とある洞窟の中の一画。そこに洞窟には不釣り合いな程に重厚な扉がある。
扉の中は薄暗い室内。しかし、置かれている家具や調度品はシンプルなデザインではあるものの、持ち主が高貴な者である事を窺わせる。
その部屋の中央に部屋の主が大きな椅子に座っている。
いや、椅子は普通の大きさである。座っている人物が平均的な人よりも小柄なのだ。
小柄で線は細く肌は白い、触れた瞬間に砕けてしまう印象を受ける。髪は腰の辺りまで伸び、1本1本が宝石の如く銀色に輝いている。翡翠色をした瞳は安らぎを覚えるほど澄んでいた。
純白のドレスに身を包み、まるで精巧なビスクドールを思わせる。
容姿に加え、額に存在する瞳と同じ色の水晶がその者が人間でないことを物語っていた。
その人物―――クラ―レ・エスペルトは手元にある水晶玉から放たれている光をジッと見つめている。
光はプロジェクターのように壁に当たり、映像は1人の少年―――岬の姿を映していた。
クラーレは岬を見つめ、眉を顰める。複数の感情が胸中に渦巻き、どんな顔をすればいいのか判らない。
見た瞬間に確信した。この人しか居ない、見つかって良かった。
今を逃せばもう機会は無い。しかし、彼は受け入れてくれるだろうか。
いや、そもそも彼を巻き込んではいけない、見つからないままの方が良かったかもしれない。
岬を見つける前から何度となく繰り返し、答えが見つからない思考を再び行う。
が、今までと同じく解決策は見つからない。
「……どうすればいいの」
抵抗感が拭えない。他に方法は無いのか?見落としている手段は無いのか?
執事然とした初老の男が、今もなお躊躇っている主に進言し、頭をたれる。
「姫様、迷っておられる場合では御座いますまい。このままでは我々は間違いなく終わりです。確かに我々が行うことは彼にとって理不尽で横暴でしょう。言い訳はしません。この危機を脱したなら可能な限り彼の要求を呑むつもりです。今はどうか…」
言われなくても理解している。しかし、納得できるかは別だ。
今から行うことは、映像を介して映し出された少年の人生を大きく捻じ曲げるだろう。
本来なら自分達が陥っている状況に他の、それも異世界の者の手を借りるということ自体間違いなのだ。
しかし、状況はそれ以外の選択を許さない。このままでは自分達は、敵に駆逐されるか、他国に吸収されるか…どちらにしても明るい未来など無いのは明白だ。
「…わかりました。彼を召喚します。皆に誠実な対応をするように徹底させなさい」
「かしこまりました」
苦渋に満ちた表情で覚悟を決める。
采を投げられた。未だ燻ぶる逡巡の思いを押し込めて彼女は歩き始める。
彼と自分たちに幸福な未来が訪れるようにと願いながら。
「ふう、ごちそうさまっと」
岬はコンビニで買った弁当を食べ終え、コーヒーを飲みながらパソコンを立ち上げる。
憂鬱な気分も少しは抜け、次の企業を探そうとしていた。
「うーん、流石にこの時期だと中途採用枠も少ないな、なんか無いか?」
求人募集のサイトを開き、募集一覧のページに目を走らせる。
画面をスクロールしては次のページをクリックをしていく。が、「次へ」のページをクリックしたとき異変が起きた。
「…あれ、フリーズかな?」
カチカチとマウスを押すがウンともスンともいわない。
キーボードを使い再起動をしようとするがこちらも無反応。
「ひょっとしてウイルス!?」
急いでLANケーブルを抜く。とりあえず強制終了しようと電源ボタンを押した。
しかし、パソコンはそれも反応しない。つまり終了さえしないのだ。
「どうなって…!?」
もう1度電源ボタンを押そうとした時、ディスプレイが黒一色となった。
そして徐々に赤い円形の模様が浮かび上がり、ミステリーサークルか魔方陣のようなものができた。
「犯人はオカルトかファンタジーマニアかなにかか?それとも新手の嫌がらせ?」
とりあえず、もうパソコンは駄目だろうと電源コードを抜こうとした。
が、ここでもう1つの異変に気づく。
「あれ!?抜けない!」
どれだけ力を入れてもコードは抜けない。
更に異常が異常を呼ぶかのように、ディスプレイから黒い手がいくつも飛び出てきた。
「な、なんだよこれっ!?うわぁぁぁっ!」
岬は後ろへ飛び退こうとするが、黒い手は岬を逃がすまいと頭や腕を掴み引っ張ってくる。
抵抗をするが、まるで歯が立たず黒い手が飛び出してきたディスプレイまで一気に引き込まれていった。
文をどこで区切ればいいのか、わかりません。
短くてすいません。
あと姫様しばらく登場しないかも…。