシャルロットと箒がいた。
「それにしても、何だかお母さんと一緒に買い物してた事を思い出す」
「(お母さんか)……いい思い出なんだな」
「あ、ごめん……変なこと言ったね」
ライは記憶喪失で身寄りがいない。シャルロットはライを気にしてると思い謝った。だがライは気にしてなかった。
「何故謝るんだ? いい思い出なんだろ? いい話じゃないか」
「うん……ライの中では織斑先生が親?」
「そうだな。親かどうかはわからないが千冬さんは家族と言う物を教えてくれたかな」
「そうなんだ」
ライは親がどんな人なのかはわからないが、少なくとも千冬と一夏がライにとって、家族がどんなものなのかを教えてくれた。ライは感謝していた。
「……お前、まだ実家の神社に顔を出していないのか?」
「うむ……千冬さんに言われずとも、近い内に挨拶に行こうと思っていたのだが」
「そうか……雪子叔母さんきっと喜ぶぞ」
「…………」
ふと、前を歩いて会話をしてる一夏と箒を見ていたライは背中を押した。
「一夏、少し買い忘れがある。すまないが取りに行ってくる、シャルも来てくれるか」
「うん、わかった」
「? おう、肉売り場で待ってるぞ」
「了解した」
「実はだな一夏……今年の夏祭りは―――」
ライとシャルロットは二人から離れた。ライはシャルロットに話し掛けた。
「すまないなシャル、巻き込んだ形をして」
「気にしなくていいよ、ライは二人の背中を押したんだよね」
「気付くよな……二人なら箒も話しやすくなると思ったからさ」
「(そこのところは鈍く無いんだね……ハァ~)」
シャルロットは心の中でため息を出した。
「シャル……今度、二人で出掛けないか」
「え!?」
少しへこんでいるとライは突然の誘いをシャルロットに言った。
「急だったかな……都合があるなら無理には―――「だ、大丈夫! 問題ないよ!」……なら、また連絡するよ」
「…………」
ライはそれだけ言うと、買い忘れと言うが、他に必要な調味料を探す。
「(鈍いけど……ライらしいね)」
シャルロットもライが探す、調味料を一緒に探し始めた。
…………ライが戻ってくると、セシリアが料理をすると暴れていて、止めに入ったのは当然だった。
――――――――――――――――――
「このジャガイモ切りにくい! あんたの選び方が悪いんじゃいない!」
「失敬な事を言うな。ドイツに居た頃はジャガイモ選びに右に出るものはいなかったのだぞ」
食材を買って、夕食を作っている最中に鈴はラウラに文句を言うが、ラウラはじゃがいも選びに自信があるといいながらコンバットナイフでジャガイモを一刀両断する。
「(コンバットナイフ……やむ得ないときに使うのは便利だと言うことにしよう)……一夏、“科学料理”はどうするる?」
「科学料理って―――」
ライが指を差す。一夏はその方向を見るとセシリアが作っている鍋だった。だが中は真っ赤に染まっていた。
「まだ、赤色な足りませんわね」
ドクドクドク……
「なんか……既に手遅れみたいだが」
一夏は絶望の顔になる。
「せ、セシリア……やっぱり君は料理に参加しない方が―――」
「皆さんが働いているのに、わたくしだけなにもしないなんて耐えられませんわ」
「(いや、何もしないでくれ)」
シャルロットは参加しないよう要請したがセシリアは拒んだ。ライも心の中では勘弁してほしかった。
「ご心配なく……わたくしの料理は最後で挽回するのが常ですので」
「料理は格闘や勝負じゃないよ」
「(世界一科学料理コンテストがあったら優勝候補にランクインだな……確実に……?)」
シャルロットの言う通り、料理は格闘や勝負ではない。これを忘れてはいけない。ライはふと、一夏の方を見ると、ラウラは一夏に近付いていた。
「一夏、私の料理も見てくれ」
「あれ? それって―――」
「“おでん”だ」
「…………」
ラウラは一夏に自分の料理を見せた。ラウラはどうやらおでんを作ったみたいだ。
「“おでん”だ」
「いや、繰り返さなくていいから!」
「ドイツに居た頃の副官に教えて貰った。日本のおでんと言うのはこう言う物なのだろう」
「……あんたの副官ってどんな日本文化に親しんでいるのよ」
「その副官―――」
ドカーン!!
