就職は異世界で魔王!?   作:羊頭狗肉

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リアル忙しいわネタ考えても描写方法わからないわで困ってます。
読みにくいことないでしょうか?


第10話 目覚めと再発起

~迷宮内部 岬の私室~

 

 迷宮の地下一階。岬の部屋に数日振りに目覚ましの電子音が鳴り響いている。

 

「・・・うぅ」

 

 こちらの生活に適応しかけている岬だが、今回は目覚める気配が無い。

無意識で携帯電話のアラームを止め、また布団を被りなおす。

布団を被り寝返りを打つと扉がコンコンと控えめにノックされた。

 

「あの岬様、おはようございます。えっと、お加減はいかがでしょうか、その、昨日の」

 

 フェアの声が扉越しに聞こえ、岬は目を擦る。

昨日の出来事はフェアもオルディにも報告を受けていてずっと心配していた。

人見知りをするフェアだが、しばらく岬と食事を共にし、彼の人となりを知って徐々に脅えが薄れてきている。

 

「んぅ・・・おはよう、フェア。・・・って、あれ?さっきまで俺、山の中走って」

「あ、あの、岬様?憶えていますか?その後ゴブリンに襲われて」

 

 挨拶を交わしつつ、フェアが部屋に入ってくる。

ふと今自分がベッドにいることを疑問に感じ、記憶を辿ろうとしたがゴブリンと聞き、瞬時に昨日の記憶が甦る。

緑色の小柄な魔物、満足に動けない自分、醜悪な笑顔と共にやってきた死の恐怖。

 ゴブリンの顔を思い出した瞬間怖気が走った。思わず身震いをして頭を振る。

戦いの結果は今自分が生きているという事は辛勝ながら勝ったという事と無理矢理自分を納得させ、記憶の再生をスキップさせる。

 

「・・・そっか俺、気を失ったんだ」

 

 

 しかし迷宮に着いてからの記憶が無いことに合点がいき、片手で頭をかく。

 思わずため息をつく。

戦闘についてシャルから叱りこそ無かったが褒められたものでは無かっただろう。

 自分がシャルに比べて戦力外なのは分かっていた。しかし、戦闘訓練を重ね、能力の開花し始めたことで足手まといにはならないとも思っていた。だが、初の実戦はこの体たらく、まともに動くことすらできなかった。

 

(今のままじゃ駄目だ。あの状況を1人で片付けられる位にならないと・・・)

 

 助けを請われたのに差し伸べた手が届かない。届かないばかりか逆に手を差し伸べられる始末。

エスペルトの現状を打破する為に召喚された岬にとって救うはずが救われているこの状況は精神的にいたたまれない。

シャルに自身のペースで鍛えていけば良いといわれたが、果たして岬が鍛え上がるまでエスペルとは存続しているのか?

未来の仮定はキリが無く、考えるよりも体を鍛えようと岬はベッドから起き上がる。

 

「み、岬様、今日はゆっくり休まれてはいかがでしょうか?昨日の今日ですし、その、ご無理をなさっては」

「ありがとう、フェア。でも大丈夫、たいした傷は無いし今は出来るだけ鍛えたいんだ」

 

 

 フェアが気遣い休養を勧めるが現在の自分の状況に不安を覚え、岬は鍛錬に向かう。

 シャルを探していつも通り走りこみを開始した。

 

 

 

~迷宮入り口付近~

 

 

  

「岬、本当に大丈夫か?」

「大丈夫ですよ、一番酷い怪我が頬の傷なんですから」

 

 シャルが心配したのは精神面の方だが岬は自分の左頬を指差して問題ないと答える。

頬にはゴブリンが引き裂いた3本の爪痕がくっきり残っていた。

 

「・・・まぁ、問題無いならそれで良いがな。では、いつも通り走るぞ」

「はい!」

「それと・・・これを足につけろ」

 

 差し出された物は脚甲だった。手甲と同様に黒く、膝頭より少し上まで装甲がある。

装飾は無く、膝の関節部分にはサイの角を思わせる1本の太く尖った棘がつけられている。

 