セシリアの方から爆発音がした。セシリアはレーザーで加熱をしようとしたのか爆発が起きた。中身は全て焦げていた。結局、セシリアは料理をさせないようにしたのだった。
「(セシリアの料理は消滅したから良しとするか……救急車を呼ばずに済むしな)」
明日のニュースに織斑家から六人の食中毒など発生したらとんでもない事になるのだから……。
「それにしてもラウラの髪型いいな。一夏もそう思うだろ?」
「え!?」
「うん? そう言えば……確かにいいな」
ラウラは髪を後ろに結んでいた。ラウラにしては珍しい髪型だった。ライは素直に似合ってると思った。
「でも、やっぱり下ろしてる方がいいかな。その方がラウラぽいっな」
「う、うむ……」
一夏は普段の髪型が良いらしく、ラウラはほんのり赤くして頷いた。
「ライ」
「どうしたシャル?」
「僕もラウラみたいに結んだ方がいい?」
「?」
シャルロットはラウラみたいに違う髪型にした方が良いとライに言う。ライは何故そんなことを聞くのかと思った。
「確かに違う髪型も見たいときもあるが……シャルロットはそのリボンがとても似合うかな。俺はずっとそのリボンを見ていたいかな」
「そ、そうなんだ」
シャルロットは嬉しいのか赤くなる。ライは赤くなるシャルロットを不思議に見ていた。
そして、それぞれ作った夕食はそらは楽しい時間だった。
・・・
「食事の後は食器洗いが大変だな……まぁ楽しい食事だから良しとするか」
「あ、僕も手伝うよ!」
ライは食器を抱えて、シンクに置く。洗い始めようとすると、シャルロットが手伝いに来た。
「シャルはお客さんだ。さすがにそれは良くない」
「いいよ……一人で洗うよりも、二人で洗った方が早いよ」
シャルロットはスポンジをライに渡しながら言った。ライは観念した。
「……ありがとう、シャル。俺が汚れを落とすから、シャルは流してくれるか? 」
「うん、わかったよ!」
二人は会話しながら洗い物をした。それはもう、二人だけの……夫婦の光景に見えた。
「(むぅ……やはりシャルロットは凄いな。いつか私も―――)」
「(くー、あたしも一夏と洗いたかったー! そうだ―――)」
「(シャルロットさん……わたしも真似させていただきますわ。わたくしも―――)」
「(シャルロットは抜け目はないな。なら―――)」
一夏は軽く掃除をしようとしている。皆は行動に出た。
「「一夏」」
「ん? 皆してどうした?」
皆は一夏の掃除の手伝いをしようとしたが全員となると邪魔になる。
「貴様ら私が最初に言った。だから私が手伝う!」
「何を、わたくしが一番ですわ!」
「アンタ達が出ても邪魔になるだけ、あたしがやった方が早いわ!」
「嫁の手伝いは私の役目、お前達は邪魔だ」
「……何で喧嘩しているだ?」
「学園でも家でも賑やかだな……シャルはどう思う?」
「えへへ……(なんか新婚さんみたい)」
ライの言葉は聞こえてないのかシャルロットの顔は幸せなにやけ顔になっていた。
「(そっとしておくか)今日も平和だな……この平和を俺は続いて欲しいな」
ライは皿洗いをしながら思っていた。
――――――――――――――――――
「織斑先生も家では気を使っているんですね。子供達だけにして上げるって」
「私が居てはあいつらもくつろげないだろうしな」
とある大人の酒場のカウンター席で千冬と真耶は飲んでいた。
「……お姉さんとしては気になりません? 二人の弟さんがガールフレンドと居るのは」
「それなんだがな……」
「?」
千冬は何か不味いことを言った顔になる。真耶は何があったのか気になった。
「この間の臨海学校があっただろう……あの時、余計な事を言ってしまってな」
「と、言いますと?」
「女子四人に『一夏はやらんぞ』と、言ってしまってな」