「これは・・・」

「その手甲と同時期に作られた防具だ。胴体も探したのだが宝物庫も武器庫にも無かった。恐らく裏切り者が持ち出したのだろうな」

「ありがとうございます。・・・え~、すいません」

「・・・あぁ、それの着け方も覚えるようにな。あと胴体も何か着けたほうが良いのだろうが・・・」

 

 シャルは脚甲の着け方を教えながら、言葉に怒りの感情を乗せ始めた。

 

「エスペルトに属していた者が・・・盗人の如く持ち出して行きおって・・・!」

 

 先代当主の頃から続く、離反。

その際に持ち逃げされた物の中にこの武具の胴体もあるらしい。

 

「シ、シャルさん?とりあえず、他の物で補いましょう?ほら、今は辛抱の時です」

「・・・そうだな。すまん、手入れの行き届いていた武器庫が今は見る影も無くただの物置と化していると思うとな」

 

 エスペルトの繁栄期を知っているだけに、今の廃れ具合が許せないのだろう。

岬は逆鱗に触れないよう恐る恐るシャルを宥めつつ、走りこみに行こうと促した。

 

「今は過去の恨みより現在の問題に取り組みましょう。目の前の事を解決していけば過去の事を清算する機会も来ます」

「・・・過去より現在か。よし、防具をつけたら走りこみ開始だ!」

 

 2人は昨日の疲れを感じさせること無く今日も走り出した。

 

~南の街 ブレイニー 冒険者ギルド~

 

 迷宮の南にある街ブレイニー。街の中央広場の一角にある冒険者ギルドで2人の冒険者が依頼を受けている。

 酒場のマスターが昨日のうちに出した依頼をギルドが受け取り、ギルドの依頼掲示板に依頼表が掛けられた。ガゼルはその依頼表を引っぺがし依頼を受付へと向かった。

 

 

「では、依頼の内容を確認いたします。1階級冒険者 ガゼル・ディオン様、2階級冒険者 ネフィカ・パルトネル様ご両名、北の山脈の生態調査及び、クラル草20本採取でよろしいですね?」

「えぇ、問題ないわ」

「俺も大丈夫!こんな簡単なのパパッと終わらせてやるぜ」

 

 

 依頼内容も分かっているので2人は傷薬(ポーション)の原料となるクラル草も一緒に受けることにした。

 今日も無駄に元気と自信に溢れているガゼルの依頼を軽視した発言にネフィカと受付嬢は注意と侮蔑の言葉を送る。

 

「ガゼル様、まずは落ち着いて行動されることをお勧めいたします。それと、どんな依頼も軽んじることの無い様にお願いします」

「今までその簡単な依頼をこなせなかった人が言うギャグにしては面白みに欠けるわね」

 

 補足するならガゼルの依頼達成率は果てしなく0に近い割合である。

獣の討伐では獲物に逃げられ、薬草の採取ではせっかく採取した物を落としたりする。

酷いのはネフィカが同行しても成功率は上昇していないことだろう。彼女が気を付けろと注意を促してもかなりの確率でミスを起こす。

ギルドの受付嬢は笑顔で、ネフィカは無表情でガゼルを威圧した。

 

「え、え~と!なんていうか!その、すいませんでしたぁ!」

「・・・はぁ、行くわよ、バカゼル」

「名前違ぇし!馬鹿じゃねぇよ!」

「ネフィカ様、その他1名様、お気をつけて~」

「名前呼べよ!」

 

 このギルドでは割と恒例となりつつあるこのやり取りに周りから笑い声が上がる。

 余談だが、冒険者ギルドの依頼を達成できなかった場合、違約金を払うことは無いが階級が1つ下がる。

3回連続で失敗した場合警告を促し、5回連続で階級が1つ下がるが、その間に1度でも依頼を成功すれば特にお咎めは無い。

 

 だが、階級が落ちると受けられる依頼に制限がつき、再び階級を上げるのにはギルドが指定した数の依頼をこなした上で昇級の試験を受ける必要がある。多くの冒険者はこの手間を面倒臭がるので依頼を達成しようと躍起になる。