「え―――」
真面目な千冬と思っていたが意外な事を言うと真耶は思った。
「いや、その―――何の気なしに言ってしまったのだ……別におかしな意味ではない。しかしどうにも女子連中が私をライバル視しているのでな」
「……織斑先生って、一夏君とそっくりですね」
真耶は素直に思ったが千冬はわからなかった。
「何? 何処かだ?」
「優しさに境界線がないところが」
「……真耶、お前は男を見る目はないな」
「そうですね……でも皆成長していくのですね。色々やって、色々あって……」
まるで真耶も何かあった口振りだった。
「年寄りくさいぞ、真耶」
「酷いですよ! 織斑先生の方が年上じゃないですか!」
「悪かった悪かった」
二人は笑いながら酒を飲んでいた。
「ライ君の方はどうですか? 彼もモテますよ」
今度はライの話をする。一夏の周り四人が集中しているため、ライを狙っている女子はかなりの数だった。千冬も勿論知っている。
「確かにな。だがライはどうしてか鈍くてだな……誰に似たのか不思議でしょうがない」
「…………」
真耶は千冬を見ていた。
「? どうかしたか?」
「いえ、何も。ライ君も笑顔が増えてきて、良かったです。デュノアさんが影響してるんですかね」
「……………」
千冬が飲もうとしてたグラスを止めたが、突然一気に飲んだ。真耶はいきなりどうしたのだろうと思った。
「あの、織斑先生?」
「……今日は飲むぞ真耶」
「え―――」
千冬と真耶は何回か飲んだことはあるが、いきなり千冬がこんなことを言うのは驚きだ。真耶は正直断りたいが―――
「付き合ってくれるよな」
「……はい」
……どうしてか不機嫌になる千冬……真耶は地雷を踏んでしまったと後悔をした。
――――――――――――――――――
「その、大丈夫か?」
「ううん……大丈夫だよ」
夜の町に一組の男女がいた。
「初めてなんだよな。無理してないか?」
「最初は少し無理かと思ったけど、慣れたから平気だよ」
その男女はライとシャルロット。
「でも最初はビックリしたよ。ライがこう言うのが好みなんだって……」
「こ、好みと言うか…………
……シャルならこれが似合うと思ったんだよ。その浴衣さ」
「そうなんだ……」
二人は浴衣姿で祭りの通りを歩いていた。
この日は篠ノ之神社では祭りであった。ここに来る前、ライはシャルロットに浴衣を着せるためにとある老舗に連れてきたのだった。
どうしてライと老舗に縁があるのかと言うと、IS学園入学前、ある日の出来事で老舗の婦人がひったくりあった。その逃げた先にライが立っており、見事ひったくりを確保。婦人はお礼に店に来たらサービスの約束をした。そしてシャルロットに浴衣を着せるために連れてきたのだが、ライもつられて着せられた。
だが、シャルロットの浴衣はライが選んだ。その浴衣も高価だが婦人はもっといいのを出したがライは真剣にこれがいいと言うのでこれにした。シャルロットも初めての浴衣は歩きずらかったが今では慣れていた。
シャルロットは蕣の花柄がある浴衣だった。ライは海をモチーフにした浴衣で二人は歩いていた。時々すれ違いに男はシャルロットを女はライを見ていた。
二人の光景はまさにお似合いに見えたのだった。
「それにしてもここが箒の実家なんだな」
「ライも初めて来たの?」
「まあな、それにしても立派な神社だな」
「確かに人もたくさん来るんだね」
神社に入る前からもそうだが人がたくさん行き通りしていた。毎年行われている祭りだが屋台もたくさんあった。
「? あれは―――」
「どうしたの?」
「一夏と箒がいる」
ライが指を指して、シャルロットまその方向を見た。
「夢だ! これは夢に違いない! 早く覚めろ!」
「お、おい! 何言ってるんだお前―――」
巫女服を着た箒は突然叫びだした。一夏は箒を大人しくさせていた。周囲は二人に集中していた。
「相変わらす二人は仲がいいな」
「……そうだね」
ライは時計を見る。そして屋台の方を見た。
「神楽舞までは時間があるな……二人に気づかれないように回るか」
「うん!」
――――――――――――――――――
「リンゴ飴美味しいか?」
「うん!」
二人は一夏に見つからないように屋台を見て回っていた。二人は型抜きをした。シャルロットはいい感じまで出来たが最後に失敗をした。ライは一回目は失敗したが、二回目からは成功した。三回目も成功して、流石に店の人が困り出したのでここまでにした。そして、シャルロットはリンゴ飴を見て、ポカンとしていたのでライが一つ買って上げた。ライは綿飴を食べていた。
「ライは甘いのが好きなの?」
「ん? そうかもな。祭りの中で食べたいのは綿飴だな……シャルも一口食うか?」
「え!? い、いらないよ!!」
「そうか。食べたそうな顔をしていたからさ」
「……」
ライは美味しそうに綿飴を食べていた。シャルロットはその光景を見ていた。
「(確かに食べたかったけど……だって―――でも、こうして祭りを過ごさせるだけでもいいかな)」
シャルロットは何だか久し振りに安心感がでた。臨海学校が終わってからNo.は現れなくなった。ライが言うには“確実”に倒したと言っていた。
「色々見て回りたいが、そろそろ神楽舞いの時間に近いな。混んでいる可能性があるから急ぐか」
「うん!」
二人は箒の神楽舞い見に向かった。
――――――――――――――――――
「それにしても箒の神楽舞凄かったな」
「うん……本当にね」
ライとシャルロットは箒の神楽舞いを観た。一夏には気付かれず、勿論箒にも見つからない角度で見ていた。箒の踊りを観た人達は目を奪われた様に見ていた。正に日本人の美であった。
「どうしたシャル? 気分でも悪いのか?」
「ううん、大丈夫。ライはやっぱり箒みたいに綺麗な人がいいの?」
「え……」
二人は少し祭りから離れて静かな道を歩いていた。シャルロットは箒の神楽舞いを見てからか静かになっていた。ライは体調が悪いのかと思ったが突然の言葉に驚く。
「シャル? 何故俺が箒のような綺麗な人がいいと思うの?」
「…………ライは神楽舞いを観てるとき“本当に綺麗”って言っていたから日本人のような人が好みって思ったから」
「(好み? 何故俺が日本人の好みになったんだ?)……確かに俺は日本の美は好きだが…………シャルの浴衣姿が観れたことの方が良かったかな」
「え?」
ライの言葉にシャルは立ち止まる。ライも立ち止まって、シャルロットの方を向く。
「シャルの日舞いも見てみたいな。日舞いをやっている姿が見れればいい…………俺しか知らないシャルの姿を……」
「ライ……」
ライは真剣にシャルロットを見ていた。その瞳をシャルロットの瞳を見詰めていた。
「……そろそろ戻るか。時間もまだあるが、早く戻っても損はないだろ」
「うん……そうだね」
シャルロットの心臓はドキドキしていた。ライは真剣に答えてくれたことにか言葉にドキドキしていた。二人は歩きだそうとするが、シャルロットは何かに気付く。
「ねぇライ、あれって一夏と箒じゃない?」
「ん? ……確かに箒と一夏だな」
シャルロットは指を指すと少し離れた景色を眺める場所に一夏と箒がいた。
――――――――――――――――――
「一夏……私の舞い……どうだった?」
「…………良かった。すごく良かったと思うぞ」
「そうか……ありがとう」
二人は少し高い道へ登り、眺めのいい場所に出た。IS学園が見える角度だった。
「今年は色んな事があったな」
「気の早い奴だな。それを言う台詞は年の瀬までにとっておけ」