 

 ちなみに1階級から下が無いためこれ以上下がることは無いが、信頼度は新米の冒険者よりも下である。元上位とはいえ、ここまで下がるのは実力が伴わないか他に何某かの問題があるからと思われるからだ。

 悲しいことに昇級した事の無いガゼルは前者後者両方が当てはまり、ギルドからの評価は最底辺にある。

 

「名前呼ばれてぇなら依頼こなして来いよ~」

「るっせえぞ外野!いいか!俺はあがぁっ!」

 

 

 ガゼルが今までまともに依頼を達成した数は片手で足りる。

それも全てネフィカのお守りつきでだ。

 周りからからかうセリフが投げられ、ガゼルは過敏に反応してしまう。

しかしガゼルが何かを言う前にネフィカが脛を蹴りつけた。

 

「外野に噛み付く前に依頼をこなしなさい」

「お、俺は、まだ本気出しておぐっ!」

「最初から出しなさい」

 

 

 ガゼルのまるで定職に就かない人間のような言い訳は、屈んだ彼の腹にネフィカがめり込ませた膝によって遮られた。

蹲る彼はそのまま髪を掴まれギルドの外へと引き摺られて行った。

 

「いででで!髪を掴むな!はげる!はげちまう!」

 

 

 もちろん講義は聞き入れられず悲鳴がやむことは無く、引き摺られる様子を受付嬢は笑顔で手を振っていた。

 

 

 

~ブレイニー 街中~ 

 

 ギルドの外に出て北の門へと歩く。

既に髪から手は離したがまだ痛むのかガゼルは頭を撫でている。

 

「加減しろよ、この歳ではげたらどうすんだよ」

「修道院は東門の近くにあるわよ。あっちね」

「坊主になんてなりたくないっていってんの!」

 

 

 指差した方向は東門。そこから歩いて5分も経たないところには修道院がある。

修道院といえば禁欲的な生活を送り、神への祈りを奉げるイメージが沸いてくる。

ガゼルは自分ならそんな生活は送りたくないと頭を振る。

 

「まあ、出家したくなったらどうぞ?私はいつでも大歓迎よ。できれば髪と一緒に粗末な股の羽根ペンも切ってくれる?今すぐ」

「いつでもって言ったのに!?ってか見たことも無ぇのに羽根ペンっておま!」

「そんなことより、さっさと依頼を達成するわよ」

「そんなことって言うなー!」

  

 

 割と本気な叫びをあげるがネフィカは眉ひとつ動かさない。

それどころか来ないなら置いて行くと言う様に歩いていく。

ガゼルは慌ててネフィカの後を追う。

 

「話を戻すけど、北の山の調査依頼の件、気を付けなさいよ」

「なんでだ?山を見て回るだけだろ?」

「あのねぇ、この前ゴブリンの死骸が10体あったでしょ、生態系に変化が無いか調べるの」

 

 もし出没する魔物の数や種類が増えていた場合、窮地に陥ることもある。

本当に山を見て回るだけだと思っていた目の前の馬鹿はやっと納得がいった顔をする。

その様子に、最近ため息が増えたと自覚するネフィカは無駄と思いつつも補足を加える。

 

「それとそのゴブリンだけど、奴らを殺した連中はまだ山の中にいると思うわよ」

「は?なんで分かるんだよ」

「昨日の夜、北門の番兵に他に人が街に戻ったか聞いたの。そしたら帰ってきたのは私達が最後だったって」

「他の門から入ったんじゃないか?」

 

 確かに北の門を通らず他の門を通過する手もある。が、街に戻るのにわざわざ遠回りをする必要があるだろうか?