「そうだけどさ……俺がISの操縦が出来ることがわかって、ニュースにまでなって……試験中にライもISを操縦して……二人揃ってIS学園に入って……色んな奴に出くわして……色んな事件があって……なんか無後夢中だったけど…………今ではIS学園に入って良かったと思ってるよ―――お前にもまた会えたしな」
「…………」
箒は一夏の顔を見ていた。
「? どうした箒」
「そ、そのだな……い、一夏……」
箒は決心した。
「わ、私はお前が――――――」
その先の言葉は花火の音に消された―――
「おー! いい花火だな!!」
「…………」
箒は花火に腹が立ったが、変わりに一夏の腕を掴み、箒の腕と絡めた。
「ん? 何だよ?」
「…………このくらいは許せ」
「まあいいけど……」
二人はそのまま花火を眺めていた……。
――――――――――――――――――
「俺達も花火を観ながら戻るか。着物も返さないといけないしな」
「そうだね」
二人揃って花火を観る一夏と箒に気付かれる前にライとシャルロットは歩き出す。二人は花火を観ながら歩いた。
「…………」
「しゃ、シャル?」
シャルロットはライの左肘の間から自分の腕を入れて自信の方に身を寄せた。ライは突然の行動に驚く。
「別に……僕とこうするのは嫌?」
「嫌では無いが……転ばないように歩けよ」
「……うん」
ライとシャルロットは身を寄せながら帰り道を歩いた。二人はお互いに顔を会わせることなく歩いた。
「…………」
ライは無言が気まずく、何か解決策ないかを考えるが浮かばない。
「シャル、あの……」
「ど、どうしたの?」
「…………」
そして、ライは頭に思い浮かんだ言葉を言った。
「その…………俺はまだ、記憶はまだ完全には思い出してはいない。自分が何者なのかもわからない……」
「…………」
「これからも俺が記憶を思い出すまで一緒に居てくれるか?」
「……うん、勿論だよ!」
「ありがとうシャル」
二人が笑顔になると綺麗な花火がまた上がった。
「綺麗だな……少し見ているか」
「うん……綺麗だね」
「あぁ、本当にな」
無言だった空気は消され、花火の光景を
二人並んで観た。
「…………」
カシャ!
「あれ? ライ、もしかして―――」
「すまない、どうしてか写真が撮りたくなってな」
ライは携帯を取り出して、シャルロットと写真を撮った。
「写真は撮らないって言ってたけど……」
「……まぁ、慣れた方がいいかと思ってな」
「じゃあ、僕もいいかな」
「え?」
ライは写真はあまり好きではなかった。でもシャルロットとの写真ならライは構わなかった。今度はシャルロットが携帯を取り出した。
「今度はしっかりした写真をいいかな?」
「構わないさ」
今度は角度を変えて、写真を合わせる。
「撮るね!」
「あぁ」
シャルロットがタップすると同時に綺麗な花火が背景に映った。二人の写真を歓迎しているように見えた。
「いい写真かな?」
「うん!」
シャルロットの顔はとても綺麗に見えた。ライはその顔に見とれた。
「ライ?」
「……時間も時間だし、着物も返しに行くか」
「そうだね」
二人は自然に身を寄せながら歩き始めた。
……このあと、着物も返して帰った。帰り際で「また、必要だったら何時でも言ってね」と言われたのは約束だった。
一期までの物語、終わりました。更識姉妹も登場させたかったのですが一期で終わらせるのは難しくなったので出さない事にしました。色々と無理矢理のある終わらせ方でしたが読んでくださった方、お気に入り登録してくれた方、ありがとうございます。
ただ、余り関わりなかった鈴とセシリアの短編話を書きたいと思うので時間を見て、投稿します。
……短い間でしたがありがとうございました。
続きやった方が方がいいでしょうか?
-
続ける
-
完結でいい
-
続けてヒロイン追加