人であれ妖精であれ獣人であれ、害をもたらす魔物を倒しただけで何も後ろめたい事など無い。

それに存在が知られたくないなら死体も片付けるだろうし街道から外れて他の門に向かう者などそう居ないだろう。

そもそも目立ってしょうがない。

 

「可能性としては低いわ。後ろめたい事している連中だってそんな愚策とらないわよ」

「空とか山向こうの海とかで行き来して・・・」

「クイズじゃないの、憶測じゃ分からないからとりあえず様子を見に行くんじゃない」

 

 憶測ならいくらでも並べることができる。だがどれも有力付ける証拠は無い。

酒場のマスターの言う通り偶然で、取り越し苦労で終われば良いのだが。

 

(・・・気になるのはゴブリン達の傷よね)

 

 

 全てのゴブリンは正確な太刀筋で首を切られていた。

それも断面の組織を切り潰さずに断ち切ってあった。

この街の冒険者では到底真似できない芸当だ。

 

 ゴブリンは単体では2階級下位のものでも倒せるが、集団となると厄介だ。

集団戦に慣れているなら話は別だが、1階級から2階級中位の冒険者は囲まれたら死ぬことも珍しくない。つまり、現在街に居る冒険者たちでは実力的に不可能となる。

 

 無論、街に立ち寄らなかった凄腕冒険者という事もありうるがこの辺りは街周囲の街道を除き、森や林が点在している。態々森を一直線に突っ切ろうとするものなんて居ない・・・。

 

 

 ネフィカにはもう一つ気になることがあった。

確かにゴブリン達は全員首を刎ねられて死んでいた。相手はかなりの強者である。

だが、その内の2体に剣でつくられた傷とは別種の傷があった。顔に数ヶ所の掠り傷と折れ曲がった鼻。

ゴブリンを屠った者とは思えない粗雑な傷。他の8体には首以外の傷は無いのに2体だけある。

 

(・・・凄腕と新米コンビ?)

 

 まだ冒険者と決定付けるのは早計だが、少なくとも2人以上は山に潜んでいる可能性が高い。

傷の付け方に差がありすぎる。勿論、ガゼルが言うように海や空を使われたら捜索はできない。

 しかし、冒険者で飛行の魔法を使えるのは3階級上位より上の連中だし、魔物でもこの地域で飛べる魔物や水棲系の魔物は居ない。ゴブリン達を屠った人物たちが友好的な存在である事を願いながらネフィカ達は北の門へと向かっていった。

 

 

 

~迷宮周辺 山頂付近~

 

「しかし、貴様が来てから早10日、短期間で成長しない思っていたが思いの外成長するじゃないか」

「はぁ、はぁ、そぉ、で、すか?」

「あぁ、何度かペースが落ちたが一度も休まず迷宮へ戻ってきたんだ。通常の人間には無理だろう」

 

 走りこみに出た2人は山を1周して1度迷宮に戻った。

 シャルが関心したのは岬の体力が思っていた以上に向上していることだ。

確かに息は切れているが一度も止まる事無く走り続けた。

休憩を終えた後、いつもと違う場所での戦闘訓練を行っているが、防戦一方ではなく何度もシャルを攻めてくる。

 

(もっとも、まだ攻撃が素直すぎるが・・・)

 

 シャルの欲をいうなら、体力と共に技術も向上して欲しかったのだがそう美味い話は無いようだ。

 流石に山頂付近だけあって空気は薄く、動きに無駄がある岬はすぐに肩で息をする。

シャルは頃合を見て休憩をいれつつ、雑談に興じている。

だが、何気ない会話のはずが、岬は爆弾を投下してしまう。

 

「ふぅ、シャルさん、俺はまだ今エスペルト家に所属してる人員をシャルさん達3人以外見たこと無いですけど」

「む、・・・そう、だったか?」

 

 岬が聞いた途端シャルは固まり、無いはずの目が泳ぎだす。

その不振な態度に岬は疑問を抱くが今までの状況からすんなり1つの結論が想像できた。

火の車な台所事情、家臣達の離反、迷宮の整備も出来てない現在。

いや、まさかなと思いながら恐る恐る聞いてみた。

 

「・・・ひょっとして、離反してあまり残ってないとか?」

「・・・・・・・・」

 

 シャルは答えないが沈黙が答えを表していた。

 沈黙は金、雄弁は銀。沈黙のほうが雄弁よりも説得力があるという意味だ。

エスペルトの事情を知っているのも手伝い、本当に納得がいったと思う岬だった。

 

 

 

 

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